これからも不定期になりますが更新していきます
失踪だけはしません・・・絶対に
水樹の設置も終わり。とりあえず風呂に入りたい。と言う要望にしたがって、湯殿の準備をしようとしたのだが……
「一刻ほどお待ちください!すぐ準備いたしますので!」
黒ウサギはそう叫んで風呂の掃除をしている。長年使ってなかったらしいし、中は悲惨なことになっているのであろう。なので俺たちは、自分たちが使う部屋を決め、その部屋をあらかた探し終わった後。貴賓室でくつろいでいた。
『お嬢……わしも風呂に入らなアカンか?』
「ダメだよ、ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」
「……ふうん?聞いてはいたけどお前本当に動物としゃべれるんだな」
「うん」
『オイワレ、お嬢をお前呼ばわりとはどういうことや!あんま調子のっとっとお前の寝床を毛玉だらけにするぞ!!』
「だめだよ、そんなこといっちゃ」
傍から見ればニャーニャー言ってるだけんだけどな……確かに猫と会話する少女っていうのは気味が悪いんだろう。俺には分からんが。
「湯殿の準備が終わりました!!女性様方から先にどうぞ!!」
廊下から黒ウサギの声が聞こえ、先に失礼するわ、と言い残して飛鳥と春日部が風呂に向かう。
「お前いいのかよ?行かなくて」
「それは覗きをして来いってことか?」
とぼけるようにヤハハと笑う十六夜。
「とぼけんなっつーの。まああれだ、お前がいいんならいいけどよ……」
「お嬢様達は気がついてないし、ここで俺が行ったら大参事だぜ?」
それはお前が言わないからだろうが。と言いそうになるのを飲み込む。
「あっそ、んじゃまあ……」
俺と十六夜の言葉が被る。
「「外にいる連中の用件でも聞きに行くか?」」
俺たちは顔を見合わせて笑う。なんだかんだでコイツとは息が合うのかもしれない。
子供たちが眠る別館前。仁王立ちで別館前に立つ俺達。周囲に人の気配は無し。かなりシュールな光景だが気にしない。
「おーい……そろそろ決めてくんねえかぁ、俺風呂入れねーんだけど……」
俺は目の前の森に投げかけるように言う。当然反応は無い。
「ここを襲うのか、襲わねーのか、さっさと決めてくんねーかなぁ……」
それでも反応は無い。俺がため息をついていると、十六夜が軽く小石を投げる。轟音と共に、森の一部が吹っ飛び、隠れていた人影達がばらばらと降ってくる。
「やり過ぎだバカ・・・・・・話聞けなくなったらどーすんだよ・・・・・・」
「まあ大丈夫だろ。そこそこ丈夫みたいだし。」
まあ確かに。意識を失っている者もいるが、多くの者は意識を保っているようだ。その時別邸から慌てたようにジンが飛び出てきた。恐らくさっきの轟音に驚いて出てきたのだろう。
慌てたようにジンが十六夜に問う。
「な、何事ですか!?」
「侵入者っぽいぞ。例の〝フォレス・ガロ〟の連中じゃねえか?」
まだ意識をとどめている奴らが立ち上がり、十六夜を見つめる。
「なんというデタラメな力・・・・・・!蛇神を倒したというのは本当だったのか」
「ああ・・・・・・これならガルドとの奴のゲームにも勝てるかもしれない・・・・・・!」
侵入者の視線に敵意は感じられない。十六夜もそのことに気がついたのか。歩み寄って声をかける。
「おお?なんだお前ら、人間じゃねえのか?」
侵入者の大半はそれぞれが身体の一部が人間とはかけ離れていた。獣人やそんなのの類だろう。物色するような瞳で眺める十六夜。
「我々は人をベースに様々な〝獣〟のギフトを持つ者。しかしギフトの格が低いため、このような半端な変幻しかできないのだ」
「へえ・・・・・・で、何かを話したくて襲わなかったんだろ?ほれ、さっさと話せ」
十六夜はにこやかに話しかける。しかし侵入者は全員、沈鬱そうに黙り込む。互いに目配せをし、意を決するように頭を下げた。
「恥を忍んで頼む!我々の・・・・・・いえ、魔王の傘下であるコミュニティ〝フォレス・ガロ〟を、完膚なきまでに叩きつぶしてははいただけないでしょうか!!」
「嫌だね」
決死の言葉を十六夜はさらっと一蹴する。侵入者は絶句して固まってしまった。隣で様子をうかがっていたジンも呆気にとられたように半口を開けている。俺はまあそうだろうなって顔で立ってる。十六夜も一転してつまらなそうな顔になる。
「どうせお前らもガルドって奴に人質を取られている連中だろ?命令されてガキを拉致しに来たってところか?」
「は、はい。まさかそこまでお見通しだとは露知らず失礼な真似を・・・・・・・・我々も人質を取られている身分、ガルドには逆らうこともできず」
「ああ、その人質な。もうこの世にいねえから。はいこの話題終了」
「・・・・・・・・・・なっ」
「十六夜さん!!」
「お前はもーちょい言い方考えろや・・・・・・・・・・・・」
「それは冗談きついぜ斬裂。隠す必要もねえしさ。それによく考えろよ斬裂。殺された人質を攫ってきてたのは誰だ?他でもないコイツらだろうが」
「同情しろとは言ってねーよ・・・・・・そいつらに同情する余地なんてねーしな。しかし一応こいつらは頼み事に来てるんだからよ。で、だ。同じ穴のムジナに頼まれてまで悪党狩りをするか?」
「やるわけ無いだろ」
身も蓋もないとはこのことだろう。
「では・・・・・・・・子どもたちは・・・・・・・・」
「・・・・・・・・はい。ガルドは人質を攫ったその日に殺していたそうです」
「そんな・・・・・!」
全員その場で項垂れる。彼らは人質の為に今日まで手を汚してきたのだ。その人質はもうこの世にいないと知った衝撃は計り知れないだろう。絶望に沈む彼らを見て、十六夜が良いこと思いついたって顔になる。
「お前達、〝フォレス・ガロ〟とガルドが憎いか?叩きつぶされて欲しいか?」
「あ、当たり前だ!俺達がアイツのせいでどんな目にあってきたか・・・・・・・・!」
「そうかそうか。でもお前達にはそれをするだけの力はないと?」
唇を噛みしめる男達。俺にも十六夜の考えが読めた。こいつは中々に面白い事を考える。よし、その考え乗った。
「ア、アイツはあれでも魔王の配下。ギフトの格も遥かに上だ。俺達がゲームを挑んでも勝てるはずがない!いや、万が一勝てても魔王に目をつけられたら」
「じゃあその〝魔王〟ってのを倒すコミュニティがあればいーんだな?」
え?と全員が顔を上げる。十六夜の方にアイコンタクトで先を喋れと促す。十六夜はうなずいてジンの方を抱き寄せ、
「このジン坊ちゃんが、
「なっ!?」
侵入者一同含め、ジンでさえ驚愕した。それはこのコミュニティの趣旨と近いようでまるで違う。彼はコミュニティを守る事と、旗印を奪った魔王だけを倒すつもりでいた。
しかし十六夜の説明通りならば、
「魔王を倒すコミュニティ・・・・・・?そ、それはいったい」
「言葉通りの意味だっつーの、俺達のコミュニティは魔王のコミュニティ全てをぶっつぶすコミュニティだ。そして俺達は魔王の驚異から他のコミュニティも守ってやる。ついでに守られるコミュニティは口を揃えてこう言いな。〝押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルの元にお問い合わせ下さい〟ってな」
十六夜の説明を引き継ぎ、俺が言う。冗談みたいな口上だが、俺も十六夜も本気である。
「じょ、」
冗談でしょう!?と言いたかったジンの口を俺が塞ぐ。だから冗談でこんな真似するかっつーの。
十六夜は勢いよく立ち上がり、両手を大きく広げ大げさにも見える仕草で
「人質のことは残念だった。だけど安心していい。明日ジン=ラッセル率いるメンバーがお前達の仇を取ってくれる!その後の心配もしなくていいぞ!なぜなら俺達のジン=ラッセルが魔王を倒すために立ち上がったのだから!」
「おお・・・・・・・・・・!」
大仰な口調と芝居がかかった動作で語る十六夜。それに希望を見る侵入者一同。
俺の腕の中でジンが必死にもがくが、俺の力は十六夜と同等かそれ以上だ。簡単に逃れられるはずがない。
「さあ、コミュニティに帰るんだ!そして仲間のコミュニティに言いふらせ!俺達のジン=ラッセルが〝魔王〟を倒してくれると!」
「わ、わかった!明日は頑張ってくれジン坊ちゃん!」
「ま・・・・・・待っ・・・・・・・・・!」
ジンの叫びも届かず、あっという間に走り去る侵入者一同。
俺の腕から逃れたジンは茫然自失になって膝を折っていた。
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