なるかもしれない
刹那、世界が変わった。
俺達が投げ出された場所は、白い雪原と凍る湖畔そして、太陽が水平に廻る世界。
「なっ…………!?」
あまりの異常さに息を呑む。あきらかにこれは今まで存在しなかった世界だ、つまり目の前のコイツは、
「今一度名乗り直し、問おうかの。」
これだけの事を平然とやってのけた
「私は〝白き夜の魔王〟――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か?それとも対等な決闘か?」
少女の笑とは思えぬ凄味。これが魔王・白夜叉の実力だった。
「して、おんしらの返答は?〝挑戦〟であるならば、手慰み程度に遊んでやる。――――だが〝決闘〟を望むというのなら話は別。魔王として、命と誇りの限り戦おうではないか」
「……………………っ」
飛鳥と春日部、自信家の十六夜ですら即答を控えた。そうさせるほど、白夜叉の力は圧倒的だった。
しかし自分たちから売った喧嘩を取り下げるのはプライドが邪魔をする。それも目の前の相手にビビったような形での取り下げは。
「そこのおんし、おぬしならわしにも勝てるのではないか?」
そう白夜叉が言う。全員が俺の方向を見た。
「冗談……、魔神になりそこねた木っ端悪魔がアンタに勝てるわけないだろ……。」
半ば本気、半ば嘘だ。俺が死ぬ気でやれば勝てないこともない。それでも白夜叉が有利なのは確実だ。
「降参だ白夜叉。」
十六夜が手を挙げ、半ば諦めたように言う。
「む?それは決闘ではなく、試練を選ぶということかの?」
「ああ、これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。アンタには資格がある。―――いいぜ。今回は黙って
苦笑とともに吐き捨てる十六夜。堪え切れずに高々と笑う白夜叉。飛鳥と春日部もそれを承諾し、白夜叉は試練としてグリフォンとの勝負を持ちかける。
春日部がグリフォンと誇りの勝負を持ちかる。
湖畔を一週する間に振り落とされなければ勝利
振り落とされれば敗北のシンプルなゲーム。
グリフォンは誇り。春日部は命をチップにゲーム開始。
湖畔を一週し春日部の勝利が確定した瞬間。
春日部が落ちた。
『何!?』
「春日部さん!?」
助けに行こうとする黒ウサギの肩を十六夜が掴む。
「は、離し――――」
「待て!まだ終わってない!」
焦る黒ウサギと止める十六夜。春日部はそんな事など眼中にないのか、助けも求めずに落下していく。
しかしそんな彼女の落下速度は弱まり……浮いた。
「…………なっ」
その場の殆どが絶句した。泳ぐように飛ぶ春日部に呆れたように笑う十六夜。
「やっぱお前のギフトって、ほかの生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
「……違う。これは友達になった証。けど、いつから知ってたの?」
ムッとしたように返す春日部。
十六夜は笑いながらただの推測。と答えた。
そこに先ほどのグリフォンが近寄ってくる。
『見事。お前が得たギフトは、私に勝利した証として使って欲しい。』
「うん。大事にする」
「いやはや大したものだ。このゲームはおんしの勝利だの。」
その後。春日部が見せた木彫りを白夜叉が欲しいと言い出して、それを春日部に断られていた。
俺達は試練をクリアした褒美として、カードを渡される。カードにはそれぞれの名前と、ギフトが刻まれていた。
パールエメラルドのカードに春日部耀
ギフトネーム 〝
ワインレッドのカードに久遠飛鳥
ギフトネーム 〝
コバルトブルーのカードに逆廻十六夜
ギフトネーム 〝
パールホワイトのカードに斬裂帝
ギフトネーム 〝
それぞれの名とギフトが記されたカードを受け取る黒ウサギが興奮しながら叫ぶ。
「ギフトカード!」
「お中元?」
「お歳暮?」
「お年玉?」
「いやプレゼントだろ?」
「違います!というかなんでそんなに息ぴったりなんですか!?このギフトカードは顕現しているギフトを収納できる超高価なカードですよ!」
「つまり素敵アイテムってことでオッケーか?」
「だからなんで適当に聞き流すんですか!あーもうそうです、超素敵アイテムなんです!」
そこから少しギフトカードについて説明を受け、俺達は店の前まで来ていた。
「今更だが一つ聞かせてくれ。おんしらは自分達のコミュニティがどんな状況かよく理解しておるのか?」
「ああ、名前と旗の話しか?それなら聞いたぜ」
「ならそれを取り戻すために、〝魔王〟と戦わねばならんことも?」
「聞いてるわよ」
「ではおんしらは全てを承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」
「まあ、そうだな。魔王退治っつーカッコイイ目的もあるしな」
俺の軽口に白夜叉は真剣に返す。
「カッコイイで済む話ではないのだがの……まあ、魔王がどういうものかはコミュニティに帰ればわかるだろ。それでも魔王と戦う事を望むというのなら止めんが……そこの娘二人。おんしらは確実に死ぬぞ」
予言と言うよりは断言に近い言葉。二人は一瞬だけ言い返そうと言葉を探すが、白夜叉には有無を言わさぬ迫力があった。
「魔王の前に様々なギフトゲームに挑んで力をつけろ。今のおんしら二人の力では生き残れんぞ」
「……ご忠告ありがと。肝に命じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑みに行くから、覚悟しておきなさい」
「ふふ、望むところだ。いつでも遊びに来い。……黒ウサギをチップにかけてもらうがの」
「嫌です!」
即答で返す黒ウサギに白夜叉は拗ねたように
「つれない事を言うなよぅ。私のコミュニティに所属すれば生涯遊んで暮らせると保証するぞ?三色首輪付きの個室も用意するし」
「いやそれ完璧にペット扱いじゃねーか…」
俺のツッコミに笑う白夜叉。
帰ろうとしたところを十六夜は服を引っ張られる。
「それとの、そのような事はせぬ方がいいぞ。形が崩れる。」
「へえ・・・初対面で見抜けたのはアンタが初めてだぜ?」
「いや、あの小僧は気づいておるようじゃったぞ?」
後ろでこそこそ話している十六夜に行くぞと声をかけ、俺達はサウザントアイズを後にした。
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