恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯戦争   作:月神サチ

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お久しぶりだ。

サブタイトルが仕事していない気がするが、私は気にしない。

あと砂糖成分が不足していたせいか、自分なりにその成分補完に走っているので悪しからず。

では、今宵も私の歌劇をご覧あれ……。


第25話 反劉焉連合と、偽帝出現

――13尾の尾を持つ銀色の妖狐。

 

そしてその主である黒髪の――。

 

「……様。旦那様」

 

自らを呼ぶ声に導かれ、意識は深い水底から浮かび上がった。

 

目を見開くと、美花がこちらを覗きこんでいた。

 

「……美花か」

 

久しぶりに眠ったせいか、反応が数テンポ遅れた。

 

「そろそろ朝食のお時間ですので、湯浴みと、お召し替えをした方がよろしいかと」

 

私の覚醒を確認した彼女は、寝台から降りてそう告げた。

 

「む……。月たちは……」

 

「すでにお目覚めになり、朝食の支度をなさっております」

 

「……そうか」

 

私はそう言って、体を起こした。

 

――やっと思考がいつもの調子に戻ってきた。

 

「湯浴みの支度は整っております」

 

「ご苦労、美花」

 

私は指を弾いてバスローブを纏いつつ、礼を述べた。

 

「私は旦那様のメイドですから」

 

微笑みを浮かべる美花の横を通り過ぎて、私室に付属する風呂へと足を向けた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

朝食時に一部の者から帰還の旨を伝えていなかったことに文句を言われたり、お土産はないのかと言われたり、ちゃっかり司馬建公が食卓に馴染んでいたり、新しく来た者の紹介などしたが、後は私が姿を消した前と大方変わりはなかった。

 

朝食後に大会議室に集合するよう皆に伝え、朝食からおよそ一刻が立った後……。

 

「では、今回の作戦を説明する」

 

私はそう言ってスクリーンに映った映像に目を向けながら続ける。

 

「今回の作戦は大きく分けて3つ、うち一つが特殊な作戦で、総て同時進行で行われる大規模作戦である。まず一つ目の作戦は――」

 

私がそこまで言うと、スクリーンに洛陽全土の大まかな地図が現れ、西涼部分が細かく見えるように拡大される。

 

「姜族が西涼、長安を経由し、洛陽に向かう動きを見せている。理由は漢王朝への恩義に報いるとのことだが、十中八九建て前だろう。最悪西涼を占領しかねないため、8万の軍を割いて長安にいる韓遂と協力して牽制、最悪撃退することになる。また、馬家を筆頭とした西涼の面々が反劉焉連合に参加する意向を見せているため、そちらとの交戦もありえる。おそらく今回の作戦の中では、一番の激戦が予想される」

 

私は一度区切り、数名を一瞥してつづける。

 

「この作戦には、8万の兵を率いる総指揮官として姜維。補佐官としてマレウスとここにはいないカール。そして前線の担い手としてベイ、シュライバー、カイン、レオンハルトに参加してもらう。詳細は卿らに先ほど配った資料に記しておいた。……では次だ」

 

スクリーンを確認すると、再び漢の全国地図が映しだされ、洛陽以東の汜水関までの拡大図が映し出された。

 

「二つ目の作戦は、反劉焉連合の迎撃だ。汜水関、虎牢関それぞれの関を防衛してもらう。汜水関に兵2万5千、虎牢関に3万5千を割り当ててあるゆえ、うまく防衛してもらう。ザミエル、ヴァルキュリア、華雄、張遼、呂布、高順、陳宮、李奉、司馬建公には汜水関を。虎牢関には私、呂蒙、賈駆を配置する」

 

「隊長! 人事に隊長の下心が見え隠れするのは気のせい――」

 

私の言葉に割りこみを掛けてきた寧の言葉は、背後に現れたハサンの振り下ろしたハリセンにより、最後まで聞くことは出来なかった。

 

「……私のサーヴァントが私よりライニに従っている件について」

 

「……オレに振るなよ」

 

「……(コクコク)」

 

水蓮が何故か隣にいる周陽に話題を振っているが、振られた本人は困った顔をし、その従者も頷く。

 

「……汜水関と虎牢関の人員配置にはちゃんと理由がある。汜水関に配置した者たちに渡した資料に書いてあるが、汜水関の将兵はあとあと虎牢関に合流する。それまでの繋ぎくらいは私一人で十分だ」

 

私の言葉に大半が頷く。

 

「ただし、私はあくまで兵を率いる将として、また民のために仕事をする為政者としては兵に信頼されているだろうが、知恵者としてはそこまで信頼されてはいない。ゆえに軍師の経験を持つ詠を同行させ、対外的に知らしめることにより、兵により安心感を与える目的がある。そして亞莎は先達である詠から軍師としての知識をその振る舞いから学ぶために連れていく。異論がなければ次の作戦の説明に行くが……」

 

「……旦那様、私は連れていってくださらないのですか?」

 

悲しげな顔をする美花の言葉に、私は肩をすくめる。

 

「卿には屋敷に残る者たちの面倒と、屋敷の管理を任せているゆえ、そのつもりはない」

 

私の言葉に悲しみの感情を伝えてくる彼女に対し、私は続ける。

 

「だが、努力や成果にはそれ相応の見返りを与えることを私は考えている。無論、凡夫のそれならば、見返りもたかが知れるがな」

 

「……かしこまりました」

 

「他にはいるかね? ……では次の作戦だが」

 

私がそう言うと、先ほどの地図の範囲から少し西にスライドし、司隷全体が入るように地図が写しだされる。

 

「最後の作戦……は軍を動かすにあたり治安の悪化が懸念される。そこで治安維持と、俗などが発生したときの対処などをすることだ。司馬朗、司馬懿、司馬孚、皇甫嵩の4人に任せる。あと困ったらシュピーネとクリストフと相談するといい。洛陽に1万の兵がいるが、それで足りないなら雇うなり強制徴兵するなり卿らの裁量に任せる。最後に、作戦の中で呼ばれなかったものは、手元の資料を参考にしつつこの屋敷で待機、有事の際は城へ避難とする」

 

私がそう言い終わると、スクリーンの地図は消え、代わりに黒を背景とした白い槍とそれに絡みつく2匹の蛇が現れる。

 

「作戦の説明は以上だ。卿らの実力ならば、問題なくこなせると私は期待している」

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

 

~同時刻、陳留にて~

 

「いやはや、皆さまお集り頂き光栄つかまつる。――彼の西涼の馬家が参加するといってた割りに来ていないのが少々残念ではあるが、まあ良しとしましょう」

 

長いテーブルの短辺に寄り添うように行ったり来たりする男がそう告げる。

 

「四代に渡り3公を出し続けた名門の袁家の系譜を引く袁本初殿に袁公路殿、白馬長史と呼ばれる公孫伯珪殿、私と同じく劉家の血を引く劉玄徳殿、徐州牧の陶恭祖殿に青洲牧の孔文挙殿。そしてこの陳留の刺史である曹孟徳殿。これだけの者が一堂に会するなど、夢にも思いませんでしたね」

 

「劉岱、少々前置きが長いのではないか?」

 

劉岱と呼ばれた男は、自分の背後にいた男の方へ振り向き、頭を垂れた。

 

「申し訳ありません。では極力簡潔にします」

 

劉岱はそう言った後、卓に就く者たちを見て続けた。

 

「兵より先んじて皆様に集まっていただいたのは他でもありません。汜水関への一番槍を誰にするか、を相談するためです」

 

その言葉にその部屋にいた者たちは様々な反応を見せる。

 

ほくそ笑む者、呆れる者、他の者たちを見定める者、困惑する者。

 

「さて、まずは何方(どなた)か立候補してくださいませんか? 推薦でも構いませんが……」

 

「「「「「…………」」」」」

 

劉岱の言葉に一同黙りこむ。

 

『まあ、そうなるよね。というか、どれだけ怖がられてるの、あの人』

 

「「「「「!?」」」」」

 

どこからともなく響いてきた言葉に、一同が顔をあげ、周囲を見渡す。

 

「そこかっ!!」

 

どこからともなく夫婦剣を取り出した赤い弓兵が入り口付近の壁へ干将を投げる。

 

その剣は壁のまえで、別の何かにぶつかって弾かれた。

 

『お見事。 そんな君を評し、姿を見せよう』

 

その言葉と共に、壁の前に、ある人物が姿を現した。

 

「初めまして、皆さま。ボクはそうだね……。ななしのごんべえとでも名乗っておこうか」

 

質の良い服をきた、人の良さそうな青年が、笑顔で一同に語りかけた。

 

「……お、お前はまさか」

 

困惑の色を一同が隠せない中、劉岱がありえないものを見ているような顔で口を開いた。

 

「なんだ、劉岱がいるのか。なら名前を隠していても意味ないね。――ボクの名は劉焉。君たちが討伐するべき相手だ」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……単身で乗りこんでくるなんて命知らずもいいところじゃないの、妖術師さん」

 

曹孟徳は目を細めながら問いかけた。

 

それと同時に兵士たちが彼を包囲する。

 

兵士と曹孟徳を交互に見た後、劉焉と名乗った青年はため息をつく。

 

「――――――」

 

言葉にならない音が聞こえたかと思うと、兵士たちが一斉に崩れ落ちた。

 

「ボクはここで血みどろのどんぱちやるつもりはない。それに、ボクが本気なら、既にここは血の海になってるから。あ、兵士は気絶させただけだから、後で起きるはずだよ」

 

「……それでは、単にのぞき見していたとおっしゃるの? それはそれで趣味が悪いですが」

 

袁本初が怪訝な顔でと問いかけた。

 

「信じるかは自由だけど、半分あってるね。残る半分は……君たちへの助言かな?」

 

「助言?」

 

首を傾げる劉玄徳。

 

「それは結果として自分に不利になることよね?わざわざそんなことする意味があるのかしら?」

 

孫伯符が怪訝な顔で問いかけた。

 

「……短期的損得だけで物事を見る人には、そう見えるだろうね」

 

劉焉は少し困った顔で返事する。

 

「……ていうか、お前本物なのか? 劉焉はもっと年上だと聞いてたが」

 

公孫賛がまっとうな疑問を呈すと、劉焉は笑みを浮かべて答える。

 

「まあ、君たちにわかりやすく言えば人であることをやめたから、だね。人であるがゆえに課せられる軛から自由になったから、姿もこんな具合に――」

 

老人に見目麗しい令嬢、筋骨隆々の偉丈夫をはじめ、様々な変化し、最後はラインハルトに変化する。

 

「変化も不可能ではない。その者がどのように話すか知ってしまえば、真似ることは容易だ。大抵のものが持つ武具も再現可能ゆえ、化けてしまえばなかなか見抜けぬよ。もっとも、この姿に化けたとしても、あの男の規格外の武具や、あの男を始めとした聖槍十三騎士団の者たちと同じ力の再現は逆立ちしても無理だが」

 

そういい終わると、元の姿に戻る。

 

「さて、一度しか言わないからよく聞くといい」

 

彼はそう言うと、さながら語り部のように語りだす。

 

 

玉座を阻むは、2つの関と、3人の傑物。

 

一つ目の関を守りし傑物は、黄金の獣の右腕である、紅き騎士。

人中の呂布、神速の張遼、金剛爆斧の華雄、陥陣営の高順、老将司馬防、鋼の聖女李奉、雷の戦乙女と数万の兵を従え、連合を迎え撃つ。

彼の関に彼の主を貶めた者を生贄に捧げよ。

さすれば彼の騎士の怒りが静まらん。

 

 

二つ目の関を守りしは、黄金の獣。

一つ目を守りし傑物と、その旗下を従え、さらに兵をもって、連合を迎え撃つ。

玉座を守りし近衛である彼の者は、先帝との盟約を果たさぬ限り、洛陽への扉を開くこと能わず。

盟約を果たせし時、彼の者は玉座を守りし近衛の役目を果たさん。

 

 

玉座を阻みし最後の傑物は玉座の簒奪者。

一騎当千の(つわもの)さえも容易く屠る怪物なり。

彼の者を打ち破り時、新たな皇帝の産声は大陸に響かん。

 

 

 

彼は言い終わると満足げな顔をする。

 

「さて、ボクのところまで来てよね。でないと興ざめだからさ」

 

彼はそういったあと、上座にいる少年に笑いかける。

 

「……ボクを殺せても、彼……黄金の獣がいなければ漢の零落は免れられない。あとは君次第だ、頑張ってね、少年」

 

「……!?」

 

彼はそう言うと、今度こそ消え去った……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

会議の後、寧、姜維、ザミエル、カイン、ヴァルキュリア、レオンハルト、花音、聆紗、晶は動員令の為に宮城へ向かい、美花は月、詠、メイド着がえさせられた亞莎を始めとしたメイド何人かと、荷物係にクリストフを引っ張って買いだしに行った。

 

……亞莎のあの服、良く考えたらあのアリスの服だった気が……。

 

これもまた世界の修正力と言う奴か……。

 

「ライニ~」

 

思考を半ば放棄しながら廊下を歩いていると、何かが背後から私の腰にタックルしてきた。

 

「……む、白湯か。久しぶりだな」

 

上半身をねじって後ろを見ると、白湯がいたので、そう声を掛けた。

 

「どうした、ライニ。まるで理解の及ばないことに対して思考放棄したような顔をしよってからに」

 

「傾か。……私とてたまには思考放棄したくなる時があるだけだ」

 

傾に対し、やや投げやりな返事をする私。

 

「貴方が思考放棄をする案件とは一体……」

 

「ねえ、何かお菓子作ってよ、お菓子。黄のお菓子はおいしいけど、ライニの作るものの方がおいしいから」

 

何故か戦慄する端姫と、お菓子をねだる空丹。

 

「空丹様、お待ちくださいませ!!」

 

廊下の向こうからパタパタと駆けてきたのは、メイド服の黄。

 

「……よし、今日はせっかくだ。卿らも街へ行くかね?」

 

「……良いの?」

 

きょとんとした顔で問いかける白湯。

 

「ああ、ついでに私が戻ってきたことを洛陽の者に知らせる良い機会だ。シュピーネがいつの間にか作ってた組合とやらから情報は流れるだろうが、本人が出たほうが信憑性があるのもあるが……」

 

「では、お支度の方を致しましょうか、空丹様、白湯様」

 

「そうね」

 

「急ぐんだもん!」

 

黄の言葉に空丹、白湯は慌てて自室へ走っていった。

 

「なら私たちもしたくしませんとね、お姉様」

 

「そうだな。また後でな」

 

傾と端姫もそういって去って行った。

 

「……護衛を頼むか」

 

まずは一番近くに気配があった華雄と霞のところへ行くことにした。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

庭にたどり着くと、2人は武器を構えていた。

 

「む、貴様か」

 

「お、ライニやん。どないしたん?」

 

手合わせしていたのか、双方が肩で息をしている。

 

「手合わせもいいが、ほどほどにしてもらいたいものだ。戦場で使い物にならんかったら話にならんからな」

 

私がそう言うと、華雄が少しムッとする。

 

「それくらいの自重はしている」

 

「……あの脳筋華雄が自重ちゅう言葉使うの聞く日が来るとは思わなんだな」

 

霞が目を丸くするが、すると華雄は遠い目をする。

 

「……黒円卓の者たちと命懸けの修練のおかげかもしれんな」

 

「……」

 

何があったんだろうか、と言いたげな顔をする霞と、華雄を見ながら、私は2人に問いかける。

 

「これから傾、端姫、空丹、白湯、黄を連れて町へ行くのだが、少し護衛を付けたいのだ。卿ら、頼まれてくれるか?」

 

「昼食はおごりやで?」

 

「安い条件だな。無論良い」

 

「ウチはそれなら頼まれるわ。華雄はどないするん?」

 

霞が華雄の方を向いて問いかける。

 

「……ああ。せっかくだ。私も奢ってもらおう」

 

「ありがとう。あと、他の者たちも誘いたい、すまないが楼杏、恋、ねね、水蓮に声をかけてくれ」

 

「分かったで」

 

「さっさとやってしまおう」

 

二人はそういって、武器を片手に庭を後にした。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「……ずいぶんと大所帯だな」

 

「あ、獣様だ」

 

「お戻りになられたというのは本当だったんだな!!」

 

「あれ全員あの方の花だっていうけど、あの人ならあり得そうだな……」

 

私たちの一団を見た人々は思い思いの言葉を口にしている。

 

「ライニ、人気者……」

 

「これだけ巨体で、恰好が恰好ですからな~。嫌でも目立つと言うものです」

 

「まあ、そうなるよね」

 

恋、ねね、水蓮による感想を聞き流しながら、通い慣れた肉まんの店に立ち寄る。

 

「恋、何個いける?」

 

私が問いかけると、恋はしばらく両手を見た後、

 

「30は余裕」

 

と答えた。

 

「では、50ほどもらえるか?」

 

店のおじさんに問いかけると、おじさんは慌てる。

 

「できなくはありませんが、ちと時間がかかりますぜ」

 

「構わん。代金はこれで足りるな?」

 

私は懐からキッチリ50個分の金を入れた巾着を出して渡す。

 

「……へい。キッチリ50個分ちょうどいただきやす。ちょっとお待ち下せえ」

 

私はその言葉を聞いた後、隣の茶屋の空き具合を確認する。

 

「卿らはちょっと待っているといい」

 

そう言った後、私が茶屋に入ると店員がやってくる。

 

「えっと、何名ですか?」

 

「12人だ。席は多少ばらけても構わぬ。あと隣の肉まんを持ちこみたいのだが、構わぬかね?」

 

「……え、えと、こちらでそれなりに注文してくださるなら……」

 

きょとんとした後、店員はハッとして返す。

 

「では、席の確保を頼むよ」

 

私はそういって、一度茶屋から出る。

 

「席を取ったゆえ、こちらに入るといい。肉まん以外が良いなら、店のモノを注文したまえ」

 

そう言うと、一同はぞろぞろと茶屋に入っていく。

 

しかし恋は、肉まん屋の前で待っていた。

 

「恋も先に入っているといい。私が持って行こう」

 

「……(フルフル)」

 

首を横に振ってそれを拒否する恋。

 

「そうか。では先に――」

 

私も茶屋に入ろうと踵を返すが……。

 

「……恋?」

 

私の服の端を掴まれていた。

 

「……手」

 

「……こうか?」

 

彼女の言葉に首を傾げつつも、左手を差し出すと、彼女は私の手を掴み、腕を絡ませた。

 

「……急にどうしたんだ、恋。」

 

私が彼女を除きこむようにして問いかけると、彼女はそっと顔を逸らして答える。

 

「……内緒」

 

恋の行動に戸惑いを覚えつつ、このようなことを唆しそうなメンバーを脳内にピックアップし、尋問することに決めた。

 

なんてことをしていると、大量の肉まんの入った袋がおじさんより渡されたのだった……。

 

 

 

 

 

 

――*――

 

 

 

 

 

店に戻ると、大体まとまった場所に皆がいた。

 

「ライニ、こっちやで」

 

「ライニはこっちよ」

 

「ら、ライニさん、こちらへどうぞ」

 

「ライニ、恋様と一緒にこっち」

 

霞、空丹、楼杏、水蓮から、それぞれの席に来るように言われるが……。

 

「恋と一緒にこっち」

 

といって、水蓮とねねがいる席に座らされた。

 

私の左隣が恋、私の向かいが水蓮で、恋の向かいがねねだ。

 

「……」

 

恋は早速私の持つ紙袋をひったくって、自分の左隣に置き、左手で肉まんを食べながら私の左腕を話すまいと抱きしめている。

 

「「「「「…………」」」」」

 

その様子に思うところがある面々がそれぞれの心情を表情に浮かべながら各々の好きなモノを注文し始めた。

 

「水蓮、ねね。恋の行動に心当たりがあるかね?」

 

「心情のほう?それともこの行動を知った経緯のほう?」

 

「……」

 

眠そうな目をする水蓮は逆質問をし、ねねは気に入らないと言いたげな表情を見せる。

 

「両方だ。もっとも、前者はそうなった経緯のほうを」

 

「ライニが捕まる前、何度か木の傍で、ライニと恋様が一緒に昼寝してたのは覚えてるよね」

 

「無論」

 

「ライニがいなくなった後、恋様のおかわりの量が半減して、戦えば、華雄や寧に負けるようになり、暇さえあれば、ライニのいた場所で昼寝するようになった。それを見かねたのが美花」

 

「……」

 

私はそのまま続けるように目で促す。

 

「恋様と美花が2人だけで話をしたら、急に元気になった。まるで押さえこんでた何かを解き放ったみたいに。……私たちが知ってるのはこのくらい。後半は美花の言葉だから、どこまで本当か知らないけど」

 

「……そうか。……む?」

 

ここで思いだしてほしいが、私が作った専用の礼装を持ち、私とチェインした者は私と心を通わすことが出来る。

 

慣れにもよるが、場合によれば別のこと考えながら私と対話出来たりする。

 

『旦那様、どうか恋様のこと、受け入れてあげてくださいませ。ほかの方には、今夜開けるように伝えておきますので……』

 

『……』

 

私は後日折檻する旨を伝えたが、喜びの感情が帰ってきただけだった。

 

「……早めに切り上げるか」

 

私はそう独りごちた……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

茶屋で一休みした後、私たちは昼になるまで街のあちこちを冷やかして回った。

 

その後、私と恋以外は昼食を取りに行き、私と恋はいつもの木の幹に身を預けていた。

 

「……恋、食事を摂りに行かんのか?」

 

「……ライニが行くなら」

 

「……」

 

「……」

 

恋の方を見ると、私の腕を放さないとばかりに両腕で抱きしめている。

 

「その体勢では、辛くはないか?」

 

「大丈夫」

 

その後、しばらく沈黙が続くと、今度は恋が話しだした。

 

「ライニいない間、寂しかった」

 

「……」

 

「家族や、ねね、水蓮。……みんながいたけど、何かが足りない気がした」

 

彼女はもぞもぞと動いて私の方へ顔を向けた。

 

「ご飯もおいしいはずなのにいつもみたいに食べられない。いつもみたいに戦おうとしたのに、思ったように動けない。恋は、頭良くないから、どうしてか分からなかった。けど……」

 

「……けど?」

 

「ここにいるとき、ライニの匂いがするところにいるときは、胸がぽかぽかとした。それだけは分かった」

 

その微笑は、どこか誇らしげで、ちょっと恥ずかしげだった。

 

「美花が、ある日教えてくれた。恋は、ライニに恋をしてるって。だからいないと寂しくて辛い、ご飯も十分に食べられない。考えてなくても体が勝手にライニのことを探してるって」

 

「……」

 

全知なるや全能の星(シャ・ナクパ・イルム)も、私の頭脳も同じ結果を吐きだした。

 

――恋はラインハルト(わたし)に恋心を抱いているが、その感情に振り回されている、と。

「……恋」

 

「? 何」

 

きょとんとする恋の頭を、そっと撫でる。

 

「……♪」

 

「卿は私に恋しているのは、十分に分かった。だが、卿は少々感情に振り回されているな」

 

「……美花は、ライニに抱いてもらえば直るって言われた。その気にさせるために、美花に教えてもらった通りに頑張った。ライニ、その気になった?」

 

「……!!」

 

爆弾発言に最近恒常化しつつある頭痛が再びして来た私は、とりあえず美花への処罰を確定した後、問いかけた。

 

「……恋」

 

「……何、ライ――」

 

恋が言い終わる前に、上手く腕の拘束を解き、恋の唇を奪った。

 

「さすがた」

 

何か聞こえたほうへ宝物庫から出した魔剣聖剣などをぶっぱした後、そっと離れた。

 

「どうだったかね? 初めてのキス……。口づけの感想は」

 

「ん、……どきどきした」

 

心なしか上気している恋に私は微笑みかけた。

 

「そうか。もっとドキドキすることを、これからするが、大丈夫かね?」

 

私が問いかけると、私の身体に自身の身体を寄せて、恋は答えた。

 

「大丈夫。もっと、ライニでどきどきしたい……」

 

恋の言葉を聞いた私は、そっと彼女を横抱きにした。

 

すると彼女も私の首に腕を回した。

 

私はそのまま、恋を自分の部屋へと連れていった……。

 

 

 

 

 

――*――*――*――

 

 

 

 

 

「ふむ、やはりこの外史とやらにも、座に近しい場所があるようだ。もっとも、規模は元の世界に比較するまでもない上、誰もいない、が」

 

首を傾げる胡散臭い男に、ボクは問いかけた。

 

「何してるのかな、カール・クラフト」

 

「……なに、少し調べものだ。さて、そろそろ一度獣殿の元に戻るが、何か伝言はあるかね?」

 

彼が立ちあがった後、ボクに問いかけた。

 

「最後は派手にやるから、後片付けをお願いね」

 

すると彼は、少し間をあけた後、答えた。

 

「最近胃痛と頭痛に悩まされているという獣殿に、更なる苦痛を与えるのは実に心苦しいが、私も心を鬼にして伝えておこう」

 

いってることはまともなのに、表情が全く変わっていないのが、とても残念だなと思いながら、彼が通り過ぎていくのを、ボクは見ていた……。




いかがだっただろうか。

感想、評価、誤字脱字をお待ちしているよ。

では、また次の幕にて、お会いしましょう……。












――ここから先は、現時点でそこまで重要なことは書いてありません――





















次回作にしてリメイク、『恋姫✝無双 黄金の獣と聖杯大戦』
を、ちょこっと紹介。


――黄金の獣は大地に立つ。

――此度は一人のマスターとして……。

「フィオナ騎士団が一番槍、ディルムッド・オディナ、推参いたしました」

「貴方は……誰?」

「ぼ、くは……アス…テリ…オス」

「治療を施します」

「今度はキャットまで弾かれたワン!?」

「頭を垂れなさい。不敬ですよ!」

「ボクの名前か……。始皇帝、何て言っても信じられないよね」

「久しぶりですね、士郎、凛」

「まったく、再び君と並び戦うことになろうとはな。セイバー」

「まあ、なかなかの勇士がいるじゃない。……ん? アレ、あの男の槍に似てる気が……」


現在、こっちと同時並行で、鋭意製作中!

来年度中に公開予定。

お楽しみに!?
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