今回は水面下で物語が動くようだ。
なお、物語自体はぜんぜん進んでいない
では今宵も私の過激をごらんあれ――!!
「では、これより作戦会議を始めます。……あの、ひとつ良いですか?」
私は劉弁様の隣に佇む男に問いかけた。
「なんですかな、結衣さん」
笑顔の彼に私は眉をひそめて告げる。
「何で私が司会進行役なんですか? ほかに適任がいると思いますが……」
「私が司会進行を行った前回の会議はあまり評価がよろしくなかったので、誰か適任がいないかと曹孟徳に相談したら、貴方の名前が挙がったのですよ。曹孟徳さんの推薦ならば間違いないと思いましたので」
「……」
私がジト目で彼女を見ると、彼女は笑顔を見せた。
「……まあ、色々いいたいことがありますがそれは後にしましょう。まずは現在の状況を確認しましょう」
私はそういった後、一堂を確認した。
「まずはじめに反劉焉連合に参加している主だった勢力の長の名だけを挙げていきます。劉弁陛下、袁本初様、袁公路様、公孫賛様、陶恭祖(陶謙)様、孔文挙(孔融)様、鮑允誠(鮑信)様、劉景升(劉表)様、劉玄徳様、以上9つの勢力による連合となります。付け加えると他にも豪族などから物資の支援が来ていますので、本連合に賛同している者は多いかと思われます」
私の最後の言葉に、一部の者は安堵した表情を見せる。
「次に、双陣営の陣容を可能な限り比較したいと思います。こちらの兵はおよそ23万5千。内訳は劉弁様に従う劉岱様の2万、袁本初様の4万、袁公路様の4万、公孫賛様の3万、陶恭祖様の2万5千、孔文挙様の2万5千、鮑允誠様2万、劉景升様2万、劉玄徳様1万5千となっております。なお、端数は省略しているため、もう少し多いと思われます。一方汜水関防衛に回っている兵は2万5千程。この数字が正しいこと前提ですが、数の上で見れば、敵の9倍以上こちらの兵はいることになります……が、正直楽には勝てないでしょうね」
「……む? それだけの差があれば、問題なく勝てるのではないか?」
劉弁陛下の問いかけに私は肩をすくめる。
「
私がそう言うと、三人は華琳の後ろで顔を見合わせた後、説明を始めた。
「まず初めに敵は汜水関という関に入り、防衛しています。普通、関や城などを攻めるには敵の兵力の3倍は欲しいといわれています。そのため、結衣が言っていた『戦場が平地』、『向こうが策も考えずに突っ込んでくる』という条件から外れます」
「なるほど」
桂花の説明にうんうんと陛下は頷く。
「次に、我々は汜水関を攻略した後、汜水関を超える兵力を抱えた虎牢関も攻略しなければならないので、それも考慮しつつこちらの損耗を可能な限り抑える必要があります。そもそも、兵士を可能な限り死なないような采配が出来なければ、兵を率いる者としては相応しくありませんが」
「うむ、最もだな」
風の説明に陛下は心なしか表情を引き締める。
「そして何より、我々は連合のため、兵の質が同じではない上、足並みは当然そろっていません。そのため、息を合わせることはかなり難しいと言えます。そして最後に向こうにいる将はほとんどが万夫不当の猛者か、張良や陳平に比肩する知恵者ばかり。結束を乱そうにも、黄金の獣に心酔している者ばかりなので乱しようがないのです」
「……だんだん勝てる気がしなくなって来たのだが」
不安げな表情を浮かべ始めたので、私は希望を見せる。
「ああ、その点はそこまで心配ないかと。別に勝てなくても問題はないはずなので」
「……? 一体それはどういうことだ?」
首を傾げる陛下に対し、私は一度華琳を見た後に答えた。
「汜水関に関しては、数日中に向こうからくる使者の要求を呑めば、汜水関にいる部隊は撤退するとのことなので」
「「「「「!?」」」」」
「……その情報はどこから?」
困惑する一同とは打って変わり、劉岱は怪訝そうな顔で問いかけてきた。
「3日ほど前に斥候の一人に文を持たせて、使者として汜水関に向かわせたのですが、その使者が先述したような旨の返事をもらったので。華琳次第ですが、その文を見せても構いません」
私がそう言うと、彼女は少し怒気を孕んだ声で答える。
「……別に構わないけれど、せめて先にそうすることを伝えてほしかったわね」
「申し訳ありません、何しろ何の前触れもなく司会進行役を任されましたので。流石にこれでは打ち合わせもへったくれもないと思うのですが?」
私がそう言うと、彼女はため息をついた。
「ええ、私が悪かったわ。今度はちゃんと話を通すようにするわね」
「(次があるか分かりませんが)それは賢明な判断かと。では、こちらがその返事です。一つしかありませんので、読み終えましたら隣に回してください」
私はそう言って、まず劉弁陛下に渡した。
「……実に簡潔で達筆だな。『現時点でこちらが攻撃をする場合は以下の二つ。一つは汜水関以外の道を通ろうとした場合。もう一つはこちらの要求を満たさずに汜水関を通ろうとした場合。後者に述べた要求は後日正式な使者を送る。要求を呑むかどうかはそちら次第だ。それと、こちらが放棄した汜水関は好きにするといい』……文の最後に見たことない文字があるな……」
内容を読みあげた陛下はすぐに劉岱に渡した。
「それは向こうの署名だそうです。ちなみにそれは使者の前で赤騎士が直筆で書いたものだそうです」
「……ふむ、昨日一昨日と奇襲をかける機会があったのにかけなかった理由はこれを忠実に守ったから、ともとれますが……」
扱いに困ったような顔をする劉岱。
「……とりあえず、数日は夜襲などに注意しつつ様子見をした方が賢明なのでは?」
劉表はあごひげを撫でながら意見する。
「いや、使者を出すと言っておきながら、出さぬつもりだろう。ここに我々を釘付けにし、兵糧を摩耗させるのが目的に違いない」
鮑信が反対意見を述べる。
「……私は静観した方が良いと思いますが……」
袁紹は劉表の意見に同調し、
「鮑信殿と同意見ですな。どうも信用できん。あの偽帝が述べた通り汜水関を赤騎士が守っていると言う時点で何か裏がある気がしてなりませんな」
孔融は鮑信の意見に賛成する。
「……『赤騎士が使者を送る』ことが本当かどうかわからぬことには意見のしようがない」
陶謙が保留を宣言し、
「待った方が良い気がします」
「私も麗羽と同意見だ」
「1,2日くらいなら大丈夫じゃろ」
「私は結衣を信じて待つわ」
劉備、公孫賛、袁術、華琳の待つという意見が出る。
「以上の意見が出ましたが、方針はいかがいたしますか、陛下」
「……今日、明日の2日間は夜襲などに警戒しつつ待機、その間に使者が来なければ汜水関攻略に切り替える」
(双方の意見を考慮しつつ、妥当なところに落としこんだ、か。判断としては上々ですね。下手にどちらかの意見を重点的に取り入れた場合却下された側の不満がたまるのは明白。おそらく諸侯の大半が黄金の獣と積極的に事を構えるつもりはないことを理解しているからこそ、積極的な行動に出ないのでしょう。しかしずっと待ちぼうけしている場合、何が起こりうるかはわからない。しかしこの案ならば……)
「聡明な判断かと。行軍の兵の疲労も考慮すれば万全の体制を整える猶予となり、諸侯としても各々の交流を図り、連携を生み出す期間となりえましょう。では、特に意見、反論などがございますか? ないようでしたら、此度の軍議はここまでとさせていただきますが……」
私は一同を確認すると、私の指摘に納得して妥協する者や、ほっとする者がいるだけで特に意見を出そうとしているものはいなかった。
「では、此度の軍議は以上といたしましょう。次は使者が来たとき、あるいは2日後となりますので、それまではそれぞれ最善を尽くせるように準備をお願いいたします……」
――*――*――*――
「……怒鳴り声が聞こえてましたが、大丈夫なんですか、マスター」
「私びっくりして思わずロジーさんにしがみついちゃったんですから」
自分の天幕に戻ると、白髪の青年と(頭の中と)髪がピンクな少女が心配そう(?)な顔をしながらこちらにやってきた。
「(……チッ)ええ、大丈夫です。いつもの男嫌いな方にガミガミ言われただけなので。ところでねりこは?」
内心舌打ちしつつ、私は彼の問いに答え、ついでに確認を取るとロジーが答えた。
「やっと虎牢関についたと先ほど連絡が届きました。おそらく今、マスターが話題に上げていたあの人と話しているころだと思います」
「それは上々」
私は少し考えた後、二人に頭を下げた。
「マスター?」
「ど、どうしたんですか!?」
「お二人は本来霊地に工房を構えて道具を作って他のサーヴァントに対抗するはずなのに、私のせいで十分な道具を作ることができないままになってしまっていることを改めて自覚したので」
頭を下げたままそういうと、二人のあわてた声がしてきた。
「そんなことはありませんよ!! むしろ私たちが普通の道具すらうまく作れないからいつ用済みとして捨てられるか不安だったくらいですから」
「エスカのいうとおりです。いくらオレたちがもといた世界と素材がぜんぜん違うとはいえ、役に立つ道具などをほとんど作れていませんし、セイバーを撃退できたのだって、マスターとねりこさんがいたから何とかできたんです。……聖杯戦争で役に立つどころか足を引っ張っているオレたちを見捨てないでいてくれるだけで申し訳ないというのに、その上マスターに頭まで下げられたら立つ瀬がありませんよ」
私は顔を上げて答えた。
「……では、お互い様ということで、今後も最善を尽くしましょう」
「それが良いと思います」
「こちらも引き続きご迷惑をおかけしますが、どうかよろしくお願いします」
二人の返事を聞いた後、私は質問した。
「では、今後の予定なのですが……」
――*――*――*――
~同時刻 虎牢関~
「ラインハルト様、使者を名乗るものが来ています」
私が詠とともに亞莎に勉強を教えていたところに兵士がやってきて、そう告げた。
(このタイミングで使者……? 華琳、雪蓮、桃香、白蓮、麗羽のものではないな。ならば私だけでいくほうが良いだろう)
「応接室へ案内してくれ。二人はここで待っているといい」
私がそういうと、兵士はすぐさま駆けていった。
私もそれに続こうとしたが、袖を引っ張られたので振り返ると詠が何故か不満そうな顔をしていた。
「……片時も離れるなっていったの誰よ」
そっぽを向きながらそう言った詠。
「わ、私も詠さんから色々学なければならないので」
「だからといって、その発言がアンタがボクとライニの情事を覗き見できる免罪符になるわけないでしょ、馬鹿!!」
亞莎の言葉に昨夜に起きた出来事を蒸し返して怒る詠。
「詠、その話は後だ。……詠、亞莎も一緒に来るといい」
「はい!!」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
私の言葉に亞莎がうれしそうに返事をし、詠があわてた声でこちらを追いかけ始めた……。
――*――*――*――
「かえれ」
部屋に入った瞬間に見えた白銀の長い髪と褐色の肌、そして自他共に認めるナイスバディが印象的な女性を見た瞬間に、私はそういった。
「使者に対してその対応はないとおもうのじゃがのう。というか、我のような女に対して開口一番に帰れなど言うのは一人しかおらん。……やはりおぬし将臣か」
「……」
私が反応に困っていると、彼女は妖艶に笑う。
「まあ、お主が帰れというなら、
「……詠、亞莎。色々聞きたいだろうが後でいいか? 今は彼女との話をしなければならない」
私が色々聞きたそうな二人にそう問いかけると、二人はうなずいた。
「なんじゃ、それならそうと早く言わんか。あ、我とお主の仲じゃから今更じゃろうが我は別に茶などいらぬからな」
まるで我が家のような振る舞いにため息をつきつつ、私は彼女の向かいに座り、詠と亞莎を私の左右に座らせた。
「……で、話とは何かね、ねりこ」
「まずお主にいくつか聞かねばならん。我と主の想定と外れた状態のようじゃからな」
「可能な限り答えよう」
「お主は今『アーチャー』のサーヴァントとして顕現している。そしてそっちの小娘がマスターである。これに間違いはないか?」
「ああ」
「次に、――なんでそんな姿になった?」
「語ると長い。紆余曲折あって英雄王の力と宝具を得、
「……普通なら眉唾物として一蹴するところじゃが、うちの主を知っているがゆえに一蹴できんのう」
珍しく困った顔をするねりこ。
「まあそれはそれとして、お主は今の主とは肉体関係をもって、そっちの小娘もそのうちおいしくいただくつもりか。まったく相変わらず節操のない男じゃのう。毎回主にボコボコにされているというのに、学習能力がないと嘆くべきか、愛多きままであることを喜ぶべきかなやみどころじゃのう」
「……ライニ?」
「……(///)」
そして特大級の爆弾を落とされたおかげで詠からは黒いオーラのようなものが見え始め、亞莎は恥じらいと妄想の加速で何故かまだ訪れていない初夜まで心がトリップしている。
「お主が相変わらずなのが確認できたから、本題に入るがよいかのう?」
「ああ。……といってももういわずとも分かったが」
「ふむ、では連合が洛陽に到着した後にそちらに押しかけるゆえ、どこか適当な霊脈を用意してくれるとありがたいがのう」
「……善処しよう」
私がそういうと、彼女は笑顔を見せた後立ち上がる。
「それならよい。そしてその言葉を聞いた時点で我がの用は済んだ。またのう、あでゅー!!」
そういうと、一人勝手に彼女は去っていった。
「……つ、疲れた」
私がそうこぼすと、詠が私の手に自身の手を重ねてきた。
「……ライニのジェノメトリクスの中で、視たから、あの人が誰か知ってる。それに、
「……もうそこまで知ったのか」
少なくない驚きとともに思いを吐露すると、詠は先ほどまで黒いオーラをまとっていたことが嘘のように消え去り、慈愛の表情を浮かべていた。
「けど、全部は知らない。……いえ、むしろ知ってるのはほんの一部かもしれない。あんたがどんな人生を歩んでいたか、何を想い続けているのか。最後の扉が開かれない今、あんたが話してくれる以外方法はない。でもいいの。誰にだって覗かれたくない秘密の一つや二つ持ってるんだし。でもね、ライニ。ボク達は待ってるから。あんたが話してくれるのを」
「……ありがとう、詠。そしてすまない。しばらく一人にしてもらえるか」
「……分かったわ。行きましょ、亞莎」
「ラインハルト様……。失礼します」
二人がそういって去った後、私はため息をついた。
「……なあ、ラインハルト。オレはどうすればいいと思う?」
私の隣には俯いている黒髪の青年がいつの間にかいた。
「すべてをありのままに話せ。彼女らがかつて卿を迫害した者たちと同じにならないと信じるならな」
「オレを受け入れてもらえるかなぁ?」
青年の見せたその弱々しげな表情はさながら雨にぬれた子犬を彷彿させた。
「詠や美花なら問題ないだろう。今更心を読まれたところでどうということはないのだから。それにその力ももうひとつの力も卿は自分で御せるようになった。それを伝えればよいだろう。――それと後者は私のレギオンを生み出す能力と同じではないか。卿のその力を拒絶されるなら、私の力が拒絶されるほうが先だろう」
「……そういやあそうだな。なんか安心したな……」
どこか消えてしまいそうな儚い声が途切れると、私は立ち上がり、部屋を後にした……。
いかがだっただろうか。
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ねりこ「やったな、将臣。頭痛と胃痛の原因が増えるぞ!」
獣殿 「勘弁してくれ」