恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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……すまない。
サブタイトルがどうしても思い浮かばなかったのでね。

今回は拠点回風の良い話(?)だ。

気に入ってもらえればうれしい。

――では、皆さま私の歌劇をご観覧あれ……。


第13話 獣殿の本領発揮?

――翌日

 

『……と言うわけで獣殿の目論見は順調に進んでいる』

 

『こちらは対象の懐柔を完了しました』

 

「ふむ、ご苦労」

 

私の割り当てられた寝室にて……。

 

夕食後に第2ラウンドをして疲れ果て、すやすやと眠る3名を横目に、私はホログラムの聖餐杯とカールからの報告を受けていた。

しかし、聖餐杯はなぜラインハルト(わたし)の身体を持っているのだろうか。

――考えたら負けか。

 

『しかし、獣殿の考えることは理解に苦しむ。あなたの知る通りにしてしまえばよかったのではないかとつくづく思うのだがね』

 

理解できないとばかりの声色とは真逆で、カールは面白いとばかりの表情をしている。

私は少し考えた後、言葉を返す。

 

「それはそれで楽なのだがね。――つまらんではないか」

 

私の言葉でカールは笑いだす。

 

『フフフ………ハハハハハハッ!!どのような言葉で取り繕おうとも、言いたいことは痛いほど理解できますな。――主とその親友を溺愛していると見た』

 

「……卿の女神への愛ほどは重くないつもりだがね。――あと彼女たちが寝ている。自重してもらえぬか、カール」

 

私はベッドで寝ている3人を一瞥した後、肩をすくめる。

 

『いやはや失敬。……では、そろそろ失礼する』

 

『こちらも失礼します』

 

2人はその言葉を最後にフッと消える。

 

「……暇だな」

 

私がそう言うと、傍のテーブルにある楽器が現れた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

見渡す限りの草原

 

日差しが降り注ぐ中で、遠くに見えるあの人の姿

 

遠いのに近く、だけどどんなに近づいても一向に近ける気がしない

 

知らない景色のはずなのに、どこか懐かしくて、切ない……

 

どこからか聞こえてくる心地よい音色が魅せる景色なのかもしれない……

 

 

 

 

 

「んっ……」

 

深い水底からゆっくりと浮かび上がるようにボクの意識は覚醒した。

 

「お目覚めかね?」

 

声のする方へ顔を向けるとライニが見たこともない楽器を演奏していた。

まだまだボクは寝ぼけているのか、さっきから聞こえていたのはその楽器の音だと気付くのに、少し時間がかかった。

 

「……それ何て言う楽器?」

 

「アコースティック・ギターというが、なかなか心地よい音色だとは思わぬか?」

 

自然体で、ぎたーを演奏するライニ。

言葉にはできないけど、聞いてると安らぐ曲で、隣に寝てる月と傾も満足げな寝顔をしてる。

 

「……すまなかったな。つい夢中になってしまった」

 

演奏が一段落ついたらしく、机の上に蔵から出した手ぬぐいとお湯が入った桶を出したライニが、少しだけ申し訳なさそうにそう言った。

 

「身体くらい自分で綺麗にするから、もっと聞かせて」

 

ボクがそう言うと、ライニは背もたれがかなり高いそふぁーを机の傍に出してそこに座るように目で促した。

 

私は少し恥ずかしさを感じながら、そこへ移動して、身体拭い始めた。

 

「では少し趣向を変えるか」

 

ライニが演奏し始めた曲は先ほどよりも速い曲調でさっきの曲とは違った優しさを感じる。

 

さっきの曲はどこか儚いものがあったけど、今演奏してる曲はどこまでも明るい優しさを感じさせてくれる。

 

目を閉じると、見たことない海に浮かぶ街の町並みや、活気ある人々が見えてくる。

 

「うにゅ……」

 

「う……ん~っ!!」

 

2人ほどの声にハッとしたボクが目を開くと、月と傾が目を覚ましていて、2人ともライニを見て目を丸くしていた。

 

――やっぱりライニも大きい方が好きなのかな……。

 

傾と自分を見比べてボクは少しだけ落ち込む。

 

「……己に自身を持つといい。卿には卿の魅力があるのだから。……そうやって落ち込む卿も可愛らしいと思うが、笑顔の方が似合っているぞ」

 

ライニはそう言って口元を吊り上げる。

 

「せっかく曲を聞いてるんだから、邪魔しないでよ」

 

思わず出た言葉に、ライニは肩を竦めた。

 

――ボクにはもったいないくらいの恋人(サーヴァント)を見て、ボクはいつの間にか微笑んでいた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

朝食後、私は田豊にお願いをし、大広間を貸してもらうことにした。

それは何故かというと……。

 

「ベ~イ、準備は万端かい?」

 

「うっせえな、沸騰脳味噌。手前(テメェ)こそ失敗しねえように、神経張りつめてろ」

 

フルートの最終調整をしているシュライバーと白騎士(アルべド)の言葉に喧嘩腰なベイ。

 

「失敗しないかな……」

 

「大丈夫だよ、螢。明らかな失敗以外は大目に見るっていってたから、落ち着いて」

 

「戒の言う通りなので、そこまで心配する必要はありませんよ。ハイドリヒ卿も丸くなられたので、罰もそれほど厳しいものではないらしいですし、問題ありません」

 

不安そうにカスタネットを持つ螢とそれを落ち着かせる戒とベアトリス。

 

「……なんで貴女はエレオノーレの指示したマラカスじゃなくて、エレオノーレがいつもやってるチェロを持ってるのかしら?」

 

「たまには気分転換と言うことで」

 

ベアトリスの持つ楽器に首を傾げているリザに、鬼上司(ザミエル)不在の部下は人懐っこい笑みを浮かべる。

 

「……」

 

マキナは無言で佇んでいる。

 

――簡単に言えば、聖槍十三騎士団の、城にいた者に演奏会をさせるためである。

 

ただ、それでは人数が何分少ないため、城の髑髏たちの一部を一般人の姿に変えて人数合わせをしてある。

 

「なんか面白そうやなあ」

 

「何故だろうか。暗くされたら、途中で寝る自信があるぞ」

 

好奇心を露わにしている霞と、謎の自信に満ち溢れている華雄。

 

「ライニの演奏に対する熱意を垣間見た気がしますぞ」

 

「ですね。流石父が音楽家と言っていただけありますね……。隊長は」

 

「……(そわそわ)」

 

戦慄に似た様子のねねと、やや薄っぺらい感動を見せる寧に、近くで楽器を見たそうにする姜維。

 

「「……zzz」」

 

始まる前から自分の席で寝ている恋と水蓮。

 

「まさかみんなで聞けるようにと言ってたけど、ここまでやるとは……」

 

「楽しみだね、詠ちゃん」

 

「……ライニ、魔力切れで消えないわよね……?」

 

驚きを隠せない傾と、興味津々の月、そして不安げな詠を見たあと、私は再び舞台の方を見る。

 

「暗幕に、ライトなどを付ける演出をしたかったが、やむを得まい」

 

私がひとりごちていると、突然高笑いが聞こえる。

 

真直(マァチ)さん、帰って来ましたわよ。おーっほっほっほっ!」

 

その言葉と共に、背後の大広間の扉が開く。

 

「……何ですのあなたたちは?ここは私の城の大広間であることを理解しておりまして?」

 

私は振り返った後、そこにいた3人を見据える。

 

「無論だ。ここの使用については、田豊より許可をもらっている。私は何進、董卓よりそれぞれの軍の全権を預かっているラインハルトと言うものだ。以後、よろしく願おう」

 

私がそう言うと、心なしか頬に朱がさしている袁紹が一礼した後、挨拶をした。

 

「これはご丁寧にどうも。ご存知のようですが、改めまして……。私は袁紹。字は本初と申します。以後お見知りおきを」

 

ずいぶんと礼儀正しいため、私は首を傾げてしまった。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「……何でもない。丁度大秦から輸入した楽器を使った演奏会を開こうと思っていたのでな。卿らも聞いて行くといい」

 

言わねば後が面倒だと思ったので、誘ってみる。

 

「まあ、それはそれは。是非とも」

 

袁紹の反応に対し、同行していた2人の片方が、もう片方に耳打ちした。

 

「(姫の様子、なんか変じゃねーか?)」

 

「(びょ、病気かな……)」

 

――ひどい言われようである。

 

「猪々子さん、斗詩さん?何かいいまして?」

 

「な、何も言ってないって、姫」

 

「き、気のせいではないですか?麗羽様」

 

慌てた様子の文醜と顔良。

 

私は3人のための席も用意する。

 

「げっ、麗羽様!!どうしてこちらに!?」

 

声を聞きつけたのか、田豊が慌ててやって来て、開口一番にそう言った。

 

「それは当然、私たちも禁軍に加勢して黄巾党征伐するための交渉に来たからに決まっていますわ。……でもせっかくのおさそいを無碍にするわけにもいきませんので、まずはここで音楽を聞いてからにしますけど」

 

その言葉を聞いて頭痛がしてきたとばかりの顔をする田豊に対し、私は誘いかける。

 

「1日出立を延期するゆえ、卿も鑑賞していくといい」

 

田豊は私の言葉に対し、頭を下げる。

 

「ではお言葉に甘えまして……」

 

私はもう一つの席を用意し、部下たちの演奏を楽しむことにした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

演奏会が終わり、昼食を食べた後……

 

 

ベイは明らかに目立つミスをしたので、1週間一般髑髏に格下げしておいた。

 

――1週間で済ませたのは今後の予定も加味したためである。

 

「あら、真直さん、もう話を付けていたの?」

 

「後は麗羽様がこの方の指揮下でちゃんと言うことを聞く、というのが前提ですけどね」

 

会議室(?)にて、光が消えかかっている目の田豊が麗羽に説明していた。

田豊の隣にいた私は、問いかけるように袁紹を見る。

 

「私はどの部隊も一定以上戦果をあげられるように気を配っているため、命令の順守は必須なのだ。……それを確約してもらえぬならば、卿の兵を同行させるわけにはいかんが……」

 

「私たちを、上手く使いこなしてくださるのなら、構いませんわ」

 

「そうか、それはざん……なんだと?」

 

予想していた言葉とは違う言葉を聞き、少しばかり慌てて聞き返す。

 

「貴方が優れた指揮官であることくらい私でもわかりますわ。――犠牲者0は無理かもしれませんが、どんな圧倒的不利な状況でも勝利を手にするのは貴方だと、予感に近い何かで感じます。そんな貴方になら、安心して私の剣を、部下を預けられますわ。猪々子さんが命令違反をしないかだけが、心配ですが……」

 

――部下3名がそろって呆然としているのだが、それは……。

そんなことを歯牙に掛けず、袁紹は微笑んだ後、立ち上がった。

 

「――と言うわけで、私自身は特に異存はありませんので、猪々子さん、斗詩さん、真直さん、細かい調整はお願いしますわね」

 

そう言って立ち去ろうとしたが、扉を開ける前に手を止めてこちらへ振り返った。

 

「私のことは麗羽と呼んでくださっても構いませんので、気が向いたらおよび下さいませ。それでは、ラインハルト様」

 

軽く会釈をした後、立ち去ると、袁家家臣の3人が血相を変えて顔を寄せ合い話し始めた。

 

「ちょっとあんたたち、麗羽様に毒でも盛ったわけ!?」

 

「あたいが聞きたいくらいさ!!斗詩、心当たり無いか!?」

 

「えとえっと……全権代理さまを見てから一回も高笑いを聞いてないんだけど、もしかして……?」

 

「……姫が恋した?まさか……。あの姫が?」

 

「でもそれ以外に心当たりはないでしょ!?」

 

3人がそっとこちらを見たので、私は肩をすくめる。

 

「私は特に何もしていない」

 

私の反応を見た3人は再び顔を合わせた。

 

「……っていうか、今のままの麗羽様の方が、良くない?」

 

「それは同感。姫と型破りな事するのは好きだけど、最近やりすぎな所があったからな~」

 

「恋は人を変えるっていうけど、本当なんだね……」

 

このまま話を聞いているといけない気がしたので、部屋を出ることにした。

 

「すまんが私は部屋に戻らせてもらう。――主たちが待っているのでね」

 

私は返事を待たず、さっさと立ち去ることにした。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

あの後、自室に戻った私は、一人で読書をしていた。

 

すると声がきこえてくる。

 

「すみません。田豊ですが、入ってもよろしいでしょうか」

 

「入るといい」

 

私がそう言うと、田豊が入ってくる。

私はテーブル向かいの椅子に座るよう、田豊に促した。

彼女は椅子に浅めに座る。

 

「あの、折り入って相談が……」

 

消えいるような声で田豊が口火を切った。

 

「……否と言われると分かっているだろうに、相談に来るとはご苦労なことだな」

 

「……名家の系譜に名を連ねることが出来る……じゃあ、貴方を説得するには弱いですね」

 

困った顔をする田豊。

 

「生憎金も地位も名誉もそこまで執着しておらんし、今の立ち位置で満足しているからな」

 

「女性関係も、不満がないご様子なので、取りつく島もありません」

 

そんな彼女に対し、私は肩をすくめる。

 

「彼女とは今の間だけ、道が重なったに過ぎん。いずれ別れるのは明らかだ。どこかで交わるかもしれんがその時は剣を交える相手かもしれん。彼女がしがらみなどを捨てて私の元に来たのなら、受け入れるのも吝かではないが、彼女はそんなことはせんだろう」

 

「しないでしょうね。貴方が見ていた限りでは全くそぶりを見せていませんが、かなり自尊心がありますから……。自分の任された土地を自ら捨てることはないでしょう……」

 

彼女は立ち上がり、一礼をする。

 

「貴方は不思議な方です。その在り方だけで、人を魅せる。……麗羽様と会う前に貴方に会っていたら、私も……」

 

どこか儚げな微笑を浮かべる田豊。

 

「人生というのは、様々なことがある。だから思い出と言うものは美しく残ることが多い……。卿もそう思わぬか?」

 

――初恋の失恋しかり、人生の挫折しかり。

その時は世界の終わりと思えるようなことも、後になって振り返ってみれば、笑い話に出来たり、美しい思い出として残っていたりするのだから、人生というのは不思議なものだ。

中には絶対思いだしたくない黒歴史などもあるだろうが。

 

「……では、この思いも、美しい思い出の一欠片として、胸のうちにおさめておきましょう。――いつか振り返ったときに宝石のように煌めいて見えればいいですが……」

 

彼女は失礼します、と言った後、部屋を後にした。

 

――死を想え(メメント・モリ)……。

 

今一度、噛み締めておくべきかもしれぬな……。

 

私はふと、そう思った後、再びギターを出して弾き始めた……。




いかがだっただろうか。
誤字脱字の報告や、感想をお待ちしているよ……。
いよいよ次回は平原だ。



備考
――ギョウや晋陽とか、上党は黄巾党の鎮圧は袁家と、先行していた禁軍がほとんど行っていたので、あまりいない。
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