清涼祭元凶と本当の姿
三人称SIDE
明久と雄二が召喚獣の大会に優勝し表彰を終え、腕輪のデモンストレーションが終わった直後廊下を早足で移動しながら、そのまま教頭室に入って行った人物がいた。
竹「クソッ、何で腕輪は暴走しないんだ! あの屑の観察処分者とA級戦犯で不良の屑も点数は高かった筈だっ!」
教頭室に入って行った人物もといこの部屋の主の教頭の竹原は、戸を閉めるなりそう怒鳴った。此処は一応防音対策はしてあるので戸に耳を押し付けて盗み聞きをしようとしない限り、外に音が漏れる事は無い……ハズ。
竹「大体あいつ等もあいつ等だ! 折角この私が大学への推薦をしてやるという約束もしてやったのに、あんな屑の観察処分者と社会のゴミである不良の悪鬼羅刹なんぞに負けやがって。本当に使え…………?」
そこで一旦竹原が独り言をやめ気付く。
いつの間にか教頭室が真っ暗になっていたのだ。
証明はもちろん消され、窓のカーテンも閉められている。しかも閉められたカーテンの隙間からは光が漏れ出ていないので、完全に真っ暗である。
竹「ど、どうした!? 何が起こっている!? 誰かのイタズ」
?「大の大人がゴチャゴチャ喚くンじゃねェ」
急に暗くなったことにより慌てた竹原が声を上げながら狼狽えていると、彼のセリフを遮るようにして彼の後ろから声が聞こえた。
その声は普通の話し声と変わらない筈の声量なのに竹原の耳にはハッキリと聞こえた。
普段の竹原ならその声の主が誰だか分かったかもしれないが、生憎今は色々な事が重なった所為で冷静さを失っていた。
そして竹原が声のした方を恐る恐る振り返ると————————
百「よおォ、教頭せんせェ。これからチョットばっかしOHANASIが始まるンだけどいいよなァ」
—————————ブラコンという名の白い悪魔がいた。
竹「ヒィッ!?」
百合子の姿を見た瞬間、竹原は短い悲鳴を上げて腰を抜かす。
竹原は知っていた。百合子が表の世界で天才少女と呼ばれているのとは反対に、裏の世界では殺す時は相手を当り前の様に殺す事から『白い死神』やその他にも色々と畏怖の念を込めた渾名がある。
しかしそこで竹原は気付く。
いくら百合子が白いとはいえ全く光源が無いこの部屋でこうもはっきり見えるのはおかしい、と。
実際それはとても奇妙な事だった。
百合子と竹原の体はこの暗い部屋の中でも輪郭が見えるほどハッキリとしていた。まるで身体自体が発光しているかのように。
百「それに、今回お前に用があンのはオレだけじゃねェンだなァ」
竹「? ………まさか!?」
竹原がそれを百合子に確認しようとした時、百合子を起点にし竹原を囲むようにして火の玉が一定の間隔で生まれた。
竹「ヒィッ!? ひ、人魂っ!」
まだ完全に冷静になれていなかった竹原はまた怯えた。
その竹原に少しイラついた声が掛かる。
?「残念、これは狐火よ」
?「まあまあ、見た目はあんまり変わらんのでござるから間違えるのも無理はないでござろう」
?「ですが明久は一発で見破っていましたわよ」
?「まあアキはそこら辺の事のスペックも高いからね~」
?「だが時々物凄く鈍感の唐変木になるがな」
イラついた声に続いて次々と声が聞こえてきてそれらの声の主が竹原の前に姿を現した。
やはり、と言うべきか出て来た人物たちは竹原の予想した通りフィリ、舞依、ルナ、美弥、リエだった。だが少しばかり変化していた。
まず一番変化していたのが舞依と美弥だった。
舞依は九本の狐の尻尾と頭に狐の耳が付いていた。
美弥は二本の猫の尻尾と頭に猫の耳が付いていて瞳孔も猫の様になっていた。
つまり二人は九尾と猫又に戻った(・・・)のである。
そして二人ほど出ないにしろ目に見えて変化していたのがルナとリエである。
ルナは半透明になっており向こう側が透けて見えている。さらに竹原を囲んでいるのとは別の火の玉がルナの左右に一個ずつ浮かんでいた。
リエは背中から黒い鳥のような翼が一対生えていた。
最後のフィリだが、彼女は他四人に比べると些細な変化だった。
フィリは眼帯を取りその下にあった黄金(こがね)色に輝き時計の文字盤と長針と短針が露わになっていた。
竹「!? な、何だその姿はっ!」
フィリと百合子以外を見た竹原が叫ぶ。
百「それでェ、お前は今回の誘拐事件等の関与を認めるンだろうなァ」
竹「ふ、ふざけるなっ! 第一証拠が無いだろう」
先程まで恐怖で竦んでいた筈なのに百合子に食って掛かる竹原を見て、彼女達は「そこまで捕まりたくないのか」と呆れていた。
舞「いいえ証拠はあるわよ。ほら」
竹「何っ!?」
舞依の言葉に目を剥く竹原だったが目の前に乱雑に置かれた書類の束を見て血相が変わる。
ル「一応言っておくけど、それはコピーの奴だからそれを処分しても意味無いよ~」
更にルナの言葉により竹原はガックリと項垂れた。最早抵抗する気力も無いようだ。
フィ「これで一件落着だな」
竹原を予め呼んでおいた警察に証拠と一緒に引き渡した後、彼女達はまだ教頭室にいた。
本当は彼女達もAクラスの出し物でシフトが入っているのだが、クラスメイトに代わって貰っている為まだ十分程度は時間があり、どうせなら時間ギリギリまでゆっくりしようという事になりここに居るのだ。
?「へえ~、なにが一件落着なの?」
リ「ッ!?」
舞・ル・フィ・美・百「「「「「!?」」」」」
彼女達が竹原を捕まえる事は明久を除いた大和組しか知らない。そして凪と有沙は先程は教頭室の前で邪魔者が入ってこないように見張っていたが、今はAクラスに戻っている。
なので此処に居るのは彼女達六人しか居ない筈なのだ。だが先程彼女達の誰でもない声が聞こえた。それも全員が聞き覚えと言うよりこの世で最も好きな声を。
?「どうしたお前ら? 早くこっちを向けよ」
この世で最も好きだが今は尤も聞きたくない声を聴いて、背中に冷や汗をダラダラ掻いている彼女達にもう一度声が掛かる。
ギギギギと錆びたロボットの様に首を後ろに向けると、彼女達の予想道理後ろに般若を従えた(比喩表現)明久がいた。
明「全く、終わったんなら早く戻って来い。俺と雄二が優勝した所為か客が昨日の比じゃ無くてな、みんな忙しくなってきたからお前らも戻れ」
呆れながらそう言う明久に百合子たちは呆気に取られた。
フィ「え、えっと明久。お、怒ってないのか」
明「何がだ? お前らが俺に知らせないで教頭と対峙したことか?」
フィリ達『ッ‼』
明久の言葉にビクッと体を跳ねさせる彼女達だったが次の明久のセリフによって安堵の表情になる。
明「確かに俺に知らせずにやったことは怒ってはいるが、それは俺が決勝とか色々あったからだろう? だったら俺の事を思ってくれたから許す」
美「で、ではどうして明久の背後に般若が?」
美弥が恐る恐る彼女達の聞きたかったことを代表して聞くと明久はあっけらかんと答えた。
明「お前らがサボってるからだ」
フィリ達『……え? それだけ?』
明「それ以外に何がある。今は昨日のが可愛く見えるほど大変なんだからな」
やや疲れた顔で言う明久を見た彼女達の顔は自然と綻んだ。
明「ほらさっさと行くぞ」
フィ・舞・ル・美・リ・百『うん(ン)(ええ)』
文月学園清涼祭、皆が笑顔になるそこはもう後夜祭しか残っていない。
最後は一存風にしましたがいかがでしょうか?
GW中にもう一話投稿できればな、と思っています。
次で清涼祭編は終わりです……多分。