恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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お知らせ

作者がいくつかやらかしていたので、読み返すつもりのない人は、以下のことを記憶にとどめて置いてください。
(4月25日以降に読み始めた人は関係ないです)

・劉協の真名:×白丹 ○白湯
 →訂正しました。

・第7話で禁軍6万を連れて獣殿たちが出撃したようなニュアンスになっていたので、訂正しました。
 →皇甫嵩、盧植が計2万連れて先に出立しており、禁軍4万と共に、獣殿は出撃していた。

以上、お知らせでした。


では改めまして……。

なんか決戦もまとめてやろうかと思ったけど、1万字超えそうな気がしたので決戦前だけにしました。

――詐欺に定評がある作者とか言われてそうで怖い……。

私のことなどどうでもいいか。

そんなことより本編だ。

――と言うことで。




さあ、皆さま。私の歌劇をご観覧あれ……。


第16話 決戦前

――獣の少数突撃作戦から5日後……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……圧巻の一言に尽きるな」

 

卓に並ぶ者たちとその背後に佇む者たちを見た私は思わずそう漏らした。

 

何進、董卓、袁紹、公孫賛、劉備、曹操、袁術に、袁術の客将となっている孫策。

 

史実通りなら、今後栄える者、および滅びる者を含めた、有名な勢力の君主の大多数がそろっている。

 

「(……全員揃ったようなので、始めてよろしいかと)」

 

姜維が耳打ちしたので、私は頬杖をやめる。

 

「では、これより、黄巾党の首領たる張角、張宝、張梁の3人とその信者30万の討伐作戦の軍議を始める。まず初めに主だった者たちの自己紹介から始めたい。全員が全員顔なじみではないだろうし、私も初対面の者がいるからな。……構わんかね?」

 

私は一度区切って一同を見回す。

 

注意がこちらに向いており、特に反論がなかったため、そのまま続ける。

 

「――私はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。そこにいる大将軍何進の名代にして、袁紹、董卓の率いる兵および禁軍で構成される黄巾党鎮圧混成軍の総責任者だ。友から獣と呼ばれているゆえ、獣とでも、ラインハルトとでも、好きに呼ぶといい。私は礼節をそこまで重んじておらぬ故、話す時は要点をまとめて簡潔に話してもらえると助かる。私の後ろにいるのは部下の姜維、孫乾、李奉だ。――次は卿だ」

 

私がそう言って右隣に座する傾に視線を向けると、傾は少しばかりめんどくさそうな顔をする。

 

「私は何進。字は遂高。大将軍なんて役職をもらってるが、正直兵士を率いるなんて柄じゃないから、適任だったそこの獣に任せてる。つまり、責任や戦果の報告を私に言っても意味がないということだ。その点をしっかり憶えておいてもらいたい」

 

傾がそう言うと、彼女の右隣にいた、風鈴が口を開いた。

 

「私は盧植と言います。字は子幹です。武勇はありませんが、知識、智略で冀州、并州、幽州での皇甫嵩将軍の黄巾党鎮圧に微力ながら貢献させて頂きました。以後よろしくお願いいたします」

 

「ご紹介に預かりました皇甫嵩、字は義真です。盧植将軍の智略に大いに助けられ、黄巾党鎮圧に微力を尽くさせていただきました。本作戦でも、微力ながら、最善を尽くす所存です」

 

禁軍の指揮官たちの自己紹介が終わると、次は麗羽の番だ。

 

「わたくしは袁紹。字は本初。ラインハルト様の指揮下で部下と共に()()()活躍させて頂いてますわ。……それとこちらは私の部下の、文醜、顔良、田豊ですわ」

 

麗羽の言葉に反応して軽く会釈する3人。

 

「えっと、私は劉備。字は玄徳です。皆さん、よろしくお願いします。こっちは私の仲間で諸葛亮、鳳統、関羽です」

 

(エミヤを出さなかったか……)

 

私がそう思っていると、隣にいた曹操が立ちあがる。

 

「私は曹操。字は孟徳よ。そちらの獣様から、禁軍2万を預かったあと、袁術と合流して揚州北部、豫州エン州南部の黄巾党を鎮圧に一役買わせてもらったわ。――後ろにいるのは荀彧、郭嘉、程昱、天の御使いである北郷一刀よ」

 

曹操がそう言って座る。

 

その途端、卓に座する者たちの何人かと、その部下たちが動揺を見せる。

 

「静まれ。」

 

私がそう言うと、途端に水を打ったようにしんとなる。

 

「その男は例の噂の天の御使いだ。私が話を聞いた限り、この国よりはるかに進んだ技術や知識を知っていた。少なくともこの国や五胡の技術や知識などをはるかに上回る技術や知識のあった国にいたのは確かだ。もっとも、今のその男にそれらを全て再現したり、証明できるかどうかは別として……だが」

 

私がそう言うと、興味が袁紹、袁術、孫策が興味深そうな顔をし、当人は複雑そうな表情を私に向けた。

 

「御使いのことは気になるだろうが、それは軍議の終わったあとにしてもらいたい。――次は卿だ」

 

私の目線に気が付いた袁術が立ちあがった。

 

「妾は袁術。字は公路なのじゃ。後ろにいるのは部下のなな……張勲と、客将の孫策と周瑜じゃ」

 

危うく真名で紹介しかけたが、ちゃんと言いなおした袁術。

 

次は公孫賛だ。

 

「私は公孫賛。字は伯珪だ。こっちは弟の公孫越と、再従姉の公孫度、客将の趙雲だ」

 

(……公孫賛の再従姉の公孫度……か。史実では同じ氏であるくらいしか共通点はなかったようだが、この世界では再従姉なのか。白蓮よりも赤……いや、紅い髪をしているな。先日まで見かけなかったが……まあいいか)

 

私は抱いた疑問を途中で切り上げ、最後の陣営に意識を向ける。

 

「わ、私は董卓、仲穎です。何進大将軍の命を受け、洛陽より禁軍と共に黄巾党制圧に微力ながら尽くさせて頂きました。後ろにいるのは、部下の賈駆、張遼、高順です」

 

同伴メンバーのうち、詠以外はそこそこ頭回る組にしてもらった。

 

――ねね?

 

ああ、彼女は私に問答無用でツッコミ(物理)を入れた前歴から、色々面倒事の原因になりかねないと判断したので、本人の了解を得たうえで外している。

 

「ふむ、全員の簡単な紹介が終わったな。では、現在の状況を斥候と内通者の持ちかえった最新の情報を元に説明する。――カイン、唐周、劉辟、波才。入るといい」

 

私がそう言うと、天幕の右側から筒状に巻いた紙を持つカインと3人の黄巾を纏う男が入ってきた。

 

「……げっ」

 

「……げげっ」

 

「……あっ……」

 

黄巾を纏う男であるヒゲが印象的な中年、異様に小柄な男(チビ)、肥満体の大男が曹操を見て動きを止めた。

 

「……本来なら捕まえて牢獄に入れる所だけど、黄巾党鎮圧に関わる獣の協力者である以上、()()捕まえるつもりはないわ。」

 

曹操の言葉に少しだけ安心する3人。

 

「では、説明を頼む」

 

私がそう言うと、カインは卓に持っていた紙を広げた。

 

「……ずいぶんと精巧な地図ね」

 

華琳がそう言ったが私は無視する。

 

「これは、開陽の街と、その周辺の地図です。現在、街には内通者を除き、黄巾党の関係者以外はいません。……そうだったよね?」

 

カインが問いかけるように黄巾の3人に尋ねると、3人は頷く。

 

「そして、城を一部改築し、そこを中心に黄巾党のほとんどが集まっています。――かなり中心部に密集しているため、これを上手く利用する方法を考えたほうが良いかと。それと、北と西側の門は警備が厳しいようですが、代わりに東と南は比較的警備は手薄。食料の輸送などは西側から入る模様です」

 

カインがそう言い終わると、ヒゲが引き継いだ。

 

「あと、獣の旦那に協力する奴はみんな右腕に黒い布を巻いてるんだ。攻められたら抵抗はしないことを約束するから、殺さないでくれ」

 

「――ということだ。万一殺そうものなら、私を含めた全員の名声に傷がつくと考えておいたほうが妥当だろう」

 

私は懐から書簡を出して、自分の傍に置いてから、続ける。

 

「さて、ここから軍師たちの知恵を貸してもらいたい。一応私なりに作戦を考えてあり、その書簡はここに置いておくが、どうしても出てこない場合しか見せんのでそのつもりで」

 

すると諸葛亮が手を挙げる。

 

「発言を許可しよう、諸葛孔明」

 

「はわわ……。現在のこちら側の兵力などの詳細も教えてください」

 

その指摘で私はハッとする。

 

「む、私としたことが忘れていたな。――姜維」

 

私がそう言うと、姜維は(そら)んじた。

 

「禁軍4万8千、接収した元黄巾党1万、董卓軍9千、袁紹軍1万9千、劉備義勇兵5千、曹操軍9千、袁術軍2万1千の合計12万1千ですね。報告がおおよそなので、この通りと断定は出来ませんが」

 

「……報告ご苦労、姜維」

 

私がそう言うと、一礼して後ろに下がる。

 

「この兵力差では、正面からぶつかり合うと、まず負けますね」

 

張勲がそう言うと、鳳統がそれに頷く。

 

「内部から攪乱するのは必要不可欠かと……。幸い、内通者がいるので、それ自体は簡単です」

 

「しかし、それだけではいかんせん足りないでしょう。内部攪乱について、もう一手入れたいところですが……」

 

田豊の言葉に呼応するように姜維が口を開く。

 

「いっそのこと、食料の輸送として使う荷馬車に兵士を潜り込ませて内部から攪乱した方が良い気がしますね」

 

「姜維。今月の給金半分をほど引いておく。――無粋極まれりだ。軍師たちの仕事を奪うとはな」

 

姜維の一言に対し、軍師たちの知恵を絞る場所が減ったことに対する不満を、罰として給料の減額と言う形で示す。

 

「も、申し訳ありません。ハイドリヒ卿」

 

「……さて、姜維が案の一つをあげてくれたが、他に案がある者、またはこの案に何か追加する者はいるかね?……ああ。姜維は私の案を知っててばらしたので少しばかり罰を与えただけだ。軍師でない者が案を出すことに文句を言うつもりはない」

 

「うっ……」

 

ばつの悪そうな声を出す姜維。

 

「その案を採用するとして、内部から攪乱させるのは良いと思うけど、誰がやるのかって話よね」

 

詠がそう言うと、周瑜が言葉を引き継ぐ。

 

「混乱こそ起こせるが、その兵士たちは生還できる確率はお世辞にも高いとは言えんな」

 

会議が膠着する前に私が打開する。

 

「やるものがおらぬならば、私とここにはおらん部下たちがその役目をやろう」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

一同の視線が集まるが、私はほぼ無視する形で続ける。

 

「食料はどこに貯められているか知っているか?」

 

唐周に問いかけると、地図の一点を指し示す。

 

「街の中心から少し北西のところだ。あと武器庫は街の南西部にあるにはあるが、大抵は自分たちで持ってるから、おまけ程度に認識してくれ」

 

「武器庫を押さえて少しでも優勢にしたかったが、おまけ程度に考えたほうが無難か。……他に何か案がある者は?」

 

私が問いかけると、郭嘉が挙手をする。

 

発言を目で促すと、彼女は一瞬目を丸くした後、口を開いた。

 

「攪乱部隊は開陽侵入後、内通者の案内で東、北、南の各門を押さえ、その3か所と食料庫、および3つの門の周辺で火事を起こすのです。そうすれば西門に食料を失い、逃げ場が一つしかない黄巾党は殺到します。30万という数が仇となり、足の引っ張り合い、最終的には同士討ちも発生するかと」

 

「ふむ、確かにそうだな。そこで、首領である3人を混乱に乗じて始末する……と言う筋書きで合っているかね?」

 

「は、はい」

 

私はわざとらしく思案するそぶりをした後、結論を出す。

 

「復興云々を考えると少しばかり被害が大きいが、ここで黄巾党を鎮圧できなければ話にならぬ故、それが妥当か。首領さえいなくなれば、烏合の衆。あとは出てきたところを叩けばよいだろうな」

 

そこで公孫度がつなげる。

 

「ただ、背中に火がついた状態ですから、完全に包囲しては手負いの獣さながらにおもわぬ力を発揮する可能性が高い。数か所ほど、逃げ道を作った方がよろしいかと」

 

「それが妥当か……。さて、他に何か付け加えること、あるいは別案がある者はいるかね?」

 

私が問いかけるが、誰もこれと言って反応を見せない。

 

「では、その方針でゆくとしよう。決行は明後日の早朝。気の緩んだところを狙う。本日は開陽西40里まで接近。その後夕食をとり、翌日の夜まで待機。夜間になったら斥候に注意しつつ開陽の西10里まで行軍。指定の位置で待機し、我々の起こした火事を合図に作戦は開始する。私は作戦のために別行動するゆえ、不在の間の指揮は皇甫嵩将軍に委任する。何か疑問はあるかね?」

 

私がそう言うと、皇甫嵩が口を開いた。

 

「私のような者にそのような大役は荷が勝ちすぎております。大将軍様がいらっしゃいますので、そちらの方が適任かと……」

 

私が傾を見ると、首を振ったので、少々面倒ながら、説明することにした。

 

「本人の手前、あまり言いたくないが、彼女は指揮官としてはそこまで優秀ではない」

 

「あまり自慢できんが……反論できないな」

 

傾がうんうんと頷いたのを横目に、私は続ける。

 

「あと禁軍を率いる手前、朝廷直属の将軍が率いるのが筋というものだ。盧植将軍は指揮官よりも軍師に近い能力ゆえ、必然的に卿以外おらんのだ。姜維、孫乾が助力するゆえ、任されてくれぬか?今は卿だけが頼りなのだ」

 

「あら?ならば私に2万の禁軍を貸し与えたのは良かったのかしら?」

 

「私の職権乱用と言うことにしてある。万一何か糾弾されても、私以外に火の粉は飛ばんよ」

 

茶々を入れてきた曹操に私は真面目に答えた。

 

「ならもう一度職権乱用と言うことで、曹孟徳さんにお願いしたらどうですが?」

 

心なしか涙目になっている皇甫嵩に私は冷静に対処する。

 

「それをやってもいいが、その場合は卿や盧植将軍もあとあと何か言われても文句は言えぬだろうし、第一、麗羽が黙っているはずがないだろう。――そうだろう、麗羽」

 

私が話を振ると、麗羽は即座に答える。

 

「ええ。何故名家の私を差し置いて、華琳さんをご指名するか理解に苦しみますわ。正直、ラインハルト様以外に大切な部下と兵士を任せたくないくらいですから、最大限の譲歩と思ってください」

 

「――と言うわけだ。おそらく、卿以外に任せると、なんだかんだで面倒事になる。案ずるな。私が先ほど述べた指示を、状況に応じて下す時間を多少前後させる程度のことだ。孫乾と、姜維を副官として付けるゆえ、安心するといい。――周囲の状況を常に意識し、的確な判断を下せる卿以外に、頼れる者がいないのだ。――頼まれてくれるな?」

 

私がそう言うと、皇甫嵩は何故か真面目な顔になる。

 

「――代わりに、後でお願いを聞き入れて頂けますでしょうか?」

 

「……この戦いが終わったあと、私が何とかできる範囲のものならな」

 

「大任、謹んでお受けします」

 

心なしか闘志の炎を瞳の中に宿している皇甫嵩に対し、私は期待している、と返し、軍議を終わらせること以外、出来なかった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

軍議の直後……

 

私は曹操の天幕を訪れていた。

 

「……一刀を作戦の間借りたい?」

 

「左様。私の部下を数名護衛に付けるゆえ、命の安全は保障する」

 

「私たちに何か得があるのかしら?」

 

興味深そうな顔をする曹操。

 

「張角、張宝、張梁という、人集めの天才が手に入る……では不満かね?」

 

「噂では、髭面の大男3人って聞いてるわ。それに朝廷が正式に討伐の対象にしてる。……いくら有能な人材でも、ここまで問題を抱えている人を雇うのは出来ないわね」

 

無理、とジェスチャーする曹操。

 

その反応に対し、私は懐から紙を出して内容を読みあげた。

 

「『ふうん。なかなか可愛らしいわね。私の元に来たら、可愛がってあげましょうか。……でも曹洪が先に可愛がるかもしれないわね』」

 

「……!!」

 

私ので険しい顔になる曹操。

 

「……私の気まぐれゆえ、先ほどの提案は忘れてくれて構わんよ」

 

「いえ、先ほどの発言を撤回するわ。――その話、乗らせてもらえるかしら」

 

「その言葉を待っていた」

 

私がそう言うと、彼女もまた、不敵な笑みを浮かべていた……。




いかがだっただろうか。

敵を強くするために塩どころか兵糧や、武器をガンガンプレゼントしていく獣殿。

……まあ、これで張三姉妹を獣殿が手に入れたらもう手に負えない。

――ガチで独自ルート入ってしまう。

まあ、私の独り言はこの辺で……。



感想、誤字脱字の報告、評価をお待ちしているよ。

――最近感想があまり来ないので少しばかり寂しいですが。



では、また次の幕でお会いしましょう……。
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