恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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ここから徐々に雲行きが怪しくなっていく。
……何の、と聞かれても答えぬよ。

さて、今回はやっと主役とヒロインが出会って一日目が終了する。
種は(やっと)()き終えた。
後は育つのを水をやりつつ、待つのみだ。

さてさて、私の歌劇を引き続きみてくださる方には感謝の言葉を送ろう。
っ(魔名)



……冗談だ。
私はメルクリウスではないので、そんなことはしない。
では改めて……。



皆さま、私の歌劇をご観覧いただき、感謝します。
これからも精一杯盛り上げるつもりですので、どうかご声援をよろしくお願いいたします。


……さて、引き続き歌劇をご観覧あれ。


第3話 宝具と真名と不寝番?

「……アサシン」

 

「何用でしょうか?」

 

「片づけを頼む。私は疲れた」

 

「承知しました」

 

呂布、陳宮、高順の三連星を退け、詠と月を満足させた私はそう言って、私は談笑している詠と月の向かいに座る。

……アサシンよ。私が呼んでおいてアレだが、水蓮を放置で良いのかね?

などと考えていると、2人がこちらに気付き、声を掛けてきた。

 

「あ、お疲れ様です。ライニさん」

 

「あんた料理も作れるのね、驚いたわ」

 

見ているだけで不思議と癒される月の笑顔と、素直に驚いている詠を見た私は肩をすくめる。

 

「あの程度造作もない。時間があれば、もう少し手間のかかる料理を作れるが……。所詮趣味の範囲だ。その道を(きわ)めた一流の職人には及ばんよ」

 

「あんたが一流じゃないなら、そこら辺の料理人は泣きながら店たたむ気がするわ」

 

私の言葉に対し、詠はあきれた様子でツッコむ。

 

「料理とは素材と、調理過程、そして料理人の腕で味が決まる。私の場合は素材と言う点で大幅に差がついただけのことだ」

 

「そういえば、城には食材があまりなかったような……。どこで手に入れたんですか?」

 

月が首を傾げて問いかけた。

 

「……詠、卿はどこまで話した」

 

「全部よ。あんたがボクに任せるっていってたから、洗いざらい全部いわせてもらったわ」

 

私は少し思考を巡らせてから、口を開く。

 

「ならば宝具のことも話したかね?」

 

「ええ。たしかそのサーヴァントにゆかりがある武器や逸話が昇華した、有形無形の武具や、祝福よね?」

 

「正確には祝福の類の大抵は宝具ではなく、スキルとして存在するが、その話は後にしよう。私は本来槍兵(ランサー)、あるいは狂戦士(バーサーカー)の適性以外ないのだが、逆に宝具の存在によって、弓兵(アーチャー)の適性を有しているのだ」

 

すると詠と月は首をかしげる。

 

「私はある数奇な縁から、ギルガメッシュという神話の英雄の宝具を有しているのだ。今から逸話を交えて、その宝具の説明をするが良いかね?」

 

私の言葉に対し、2人は素直に頷いた。

 

「古の英雄王ギルガメッシュは、当時の世界の王であった。その王はあらゆるものを保有し、そのなかには、のちの英雄たちが手にする宝具の原型すら入っていた。それらは彼の支配する国、バビロニアの宝物庫にしまわれていたという。その逸話が昇華したモノが王の財宝(ゲートオブバビロン)であり、その中には、はるか昔の石器から、はるか未来の人類が創り出したものまで入っているとさえ言われている。しかし、あまりの多さに本人さえも中身を全ては知らんようだがな。英雄王は、その宝物庫と空間をつなげ、中のものを取り出したり、中のものを射出したりできる」

 

私が一区切り付け、2人を見る。

 

「ライニさんも、それが使えるんですね?」

 

月の疑問に対し、私は首肯する。

 

「ああ。ちなみに卿らが食べたのは、そこから取り出した、採れたて同然の鮮度の食材で作ったモノだ。……あと、宝物庫の中身は持ち主の財に依存するが、私の財は英雄王と同等になっているようだ」

 

すると詠がジト目で私を見る。

 

「なにそれ、なら向かうところ敵なしじゃない」

 

私は肩をすくめる。

 

「残念ながら、世の中そう甘くはない。王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の宝具射出は、至近距離では使い勝手が非常に悪い。相手との距離があるからこそ、弓兵のように一方的な攻撃が可能なのだ。そして、中に入っていないモノも少なからず存在する上、取り出したいものを知らねば取りだせぬという制約がある」

 

「……あんた肉薄されたら手も足も出ないなんてことはないわよね?」

 

「卿がマスターとして未熟なおかげで随分と制約があるが、並のサーヴァントに遅れを取るつもりは毛頭ない」

 

「……言ってくれるじゃない。負けたら大笑いしてやるわ」

 

「では精々笑われぬよう、気を付けるとしよう」

 

私はそう言った後、立ち上がる。

 

「詠、これから政務をこなすのであろう?面倒事は速くこなすに限る」

 

「あんた、意外とせっかちね」

 

手厳しい指摘を受け、私は肩をすくめる。

 

「さっさと仕事をこなす癖がついているからだろう。ゲシュタポ(元いた職場)も、早めに仕事を消化せねば手に負えなくなる程度に忙しかったからな」

 

「ここはそこまで修羅の国じゃないわ。ねねとボク、月で回せるくらい下の文官はいるし、掛かっても半日くらいよ」

 

あきれ顔の詠に対し、月が口を挟む。

 

「でもライニさんがせっかくやる気を出してくださってるから、早く案内してあげようよ」

 

「……月、こんな奴を持ちあげる必要なんかないわよ」

 

「……詠ちゃんはマスターだから怖くないんだよ……」

 

やはり私に対して月は怯えているのか。

私は立ち上がり、机越しに月の頭をそっと撫でる。

 

「……ぇ?」

 

「安心するといい。私は卿に害することはするつもりなどない。無論、卿の親友がさせんだろうから、いつまでも私に怯えないで欲しい」

 

「えっと……、その……」

 

ウェーブのかかった髪は撫で心地が良い。

 

「……へう……」

 

……む、やりすぎたか。

顔を赤くしている月を撫でるのをやめ、再び席についた。

 

「……あっ……」

 

名残惜しそうだが、卿の隣にいる詠が何か言いたげなのでな。

許せ。

 

「なに月を誑しこんでるのよ、この色魔!!」

 

「卿の傍にいる以上、月との接触は避けられぬ。そこで円滑な友好関係がなければ困ることもあろう。触れ合うことによって、相手に安心感を持たせるための行動に過ぎんよ。何を勘違いしているのか分からんが、色魔は心外だ」

 

「え、詠ちゃん。ライニさんは本当にそれだけだと思うよ。私が怖がってるのを見て、困った顔してたから……」

 

……半分は“□□□□(わたし)”の下心があったが、黙っておこう。

 

「……まあいいわ。ライニ、ついてきなさい。さっさと政務やるわよ」

 

詠はそう言って、部屋を後にする。

 

「ライニさん」

 

私もついて行こうとすると、月が声を掛けてきた。

 

「ライニさんを困らせてしまって、申し訳ありませんでした」

 

振り返ると、彼女が頭を下げていた。

 

「顔を上げたまえ」

 

私の言葉で、月はすぐに上げて、こちらを見る。

それと同時に、私は不思議と笑みがこみ上げた。

 

「……今の私は卿の友人である詠のサーヴァント。敬語など不要だ。そして先ほどの卿の弁護がなければ、詠は引き下がらなかっただろう。私は卿に感謝こそすれ、謝罪される理由は存在せんよ」

 

「でも……」

 

私は再び彼女を撫でる。

 

「コレでは詠にまたとやかく言われる。私に罪悪感を感じるならば、普通に接してくれるのが一番のお詫びになる。分かってくれるかね?」

 

「はい。分かりました」

 

実にいい笑顔だ。

 

「ライニ!さっさと来なさい!!」

 

詠の声にハッとする私と月。

 

「ふふっ。詠ちゃんなんだかんだ言って、ライニさんのこと気に入ってるみたいですよ?」

 

「ならばよいのだがね」

 

私は肩を竦めつつ、月と共に、詠の後を追った……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

今日は月がすでにある程度片付けていたことと、私が予想より処理能力が高かったことが幸いし、早く済んだ。

……そこまでは良かったのだが……。

 

「ちっ、更なる激戦となるのか……」

 

「アーチャー殿、次は何をすればよろしいか!!」

 

ため息つく暇も彼女らは与えてくれぬようだ。

 

「あんちゃん、天津飯追加で!」

 

「こっちは焼売(しゅうまい)を頼もう!」

 

「……肉まん」

 

「肉まん追加ですぞ!!さっさと用意するのです!!」

 

「ぱえりあ……だっけ?炒飯とは違うけど、結構おいしい」

 

「この丼、お肉が多いはずなのに、……手が止まらないよ、詠ちゃん。」

 

「……(モグモグ)。……ライニ、太ったらアンタのせいだからね……!」

 

半分くらいは私の趣味で出したモノだが、料理名を教えていないおかげで、そちらの追加注文は来ていない。

そして詠、私のせいにされても困る。

 

「アサシン。まずは肉まんを頼む。肉ダネはさっき作ったやつが残っているはずだ。生地はそこにある。同時並行で焼売を蒸しているから、どの段か間違えるなよ」

 

「御意!!」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、ライニさん」

 

董卓軍の主力メンバーが満足そうにしている中、月がわざわざねぎらいの言葉を掛けてきた。

 

「そう思うならば、私が料理をふるまう相手を卿が調整してくれんかね?流石にこの量を作るとなると、助手がアサシンだけではいささか厳しいものがある」

 

あと調理環境的にもきつい、と付け加えると、月は困った顔をする。

 

「そうですよね、華雄さんも水蓮ちゃんもたくさん食べますし、恋ちゃんに至っては、5人前くらいあっという間ですから」

 

「5人前があの体の中に納まってなお、外見に変化がないのは私は驚きを隠せん。人体の神秘とは摩訶不思議だ」

 

などと話していると、張遼が問いかけてきた。

 

「すっかり忘れてたんやけど、あんちゃんって誰なん?月と仲ようしとるみたいやけど」

 

華雄もハッとしてそれに呼応する。

 

「そうだ、お前は一体何者だ?料理はうまかったが、専属料理人か?」

 

「そういえばお前の名前聞いてないですぞ!」

 

「恋も、聞いてない……」

 

視線がこちらに集まったので、私は食器を洗っているアサシンに声をかける。

 

「アサシン。卿も彼女らに自己紹介しておらんだろう?私の後で良いから、自己紹介するといい」

 

私は改めて彼女たちを見つめた。

 

「私はアーチャー。わけあって詠のサーヴァント……従者をしている。料理はあくまで趣味の域を出ていないゆえに、専属料理人になるつもりはない。真名はラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。長いゆえに愛称のライニと呼ぶといい。あと私の口調だが、直せぬし、直すつもりもない。その点を了承してくれるとこちらとしてもありがたい」

 

すると、張遼、華雄、陳宮が奇妙なリアクションをとり、呂布は目を丸くした。

 

「いきなり真名預けるんかい!」

 

「口調直すつもりはないのか!?」

 

「従者の癖に偉そうですぞ!」

 

リアクションから復帰した三人は、それぞれのツッコミを入れる。

 

「恋は呂布、字は奉先。真名は恋。よろしく、ライニ」

 

ぼーっとしているようにしか見えない顔で呂布……恋が私に真名を預けた。

張遼はそれに倣ったのか、恋に続いて自己紹介をする。

 

「うちは張遼、字は文遠。真名は霞や。よろしゅうな」

 

「私は華雄だ。……真名はないから預けられん。すまない」

 

申し訳なさそうな華雄に対し、私は答える。

 

「私はそのあたりは特に気にせんよ。以後頼むよ、華雄」

 

「……気遣い感謝する」

 

私は最後に陳宮を見つめる。

 

「卿は陳宮のままで良いかね?」

 

「お前なんかに真名を預けるつもりは毛頭ないですぞ!預けてほしければ土下座くらいしてみたらどうですか」

 

「ねね……」

 

恋のジト目を受け、陳宮は諦める。

 

「ねねは陳宮、字は広台。真名は音々音!ねねとでも音々音でも好きに呼びやがれです」

 

「以後よろしく頼むよ、ねね」

 

「ふん、お前は恋殿のために料理を作ればいいのです!」

 

「では、食後のデザート……甘味を振舞おうか。恋、あまり量を作るつもりはない故、味わって食べるのだぞ」

 

「ん、分かった」

 

「さっきの料理もおいしかったから、楽しみやわぁ」

 

「ライニ、あとで覚えておきなさいよ」

 

私は彼女たちの声援(一部違う)を受け、再び厨房に立った。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

即興で作ったバニラアイスを振舞うと、なかなかの高評価をもらった。

ただ、恋が一瞬で全部食べてしまい、うるんだ目でおかわりを要求されたのは、予想通りだったと言っておこう。

そして、各々は解散することになり、私、水蓮、月、詠、アサシンが残ったのだが……。

 

「ライニとアサシンの部屋、どうする?」

 

「ど、どうしよう。詠ちゃん」

 

困る月に対し、ハサンは左腕をあげて答える。

 

「私はなくても構いませんぞ」

 

「じゃあ、ハサンはなしで。私の部屋共有すればいい。」

 

「……主がそれで良いとおっしゃられるならば、それに従いましょう」

 

自身のマスターからの言葉に頭を掻くアサシン。

 

「私は基本日中以外使う予定はないが手配をお願いできるかね?夜間は聖杯戦争が進むことが多いからな。それに詠も年頃の娘だ。私のような男に部屋にいられると居心地も悪かろう」

 

私の言葉に対し、詠はどこか誇らしげな顔をする。

 

「まあ、そのくらいの気遣いは出来て当然よね」

 

「では、明日のうちに用意しておきますね」

 

月は笑顔で私に答えてくれた。

……まさか卿が用意するわけではあるまいな?

 

「卿の心遣いに感謝しよう。……詠、月、水蓮、おやすみなさい。良き夢を……」

 

口にまでせり上がっていた疑問を呑み込んだ後、私はそう言って、その場を後にした……。

 

 

 

 

 

その晩、アサシンと共に暗がりに紛れて盗みを働く唾棄すべき劣等を4人ほど始末したが、報告が面倒だったので、放置した。

死体は火葬したとだけ記憶しておこう。




ここまで来て感想が3つ(なお、感想を書いた人物は2人の模様)とは驚いた。
このような拙作に感想を書いていただけるとは思いませんでした。
願わくば、より良い作品になるよう、ご指摘を頂ければと思っております。
そして、私の励みになるので、ぜひとも、ご感想をお願いします。
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