恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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いやはや、今回はなかなかどうして難産だった。

(裏で獣殿がマスターのif版黄金の獣と聖杯戦争の設定やプロット、序章と一章考えてたなんて口が裂けても言えない)

まずはじめに、期間が開いてしまって申し訳ない。

デスマーチも先日終わったので、しばらくは精神的にゆとりがある。

なので、この間に第二章だけでも終わらせようと思う(なお、できるとry)。


次に、この話では、Dies irae,Fateの両作を知っている方には首を傾げる部分がそれなりにあるかもしれぬが、そこら辺は後がきにて確認してほしい。

最後に無反応な読者が多いので、読んでいるのか少しばかり不安になるが……。

では、そろそろ始めるとしよう。

――では皆さま、今宵も私の歌劇をご観覧あれ……!!


第20話 動きだした歯車

「では、日々の糧に感謝して、頂くとしよう」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

いつも通りの朝食風景。

 

「……あ。今日は黒円卓の者以外は外出を控えるように。特に夜間は卿らの部屋がある東の館から出ぬように」

 

私がそう言うと、分かっている一同は手を止めて私を見た。

 

「……始まるのね」

 

「ああ。……行商に扮した暗殺者集団が洛陽入りしたからな。あと胡散臭さ満載の漢女が今朝方屋敷を訪れたので、おそらく横槍が入るのだろう。……それがなければ戦える者にも手伝いをしてもらいたかったのだがね」

 

詠の言葉に私は答えた後、一同を見渡す。

 

「イザーク、マキナ、聖餐杯、ルーラ―が防衛に当たる上、防衛設備も万全とは言えんが整えてある。……特に卿らの使っている東の館は一番厳重ゆえ、夜間は屋敷から出ぬように」

 

私の言葉に関係者は頷く。

 

「……ねえ、端姫。何が始まるの?」

 

事情を知らない白湯が隣にいた端姫に問いかけた。

 

「少し物騒な、洛陽のお掃除です」

 

彼女は、微笑みながら、そう答えた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……そろそろいいだろう」

 

夜の帳に包まれた街のある一角。

 

そこに息をひそめていた黒装束の男の一言に、同じ服装をした他の男たちも動きだす。

 

「……では、劉宏、劉協の暗殺を決行する」

 

男がそう言って、扉を開けると、他の男たちも続く。

 

外に出た途端、男たちは散開した……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

私は寧を侍らせ、チェス盤を俯瞰するがごとく、洛陽上空に召喚した黒円卓第一位の席に座って、下界を眺めた。

 

「……では、始めよう」

 

了解した、我が主よ ( ヤヴォール・マインヘル )

 

寧がそう言って、詠唱を始めた。

 

「 Quell->{EX[lic]->{class::SWASTIKA;} !!」

 

彼女の詠唱が始まるとともに、わずかの間に変化が起きた。

 

――眼下の洛陽に鉤十字の文様が現れ、同時に我が城が重なるように現れ、一瞬にして鉤十字の文様と共に、周囲に溶けるように消えたのだ。

 

そして、それを合図にするように、街の各地に火の手が上がり始めた。

 

「……さて、客も丁度来たようだ。卿は引き続き術を維持してくれ」

 

私の言葉に頷いて反応する寧。

 

私はそのまま、上空から飛び降りた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……」

 

「……やはり、歓迎の準備は万端のようですね」

 

洛陽に入った2人の男は、感じる違和感と自分たちを民家の上などから見下ろしていた者たちをみて、苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「その通りだ、外史の管理者。ハイドリヒ卿を出し抜こうなど愚かな考えを持った自分を呪うといい」

 

紫煙をくゆらせる、紅い髪と左半身を縦に走る酷い火傷の跡が特徴の女性がそう言うと、白い髪の男が一番槍は自分だといわんばかりに突撃した。

 

「――ッ!セイバー!!」

 

眼鏡をかけた男の言葉と共に、()()()()()()()()()()()()()()が姿を現した。

 

「……」

 

ベイの一撃を容易く止め、反撃の一撃を加える。

 

「……へえ、やるじゃねえか」

 

男の一撃を回避したベイは口元を吊り上げる。

 

「――聖槍十三騎士団黒円卓第四位、ヴィルヘルム・エーレンブルグ=カズィクル・ベイだ。テメェも名乗れよ、戦の作法も知らねえか」

 

ベイの言葉に、男が答える。

 

「我が名は、()()()()()()。貴様の言葉を用いるなら、貴様は戦の作法をわきまえていなかったと言えるのだが……?」

 

「ハッ、そんな奴ら殺すことのどこが戦だ。そう言うのは劣等の殺処分っていうんだよ。分かったか」

 

「……そうか。ならば――」

 

アルケイデスは一瞬にしてベイの懐に入りこむ。

 

「――私もわざわざ名乗ってやるまでもなかったな」

 

アルケイデスの薙ぎ払いで、ベイは吹き飛ばされる。

 

「……ほう」

 

興味深そうにアルケイデスを見るザミエル。

 

「よそ見してていいのか?」

 

彼女の横に現れた左慈。

 

「あらん、左慈ちゃんの相手はこ・の・わ・た・しよ!!」

 

左慈の蹴りを同じく蹴りで止める筋肉ダルマ。

 

「貂蝉、卑弥呼。管理者(そっち)管理者(お前たち)で相手しろ。こちらはサーヴァントを相手する」

 

「分かったわよん」

 

「うむ、了解した」

 

貂蝉は親指を立てつつ返事し、今まで沈黙を保ってきた卑弥呼は唐突に動きだした。

 

「おい、馬鹿娘にレオンハルト。貴様らは雑魚を始末しろ。私は残りの大物をハイドリヒ卿が来るまで相手する」

 

「了解しました、少佐」

 

「分かりました」

 

ザミエルの言葉に反応して動きだすヴァルキュリアとレオンハルト。

 

「ふむ、雑魚扱いされるのは異議申し立てしたいところだが、それどころではななそうだな」

 

「オレも雑魚扱いに異議あることには同感だぜ」

 

メイド服の狐っ娘の言葉に、カボチャ頭のサーヴァントが同意する。

 

そしてカボチャ頭のサーヴァントが浮かび上がり、近くの民家の上に降り立つ。

 

「――お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ(トリック・オア・トリート)!」

 

カボチャ頭のサーヴァントの言葉と共に、彼のマントから大量のモンスターが出現する。

 

お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ(トリック・オア・トリート)?お菓子なんてありませんよ!ここには!!」

 

ヴァルキュリアはそういいながら、モンスターの群れへ突撃を仕掛けた。

 

「さて、こちらの相手もしてもらおうか」

 

狐っ娘が満面の笑みで懐からナイフを取り出して、そう言った。

 

「貴女のようなメイド……に負けるつもりはない。ベイみたいに手を抜いて相手しないから」

 

レオンハルトがそう言って緋々色金(シャルラッハロート)を構えると、彼女は複雑そうな顔をする。

 

「ふむ、それはあまりうれしくないが、手加減なしで戦えてうれしいと思う自分もいるおかげで複雑だな」

 

「そう。私には関係ないけどね!!」

 

レオンハルトもそう言って狐っ娘に突撃を仕掛けた。

 

「……それで、貴様は何時かかってくるつもりだ?」

 

ザミエルが黄金の鎧を纏った男に問いかけると、彼は返事をする。

 

「命令されていないからな。必要以上のことはしない」

 

「何をしている、ランサー!!さっさとそいつを始末して他の奴らも始末しろ!!」

 

「……と言うことだ。恨むのは構わない」

 

マスターの命令を聞いたランサーは、槍を構えてそう言った。

 

「いいだろう。――生半可な攻撃で私を倒せると思うな、施しの英雄!」

 

ザミエルはそう言って、佩いていた剣を抜剣した。

 

ランサーはひと息の間にザミエルとの間合いを詰め、得物の槍を振り下ろした。

 

対するザミエルは剣を斜めに構えて受け流す。

 

それを見たランサーはそのまま横薙ぎを繰り出す。

 

ザミエルはそれを見て後方に大きく跳躍したと同時に、ランサーの周囲にパンツァ―ファウストを召喚した。

 

「Feuer!」

 

唐突の砲撃を避けきれず、ランサーはその砲撃を喰らった。

 

「……やはり効かんか。何だその出鱈目な宝具は」

 

煙の中から平然と出てきたランサーに対し、目を細めて問いかける。

 

「それらの重火器を何食わぬ顔で大量召喚して使いこなすお前にはいわれたくない。サーヴァントではないが、人という枠組みに当て嵌めるにはいささか外れ過ぎている者よ」

 

「……私はエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ=ザミエル・ツェンタウァだ。聖槍十三騎士団黒円卓第九位にして、大隊長の一人、赤騎士(ルベド)だ」

 

彼女はそう言うと、剣を捨てた。

 

「……?」

 

ランサーが首を傾げると、彼女がランサーを見据える。

 

「貴様に敬意を評し、私の()の全力を見せよう。ジークハイル・ヴィクトーリア!!」

 

彼女はそう言った後、詠唱を始めた。

 

Echter als er schwür keiner Eide;(彼ほど真実に誓いを守った者はなく)

 

treuer als er hielt keiner Verträge;(彼ほど誠実に契約を守った者もなく)

 

lautrer als er liebte kein andrer:(彼ほど純粋に人を愛した者はいない)

 

und doch, alle Eide, alle Verträge,(だが彼ほど総べての誓いと総べての契約) die treueste Liebe trog keiner er(総べての愛を裏切った者もまたいない)

 

Wißt inr, wie das ward(汝ら それが理解できるか)?

 

Das Feuer, das mich verbrennt, (我を焦がすこの炎が総べての穢れと)rein'ge vom Fluche den Ring!(総べての不浄を祓い清める)

 

Ihr in der Flut löset auf, (祓いを及ぼし穢れを流し)und lauter bewahrt das lichte Gold,(熔かし解放して尊きものへ)das euch zum Unheil geraubt.(至高の黄金として輝かせよう)

 

Denn der Götter Ende dämmert nun auf.(すでに神々の黄昏は始まったゆえに)

 

So - werf' ich den Brand (我はこの荘厳なるヴァルハラを)in Walhalls prangende Burg.(燃やし尽くす者となる)

 

創造(Briah―)

 

焦熱世界(Muspellzheimr)激痛の剣(Lævateinn)

 

詠唱の終了と共に、ザミエルとランサーの周囲が灼熱の世界に塗り替わる。

 

「ハイドリヒ卿は貴様との対戦を心待ちにしている。……だが、今の私を倒せぬようでは、ハイドリヒ卿の手を煩わせる価値はない。貴様が真の英雄と言うならば、私を倒して見せろ!!」

 

「……良いだろう。お前を倒し、他の者たちも倒す」

 

ランサーは灼熱の中、冷静さを失うことなく答えた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

現場に到着すると、既に戦闘は始まっていた。

 

漢女'sと仙人コンビ。

 

形成位階のベイとおそらくヘラクレスと思われる気配。

 

ヴァルキュリアとカボチャ頭のサーヴァント。

 

レオンハルトと、メイド姿の狐娘。

 

ザミエルとランサー。

 

最初の二組はかなり離れたところで戦っている。

 

最後の組はザミエルの創造の中にいるらしく、ここからは見えぬが、すぐそばで戦っているようだ。

 

全体的には押していると言えるだろう。

 

客観的に見ていると、結界が砕ける音と共に、ザミエルとランサーが出てきた。

 

ザミエルはあちこちに傷を受け、肩で息をしている。

 

カルナも少なからずダメージを受けているらしく、頬などに火傷の痕がある。

 

「申し訳ありません、ハイドリヒ卿。このような醜態をさらしてしまい……」

 

「ザミエル。卿は見事善戦した。その結果の姿を醜態と私は思わん。良くやってくれたな。あとは私がやる」

 

申し訳なさそうなザミエルを私はねぎらった。

 

「……ということだ、ランサー。選手交代だ。――なに、私を倒せば爪牙は皆倒れる。卿に取っても悪い話ではないと思うが?」

 

私がそう言うが、ランサーはザミエルの方へ向いたまま得物を構える。

 

「まだ命令は変更されたわけではない。悪いがその赤騎士は始末させて――」

 

答えかけたランサーは何かに気付いたようなそぶりを見せ、霊体化した。

 

「……逃げられたか」

 

「申し訳ありません、ハイドリヒ卿。目標をロストしました」

 

「こちらも同じく」

 

レオンハルトとヴァルキュリアがそう言って、こちらにやってきた。

 

「左慈ちゃんたちに少しお仕置きしたら逃げちゃったわん」

 

「まあ、あ奴らはワシらと同じく実質不死身じゃからの、おまけに力もおおよそ拮抗している。他の戦局が不利になったら撤退するのは妥当な判断じゃろうて」

 

筋肉ダルマ2名がそういいながらやってきた。

 

それと同時に軍服を血まみれにしたベイも戻ってきた。

 

いつも付けているサングラスがなく、服もあちこち傷ついているところから、相当な激戦だったのだろう。

 

「すみません、ハイドリヒ卿。取り逃しました」

 

申し訳なさそうに謝罪するベイ。

 

「構わん。計画に支障が出ぬように相手するだけだったからな。卿らは屋敷に戻っていろ。この火災の後始末をしておく」

 

「「「「了解した、我が主よ ( ヤヴォール・マインヘル )」」」」

 

「「わかったわん(ぞ)」」

 

爪牙と漢女はそう言って、屋敷の方へと戻っていった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「一体どうなっている!?」

 

宮城の回廊にて、黒装束の男は悪態をつく。

 

気が付いたら短剣で首を貫かれていく同胞を見ていればそのような感想を抱くのも無理はないだろう。

 

「くそっ、お前たち、足を止め――!!」

 

命令を口にしていると、急に声が出なくなる。

 

それと同時に喉が焼けるような痛みに襲われ、口から溢れだした。

 

『殺すものは殺される覚悟を持っているはず。その覚悟もない者が殺しに手を染めるのは、看過できませんな。……理不尽でしょうが、悪く思わないでいただきたいものですな』

 

どこからともなく響いた言葉と共に、髑髏の仮面を付けた黒ずくめの人物が現れた。

 

「…………」

 

おそらく男は『化け物め』とでも言おうとしたのだろうが、ヒューヒューと息が漏れる音がしただけだった。

 

「……」

 

アサシンは無言で男の短剣を抜き、他の暗殺者たちの短剣も抜いて回収した。

 

静まり返った回廊に、一人の少女が現れた。

 

「ずいぶんとたくさんきたのね」

 

「ええ」

 

その少女は、本物ならしないような妖艶な笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、ちゃっちゃと後始末しないとね~。ほいっと」

 

少女の影がまるで生きているように動き、影の上にあったしたいなどは綺麗に影の中に沈みこんでいった……。

 

「後は今の死体を適当にこねくり回してっと。……こんなものかしら」

 

彼女の言葉と共に、彼女の影から出てきたのは彼女似の、少し幼い少女の死体だった。

 

「あとはシュライバーを元に戻しておかないとね。……じゃあ、私はこれで失礼するわ」

 

少女はそう言って、そのまま去っていった。

 

「……劉宏(あの姿)のままであんなことを言われると、心臓に悪いですな。アーチャー殿に注意してもらうように頼みますか……」

 

ハサンはそう言って、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「これでこの区画の火は消し止められたな」

 

「ええ。問題ないかと思います」

 

火消しに回っていた当直の兵の隊長の確認を取った私は息を吐く。

 

「……現時点で上がっている限り、死者0、重軽症者145名、火元47戸を含めた721戸の延焼か。今のところ、死者の報告が上がっていないが、はてさて……」

 

私は比較的真面目に思いを口にすると、隊長はそれに反応する。

 

「火元のほとんどが空き家で、避難誘導と鎮火を迅速に行えたので、死者はおそらく皆無。いるとしても両手で数えられる程度だと思います。……ハイドリヒ卿以前の体制ではここまで被害を押さえることは出来なかったでしょう」

 

兵隊長の言葉に私は頷きつつも、指摘を入れる。

 

「だが、これで私の立ち位置は危うくなる。十常侍や私を快く思わぬ者たちがこぞって私を弾劾するだろう。……それだけ恨みを買ってきたからな」

 

「……」

 

「契絆支様!!」

 

背後からの声に振り向くと、皇帝直属の伝令が息を切らせていた。

 

「今回の一件の報告はまだまとまっていない。まとまり次第報告すると伝えてくれ」

 

「違います!理由は存じ上げませぬが、皇帝はひどくお怒りでした!!火急の用とのことです。お早く宮城にて、陛下へ謁見を!!」

 

私はそれを聞いた後、静かに頷いた。

 

「……分かった。卿は他の区画の担当の者に、残りの報告は屋敷にいる李幽遠にまとめて渡すように伝達しておけ。私は宮城に向かう」

 

私はそう言って、宮城に向かった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

以前と変わらぬ謁見の間。

 

そこには十常侍や九卿、三省、三公が勢ぞろいしていた。

 

「……その男を捕らえなさい」

 

謁見の間に来て、皇帝が開口一番に言った言葉は、私を捕縛する命令だった。

 

しかし執金吾である私の旗下であるため、兵士たちは戸惑いを隠せないようだ。

 

「……卿ら、皇帝の命令だ。私を取り押さえるといい」

 

私はそう言って胡坐をかいた。

 

兵士たちは私を取り押さえ、縄を打った。

 

「……理由はなにかね?」

 

私が問いかけると、彼女は怒りに拳を振るわせながら答える。

 

「此度の騒ぎに乗じ、賊が宮城内に入りこんだ。それだけではない。……私の妹である劉協が賊によって殺された!!」

 

彼女は涙を流して続ける。

 

「おそらく賊に見つかり、追い付かれた劉協は抵抗したのだろう。……城の兵が見つけた時には既に服は乱れ、息絶えていたという。……貴方が完全に悪いわけではないけれど、少なくとも責任はあると思うの」

 

途中から冷静さを取り戻したのか、涙目ながら、言いきった。

 

「……否定は出来ん。罰は甘んじて受けよう」

 

私がそう言うと、途端に十常侍を中心に文官たちが騒ぎ立てる。

 

「皇族の御身を守れぬ執金吾などただの案山子だ、そんな奴は処刑してしまいましょう!!」

 

「私腹を肥やし、女を囲い、酒に溺れていたそのような男など、皇帝契絆支に相応しくありませぬ、皇帝契絆支の任を解くべきです!」

 

「全ての官職を剥奪し、司隷から放逐するべきです!!」

 

言いたい放題言っていると、ある人物が口を開いた。

 

「――お静まりなさい!!」

 

老成した男のその一言により、謁見の間は水を打ったような静けさに包まれた。

 

「全ては陛下が御決断なさること。我々はその御決断に従うだけです。求められてもいないのに、我々から意見することは、臣下としての分を超えています。あくまでも、我らは陛下の臣に過ぎぬのですから……」

 

司馬建公はそう言った後、皇帝に頭を垂れた。

 

「陛下の決定を妨げてしまい、誠に申し訳ありません」

 

「構いません。貴方がいなければ、静まらなかったかもしれませんからね」

 

皇帝はそう言った後、こちらに向きなおった。

 

「罰を言い渡します。黄金の獣の執金吾の任を解き、3年間投獄します。本来ならば打ち首でもおかしくないのですが、貴方には返し切れぬ恩がありますので……。執金吾の後任は李幽遠にします。連れていきなさい」

 

私は大人しく立ちあがり、兵に誘導されて地下牢に向かった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……」

 

黄金の獣が兵士に連れていかれ、陛下が去った後、流れ解散のような状態になったのだが……。

 

「今日の陛下はどこかいつもと違わなかったか?」

 

「そうだな」

 

「……そうか?」

 

皇帝の雰囲気に違和感を持った者がそれなりにいたようだ。

 

「管輅、やはり……」

 

『ああ、君は正しい。彼女は本物ではない』

 

私の言いかけた言葉に、影のような姿の管輅が私の傍に現れて答えた。

 

しかし、私と管輅の会話に誰も気付かない。

 

「これも、貴方の台本なのか?」

 

『然り。あとは劉宏を君が放伐したまえ』

 

「……以前聞いていた計画と違うが?」

 

私は首を傾げて問いかけると、管輅は笑って答えた。

 

『その方が他の宗室の反応が大きいと思わぬか?あともう一つ理由があるが……まあ、これは直接君に関係はないので、言うまでもない』

 

「……私には所有する兵がいませんが……?」

 

『十常侍の私兵を君の形成位階の力をもって支配すればよいことだ。少なくとも数千程度はいるからな』

 

兵士と言えば、他にも兵がいるが……。

 

「……禁軍、執金吾の兵は?」

 

『禁軍については問題ないと言えよう。すぐに主要な将軍が辞職する上、実質管理していた獣殿が抜けた穴は大きい。彼の部下も獣殿がいないおかげで口だせぬから、命令系統は確実に麻痺する。執金吾の兵も同じくだ。おそらく獣殿以外に従う気のない爪牙たちと李幽遠が衝突し、こちらの放伐までに収まることはないだろう』

 

「なら大丈夫ですね。そろそろ部屋に戻りましょう」

 

私はそう言って、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何ですって?それは本当かしら?」

 

玉座に座る少女は眠たげな眼をした少女の報告に眉をひそめた。

 

「本当ですよ~。劉焉が劉宏様を放伐して、15代目の皇帝を僭称しました」

 

「……禁軍や黄金の獣が黙っているはずないと思うのだけど」

 

「どうやらその数日前に起きた洛陽の火事に乗じて劉協様が暗殺され、その咎で獣さんは執金吾の任を剥奪されて投獄されました。それに反発した何進と皇甫嵩が将軍職を辞任。実質禁軍を指揮していた獣さんの部下も後任の執金吾と衝突していたおかげで完全に後手に回ったようです。どうしますか?」

 

眠たげな眼をした少女の報告に、玉座の少女は口元を吊り上げて、答える。

 

「風、今のうちに軍備を整えるよう、桂花に伝えておきなさい」

 

「分かりました~。それでは失礼します」

 

風と呼ばれた眠たげな眼をした少女が立ち去った後、傍で立ったまま寝ているアホ毛が特徴の女性に声をかけた。

 

「春蘭、起きなさい」

 

「……ハッ。どうかしましたか、華琳様」

 

華琳は微笑んで伝える。

 

「季衣と一緒に兵の調練をしてきなさい」

 

「あ、はい」

 

春蘭はすぐさま玉座の間を後にした。

 

「……もう、漢も終わりね……」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

洛陽のある裏通り。

 

自身の身長まであろうかという黒髪の少女が、ある建物の扉を3回、一定のタイミングで叩く。

 

「……お入りなさい」

 

中から扉が開き、少女はその扉にそっとはいる。

 

「珍しいですね。そちら側から使いを送ってくるのは」

 

少女は警戒心と嫌悪感をにじませながら、相手に問いかける。

 

「ええ、まあ。貴女に依頼をお願いしたかったからです」

 

爬虫類を彷彿させる色白で手足の長い痩躯の男は、口元を吊り上げて答えた。

 

「依頼?情報の取引ではなく?」

 

少女は怪訝そうな顔をする。

 

「そう。ある重要人物を一時的にそちらで保護しておいていただきたいのです。報酬はそれなりのものを依頼主が用意しております。こちらが依頼についての詳細、それでこちらが依頼報酬の目録です」

 

男はそういって、2枚の紙を差し出した。

 

「……」

 

「報酬金は前払い4割、後払い6割で、他の報酬は後払いの時にお渡しするそうです。依頼主は奥の部屋でお待ちです。依頼を受ける気になられましたら、奥の部屋へお通ししましょう」

 

男はそういって、傍にあった書簡の一つに目を通し始めた。

 

「あの、もしかして依頼主って……」

 

「依頼をお受けにならなければ、教えることは出来ません。だだ、お受けしないと後悔するかもしれませんね」

 

男はそういって再び書簡に目を落とした。

 

「……依頼、受けさせていただいてもよろしいですか?」

 

少女の言葉に男は顔をあげた。

 

「ええ。構いませんよ」

 

彼はそういって、奥の部屋につながる扉を叩いた。

 

「依頼を受けて下さるそうですよ」

 

男がそう言うと、扉の鍵が開く音がした。

 

少ししてから、男は少女に入室を促した。

 

「し、失礼します」

 

ぎこちない動きで入ると、そこには一人の人物が待っていた。

 

「依頼を受けてくれて感謝する。卿が問題なければ、早速ここを発とうと思うのだが」

 

そこにいたのは、投獄されていたはずの黄金の獣だった。

 

「あ、はい。……ところで、数日前に投獄されたと聞いていたのですが……」

 

「む?脱獄してきた。劉宏……霊帝の死によって私の皇帝契絆支の任が解かれたのと、あの男に仕えるのは気に入らぬからだ。そのあとの宦官の粛清があったので、その混乱に乗じて脱獄した」

 

とんでもない理由で脱獄していたことに絶句する少女。

 

「……あの、執金吾旗下の人たちは」

 

「すくなくとも、表立って反乱せぬ限り、潰そうとはせんはずだ。私の知る限りあの男は自らの手駒を摩耗させる無駄が嫌いで、人の見る目と、駆け引きの上手さがそれなりにあるようだからな」

 

「……」

 

「さて、そろそろ出立したいのだが……」

 

獣がそう言うと、少女は我に返る。

 

「あ、はい。護衛をしっかり務めさせていただきます!!」

 

「では、東門に荷馬車を用意してある。関や大きな都市の出入り口などでの御者は任せても良いかな?」

 

「はいっ!!」

 

何故か犬耳と尻尾が幻視できるような忠犬っぷりで、反応する少女。

 

「シュピーネ。引き続き任務を任せる。何かあったら寧を通じて私に連絡しろ」

 

了解しました( ヤヴォール )

 

獣は、男にそう指示を下すと、少女と共に、建物を後にした……。

 

 

 




いかがだっただろうか。

感想、評価、誤字脱字報告などをお待ちしている。




ここから言い訳


今話のザミエルVSカルナの結果について。

あれ、ザミエルの創造でカルナ倒せる気が……と思った方、獣殿の制約により、皆弱体化しているので、今のところ無理です。

(正確には、あのチート防具ナシなら余裕で倒せる程度のダメージを与えられていたが、防具の軽減&回復力のせいで削り切れなかった)



ベイは?

夜間補正+class::SWASTIKA;のおかげで結構ボコされたけど、善戦した。



class::SWASTIKA;ってなんぞ?

獣殿が紡ぎ、寧が謳った本作オリジナルの詩魔法。

簡単に言うと、異相空間同士を干渉させあう詩魔法。

ぶっちゃけると、一時的に洛陽全体をグラズヘイムと同化して、建造物を一時的にイザークの管理する髑髏と同じ程度に耐久性の強化したり、操れるようにした。
(火の回りが比較的遅かったのは、これのせい)
おまけで、獣の爪牙の再生力UP



なお、獣殿が少し無理してリミッターぶっ壊す(流出する)か、スワスチカ開いて城を顕現させて、完全な実体を得る(受肉する)かした場合は団員の全力が見られるでしょう。


以上 言い訳(?)終了



――では、また次の幕にてお会いしましょう……。
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