恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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皆さまお久しぶり。

展開が思いつかず、かなりの難産になったが、何とか作れた。

あと、一つお礼を。

……気が付いたら20近くお気に入りが増えて驚いた。

しばらく投稿していなかったにもかかわらず、だ。

このような拙作にお気に入りしてくれてありがとう。

では私の近況報告はこの程度にして……。

――では皆様、私の歌劇をご覧あれ……!!


第23話 獣と孫呉の姫君 終

雪蓮の家に転がり込んできて早一ヵ月が経った。

 

私はいつも通り椅子に座り読書を楽しんでいると、窓から見える東の空が白み始めた。

 

「――今日も一日が始まるな」

 

私はそう呟き、本を閉じて寝具に包まる霞を揺する。

 

「霞、起きるといい」

 

私の声に、ゆっくりと目を開く霞。

 

「おはようさん、ライニ。……ふぁぁぁぁ……」

 

霞は私に挨拶した後、体を起こして伸びながら欠伸をする。

 

「……ん? どないしたん」

 

首を傾げる霞に、私は答える。

 

「……なに、卿の肢体に見惚れていた」

 

一糸まとわぬその姿に抱いた感想を、私は素直に述べた。

 

「いつもみとるやん。何を今更」

 

少し照れている霞の言葉に、私は笑顔で返す。

 

「だが、見ていて飽きない」

 

私がそう言うと、彼女は小悪魔じみた笑みを浮かべて問いかけてきた。

 

「今日は仕込みの時間はいらんやろ?」

 

「……だな、昼は各自に任せてあるし、夜は下準備がそれほど必要なものではないからな」

 

「なら、一回くらいできそうやな」

 

「……帰ったら一月くらいは卿の番がないと思った方が良いだろう。この爛れすぎた生活を寧が監視して報告しているようだからな」

 

私が肩をすくめてそう言うと、霞は思い出したような顔をして不満そうな顔をする。

 

が、すぐに妖艶な笑みを浮かべる。

 

「それは後で考えればええやろ? せっかくの時間がもったいないで」

 

「……だな」

 

私はそういって、服の上着を椅子に掛け、服を脱ぎ始めた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

朝食を全員で食べ終わったころ……。

 

「ご馳走様。美味しかったわよ、ライニ」

 

「それは何より」

 

雪蓮の言葉に、私は少し満足しながら答える。

 

「――明命、早速ですまないが袁術のところにいる司馬顕達に、こちらへ来るように伝えてくれ。『最後の1年分、帳簿の洗いだしが済んだ』と伝えればすぐに来るだろう」

 

「あ、はい。分かりました。すぐに伝えに行ってまいります!!」

 

私の言葉を聞いた明命はすぐさま部屋を後にした。

 

「帳簿の洗いだしなんて、いつやっとったんや?」

 

「いや、そもそも帳簿という重要なものを良く持ち出せたな」

 

霞の疑問より根本的な疑問を述べた冥琳。

 

「ああ、今の財務管理を任されているのが顕達からだ。前任の帳簿10年分の収支と現在までの変動を確認したところ、明らかに横領していると思われる金額が消えていたと言っていたのだ。そしてその前任者を糾弾するための、明確な材料が欲しいと相談されてな、ある条件でそれを暇な時間にやっていたのだ」

 

「情報を扱うことに特化した組織を率いていただけある……って言えばいいのかしら?」

 

「あの程度のたらい回しと水増しでうやむやに出来ているなら、私のいた国の横領もすべてうやむやに出来ていただろうな」

 

雪蓮の感想に、私は肩をすくめて答える。

 

「……ねえ、本当にここに残るつもりはないの?」

 

「ないな」

 

「即答ですね」

 

程徳謀こと粋怜の問いかけに、私は即答する。

 

それを聞いて複雑そうな表情をする魯子敬こと包。

 

「……蓮華好きにしても良いって言っても?」

 

「ちょっとお姉様!?」

 

唐突に引き合いに出されて困惑する蓮華をよそに、私は答える。

 

「……魅力的な提案だが今は丁重にお断りしよう。では、私はこれで失礼する」

 

私は蓮華を見た後、そういって立ちあがり、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……どう見る、穏、包」

 

ラインハルトと、それを追いかける霞が退出した後に投げかけられた冥琳の問いかけに、陸伯言こと穏と包が答える。

 

「時期尚早、ですね~」

 

「穏さんと同意見です。少なくとも今はどんな提案をしようと、首を縦に振ることはないかと」

 

「……」

 

「む? どうした、亞莎」

 

何かを言おうとしてためらっている少女に気づいた雷火が問いかける。

 

「あ、いえ……その……」

 

少女はおろ下した後、特徴的な袖で顔を隠す。

 

「何じゃ、じれったい。別に怒ったりせんから、さっさと話してみんか」

 

祭がそう言うと、少女――亞莎こと呂子明――はおずおずと言った様子で答える。

 

「ラインハルト様に師事しておりました折に、反偽帝連合が洛陽にたどり着いたら、旗下の者と一緒に野に下るとおっしゃっていました。あと、孫呉に仕官するなら、独立を果たした後、孫仲謀が当主であることが望ましいとも……」

 

「……それは本当かしら?」

 

いつもよりトーンの低い声で、雪蓮は問いかけた。

 

「は、はひ。どうしてなのか聞いてみたところ、『さて、なぜか。私がここを離れ、洛陽にて再び会うときまでの宿題にしておこう。だが、難しいかもしれぬゆえ、孫家の知恵者たちに聞くといい。もっとも、最低でも半月は一人で考えるべきだ』とおっしゃられました」

 

「「「「「…………」」」」」

 

亞莎の言葉に、一同が思考を巡らせる。

 

「ライニがそう言った理由が分からないわ。私に何かが足りていないのか、蓮華の方が相応しいからなのか……」

 

「……あの人にとって、その方が都合がいいってことは間違いないんですけどね」

 

間延びした声で穏がそういうと、梨晏が閃いたとばかりに話す。

 

「もしかして雪蓮だと机仕事サボるからじゃない? それに冥琳か、雷火が怒って雪蓮を追いかけまわす役目を押し付けられそうとか」

 

「あ、案外ありそうですね」

 

「そんな理由で要求するとは思えんが……」

 

梨晏の言葉に包は頷き、雷火は首を傾げる。

 

「……」

 

「どうした、雪蓮」

 

何かを考えるようなそぶりを見せる雪蓮に対し、冥琳が問いかける。

 

「ライニが最初仕えていたのは董卓のところよね」

 

「そうですね~。今はあの人の屋敷でなんらかの仕事をしているとか~」

 

穏が思い出したように答える。

 

「その次は漢……いえ、実質何進ね」

 

「だな。……何進と言えば、黄巾党以前に政界入りし、宦官と勢力争いをしていたそうたが、黄巾党討伐後には、宦官との勢力争いから実質身を引いていたと聞く」

 

「……姉さま。何をおっしゃりたいの?」

 

周陽の実質独り言を利いた後、蓮華が業を煮やして姉に問いかけた。

 

「たぶんなんだけど、ライニが蓮華を孫家の当主にしたい理由は――」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……これだけの金額をよく横領出来たものですね」

 

客室の一つにて、私がまとめた調査報告に目を通しながら、あきれた声でそう言う司馬顕達。

 

「あくまでも卿が渡した書簡の収支報告が正しいという前提で、それだけ消えているという報告だ。単なる記述漏れや、意図的に報告がないもの、支払いで本来の値段に水増しして要求したものなどは調査できん。そこを調べようと思えば、私と言えど、相当な労力を払っても補完しきれんだろう。調査するには時間が経ちすぎているのもあるが」

 

「……いえ、これで十分です。前任者を糾弾するには十分な証拠と言えます。あとは七乃さんに持って行けば……。わざわざありがとうございます」

 

彼女がそう言って頭を下げる。

 

「構わん。絵を描く程度の暇つぶしにはなった。……ところで張勲は私に気が付いたかね?」

 

「今のところ気が付いた様子はありません。もっとも、外からの監視は相変わらずなので、あまり屋敷の外に出るのは控えたほうが良いかと思います」

 

「ふむ、忠告感謝しよう」

 

「では、私はこれで……」

 

彼女はそう言って去って行った……。

 

「わざわざここに残る必要はなかったのだぞ、明命」

 

私が振り返らずそう言うと、背後から返事が返ってきた。

 

「客人であるラインハルト様に万一のことがあったら大変ですから」

 

「ふむ、職務に忠実なのは大いに結構。だが体調を崩してしまっては元も子もない。連日ではないとは言え、夜に隣の部屋で聞き耳を立てる必要はない故、できうる限り寝るといい」

 

私がそう言うと、隣にいた霞が目を丸くする。

 

「……ライニ、もしかして……」

 

「ああ。聞いていただろうな。何しろそちらだけ音を遮断していなかったからな」

 

私の言葉に、霞が顔を真っ赤にする。

 

「それはさておき、暇つぶしに絵を描こうと思うのだが、モデル……絵の題材になってくれぬかね? 明命」

 

「わ、私ですか?」

 

唐突過ぎる私の提案に明命が驚く。

 

「ちょい待ち、ライニ。まだ話は終わって――」

 

「霞、先のは冗談だ。真面目な明命が、あの声を聞いた翌日に何も反応を見せぬことが困難なことくらいわかるだろう?」

 

私はそう言った後、宝物庫からスケッチブックと128色鉛筆を取りだした。

 

「ではそこに腰かけたまえ。……表情が硬いな」

 

私はカチコチな明命を見て、そう呟く。

 

「ならあの絵見せたらええんとちゃう?」

 

霞が思いだしたように私のスケッチブックをひったくり、ページをめくる。

 

「――ああ、なるほど」

 

私は納得し、その一枚の端を切り取って明命に渡す。

 

「こ、これは……お猫様の絵!?」

 

驚き一色の表情でそう言った後、満面の笑みでそれを見始める明命。

 

「効果てきめんやね」

 

「……だな」

 

私は霞の言葉に頷いて、絵を描き始めた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「蓮華、すまないが少しつきあってもらえるかね?」

 

「へっ!?」

 

昼食後、蓮華の部屋を訪ねた私は、彼女にそう告げる。

 

――なお、霞は雪蓮、祭、粋怜あたりと酒を飲むと言って雪蓮の部屋にいったので、いない。

 

「えっと……、どうしてかしら?」

 

「卿の絵を描きたくなった……ではダメかね?」

 

私が問いに答えると、蓮華は頬を赤らめ、頷く。

 

「いいわ」

 

「それは何より。では、どこを背景にしたいかね? 屋敷内しかないので、限られてくるが」

 

私が問いかけると、彼女は少し悩んだ結果、頷いて答える。

 

「中庭でお願いできるかしら?」

 

「分かった。私は部屋の外で待っている。……あと服装はそのままで構わぬからな」

 

私はそう言って彼女の部屋を出た。

 

すると傍から鈴の音が聞こえた。

 

「貴様、蓮華様の部屋で何をしていた」

 

私の背を狙ったその刃に肩をすくめながら、私は答える。

 

「なに、彼女に少し頼み事をしただけだ。絵を描くために協力してもらいたいとね」

 

「――その言葉に嘘偽りは?」

 

「蓮華が証言してくれる以外証明しようがないが……ないと答えておこう」

 

私がそう答えると、扉が開いて蓮華が出てきた。

 

「ライニ、準備できたわ……って思春何してるの!?」

 

蓮華が驚いて声をあげると、思春は静かに得物をしまって答える。

 

「いえ、この男が不審な動きをしていたので、問い詰めただけです」

 

「……蓮華、弁護を頼む。卿の絵を描きたいと私が頼んだことと、それ以外何もなかった事を、証言してもらいたい」

 

私がそう言うと、彼女はきょとんとした後、答える。

 

「ライニの言う通りよ。私の絵が描きたいから、協力してほしいって頼まれたの。それで、中庭で描くことになったんだけど、ライニは支度が整うまで外で待ってるって外で出たのよ。変なこととかはされてないわ」

 

「蓮華様がそうおっしゃるのならば、間違いはないのでしょう」

 

思春はそう言って大人しく引き下がる。

 

「では行こうか」

 

私が蓮華にそう言うと、

 

「蓮華様」

 

思春が私たちを呼び留めた。

 

「どうかしたの、思春」

 

「私もご一緒してもよろしいですか?」

 

「……良いかしら、ライニ」

 

蓮華がおずおずと言った具合で問いかけてきた。

 

「ふむ、ならば卿も描かせてもらうがいいかね? 綺麗どころは絵になるからな」

 

「……軟派な男だな」

 

私は思春の辛辣な言葉に肩をすくめて答える。

 

「美しき者を美しいと言うことが軟派になるのならば、私はそう呼ばれることを甘んじて受けよう」

 

「「……」」

 

「……なにを驚いた顔をしている」

 

呆然とする2人にツッコミを入れると、蓮華が答えた。

 

「ライニって、体面とか気にすると思ってたから……」

 

「体面はそこまで気にせんよ。もっとも、無実の罪を着せられた場合などはその限りではない上、口調を崩そうとするのが酷く苦痛ゆえ、柄にない言葉遣いは出来ぬなどあるが」

 

「そ、そうなの」

 

「ああ。……では行こう」

 

私はそう言って、先に歩きだした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……こうでいいかしら」

 

中庭にある大きな石に座る蓮華がおずおずと問いかけてきた。

 

「ああ、問題ない。多少なら動いて構わんが、あまり大きく動かないでくれ」

 

私はそう言って、手元のスケッチブックに彼女を描き始めた。

 

「……」

 

後ろから思春が見ているが、私は放置してつづける。

 

「…………」

 

私は多少雑だがデッサンを完成させた。

 

「とりあえず形は出来た。見るかね?」

 

私がそう言うと、蓮華が立ちあがってこちらに来る。

 

私は彼女にスケッチブックを渡すと、思春も蓮華の傍からスケッチブックを覗いた。

 

「……これが……私?」

 

「まだ色付けしていないがね。気になるなら、他の絵を見てみるといい」

 

私はそう言って懐から煙草を出し、2人の風下に立って火を付けた。

 

「……貴方絵の才能があるわね。……って、何してるの?」

 

「ああ、煙草を……といっても分からぬだろうな。卿らに取っては健康に悪い故、風下に立ってくれるな」

 

私はそう言って何度か紫煙を肺で堪能し、吸殻を灰皿に乗せてそれ事宝物庫に戻す。

 

「さて、色付けだが、見てみるかね?」

 

「私が見ていても大丈夫なの?」

 

私の言葉に蓮華が首を傾げた。

 

「構わんよ」

 

私はそう言って、色鉛筆を取りだした……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……あら、2人とも何を持ってるの?」

 

夕食のために一同が集まる中、雪蓮が蓮華と思春が持っている本のようなものに気が付いて問いかけた。

 

「えっと、これは……」

 

「……」

 

何故か言いよどむ蓮華、思春と、その本を見た亞莎が代わりに答える。

 

「あ、ラインハルト様に絵を描いていただいたのですね!!」

 

「え、そうなの。蓮華、思春」

 

「「……はい」」

 

頷く2人。

 

「ラインハルト様の絵は、とてもきれいなんです。風景などは、まさに切り取ったかのようで……!!」

 

「せやな。ライニは絵を描くの得意なんや。平和な世の中なら、絵描きとしてやっていけるくらい上手なんやで」

 

目を輝かせる亞莎と自慢げな霞。

 

「私の自慢をするのはいいが霞、配膳くらいしっかりしてもらわねば困る」

 

私がため息交じりでそう指摘すると、霞はハッとして配膳を再開した。

 

「私たちの分を描いてくれないの?」

 

「機会があれば……」

 

私はそう言いかけて、屋敷回りに近づく大勢の気配と、寧からのメッセージに気が付く。

 

「……雪蓮、すまないが今夜でお暇させてもらおう」

 

「……唐突ね。でも仕方ない状況になったみたいだから、仕方ないでしょうけど……」

 

雪蓮がそう言うと、一同が武将、あるいは文官の顔へと変化した。

 

「私物は置いてない?」

 

「ああ、霞は?」

 

「特にないで」

 

そう言うと、屋敷勤めの兵がやってきた。

 

「張勲様がいらっしゃいました」

 

「いきなりか」

 

苦虫を噛み潰したような表情をする冥琳。

 

「冥琳、できるだけ時間を稼いで。ライニは霞連れて裏手から逃げなさい」

 

「いや、それは不要だ。カールをここに呼び出した手段を使えばよいからな」

 

雪蓮の言葉を、私は一蹴し、グラズヘイムへの扉を展開する。

 

冥琳は穏を連れて玄関へと向かった。

 

「……周陽、貴方は彼について行くといいわ」

 

「……短い間だったが、世話になった」

 

周陽はそう言って雪蓮に頭を下げた。

 

「亞莎」

 

「ひゃい!?」

 

「貴方も行くといいわ。……ついて行きたいんでしょ?」

 

雪蓮は優しい顔でそう言うと、亞莎は孫家の面々を見た後、コクリと頷く。

 

「……その代わり、ライニが野に下ったら、真っ先に孫呉(うち)に仕官するよう、進言しなさい。孫呉はいつでも歓迎から」

 

「……ッ!!」

 

雪蓮が見せた微笑に、亞莎は頭を下げた。

 

「短い間でしたが、お世話になりました!!」

 

そのやり取りを見ていると、霞が横っ腹をつついてきた。

 

「……ライニ」

 

「弁明、手伝ってもらうからな」

 

「しゃあないな。……貸し一や」

 

私は霞の言葉に肩をすくめながら、亞莎の元へ歩み寄った。

 

「亞莎、これからよろしくな」

 

「はいっ、よろしくお願いいたします!!」

 

私はそれに頷いた後、霞の方へ向き治った。

 

「……霞、亞莎たちを連れて先に行っていろ。向こうにイザークがいるからな。案内してもらえ」

 

「了解や、ほな行くで」

 

霞はそういって、周陽、バーサーカー、亞莎と共に門をくぐっていった。

 

「雪蓮、何故亞莎を私のところへ?」

 

「だって、貴方をあれだけ一途に思ってる子を、引き離すのは酷じゃない。それに、私の私兵から抜擢して、半月近く教えたのは貴方でしょ? あと、あの子まだ半人前なんだから、最後まで面倒見るのが、師としての責任でしょ。あ、それとそのうち私のもう1人の妹がそっちに尋ねるかもしれないから、その時はよろしくね」

 

「……前半は分かったが……。後半は新手の脅迫かね?」

 

「それは当人に聞いてみるといいわ。さあ、行って」

 

「……今度は、戦場で逢おう」

 

「出来れば客将ではなく、一軍の正式な将として戦いたかったけど」

 

雪蓮の言葉を聞いた私は口元に笑みを浮かべ、グラズヘイムへの門をくぐった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「こんばんは、孫策さん」

 

「ええ、こんばんは」

 

張勲はニコニコしながら答える。

 

「お食事中でしたか~?」

 

「そうよ。兵士なんて連れてきて、何のつもりかしら」

 

「いえ、ここに黄金の獣がいるという情報を掴みまして。お嬢様が丁重にお迎えしておもてなししろと言われたのですよ」

 

その割には、丁重にお迎えするつもりないでしょう、と言う言葉を私は呑み込んで答える。

 

「残念だけど、いないわよ」

 

「本当ですか?」

 

「ええ。調べたければ調べるといいわ」

 

「……では、兵士の皆さん、お願いしますね」

 

張君がそう言うと、兵士の8割ほどが去って行った。

 

「あの人去る時に言ってたわよ。『汝南袁家に借りを作ると、それを理由に色々汚いことやらされそうだからここに居られて良かった』って」

 

私がそう言うと、彼女はため息をついた。

 

「……そうですか。ああ、麗羽さんをぎゃふんといわせるために、黄金の獣さんを自分の下僕にするという無茶ぶりをする美羽さま見れないのは残念ですね。――全員に撤収を命令してください。ご迷惑をおかけしました」

 

張君はそういって、去っていった。

 

「……何だったんだ……?」

 

困惑の色を隠せてない冥琳の言葉に、包が答える。

 

「そんなの分かるわけないじゃないですか、あの袁家ですよ?」

 

その瞬間、私たち全員がそろって同じことを思った。

 

――そういえば、そうだった、と。

 

そして少し冷めてしまったが、ライニが作った最後の食事をみんなで食べている時に、私はあることに気が付いた。

 

「あ、もらったお酒、ほとんどなくなってた……」

 

 

 

 

 




いかがだっただろうか。

誤字脱字、感想、評価をお待ちしているよ。

では、また次の幕にてお会いしましょう……。

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