『下らんデスマーチだ。――全部私一人で片づけてしまっても構わんのだろう?』
などと作者がとうとう末期なことを言いだしたので、
あのトチ狂った作者は『今回は獣殿の魔性という甘美な毒を飲まされた挙句放流される哀れな乙女という本インターミッション内で一番の生殺しと獣殿のどSが見られる(?)』と言っていたが、正直、今の作者の発言は当てにならないので、何が起きたかは、君たちがその目で確かめたまえ。
――さあ、今宵の
今日は寧と姜維、司馬仲達に全て任せてあるため休日である。
そこで私はある目的で宮城を散策していた。
――せっかくアレを出したのだ。
楼杏のためだけに使って仕舞うのはもったいない気がしたのと、昨日の夜耳にした話から、風鈴のためにもアレを使おうと考えていた。
さて、どこにいるのか……。
私がそう思っていると、風鈴を見つけた。
(幸運A++は伊達ではなかったようだ)
私はそう思いながら、風鈴に声を掛けた。
「風鈴、今日は空いているかね?」
「へっ?う、うん。あいてるけど……」
首を傾げる風鈴。
「ならば丁度いい。少しばかり付き合って貰いたい。なに、悪いようにはしない」
「???」
疑問符を浮かべる風鈴。
「私の屋敷に来てもらえれば分かる。――来たまえ」
私がそう言って歩き出すと、後を風鈴がついてくる気配がしたので、彼女が付いてこれるようにペースを落として屋敷を目指した……。
――*――*――*――
「えっと……これは?」
眼鏡を外した風鈴は
――そう、私はさながら眼鏡屋のような設備を整えた部屋にて、風鈴の視力検査を行っていた。
私は懇切丁寧に説明する。
「卿の視力にあった眼鏡を作るための検査だ。目の悪さは人それぞれ具合が違う。病の類を除き、ものが見えにくい人は3種類の症状のうち、最低一つ以上の症状が出ている。遠くが見えにくくなる『近視』、見えるものがブレて見える『乱視』、近くの方が見えずらい『遠視』がその3つになる。……大抵は近視と乱視のどちらかか、その二つの混合と言える。専用の眼鏡を作るためには、どの症状がどれくらい出ているのかを知らねばならない。……何か質問はあるかね?」
私が問いかけると、風鈴は恐る恐る口を開いた。
「なんで私のためにこんなことをしてくれるのかな?」
「――卿が数日中に
「……本音は?」
少しばかり警戒の色を見せる風鈴に対し、私はあっけらかんとして答える。
「遠くを見る時、たまに目を細めているのを見てな、もしやと思って楼杏に聞いてみれば案の定卿の眼鏡は度が合っていなかったと言うわけだ。信じるも信じないも傾の勝手だが、私の気まぐれが起こした善意と思ってくれればよい。無論手紙の方を受ける場合には別で依頼報酬を前払いで払う」
「……その依頼を受けない、あるいは風鈴がその手紙を勝手に開けて読んだり別の人に渡したりする可能性もあるんだよ?」
風鈴が窘めるように指摘してきたので、私は口元に笑みを浮かべた。
「渡らなければそれはそれで問題はない。内容は『知っておいた方が良い』程度のモノであるうえ、私の手紙を読める者はほとんどおらんよ」
「……」
「……さて、依頼の話は後にするとして、まずは卿の視力にあった眼鏡を作るために協力したまえ。では、これはどの向きに穴が開いているかね?」
「……上……かな?」
私は機械を弄りながら彼女の視力を検査していった……。
――*――*――*――
「……ふむ、これでフレームの微調整も完了したはずだ。もう一度かけるぞ」
「~~~~////!!」
測定した視力、そこを元にしたレンズを嵌めた仮眼鏡を作成。
その仮眼鏡の見え具合と本人の意見から調整してえられたデータを元にレンズを作成。
今は風鈴が今まで使っていた眼鏡のレンズを作成したモノと入れ替え、フレームの調整をしていた。
彼女は背もたれのない丸椅子に座っており、私は彼女に合わせてかがんで眼鏡をかけている。
……フレームの調節のために私が風鈴に眼鏡を掛けさせて、具合をみるあたりから彼女の顔がゆでだこのようになっていた。
急な変化に違和感を覚えた私はフレームの調整の間に彼女の今まで使っていたレンズと今のレンズを見比べてみた。
(……あの視力でこのレンズなら周囲をはっきり見えなくて当然か)
軽度の近視をカバーできる程度のレンズに重度の近視と軽度の乱視の視力を普通な身に見えるようにできる力はない。
「……ふむ、これで大丈夫だろう。……かけるぞ」
私はそういって彼女に眼鏡を掛けてやり、耳にかかる部分などを触って確認する。
それでもポ~っとしたまま私を赤い顔して風鈴は見たままだったので、私は彼女の目の前で手を振る。
「……はっ!!あ、あわわわわ!!!」
風鈴が驚きのままのけぞってしまい、そのまま倒れそうになったので、慌てて私は彼女の背に手を回して支える。
「~~~~!?~~~~~!!~~――……きゅう……」
本人のキャパシティーを振り切る情報量のせいで目を回し、そのまま気絶してしまったようだ。
「……旦那様?流石に気絶なさった方を襲うというのは、流石に看過できないのですが……」
底冷えするような気配と共に現れたのは美花。
「……流石にそれはせん。というか、卿はいつからいた」
「旦那様が風鈴様のうぶな乙女心を弄び始めた頃ですわ♪」
「…………」
気配遮断か圏境スキルを体得してしまったらしい美花に戦慄と呆れの入り混じった反応をした。
「……あ、宮城の寧さまが小間使いを使って言伝をしてきました。どうやら趙忠様がお呼びのようです」
「――それを先に言うべき出はないかね?」
私があきれた態度を見せると、彼女は頭を下げた。
「旦那様の情事を邪魔してはいけないと思い、言伝を伝えるのを後回しにした私をお許しください」
「……情事云々は聞かなかったことにして……。無論だ。良く働いている卿を私は許そう。罰などはなしだ」
私がそう言うと、彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「今の卿にとっても、素の卿にとってもお仕置きはただのご褒美だからな。――放置こそが一番の薬だ」
「……」
風鈴を傍にあったソファーに寝かせ、この世の終わりに直面したような顔面蒼白を見せる美花の肩に手を乗せた。
「――だが私も鬼ではない。名誉挽回の機会を与えよう。――風鈴の面倒を見ておいてくれ、適切な対処ならば明日お仕置きか朝一番の突撃の選択権を与える」
「―ー!!」
私はそう言って、部屋を後にした……。
――*――*――*――
「遅い!!」
後宮に着いた途端に空丹の不満を聞くことに。
以前訪れた某魔法学校の談話室的な部屋で、部屋には私、空丹、黄、白湯、そして実体化したルーラ―がいる。
「……休暇くらいゆっくりさせてもらっても罰は当たらんと思うのだがね」
「ならどうして朝宮城内をうろついてたの!?黄以外の十常侍たちも見かけたって言ってたわよ!!」
「ああ。あれは風鈴……盧子幹を探していたのだ。少し用事があったのだ。彼女の屋敷の位置を教えてもらっていなかったからな」
「そ、そうなの」
ちゃんとした理由があった場合を想定していなかったのか、空丹は動揺を見せた。
「さて、卿が私を呼んだ理由は何かね?」
「端姫だけライニと一緒に外に出られるなんてずるいもん!!私たちも外に出たいもん!!」
「――白湯様も空丹様も、このように申しておりますので……」
私の問いかけに即座に答える白湯と、少し申し訳なさそうな黄。
私はとりあえず黄に蔑みの目線を送っておく。
「はぁ、はぁ……。もっとお願いします!!」
(しまった。つい反射的にやってしまった)
ルーラ―がジト目で私を見てくる。
黄が頬を上気させたのを見て後悔した後、私は続ける。
「……良かろう。ただし、私の言うことが聞けぬならば、すぐに帰らせる。同行者として黄もついてくること、ルーラ―も実体化して二人のお目付け役をすること。あと最後に、外で皇帝や皇族云々で何か言われても、無視すること。それが条件だ。……守れるかね?」
私が問いかけると、2人は頷く。
「……それはいいけど、身代わりってどうするの?」
首を傾げる白湯。
「……」
私が無言のまま指を弾くと、4人が姿を現した。
「またですか!?最近私の扱い雑じゃあありませんか、ハイドリヒ卿」
「えっと、私演技そこまで上手じゃないんですけど……」
「あの十常侍ってやつの誰か、こっそり消してもいいですか?」
「……!?……これは、
魔女、淫婦、狂獣、太陽の御子は、それぞれが勝手なことを言っている。
「バビロンは黄……趙忠の代役、マレウスは劉宏、シュライバーは劉協だ。イザークは私と共に彼女らの護衛だ。あとシュライバー、それは
「「「Jawohl」」」
「父様、私が護衛などできぬ気がしますが……」
3人の了解の返事と、一人の困惑の回答が返ってきた。
「卿の周囲およそ5ヤード(4.5m)ほどが歪曲して卿の支配下になっているらしい。ゆえに城の髑髏たちを卿の周りに召喚させるなどができる。最悪城に3人を転送してくれ」
「Jawohl」
こうして、私はとうとう皇族2人を外に連れ出すことになった。
――*――*――*――
―――――
【備考】
城に戻るまでの間、白湯&空丹&黄&ルーラ―の服装は獣殿が暇つぶしで作ったこの国の一般人風の服になります。
どこで着替えたか?
想像にお任せいたします。
あとイザークはTシャツに短パン、水色のパーカーに、白靴下、市販の靴がデフォです。
おまけで誰か支援絵プリーズ
―――――
(休日出勤からの、振替休日にならんかな……)
皇族2人とそのお目付け役(役目を果たしそうにない)、自身の魂がない間に生まれていた息子と言う何ともカオスなパーティーと共に、私は街に繰り出した。
空丹と白湯は始めてみる景色に新鮮さを感じるのか、目を輝かせて周囲を見ている。
「これは契絆支様!!」
誰かがそう叫ぶと、他の人も私に気付く。
「おおっ!!契絆支様!」
「けものさまだ~」
「獣様!!先日はどうもです!」
「「キャ~ッ!!契絆支様!!」」
積極的に近寄ってこようとはしないが、少なくとも好意的な反応を見せている。
「さて、軽く肉まんをつまんでから、どこかの料理屋に行くとするか。興味があるところは多少ならよってもいいが、食事前に寄りすぎると、食後はよらんから二人で良く考えてよる場所を選ぶといい」
私がそう言うと、2人はあれこれ相談し始めた……。
――*――*――*――
「……何故ここにしたのだろうか?」
「何があったんでしょうか?」
「一番自分たちとは縁がなかったからでは……?」
「それが一番近いかと」
近くにあった店で肉まんを買い食いした後、訪れたのは何と鍛冶屋。
その選択肢に私とルーラーは疑問符を浮かべ、黄とイザークが仮説を浮かべる。
大人(?)たちが首を傾げ、子供たちが商品などを見ていると、店の奥からハゲの大男が出てきた。
「おう、契絆支様じゃねえか!!今日は何しに来たんだ?執金吾旗下の武器の整備は来週って聞いてたが、予定がが変わったのか?」
その男は豪快な笑顔を浮かべて問いかけてきた。
(いつ見ても、ハゲルにしか見えんな。声も全く同じだし)
「波厳、今日は冷やかしだ」
「こんな別嬪さんたくさん連れて冷やかしかよ!!」
眉をひそめてツッコミを入れるハゲ……波厳。
「半分は冗談だ。――少しばかり世間に疎い少女二人がこの店に興味を持ったからな。出来れば仕事場も見せてやってはくれないか?」
私がそう言うと、彼は再び破顔した。
「なんだ、それならそうと言えばいいだろうによ。……よし、譲ちゃんたち。仕事場を見せてやるぞ」
「あ、出来れば私も見せて頂けませんか?」
「私もご一緒させてください。お二人だけだと、危ないものに触ってしまうかもしれませんので」
イザークと黄も同行の許可を求めた。
「4人くらいならいいぜ。4人が入るとちと手狭になるかもしれねえ部屋があるけどな」
ハゲル……波厳は快く承諾してくれた。
店のカウンターの一角を持ちあげて4人を入れた破厳は4人と共に、店の奥へと入っていった……。
「「…………」」
なぜだろうか、気まずい。
私は商品をとりあえず見てみることにした。
鍋に包丁、鋏やのこぎり、カンナやノミ、鍬や鎌など、日常に使う道具から、その手の職業の人間が使いそうな道具まである。
無論、武器の類もあるが、それは少ない。
その理由は意外と簡単だ。
何度か通っているうちにわかったのだが、波厳は基本武器はオーダーメイドしか作ろうとしない。
既製品があっても、買うときに何度も使い手に合わせて調整するため、数日かかるらしい。
『命預ける武器を作ってんだ。それなりの責任がオレたち職人にはあるだろう?それにこんなご時世だ。少しでも生き残れるようにした方が良いだろう?あと武器のせいで死んだなんて思われたらたまったもんじゃないからな』
興味本位で理由を訪ねたところ、実に真面目な回答を返してきた時は心底驚いた。
そんな性格が作品にも表れているのか、どれも一級品でまっすぐな、でもどこか頑固さをかんじさせるものばかりだ。
ふとルーラ―の動きが気になり、そっとルーラーを見てみると、彼女も無言で商品などを見ている。
それとなくこちらを見て何かリアクションをしないか伺っている。
「……実に平和だな。聖杯戦争が起きているとは思えないくらいにな」
私が彼女の方へ振り向いた後、そう言うと彼女もこちらを向いた。
「ええ。まったくもって同意します」
「……いるのだろう?外史の管理者よ」
私が部屋の角に目線を向けてそう言うと、その空間が揺らぐ。
揺らぎが収まるとそこには漢女たちが佇んでいた。
「相変わらずぶっ飛んだ探知能力をしておるのう」
「それで?明確に敵対するサーヴァントについての情報はあるかね?」
もじもじする漢女の言葉を無視しつつ、尋ねる。
「一応特徴だけ言っておくわ。1人目は貴方よりもでかい巌のような男」
「ワシらみたいに服装が露出過多だったのう。あと、斧のような剣を持っておったぞ」
(……その特徴なら、おそらく……)
私はすぐにその情報を頭の片隅に残して次の人物について、耳を傾けた。。
「2人目は金色の鎧を纏っている白い髪の男よ」
(……これが本当なら、あと2体と他のサーヴァントの立ち位置次第で詰むな)
漢女たちの言う一人目がギリシャ神話の大英雄で、かつ2人目を同時に相手取ってしまった場合は流石に他に力を割く余裕はない。
これで クー・フーリンと百の貌のハサンがマスターの首を狙った場合、守り切れるかといわれたら、かなり厳しいだろう。
――マスターの心配をする必要がなく、時間稼ぎだけならば、先の2人と先日の2人相手でも問題はないが……。
「3人目は不思議なサーヴァントだったのう。南瓜を頭にかぶって外套を纏っておったぞ」
(……断定できんのが歯がゆいな。だがハロウィンに纏わるサーヴァントである可能性は非常に高い。――その線で対策などを調べておくか)
「最後は奇妙なサーヴァントね」
「……奇妙と言うのは……?」
恐る恐る問いかけてきたルーラ―。
「狐の半獣でメイド服(?)を着てるのよ。なんでか知らないけど、まったくしゃべらない他3人に比べればまだ話し合いの余地はありそうなんだけど、まったく話がかみ合わないのよね」
「いわゆる、会話のドッジボールというやつかのう」
(……他3人がしゃべらない?……ダメだ、情報が虫食い状態で万全ではない。対策が取れぬし、時間切れだ)
色々疑問がわいたが、奥の方から5人が戻ってくる気配を感じたので、断念する。
「もうそろそろ戻ってくるだろう。引き続き敵陣営への牽制を頼む」
「わかったわん」
「じゃあまた会おうぞ!!」
そう言って2人が消えたのとタッチの差で5人が戻ってきた。
「どうだったかね?」
私が問いかけると2人は幼い子供のようにはしゃぎながら答えてくれた。
「本当に世間知らずなお嬢ちゃんたちだぜまったく。包丁用の刃で危うく手をスパって切りそうになったし、武器を気の扱いも知らないのにそんなほっそい腕で振り回そうとしてたからな」
波厳があきれと心配をないまぜにした様な顔で教えてくれた。
「ではそろそろお暇するとしよう。あと一つ二つ店にによったら、料理店に行くとしよう。邪魔したな、波厳」
「おうよ。また来い。嬢ちゃんたちも元気でな!!」
実にすがすがしい笑顔を見せる波厳に見送られ、私たちは店を後にした。
――*――*――*――
――その後、市場を冷やかし、居住地区にてそこの子供たちと遊ぶなどのイベントがあり、昼食の時間となった。
「け、契絆支様!!」
通っている店に訪れると、入り口にいた店員が慌てて店長を呼びに行き、店長が慌てて出てきたのだ。
「すまぬが奥の席を使わせてもらえるかね?」
「へい!!どうぞ!!」
そう言って店長直々に案内してくれた。
――まあ、いつも通りだが。
採譜を見るまでもないので、他の人に回しておく。
「……」
イザークがなにを注文しようか悩んでいたので私は提案をしてみる。
「担々麺などはどうかね?辛いのが大丈夫ならばそれを薦めるが……」
「……では、そうしましょう」
「私はこの特別定食ってやつにする!!」
「私も!!色々な種類の料理が少しずつ楽しめるのはすごいんだもん」
空丹と白湯の言葉を聞いて私は頷く。
「私は五目炒飯にしますね」
「私のおごりだからと言って遠慮はしなくても良いのだぞ?」
黄の言葉に対して私がそう言うと、彼女は少し嬉しそうにする。
「でしたらこのフカヒレや水餃子、エビチリなどもいいですか?」
「ああ。構わんよ」
「私はチャーシューメン大盛りに春巻きなどを」
最後にルーラーの言葉を確認した私は再度全員に確認する。
「ふむ、卿ら、今言ったそれで構わんかね?」
私の問いかけに頷いたので、店員に声を掛けた……。
――*――*――*――
「お待たせしやした、まず特別定食二つに、春巻き、五目炒飯、担々麺、エビチリです」
「こちらが、水餃子、チャーシューメン大盛り、チャーシューメンチャーシューマシマシ、フカヒレでございます」
それぞれの所に注文した商品が置かれていく。
ちなみに、特別定食と言うのは、俗に言うお子様ランチである。
小食な人向けとして、この店にある程度通ったころ、店長に提案したメニューだ。
ちなみに、この定食の亜種で、特別盛り定食というものが用意されたのだが、これは特別定食の1.5倍ほどの量のメニューで、平均より少し大目に食べる人が注文している。
「いただきます」
私が手を合わせてそう言うと、空丹、白湯、黄が不思議そうな顔をした。
「えっと、今のは一体……?」
黄が問いかけると、私の代わりにイザークが答えた。
「これは食材となった命を『いただく』ことに対する感謝の言葉です。同時に人は植物、動物の命を頂いて、生きていることを再確認する儀式でもあります。――いただきます」
「――生きる糧となった命に感謝を。いただきます」
聖女も変わった祈りをささげると、3人も私たちに倣った。
「「「いただきます」」」
――*――*――*――
――昼食後
「それで、最後は本屋か」
それぞれに本を3冊程度変えるおこずかいを持たせておいた。
私は周囲の気配を確認しつつ、本をいくつか立ち読みすることにした。
他のメンバーはそれぞれ思い思いのコーナーに行っている。
(……ふむ、この程度か)
目についた本の内容は粗方頭に入れてしまったのでその代わりにいくつか本を下ろすことにした。
「済まぬが、店長を呼んでくれぬか?」
近くにいた店員に声を掛けると慌てて呼びに行ってくれた。
少しすると、腰の曲がった老人が現れた。
「おお、これはこれは契絆支様、このような古ぼけた書店に一体何用ですかな?」
「なに、ほんの少し本を卸そうと思ってな。この本だ」
私はそう言って、かつて絵本作家だった知人の絵本の翻訳したものを出す。
「……これは?」
「これは絵本と言ってな。字があまり読めぬ者が字を覚える練習として使えるものだ。……読んでみてくれぬか?」
私がそう言って渡すと、本を読み始めた。
だが分量そのものはそこまで多くなかったのですぐに終わったようだ。
「これは素晴らしい。内容は子供向けですが、字を覚えたばかりの人が読むには丁度いい塩梅の作品と言えるでしょう。これを卸してくださるのですか?」
「然り。月に数冊程度で良ければ、ほぼ毎月卸せるし、別の話の絵本も多少なら用意できるだろう。どうかね?」
「では月4冊ほどで、これくらいでいかがでしょうか」
懐からそろばんを取りだして、珠をいくつか弾いて行く。
「上2桁はいらん」
「!?」
驚く老人を無視して、私は上2つの桁の珠を元の位置に戻した。
「しかし……よろしいのですか?」
困惑の色を隠し切れない老人に対し、私は口元を吊り上げて答える。
「代わりにその分安くしておいてくれ。先ほどの値段に卿らの仲介費を付けてしまったら、教育熱心な親だろうと高すぎて手を付けんだろうからな」
私がそう言うと、老人は頭を下げた。
「……分かりました。貴方の本は必ずや売り切って見せましょう」
「無理はするな。あとあまり気味になったら、各区画の詰め所にいる責任者に私への書簡を渡してくれ。書簡を確認次第、再び訪れて再度調整する」
などと話をしていると、他のメンバーが戻ってきた。
それぞれが何等かの本を買っていた。
「では、私は失礼する」
私がそう言うと、老人は深く頭を下げたまま、私たちを送りだした。
――*――*――*――
空丹、白湯、黄、ジャンヌの4人を送り届けて、シュライバー、マレウス、バビロンを回収した私は屋敷に戻った。
戻ってみると、美花から風鈴は既に自分の屋敷に戻ったことを伝えられた。
「ふむ、なるほどな」
ソファーに背を預け、私に身体を預ける美花から風鈴への対処を確認した私は頭を撫でたあと、そのホワイトプリムを外した。
「あっ……」
「今聞いた限り、卿の対応は文句の付けどころがなかった。故に卿に褒美を与えよう。――さて、寧が戻ってくるまで、お仕置きされるのがいいか、たっぷりと愛される方が良いか、答えるといい。どちらにせよ、今宵は寝かせんよ」
「……私は――」
蕩けた顔で答えた彼女に対し、私はその願いを叶えることにした……。
蛇足だが、私はちゃんと約束を果たした。
代償として、翌朝、美花が終始赤面だった理由を知っている寧に、終始ジト目で見られたが。
いかがだっただろうか。
感想、評価、誤字脱字の報告をあのトチ狂った作者は餓えた狼さながらに待っているよ。
次の幕では、意思疎通が可能なまでに回復した作者であることを祈りたまえ。
――では、また本編でお会いしましょう……。