恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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……なかなかシックリ来るモノが書けず、12回ほど書きなおした結果、何とかしっくりくるものが書けたと思う。

……最近新しいことも始めたおかげで、少し忙しいが、頑張ろうと思う。

あと、あとがきにそれなりにだが重要なことを呟いでいるので、確認しておいてもらうと助かる。

では私の話はこの程度で……。

――では皆様、私の歌劇をご覧あれ……!!


第22話 獣と孫家の姫君 その2

「へぇ。どれもおいしそうね」

 

食卓に並ぶ食事の数々を見て、雪蓮はそう言った。

 

「……雪蓮」

 

「ん? どうしたの、ライニ」

 

最後の料理を運んできた私の言葉に対し、きょとんとした顔で首を傾げる雪蓮。

 

「人数が増えている気がするのだが、私の気のせいかね?」

 

霞、雪蓮、周公瑾、明命、周陽、バーサーカーの6人だけだったはずだが、いつの間にか人数が倍に増えていた。

 

「気のせいじゃないわ。だから安心してね」

 

雪蓮は朗らかな笑みを浮かべながら、そう答えた。

 

「ほう。こやつがあの黄金の獣と呼ばれている男か。間近で見るのは初めてじゃな」

 

「やっぱり背が高いですね~。八尺(約184cm)以上はあるんじゃないでしょうか」

 

「綺麗な髪ね。黄金の獣の名はそこから来てるのかしら?」

 

「すごい。全然隙がない」

 

「……」

 

「は、初めまして」

 

6人のそれぞれの反応に、私は目を細めた後、孫仲謀の挨拶に会釈で返す。

 

「みんな屋敷に居たみたいでね。食べに行こうとしてこのおいしいそうな匂いに気が付いて、こっち来たんだって」

 

「……追加を作ってくる」

 

私がそう言って厨房に踵を返そうとすると、誰かが声をあげた。

 

「あれ? (パオ)雷火(ライカ)は?」

 

「あやつらならまだ部屋に引きこもっておるじゃろう。どれ、儂が呼んでこよう」

 

「ライニ、追加するならさらに2人分、追加でお願いね!」

 

私は肩をすくめて答える。

 

「了解した」

 

そして急いで追加分を作りに向かうのだった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

約5分で追加人数分の炒飯とおかずを用意した。

 

「待たせてしまったな。どうぞ、召し上がれ」

 

「ほな、いただきます、や」

 

霞はそう言って、食事を始めた。

 

私も自分の席につき、手を合わせた。

 

「日々の糧に感謝を。――いただきます」

 

「……? なにその言葉」

 

きょとんとして問いかける雪蓮。

 

「我々は生きていたものの命を頂くのだ。肉然り、野菜然り、穀物然り。生きていたものの命を刈り取り、自分の血肉に、生きる糧にするのだ。いただきますとは、それに感謝をささげる祝詞と言えば良いだろう」

 

「……良い言葉ね。私たちも使わせてもらおうかしら」

 

雪蓮がそう言って、他の人たちを見ると、彼女たちもそれの真似をした。

 

「――いただきます」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

彼女らはそう言って、食事を始めた。

 

「……ところで霞。卿は彼女たちと挨拶したのかね?」

 

「したで。ほら、ライニもあいさつせんと」

 

霞の言葉に私は肩をすくめる。

 

「雪蓮、私がサーヴァントであることは……」

 

「知ってるわよ。周陽が教えてくれた限りだから、不足してる部分もあるかもだけど」

 

「そうか……。私はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。アーチャー……弓兵のサーヴァントだ。ラインハルトとでも、ハイドリヒとでも好きに呼ぶと良い」

 

私がそう言うと、名を名乗っていない者たちが自己紹介を始めた。

 

「儂は黄蓋、字は公覆じゃ。しばらく策殿の元に身を寄せると聞いた。よろしく頼む」

 

「私は陸遜、字は伯言です。よろしくお願いしますね~」

 

「……我が名は甘寧、字は興覇」

 

「わ、私は孫権。字は仲謀だ」

 

私の知る少女たちが順に名乗りを上げるたびに、それぞれに頷く。

 

すると水色の髪を背まで伸ばし、赤を基調とした服装をする妙齢の女性が食事の手を止めてこちらを向いた。

 

「私は程普。字は徳謀よ。よろしくね。ラインハルトさん」

 

次に、その隣にいる、栗色の髪のボーイッシュな娘が自己紹介を始めた。

 

「私は太史慈、字は子義。……雪蓮と冥琳が気を許してるし、そっちも真名……みたいなのを教えてくれたから、私も預けるからね。真名は梨晏(リアン)、よろしくね!」

 

「……ふむ、雪蓮と周公瑾とは、ずいぶんと仲が良いと見て良いのかな?」

 

私が問いかけると、梨晏がドヤ顔で答える。

 

「私たち3人の友情は絶対不滅だからね!!」

 

「仲良きことは良い。友情というつながりは、ときに計り知れぬ価値を持つゆえにな」

 

私の言葉に梨晏がうんうんと頷く。

 

「次は私の番のようじゃが、そろそろよいか?」

 

マレウスと同系統の属性をもってそうな娘(?)が少しためらった様子で割りこんできた。

 

「おっと、すまぬな。……ではお願いしよう」

 

私がそう言って発言を促すと、彼女は頷く。

 

「私は張昭。字は子布である」

 

「ふむ、そうか」

 

「「「「「……」」」」」

 

「……?」

 

何故か雪蓮たちが沈黙していることに、私が首を傾げると、程徳謀が口を開いた。

 

「ラインハルトから見て、雷火……。張昭と同年代は誰か分かる?」

 

「……分からんな」

 

肩をすくめて私は答えた。

 

「祭……黄蓋より少し年上よ」

 

「……そうか」

 

私が半ば流しで答えると、雪蓮が納得したように手を叩く。

 

「あ、そうか。ライニサーヴァントだから、雷火よりも年上ってこともありえるわね」

 

「一応、外見年齢は、そのサーヴァントが召喚されたクラスに最も適した年齢で召喚されるからな」

 

周陽がそう言って補足する。

 

「……だが、私の半分も生きていないのは明白。私からすれば、皆小娘に過ぎん」

 

「……ライニって、何歳まで生きたんやっけ?」

 

霞が食事の手を止めて問いかけてきた。

 

「表向きは34歳だな。現世に戻るまでも合算すれば、102年の間、存在していたと言えよう」

 

「……ライニの102歳の姿……想像できないんですけど」

 

雪蓮が困った顔でそう答えたので、私は笑って答える。

 

「卿が見る私の姿が当時と同じだとは、やはり思わぬか」

 

「……何じゃと!?」

 

黄公覆が目を見開いて聞きなおした。

 

「……それよりもそちらのお嬢さんの自己紹介を伺っていないのでね。質問はその後で良いかね?」

 

「あ、うむ。……すまぬな。包」

 

黄公覆が謝ると髪飾りに蓮の花を付けているウェーブのかかった水色の髪の娘が少し居心地が悪そうな様子を見せた。

 

「構いません。えと、私は魯粛、字が子敬です。よろしくお願いします」

 

「ああ。よろしく」

 

私は頷いた後、黄公覆の方へ向き直った。

 

「私がこの姿のままでいた理由を黄公覆は聞きたいようだが……」

 

「興味深いのでな。当然であろう」

 

私は肩をすくめたあと、雪蓮に問いかける。

 

「……雪蓮。卿らは今は客将の身だと記憶している」

 

「ええ。それがなに?」

 

少しばかり不満げに答える雪蓮。

 

「ならばほとんどの者が手持無沙汰……とまではいかんが、多少なりと暇を持て余しているのではないかね?」

 

私がそう言って、全員を見ると、答えにくそうにする一同。

 

「……否定は出来ませんね」

 

周公瑾はため息交じりにそう答えた。

 

「ならばこの食事の後、私の過去を、少しばかり歌劇じみた語り部と私が語るが、それに耳を傾ける観客の一人になってもらえるかね? 今ならもれなく私が酒と肴を用意するし、酒を昼間から飲みたくない者にはお茶と茶請けを用意しよう」

 

「……張文遠が語り部なのか?」

 

「否だ。……わが友が洛陽にいるゆえ、城を経由して、呼び出そう。カールならば愉快に語ってくれるだろうからな」

 

孫仲謀の問いかけにそう答えると、一同は怪訝な顔をする。

 

「……雪蓮。すまぬが今からおきることに驚かぬよう、彼女らに釘を刺してくれぬか?」

 

「ええ。……ってことだから、何があっても驚いちゃだめよ」

 

雪蓮がそう言ったのを確認した後、私は洛陽にいるカールに連絡を取った。

 

『――いかがなされた、獣殿』

 

『卿のそのうざったらしい語りが恋しくなった。どうせ卿のことだ。劉焉に煙たがられて元後宮あたりに放り込まれて軟禁生活をしているのだろう?』

 

『然り。もっとも、書置きを残して置けば、数日いなくなっても咎められることはない故、軟禁と言うにはいささか緩すぎるものがありますがね』

 

『ならば少しの間こちらに来て、嘗てのDies irae に至った経緯を面白おかしく語ってくれぬか?』

 

『構いませんよ、獣殿。こちらも暇を持て余していたので。あと、城の入り口を展開しておいていただければ、後の面倒が少ないのでそうしていただけると助かる』

 

『良かろう。では、城を経由してくるといい』

 

私はそう言って、カールとの連絡を切った。

 

「……? 何も起こらないが」

 

孫仲謀が首を傾げる。

 

「――いやはや、久しぶりに会ってみれば、何やらのんきに食事とは……。無二の友が軟禁生活を強いられているというのに貴方も薄情ですな」

 

ウザったらしい言葉と共に、城を経由してわが友カールが私の傍らに現れた。

 

「――曲者かっ」

 

甘興覇が剣を抜こうと構えるが……。

 

「カールは私が先ほど紹介した歌劇じみた語り部にして、私の友人だ。……別に切ろうとしても構わないが、今のカールですら、卿らには殺すことは出来んよ」

 

「興覇!私が言った言葉を忘れたか!!」

 

雪蓮が叱咤すると、甘興覇はハッとしてから謝罪した。

 

「……申し訳ない」

 

「構わん。卿が反応しなかったら、別の誰かが同じ反応をしていただろう」

 

「然り然り。人とは自分の理解を超えた事象に出会えば、大抵はそのような反応を取るものだ。たまたま一番早く君が反応したゆえ、他の者は自然と観客に回り、演者である私たちの反応を見る側に回れただけのこと。もっとも、君たちのような塵芥の反応にいちいち構うのも面倒なので、わざわざ私が懇切丁寧に解説するのはなかなかないと思ってもらいたい」

 

「……相変わらずだな、カール」

 

私がカールの反応に肩をすくめると、カールはいつも通りの表情で返す。

 

「獣殿も相変わらず美女を侍らせて悦に入る腑抜けぶりが板についてしまったで、友である私としては涙が止まらず、困り果てている」

 

「卿が泣いた顔など見たことないな。それもある意味未知だが……。まあよい。卿も食べていくといい。少し多めに作ってしまったからな。余るだろう」

 

私はそう言って、指を弾く。

 

すると宝物庫から椅子と食器一式が出てくる。

 

「私は食べる必要はないが、せっかくの友の招待を無下にするのも気が引ける。……では、お言葉に甘えよう」

 

カールがそう言って、席につき、食事を始めた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「さて、これで全員私たちの昔話を聞く準備ができたわけだな」

 

昼食後、私がそう言って全員に問いかける。

 

「……ライニの昔話は、滅多に聞けるもんやない。ちゃんと聞かんと損やで」

 

霞がすでにお酒を飲みながら、そう口にした。

 

「……私はドイツ帝国の領邦プロイセン王国ザクセン州の都市ハレのマリエン通り21番地で生まれた。母は卿らで言う豪族相当の身分で、父は私が生まれた当時は音楽家だった。私が楽器をそれなりにたしなむのは、父と、母方の祖父母の影響があったからであろう」

 

私は一息ついて続ける。

 

「10歳のころにはハレ王立実科ギムナジウム……。卿らで言う国が経営する塾に相当する教育機関に入り、18歳のころに海軍に入った。……もっとも、27の頃に一度海軍から除名されたがね」

 

海軍、と聞いて一部の者が反応を示したが、それを私は無視した。

 

「そこから一か月経たぬうちに、運命ともいえる出会いにより、私の人生は大きく変わることになった。ハインリヒ・ヒムラーという上司に仕えることとなり、俗に言う細作部隊を指揮し、私の上司が信奉する総統閣下の政敵を徹底的に調べ上げ、社会的に抹殺する仕事をこなしていった……」

 

私がカールに視線を向けると、カールはやれやれといわんばかりの態度で私の言葉を引き継いだ。

 

「獣殿はハインリヒ・ヒムラーを押し上げる形で彼と共に順調に出世し、その国の王に相当する身分の総統閣下から絶大な信用を得て、ゲシュタポという治安維持と細作の役目を兼任する組織の総責任者になるまでに至った。君たちの所で言う、廷尉に相当する立場にいたのだ。軍においても右将軍以上に相当する立場でもある。私が獣殿と出会ったのは、私が総統閣下暗殺未遂の犯人として、ゲシュタポに捕まった時だった……」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……かくしてベイの儚い初恋はこのようにして終わったのだ」

 

「……そろそろ日も暮れてきた。今日はここまでにしたらどうかね、獣殿」

 

途中からベイの初恋に脱線し、カールのツッコミで私は日が暮れ始めたことにようやく気が付いた。

 

「……む、もうこんな時間か。では、続きは後日、要望があるならば話そう。……カールは一度戻るかね?」

 

「ああ。そうしよう。では、失礼する……」

 

カールはそう言うと、私が開いたグラズヘイムへの扉の中へと入っていった……。

 

「……いかがだったかな? 少なくともつまらなくて寝た者はいなかったようだが……」

 

私が一同に問いかけると、雪蓮がゆっくりと口を開いた。

 

「人に歴史ありって感想がこれほどしっくり来る場面はそうそうないでしょうね」

 

「……だな。だが、秘密警察か……。反乱の芽を早期のうちに摘み取る組織として、結成させてもいいかもしれないな……」

 

後半ひとりごちる周公瑾に対し、私は肩をすくめる。

 

「……では、私は夕食を作るゆえ、卿らは夕食まで自由時間にするといい……」

 

私はそう言って、厨房へと足を向けた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……昔からあんな感じだったのね」

 

孫仲謀がそう呟いた。

 

「女は駄菓子……。蓮華様。ご命令とあらば、あの男の首を取ってまいりましょう」

 

ラインハルトの言葉を反芻した後、孫仲謀へ向き直り、甘興覇はそう言った。

 

「あの男は別に悪気があって言ったわけじゃないんだから、やめなさい」

 

部下を窘める孫仲謀をよそに、ウチは甘興覇に質問をする。

 

「……自分神秘のこもった武器持っとるんか?」

 

ウチは首を傾げながら問いかけた。

 

「神秘……?」

 

「せや。基本ライニ傷つけられるんは、神秘のこもった存在や武具だけや。せやから、普通は、サーヴァントはサーヴァントにしか倒せんのや」

 

首を傾げる孫仲謀に、うちは丁寧に解説する。

 

「……南海覇王はそれに該当しそうだな。……もっとも、今の段階であの怪物の守りを貫けるかといわれたら、無理だろうが」

 

「一応、気を纏った攻撃でも、傷つけようと思えば出来るみたいや。もっとも、ウチの気を纏った渾身の一撃でも、防御が一番薄い時のライニに擦り傷付けるんがやっとやから、傷つけられる言うても、たかが知れてるんやけどな」

 

しばらく前の手合わせを思いだしながら、ウチはそう告げた。

 

「……それと、そいつはマスターじゃねえからな。もっとも、危害加えると獣が報復をキッチリするみたいだから、やるならそれなりの覚悟を持っとけよ」

 

周陽が知らんぷりといわんばかりの行動をしながら甘興覇に告げた。

 

「せやな。来る者拒まず、去るもの追わず、関わりなければ放置が基本やけど、ウチらに手を出すんは絶対にあかん。まだ皇帝契絆支の噂がそこまで広まっとらん時にウチとライニが一緒にいた時なんやけどな、ウチに絡んできたごろつきがおったんや。あんときはライニがごろつきを無言で半殺しにしたんよ。……悪いことは言わんから、やめとき。女には結構甘いから、半殺しにはならんやろうけど、ある意味それよりも酷い報復が待っとるやろうからな」

 

「……忠告、感謝しよう」

 

甘興覇はそう言うと、部屋を後にした。

 

「……分からんな。女は駄菓子と今でも言ってるのだろう? ならばあの男に取っておんななんてその程度のモノにしか見ていないはず。……そこまで過剰に反応する理由がないと思うのだが……」

 

孫仲謀が首を傾げたので、ウチはそれに答える。

 

「今はそないなこと言っとらん。少しだけ思っとるみたいやけどな。……少なくとも抱いた女の面倒は絶対に見るつもりはあるみたいやで」

 

「あら、どうしてそう思うの?」

 

孫伯符が会話に割りこんできたけど、ウチはそのまま続ける。

 

「この耳飾りな、ライニが作ってくれたもんなんや。――ライニと結ばれたん証なんやで」

 

ウチは右の耳飾りをそっとさわりながら、そう告げた。

 

「――あ? サーヴァントが性交渉出来たっけ?」

 

顔をあげて、首を傾げる周陽。

 

「ライニは少し特殊らしいからできるみたいや。子供も頑張れば何とかって、前言っとったな。でも、意図的に生まれないようにしとるらしいんやけど、何しとるんかは、ようわからん。……おっと、話し逸れた」

 

ハッとしたウチは、話を戻す。

 

「とにかく、これ渡す時、ライニこう言ったんや『卿が私と袂を分かつまで、私は卿を守り、必要なら養おう』ってな。なんで渡してくれたんか聞いてみたんやけど、女は駄菓子とか言っとった男とは思えん言葉が出てきたんや」

 

「……どんな言葉なんですか?」

 

魯子敬が興味津々で問いかけてきた。

 

「『卿は私が、人として破綻している存在と分かっていてなお愛すと言ったのだ。その愛に私は応えたい。それは私から感謝と愛の印を思ってくれ。それを持つ限り、卿がどこにいようと、探しだして見せる』」

 

「……凄いな」

 

「いい男ね」

 

孫仲謀と、程徳謀の言葉に、ウチは自分のことのようにうれしくなる。

 

「せやろ。……武人としては認めたないけど、ライニはウチなんか足元にも及ばんくらい強い。うちらが見てるはるか先を見通す頭と、手を打つ判断力、行動力もある。……それ自体に文句はないんや。せやけど……」

 

「……? だけど……どうしだのだ?」

 

孫仲謀の言葉をきっかけに、ウチはいつもならしゃべらないことまで、口にしだした。

 

「少しはうちらに頼ってほしい。聖杯戦争で役に立たんのはしゃあないとしても、他のこともほとんどライニやライニの爪牙、あと寧、美花あたりが大抵のことやってまうから、うちらが手伝えること、ほとんどないんや」

 

「……」

 

「今回ライニが他の女ひっかけてこんか見張る役目になったんも、単純な消去法で、ウチが残っただけ。料理の手伝いも配膳くらいしかできんし、今んとこ、馬車旅の御者のとき以外、特に役に立っとらん。ウチがいる意味、あるんかなぁ……」

 

ウチがそうぼやいた瞬間、誰かがウチの頭を掴んでちょっと乱暴に髪をかき乱した。

 

「誰や誰や!? ……ライニ?」

 

腕を振り解き、立ちあがって振り返ると、ライニがどこか悲しそうな顔でこっちを見ていた。

 

「……すまなかったな、卿がそのように思っていたことに気付くことが出来なくて」

 

ライニはそう言ってウチを抱きしめた。

 

「~~~~ッ!!」

 

恥ずかしさとうれしさをないまぜにしたこの感覚を誤魔化すために、ウチは言葉にならない言葉を漏らした。

 

「……私はどうやら過保護でね。……危険なことはさせたくないがあまり、卿らを除け者にしてしまっていたようだ。……だがこれだけは言わせてほしい。私は卿を愛している」

 

「「「「「…………」」」」

 

残っている一同が呆然とする中、ライニはまだ続けた。

 

「……自分のいる意味がない? 馬鹿なことを言う。明命が真名を預けるまで信頼してくれたのは、卿がいたからだ」

 

「……ウチが……いたから……?」

 

「左様。卿がいたからこそ、明命は私に対して警戒心を解いて、真名を預けるまで信頼してくれたと言っても過言ではない。私一人では、明命はここに来るまでも常に委縮したままだっただろう。……そんな状態の明命をみて、雪蓮たちが私たちを受け入れたと思うか?」

 

ライニの問いかけに、ウチは首を横に振った。

 

「絶対とは言わんが、少なくとも、ここまで温かく迎えてくれることはなかっただろう。……私の爪牙たちは確かに有能だ。否定はせん。だがな、彼らだからこそ出来ぬこともあるのだ。……卿らがいたからこそ、今の私がいる。故に自分のいる意味がないなどと、決して言わないでくれ」

 

ライニはそう言って、ウチの頭を撫でた。

 

そして、ウチを抱きしめる腕を放すと、少し離れて立ち止まる。

 

その顔は、いつものような不敵な笑みを浮かべていた。

 

「迷いが絶ち切れたようだな。……それはさておき、今宵は久方に寝具で眠れるな」

 

「……せやな」

 

ライニの目が語る言葉に、ウチは頷く。

 

「……さて、早く料理を作って食べ、今日は早く眠るとしよう。雪蓮、部屋は用意できているかね?」

 

「もちろん」

 

ニコッと笑う孫伯符。

 

「……念のため、廊下に私の部下を立たせておくか」

 

複雑そうな顔をして、ライニがそう言うと、孫伯符がふくれっ面になる。

 

「何よ、私たちが信用できないの!?」

 

「客人を持てなす主人としては、この上ないほど信用している。……だが、天の御使いの血や、私の血を入れて、その価値を強固なものにしようという計画を世間話のノリで話していた孫家とその家臣団は、まったくもって信用できん」

 

「どうして? 可愛い娘侍らせ放題孕ませ放題よ?」

 

「「「「「!?」」」」」

 

とんでもないことをさらりと述べる孫伯符に対し、孫家の人たちは驚きを隠せず、ライニは若干口元を引き攣らせて答える。

 

「無理矢理や、義務責任での関係など、愛が足りんよ。それに、父親のいない子供というのは、辛いものがあるからな」

 

「……そのまま孫呉に住んじゃえばいいじゃない」

 

「……面白そうな案件だ。今度一軍の長として卿とあったとき次第だが、案として考えておこう」

 

どっかののらりくらりと躱す胡散臭い文官みたいな返事をするライニに、陸伯言がツッコむ。

 

「考えるだけで、実行はしないと。約束守らない人の使う常套手段ですね」

 

それに反応して、張子布が、魯子敬に問いかける。

 

「どっかで似たようなことを聞いたのじゃが……。覚えておらんか? 包」

 

「さ、さあ。私には覚えがありません」

 

がやがやとにぎやかになる一同。

 

そんな中、孫伯符は肩をすくめた。

 

「……まあいいわ。でもね、ライニ。諦めたわけじゃないから」

 

――一見笑顔だが、目は得物を狙う獰猛な獣のそれと同じである。

 

「……その努力は評価しよう。私は料理の続きに戻らなければならないのでね。これで失礼しよう」

 

ライニはそう言って、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――余談だが、ライニはいつもより優しく、同時に激しかったとだけ、言っておこう。

 

――ナニが、というのは、想像にお任せする。

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだっただろうか。

感想、評価、誤字脱字評価をお待ちしているよ。


では、次の幕にて、お会いしましょう……。











ここから作者の独り言(?)

――あと、皆さまのおかげでkkk的なIFルート突入フラグが(今のところ)折れたので、大団円orちゃぶ台返しと次回作が確定しました。

女神「やったね、隊長。もれなく原作並の永劫回帰待ったなしですよ!」

獣「……この調子なら、2作目で、三国の平和と、私の生存に至るルートへ行けるか……?」

ニート「いまのこの世界は、別の外史ほど、存在が確固としたものではないので、次に期待だ。滑り出しで気躓いたので、もう少しうまくいくことを祈るといい」

女神「てか、Dies irae と、Fateの要素が入った恋姫って、あまり需要ないんですかねぇ?」

獣「Fateが楽しめるなら、Dies irae も楽しめると思う。……もっとも、恋姫しか知らぬ者たちには、入りづらいものがあるだろう」

女神「……アトリエシリーズのキャラ、次の回帰では追放フラグかな?」

ニート「さてな。私はそんなことよりも、早くこの(ゲットー)を抜け出し、マルグリットのストーカーをしたいのだ」

獣「わが友は相変わらず狂しているな」

女神「あと活動報告と、感想の返事で同じことぼやいてるから、見ておくといいかも」

ニート「……流石は狂化EXの作者と言うべきか……」



ここまで作者の独り言(?)


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