恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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まず初めに、黒扇さん、 豆助さん、高評価ありがとう。

デスマーチの中でも創作熱意が消えぬのは、ひとえにあなた方のような評価があってこそだ。

次に……

――サブタイトルが思いつかないので訳ワカメなアレになってるかもですが、許してください。

そして獣殿の好色が久しぶりに猛威を振るう模様。

やりすぎだ、ハイドリヒ。
これ以上女篭絡してどうするんだと言いたくなるくらいに。


さて、今回はシリアス(?)→獣殿の好色シーン×2→シリアス(たぶん)となっているので、色ボケ不要と言うならば、途中は飛ばしてくれたまえ。

私からは以上だ。

では皆さま、私の歌劇をご観覧あれ……。


第18話 胎動 ~動きだす歯車~

 

洛陽に戻ってきた董卓軍、禁軍一行。

 

彼女たちが割り当てられた部屋にたどり着いたのは、夜が始まろうとしていた時だった……。

 

 

 

 

 

「はぁ~。やっと一息つけるわね。長かった~」

 

「そうだね、詠ちゃん」

 

当たり前のように私の部屋の寝台で寛ぐ詠と月。

 

――いや、私の割り当てられた部屋にいたのは2人だけではなかった。

 

「へぇ、ライニって絵も上手いんやな。見てみ、華雄。ウチそっくりや」

 

「……だな。他には月に詠……、恋に……水蓮。ねね……私のまで!?」

 

「恋殿の素晴らしさが漏れることなく描かれているのですよ……。持って帰って末代までの家宝にしましょう!!」

 

「……ねね、だめ。ライニに許可……もらう」

 

「……恋様の絵、もう一枚描いてもらおう……」

 

霞、華雄、ねね、恋、水蓮が気まぐれで描き、そのまま部屋に置きっぱなしにしてあった私のスケッチブックの絵を見て感想を言っている。

 

「……男性率の低さに居心地の悪さを感じるこの頃」

 

「いいじゃないですか。隊長の黒円卓は男性率高いですよ」

 

「寧様。旦那様の爪牙は此処にはおりませんよ?」

 

漫才(?)をしている寧、姜維、美花。

 

――何故ここに董卓陣営のメンバーが全員いるのだろうか?

 

「――何故卿らは私の部屋にいる?」

 

私が問いかけると、一同はきょとんとする。

 

「なんでって、今後の方針を確認するためよ」

 

「人払いの魔術結界展開できるアイテム持ってるの、隊長だけですからね」

 

詠と寧の言葉に納得した私は手の平サイズの半笑い人形を入り口付近に設置した。

 

――見た目こそアレだが、効果は確かなのだから馬鹿には出来ない。

 

「……改めて聞くが、ここにいる全員私について行くということで間違いないな?」

 

私の問いかけに一同は頷く。

 

「……私のやろうとしていることはこの国を滅ぼすことにつながるのだが……分かっているのかね?」

 

思わずため息をつくと、詠がため息をつく。

 

「それが次の世代のために必要なんでしょ?――漢は立て直すには、手遅れなほど腐りすぎた。その腐敗を一掃して、まるで集められたかのようこの時代にいる英傑たちに、未来を託す。そのために、あんたはこの国を実質的に滅ぼす……。腐敗した国が乱世をもたらし、その中から新しい国が生まれるのは、歴史を顧みれば不自然なことじゃないわ」

 

「……だが漢はまだ再生させる余地がある」

 

私がそう言うと、姜維が首を横に振る。

 

「それはハイドリヒ卿頼りの延命治療に過ぎません。それこそ、反乱の鎮圧に奔走した西楚の覇王項羽のように、ハイドリヒ卿が漢のあちこちを駆けずり回り続けなければなりません。それに、ハイドリヒ卿の考える立て直しのための政策を強行すれば、既得権益を潰されまいとする名家や豪族たちの反乱も避けられません」

 

「……」

 

私が考えるそぶりを見せつつ沈黙を保っていると、霞が続ける。

 

「それに、今の皇帝とその妹さん、皇帝お付きの黄と何姉妹は放っておくとロクな目に合いそうにないやろし、もしそうなったらかわいそうやないか。ライニの計画なら、彼女ら助けられるやろ?皇帝の異母兄弟ちゅう劉弁さんが人柱みたくなってまうけど、曹孟徳あたりが皇帝として擁立するなら、身分と衣食住は保障されるはずやし」

 

「それに、お前の計画通りに動けば、少なくともお前が洛陽にいる間に流れる血はほとんどない。精々一部の宦官と性悪な官僚くらいだ。――断定は出来んが、お前がなにもしなければ司隷でもっと多くの血が流れることになっていたはずだ。――むしろその計画の立案と、実行にこぎつけたぶん、被害は小さくて済むだろう。――お前が人からはみ出ている者だろうと、万能ではない。これ以上高望みする奴はただの夢想家……違うか?」

 

「……すまなかった、華雄。卿を今まで完全な脳筋と思っていたが、私の間違いだったようだ」

 

私がそう言うと、彼女は肩を落とす。

 

「……脳筋であることは否定せんが、曹孟徳のところにいたアレほどではないからな」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「へっくし!!」

 

「どうした姉者。風邪でもひいたのか?」

 

「誰が幼児が理解できる水準までかみ砕かなければ理解できぬ脳筋だ!!」

 

「……姉者。藪から棒にどうしたというのだ?」

 

「……誰かに脳筋と言われた気がしただけだ」

 

「……気のせいではないか?」

 

「それもそうか」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

どこかで誰かがくしゃみした気がしたが、私はそれを無視して口を開いた。

 

「……だが乱世を起こす私は紛れもない悪人だ。私に加担すれば、卿らは悪事の片棒を担ぐことになる」

 

私の言葉に対し、恋が珍しく意見した。

 

「……ライニ、悪い人だけど、正しい人」

 

「……恋様はこう言いたいのだと思います。戦乱の世を招くことは悪だから悪い人。でもそれは守りたい人のためにやってるから正しい人。……ですよね、恋様」

 

「……(コクコク)。恋は、頭よくないから、それくらいしか分からない。でも、ライニについて行くことが正しいと思った。だから恋はついて行く」

 

「私もついて行く。恋様について行くのもあるけど。……共闘の件もあるから」

 

「主殿に同意ですな。最後までお供しましょう」

 

「ねねもついて行ってやりますよ。お前が恋殿に手を出さないか見るついでなら、雑務の一つや二つは手伝ってやるのです」

 

恋と水蓮、相変わらず声だけ聞こえるアサシンとデレた(?)ねねの言葉に若干驚いていると、左手に月の手が乗せられた。

 

「私も恋人として、ライニさんが道を踏み外さないように傍にいます。……いえ、居させてください」

 

「私は旦那様のメイドになったときに申し上げたはずです。『身も心も、全て貴方様のモノですので、存分にお使いくださいませ』と。……置いて行かれましたら、私が旦那様にどのように調教されたか、行く先々で触れ回りますので、その旨をお忘れなく頂けましたら幸いです」

 

「私はもちろん、隊長について行きますよ。正直、隊長がいなければ、()()に私がいる意味ないですしおすし」

 

笑顔で新手の脅しをかける美花と犬耳と尻尾が幻視できる寧。

 

「まあ、この行動がもたらした結果の評価なんて、未来の歴史家に任せれば良いじゃない。もしかしたら、未来では偉業扱いされてるかもしれないし」

 

「せやせや。ウチらは今出来ることを精一杯やればええ。ウチも助けたるさかい、ドーンとたよってや」

 

「お前の爪牙に比べれば物足りぬかもしれぬが、私の武を上手く使ってくれ」

 

「十常侍同士の離間と、宮城内の情報操作はお任せください」

 

励ましの言葉を掛ける詠、霞、華雄、姜維。

 

そんな彼女たちを見た私はいつも通りの笑みを浮かべる。

 

「……卿らがどれだけ強情か良く分かった。――卿らの尽力に期待させてもらう」

 

私がそう言って全員を見回すと、全員が何かを決意したような顔つきをしていた。

 

「――さて、今宵はもう遅い。すまぬが卿らは部屋に戻ってくれぬか?」

 

私がそう言うと、全員がえっ、と言いたそうな顔をする。

 

「どうしてよ、ライニ」

 

「……いても構わぬが、私は今夜戻ってくることはない」

 

私がそう言うと、寧が思い出したように言う。

 

「そう言えば隊長。さっき楼杏さんに言われてましたね。『先日の大任をお受けするおりに申し上げたのお願いをお伝えしますので、私の部屋に皆が寝静まったころに来てください』って」

 

その一言である3名からの視線が少なからず厳しいものになり、残りは様々な反応を見せた。

 

「詠、そのような目線を送ったところで今夜はなしだ。月、美花もな。――あと寧は楼杏の一件が終わったら、少し()()()で話し合いをするゆえ、寝ておけ」

 

「横暴です、隊長!!」

 

寧の反論を無視し、私は半笑い人形を回収して、部屋を後にした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

楼杏の部屋の前にやってきた私は扉を3回軽く叩いた後、間を置いて2回叩く。

 

「どなたですか?」

 

中からの声を無視し、私は先ほどと同じ叩き方をした後、ゆっくり3回叩いた。

 

すると扉は開かれる。

 

「お待ちしていました、ラインハルト様」

 

「今の私は傾の名代ではないのだから、畏まる必要はない」

 

「いえ、これは私が勝手に決めたことなのでお気になさらず……。お入りください」

 

彼女はそう言って私を部屋に招き入れた。

 

 

 

 

 

「……」

 

「あ、あまり見ないでください」

 

恥じらう楼杏の言葉を素直に受け取り、私は部屋を見るのをやめた。

 

「本当は洛陽内に屋敷を与えられていますが、基本帰らないのでここが自宅といっても過言ではないですが」

 

「なるほど。……それにしては綺麗だな」

 

月明かり以外にはこれと言った明かりはなかったが、私からすればそれで十分見える。

 

「ええ。普段から心掛けてますから。……その分女の人の部屋って感じはしなくなりましたけど」

 

少し嬉しそうにした後、やや自虐的な表情を見せる楼杏。

 

「そんなことよりも、立ったままではいけません。どうぞお座りください」

 

彼女はそう言って、テーブルの席に座るように促した。

 

私は言われるまま席についた。

 

彼女が席についたのを確認した後、彼女を見据える。

 

「さて、卿の願いを聞かせてもらおう。――遅くなったが、先の決戦での約束をここで果たそう」

 

私がそう言うと、彼女は顔を一瞬にして真っ赤に染めた。

 

「~~~ッ!!」

 

しばらく沈黙した後、彼女は顔をばっと上げて答えた。

 

「――私を、一人の女として、受け入れてください!!」

 

「……私は一向にかまわんが……」

 

「――それなら!!」

 

「待て」

 

私は手でストップをかける。

 

「ただし、――一夜限りの関係ならば、後腐れもさほどないだろうが、今後のことも考えての発言ならば、よく考えるといい。――もし私との関係を続けるならば、卿が今の立場を捨てることになるのは確実だ。それに今後の生活を確約出来ぬ」

 

「……」

 

沈黙してしまった楼杏を見据えながら、私は続ける。

 

「今後も安定した生活を望むなら、今のうちに曹孟徳のところへ仕官しておくといい。――今後洛陽は多少荒れるだろうからな」

 

私がそう言うと、彼女は顔をあげて、こちらを見つめた。

 

「……いいえ、大丈夫です。覚悟は出来ました」

 

彼女はそう言って頭を下げた。

 

「不束者ではありますが、よろしくお願いいたします」

 

「……卿のその想いはしかと受け取った。もはや何も言うまい」

 

私はそう言って彼女の寝台まで移動して座り、私の左側へくるように促した。

 

すると彼女はどこか夢心地の表情で私の隣へと来た。

 

私は彼女の肩を抱き寄せて、右手で彼女の朱がさした彼女の頬を撫でて、こちらへ顔を向けさせた。

 

そしてそのまま唇を確かめるように指先でなぞった。

 

「今宵は卿だけの私でいよう。さあ、卿の望みを口にするといい。私は総てを愛している。――ゆえに卿が望むならば、卿を存分に愛でてやろう」

 

私がそう言って指を彼女の唇を放した途端――。

 

「――――」

 

熱に浮かされた彼女はまるで甘い蜜を得ようとする蝶のように、私の唇を貪った。

 

しかも、私の首にその両腕を巻きつけ、その豊かな双丘を私に押し付けてきた。

 

私は彼女を抱きしめて、その柔らかな感触を堪能した。

 

窒息しないかと不安になるほどの時間の末、彼女は惜しむように唇を離した。

 

「――ラインハルト様。私を貪るように、愛してください」

 

「――ああ。このひと時は全てを忘れ、互いの熱に溺れるとしよう。私のことは、ライニと呼ぶといい」

 

「――ライニッ!!」

 

再び彼女は貪るように私の唇を奪った。

 

――今宵は珍しく抑えきれぬかもしれぬな……。

 

私はそう思いつつ、彼女をそっと寝具へ押し倒した……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……本当にすごかったな~。まさに獣」

 

どこまでも白い空間で女神が水晶玉を見ながらそんな感想を述べていた。

 

「その言葉は否定せぬが、覗き見はあまり感心できぬな」

 

「――しまった自動召喚切るの忘れた!!」

 

私に気付いた彼女を私は組み伏せた。

 

「どうせ私にエッチなことするんでしょ!?薄い本みたいに!!」

 

もぞもぞともがくが抜け出せないことを悟った彼女は唯一使える口を使った。

 

私は宝物庫からピコピコハンマーをだして、軽く一発叩いてから彼女を解放した。

 

「――してほしいならばそれも構わんが、それは今は置いて置く。――卿には別件で用があって来たのだ」

 

「……?なんで《私》を通さないんですか?」

 

首を傾げる女神。

 

「念には念を入れねばならぬからな。私が卿にお願いしたいことは――――」

 

私が言い終わると、彼女は眉を寄せた。

 

「正直今の神格では厳しいです」

 

「……そうか。卿以外頼りになる伝手はない。諦めるしかないのか……」

 

私がそう言うと、彼女は慌てる。

 

「大丈夫です、隊長。何とかしてみます!!」

 

「……すまないが、卿に期待している」

 

「任せてください!!……その代わり……」

 

彼女は指先をツンツンしながら続ける。

 

「向こうの私を愛してください。たまにでいいので、こっちの私もお願いします」

 

「……よかろう。楼杏が疲れて寝てしまったのだが、私はまだ不完全燃焼だ。――このまま相手してやろう」

 

私の言葉が理解できなかったのか、一瞬硬直する。

 

「ふぇっ!?た、隊長の獣~!!」

 

顔を真っ赤にする彼女に対し、私は首肯する。

 

「ああ、私は獣だ。故に卿の異論など認めん」

 

「えっ、ちょっと、待っ――」

 

おあつらえ向きにあった天蓋付きのベッドに彼女を横抱きにして運んだ……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

――翌日――

 

私は禁軍の指揮官たちと、月と共に、宮城の謁見の間に訪れていた。

 

壁の両側には、宮廷の高官がずらりと並んでいる。

 

「黄巾党制圧お疲れ様。いまから各自に与える褒賞を張譲が読みあげるから、ありがたく受け取りなさい」

 

薄布で顔を隠した劉宏が言うと、張譲が歩み出て、書簡の内容を読みあげる。

 

「何進」

 

「はっ」

 

張讓は書簡を見た瞬間、眉をひそめるが、周囲の目に気付いた彼は朗々と読み上げた。

 

「そなたは大将軍としての職務を放棄し、身元も知れぬ男に禁軍を託したことは大罪に等しい。しかしその結果、乱の終息は早まり、犠牲が少なくて済んだ。――己の能力をわきまえ、適任に任せたことを功とし、功罪を相殺した。よって褒賞はないものとする」

 

「陛下の大海のごとき温情に感謝いたします」

 

張讓は面白くないとばかりに鼻を鳴らした後、次の書簡を読みあげた。

 

「盧植」

 

「はい」

 

「そなたは禁軍の将として、その智略で黄巾党征伐に尽力を尽くした。これを称え、絹1万匹を下賜する」

 

「ありがたき幸せ」

 

「皇甫嵩」

 

「はっ」

 

「そなたは禁軍の将として、兵を率いて黄巾党征伐に大いに貢献した。これを評し、鎮東将軍に任ずる」

 

「大任、謹んで拝命いたします」

 

「董卓」

 

「はい」

 

「そなたは禁軍と共に乱鎮圧に貢献した。それを称え、絹9千匹を下賜する」

 

「ありがたき幸せ」

 

月に対する褒賞の発表が終わった後、張譲はこちらを見てから書簡に目を通すが……。

 

「陛下!!何ですかこれは!!」

 

血相を変えて張譲が劉宏に向き直る。

 

「なにって、そのままよ。「黄金の獣ラインハルトの的確な軍事運用と、戦果報告、各太守などの被害状況の報告諸々を評し、執金吾、および新たな役職である【皇帝契絆支】に任ずる』……何か問題ある?」

 

「この男には絹100匹を下賜するとされていたはずですが」

 

「私が変えたの。この男の力を借りたいから」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

劉宏の言葉に動揺を見せる高官たち。

 

「静まりなさい。陛下の御前ですよ」

 

老成した声が部屋に響き渡ると、場内は水を打ったようになる。

 

「陛下。私はどこの出かもわからぬ男に執金吾を任せるのは賛同できません。それに新たな役職がどのようなものかは完全には理解できませぬが、少なくとも、納得できるそれ相応の理由を陛下から我らにお聞かせいただけませんと、忠臣として諫言させていただかざるを得ません」

 

「「「「「……」」」」」

 

場にいた一同は声の主である初老の男から皇帝へと視線を移した。

 

「ならば逆に問うけど、貴方たちは今この国の現状をありのまま私に伝えたことあるかしら?」

 

「……いいえ。出来なかった、いや、してきませんでした。おそらくこの場にいる誰も、それを結果としてはしていないでしょう」

 

男は首を振って答えた。

 

「この男はそれを私に対して直々にやって見せたわ。私と偶然出会えたこともあったけどね」

 

「……」

 

「それにこの男はかの項羽に引けを取らない武威を先の乱で示し、この男が来てから長安の治安は格段に良くなったと董卓から聞いている。――そうよね?」

 

「は、はい。この人の出す様々な案によってわずか半月で長安周辺から賊の類はほとんどいなくなりました。それに、農業改革によって農地が増加し、数年以内に税が例年の2割以上増加するという試算が出ています」

 

急に自分に視線が向けられたことに驚く月。

 

「比類なき武威にわずか半月でそれだけのことをやってのけた才能。――ただ、誰に対しても礼節を弁えられないのが唯一の欠点だけど、それを補ってあり余るものをこの男は持ってる。――『隗より始めよ』って故事を意訳して、引用させてもらうけど、貴方たちの才で今の官職を得ているなら、この男はこれくらいしないと割に合わない。……どこか間違っているかしら?」

 

男は劉宏の言葉を聞いて、頭を深く下げた。

 

「……いいえ。私の目が曇っていたようです。失言をお許しください」

 

「構わないわ、司馬防。貴方がその獣から預かった報告書を徹夜で目を通してくれたおかげで獣がここを発つ前に褒賞を渡すことが出来たのだから」

 

「陛下の恩情に感謝いたします」

 

彼はそう言って引き下がるが、他の者が黙っていなかった。

 

「その男は野心を持っているに違いありません。そのような者を宮城に上げるなど!!」

 

「気高き漢民族でない者に官職など与えてしまえば、五胡の者どもを増長させることにつながりかねません!!」

 

などと言う言葉に私は肩をすくめる。

 

「くだらんな」

 

私がそう言った瞬間、部屋は再び静まり返った。

 

「……何だと?」

 

張讓が問いかけてきた。

 

「私は官職などいらんと言ったのだ。このまま皇帝の褒賞を受け取ったとしても、そのうち不敬罪で投獄されるだろう。そのようなことになるくらいならば、官職などいらん。そもそも金も権力も興味がない。そんな下らんものは生きるのに困らぬくらいあれば十分だ」

 

私がそう言うと、劉宏が立ちあがり、私の元まで歩みよった。

 

そして――

 

「この通りよ。ちゃんと貴方が不敬罪にならないようにするし、少しくらいなら我が儘聞いてあげるから、執金吾、そして皇帝契絆支を拝命して」

 

「「「「「!!」」」」」

 

彼女は高官たちの驚愕の顔を無視して頭を下げた。

 

「……執金吾の旗下の刷新」

 

「……?」

 

「執金吾の旗下の兵や担当の文官、その人事を私に一任すること。あと卿の言った条件をしっかり守ってもらう。それで構わん。――私の負けだ」

 

私が肩をすくめると、彼女は嬉しそうな反応を示す。

 

「よかったわ」

 

彼女はそう言った後、一度玉座に戻る。

 

「それでは、新たな官職である、皇帝契絆支の詳細を述べる」

 

彼女はそう言って黄が持ってきた書簡を広げて読みあげる。

 

「――皇帝契絆支は、皇帝が最も信頼を置く者に与えられる官位であり、皇帝の崩御と共に解任される名誉職である。皇帝の友として皇帝を支える者であることを職務とし、俸禄はない。その特権として、漢に住まう全ての民に対し、不敬罪の免除するものとする。また、私に会うときは謁見の手続きを踏むことなく、直接私の元に訪れることができ、何人たりともそれを阻むことは出来ない。――また先の条件を除き、皇帝契絆支を任命、解任できるのは、当代の皇帝のみであり、それ以外の何人たりとも、任命、解任を行うことは出来ない」

 

彼女は書簡から目をあげた。

 

「問題ないと思うけど、理解できてる?」

 

「無論。執金吾ともに、その大任を拝命しよう」

 

私がそう言うと、彼女は笑顔になる。

 

「褒賞の発表は以上よ。獣、1週間待っててあげるから、執金吾の引き継ぎをしておきなさい」

 

彼女はそう言って、黄とともに、部屋を後にした。

 

「……」

 

ふとある視線に気付き、そちらを向くと、司馬防が興味深そうに私を見ていた。

 

「……傾、風鈴、楼杏、月。早くここから出よう。――面倒なことになる前にな」

 

派閥ごとにまとまって話しあっている高官たちを横目に、私はそう言った。

 

「……だな」

 

傾がそう言って、さっさと部屋を後にしようとしたので、私たちもそれに続いた……。

 

 

 




いかがだっただろうか。

感想、誤字脱字の報告、評価をお待ちしているよ。


あと、この後は拠点回的なアレが「インターミッション」として入る。
章もそのようにする。

つまり今後の章の編成が、

第○章→インターミッション○→第△章→インターミッション△と言う編成になる予定なので覚えておいてもらいたい。

では、また次の幕にて、お会いしましょう……。
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