清涼祭妨害
明久SIDE
僕と雄二がAクラスへ戻る途中、康太が此方へ走って来た。
康「……明久、雄二」
明「どうしたの?」
雄「どうした、ムッツリーニ」
雄二のムッツリーニ発言に(効果は無いが)しっかり否定しつつも、康太は本題を話した。
康「……営業妨害が起きている」
それを聞いた時の僕と雄二の顔は苦虫を噛み潰したような顔をしていただろう。
康「……とりあえず来てくれ」
雄二と共に無言で頷き康太の後に付いて行く。
康「……問題の客は三年の男子二人だ」
雄「最高学年だってのに何やってんだか」
明「全くだ」
?「おい、このスープに虫が入ってるぞ!」
?「こっちの料理も物凄く不味いぞ! 責任者呼べ、責任者!」
僕と雄二と康太がAクラスの教室に入ると、大声でそんなセリフが聞こえてきた。そして周りを見てみると、他のお客も迷惑しているようだった。
明「なあ雄二、康太」
雄「な、何だ明久」
俺(・)が若干の殺気を出しながら聞くと、雄二が震える声で聴いてきた。康太に至っては顔を青くしている。
明「ちょっと聞きたい事があるんだが、いいか?」
雄「お、おういいぞ」
康「(コクコク)」
明「今厨房で調理を担当しているのは誰だ?」
康「……今担当しているのは、明久の嫁メンバーだ」
明「……そう。雄二はこの後の後始末とフォロー頼む。そして康太は————をしてくれ」
康「……了解した」
それだけ言って問題の二人の所に向かう途中に、フィリ達五人の姿が見えた。
彼女たちは全員泣いてはいないものの、何処か気落ちしたような感じだった。その顔を見てさらに苛立ちが募る。
明「失礼いたします。責任者(元々決まっていた)の吉井明久です。何か不都合がございましたか」
笑顔でそう声を掛ける(目は笑っていなかっただろうが)。
常「おう、やっと来た!!?」
夏「全く、来るのがお!!?」
僕の顔を見たモヒカンと坊主の顔が恐怖に染まる。
明「どうかしましたか?」
常「い、いや何でもねえ。それよりこれはどういいう事だよっ! 虫が入ってんぞ!」
夏「こっちの料理はクソ不味いしよぉ」
気を取り直して強気でこっちを見て、文句を言って来る。しかし俺はそんな事より、坊主の言った『クソ不味い』発言に頭の血管が切れそうだった。其処を必死に、必死に抑える。
明「おかしいですねえ、衛生管理はちゃんとしてますし」
常「ちゃんとしてねえから虫が入ってたんだろうが!」
俺のセリフを遮ってモヒカンが話す。全く人の話は最後まで聞くものだ。
明「それに」
そう言って俺が指を鳴らすと、教室にある巨大ディスプレイにモヒカンが虫を入れる映像が流れる。これは先程康太に頼んだものだ。
しまったという感じの顔をするモヒカンを、無視して坊主の方を向く。俺にとってはこっちの方が本題だ。何てったって大切な大切な(大事な事なので二回言いました by明久)嫁の料理を不味いと言われたのだから。
これが姫路並に不味いなら分かるが、彼女たちの料理は自分が教えたのだ(二、三人必要なかったが)。自惚れるわけではないが、俺の料理は人並みには美味い(確実にプロの域ですけどね by作者)。その俺が教えたのだから彼女たちの料理が不味い筈がない。
明「次にそちらの件ですが」
夏「お、おう」
先程よりも笑みを深くすると、坊主の顔が強張るがそんな事は気にしない。
明「始めに他の此方の料理を食されたお客様にお聞きいたします。この料理は不味かったですか?」
客3「いいや、とっても美味かったぞ」
客4「ええ、とっても美味しかったわ」
客5「この料理が不味いなんて、舌がおかしいんじゃないか」
坊主から顔を上げ坊主の注文した料理を、掲げながら教室内に居る他のお客に聞く。すると返ってきたのは好印象なものばかりだった。
明「と、このようにあなた以外の他の客様から数々の好印象を受けております。即ちこれを作った者の腕が悪いという訳ではありません。此処までは分かりますね?」
もう一度、坊主の方に向き直って問うと、坊主はもうただ首を縦に振るだけになった。
明「もし仮に、この料理があなたの口に合わなかったとしても、あなたはレストランやファーストフード店等に行った時に同じような行動を取るのですか?」
坊主はただ首を横に振る。気のせいか視界の端に映る雄二たちの顔も、恐怖で強張っているような気がする。
明「学園祭の生徒が出しているお店も同じ事でしょう? 取り敢えずお前らには二のAに入ることを禁止する。そして個人的にOHANASIをするからこっちに来い」
最後の方で口調が崩れたけど、気にせずにモヒカンと坊主の二人の襟首を掴み、誰の迷惑にならない裏方に引きずって行く。その後ろでは雄二が他のお客に対してのフォローをしていた。
雄二SIDE
マジ切れモードの明久が常夏(あの二人の渾名)を引きずって行った後、あいつに頼まれた通りフォローをする為に手を叩いて客の注目を集める。それにしても赤い甲冑姿の俺がこの役をやるのは絶対に間違っていると思う。
雄「皆様、先程は大変ご迷惑をお掛けしました」
客3「気にして無いからいいぞー」
客5「むしろスカッとして気持ち良かったからなー」
客4「あの執事さん、カッコいい~」
意外とスカッとしたや気にして無い等の印象を持たれていたらしく、評判は悪くない。そして女性客の殆どが明久の事をカッコいい等と言っており、明久株が上昇していた。おそらく何人かか大半は明久に惚れただろう。
雄「そういう訳にはいきませんので、今お食事をされているお客様の料金を半額にいたします」
俺がそう言うとあちこちから、ラッキーなどの声が上がる。どうやらこれで評判は落ちなくて済みそうだった。
余談だが、それ以降の女性客の来店が明久効果で増加し、明久の指名率と人気がうなぎ登りだった。