バカとテストと召喚獣~彼が変えていく世界~   作:隆斗

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デート開始

デート開始

 

 

 

「やっと着いたな」

 

「……うん、思ったより長かった」

 

あの後、俺がもう起きたというのにしつこく俺におはようのキスをして来ようとした翔子を何とか宥めた後、まだ時間があったので二度寝するために布団に潜り込んだ。その際に翔子も入って来たがその程度の事は慣れたので、特に追い出すなどはしなくそのまま二人仲良く二度寝をした。

起きた後はバス等の公共交通機関を使い文月グラウンドパークまで来た。

 

「文月グラウンドパークへようこそ! チケットはお持ちですか?」

 

俺と翔子が入り口に行くと、文月グラウンドパークの帽子を目深に被った係員が声を掛けて来た。

係員の指示に従って翔子はチケットを出したりして何かやり取りをしていたが、その間俺は別の事が気になっていた。

こいつ誰だ? と。

現時点では誰だかハッキリは分からないが、俺(とついでに翔子)はこいつに会ったことがあるような気がした。

そう思った俺は改めて係員を観察してみた。

 

整っている顔立ちを思わせる顎のライン。

 

細身だが意外と引き締まっている筋肉。

 

そして程々の身長。

 

俺の中で以上の条件に当て嵌まる人物は一人しかいなかった。

そこで答え合わせの為に係り員に声を掛ける。

 

「バイトか……秀吉」

 

「秀吉……はてどなたの事でしょうか? 失礼ながら人違いだと思うのですが」

 

「じゃあその帽子を取ってみてくれ」

 

万が一違う場合もあるので丁寧に言うと、係員はため息を吐きながらも俺の指示に従い帽子を取った。のはいいが——————

 

「えっと、どっちだ」

 

——————秀吉と秀吉の姉の木下優子のどっちか分からなかった。

 

「……優子?」

 

「……さすが代表ね」

 

先程までの畏まった雰囲気が無くなり、いつもの友達として接している雰囲気が係員——木下優子から伝わってきた。

俺は秀吉の方だと思っていたので少々気まずい。

 

「今日は代表と坂本君と吉井君とその嫁のフィリアーノさん達以外は今日ここにアルバイトとして入ってるから。それと最初に行くならお化け屋敷がお勧めよ」

 

そう言うと木下は何処かに行ってしまった。恐らく他の仕事をしに行ったのだろう。

 

「木下のお勧めらしいしお化け屋敷に行くか」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

「……今代表と坂本君が来たわ。代表達にはお化け屋敷を進めておいたからお化け屋敷に居る人は準備よろしくね」

 

『……了解』

 

『了~解~』

 

一般客は入れない区域に入って代表達を見ながら手に持っていたトランシーバーに向かって言うと、代表の様な喋り方の男の子の声と明るい感じの女の子の声が応じた。

 

「それと吉井君達はまだ来てないわ。そして恐らく邪魔も入ると思う」

 

「うむ、明久達の入園は儂が担当しよう」

 

『そンなことは一々言われなくてェも分かってる。邪魔の方はオレがなンとかする』

 

私の後ろに居た秀吉がトランシーバーと私に向かって返事をし、トランシーバーからは、独特の話し方をする少女の声が聞こえた。

そこでふと思った事をその少女にぶつけてみる。

 

「ねえ、なんであなたも吉井君達と一緒に居なかったの?」

 

『チケットはペアだァ。俺がいたら奇数になっちまうだろがァ』

 

「でも……」

 

『それに兄貴達は今『デート』してンだァ。ただの妹の、ましてや血も繋がってねェンだ。介入するスキなンかねェよ』

 

………その声は、何処か悲しそうだった。

 

「む、百合子よ。お主自己紹介の時実の妹と言っとらんかったか?」

 

私も思っていたことを代わりに秀吉が聞いた。

 

『ああその事なァ。アレ嘘だわァ』

 

「……なんでそんな嘘を吐いたの」

 

『大和ならいざ知らずここは日本だァ。いくら血が繋がっていないとはいえ妹が兄に恋してたらァ、色々不味いだろうがァ。だから実の妹のオレにその気はねェって周りに示したンだよ』

 

確かに彼女のいう事は理に適っている。だがそれでは……

 

「……あなたはその気持ちを吉井君に伝える気は無いの?」

 

『ねェ。それにあいつは鈍感だからオレの気持ちにも気づいてねェだろう』

 

確かに彼女持ちとは思えない程鈍いものね吉井君。

 

『ましてェやオレは、オレを救ってェくれェた兄貴(ヒーロー)に迷惑は掛けたくねェしなァ。それに、初恋は実らねェって言うだろォ』

 

「…………」

 

『…………』

 

その必死に自分の気持ちを押し殺している声に、私や他のこの話を聞いていた皆も何も言えなくなってしまった。

 

「あっ、明久達が来たのじゃ」

 

秀吉の声で我に返った私達はもう一組のカップル(夫婦)を歓迎するために行動に移した。

 

 

 

 

 

 

雄二と翔子がお化け屋敷に向かっている頃、ようやく明久とその嫁達が文月グラウンドパークに到着した。

 

「なあ、俺はまだ園内に入ってすらいないのに疲れてるってどういう事なんだよ」

 

「明久は体力が無いんじゃないか」

 

「アッ君、それはきっと昨日の疲れですよ」

 

「二度寝したから一時的にダルくなっただけじゃないかな~」

 

「寝不足ではござらんか?」

 

「鍛錬不足ですわ」

 

「お前らの所為だからなっ‼」

 

明久の疲れている理由それは、二度寝から起きた時にまだフィリ達が裸だった事や、掃除洗濯の当番が自分なのを思い出して慌ててした事、着ていく服を選んでいるとフィリ達が部屋に入って来て明久で着せ替え人形をして遊び始めた事等々。二割が自業自得で八割がフィリ達の所為だ。ゆえに明久のツッコミは間違ってはいない。二割の自業自得をなくせば、もう少し楽だったかもしれないが……。

 

「いらっしょいませ。チケットを確認してもよろしいですか?」

 

どうやら夫婦漫才(比喩にあらず)をしている内に入り口まで着いた様で、係員(秀吉)が声を掛けて来た。

 

「ああ、これでいいか」

 

明久は懐からプレミアオープンチケットを三枚出すと、係員(秀吉)は軽くチェックして明久達を通した。

 

「凪や恭二達にもバイト頑張ってって言っておいて、秀吉」

 

「!?」

 

「じゃあ楽しんで来るよ」

 

「……お化け屋敷がお勧めですよ。お客様」

 

明久が秀吉の横を通る時に呟いたセリフに、一瞬体を強張らせた秀吉だったが流石の演技力ですぐにバイトモードに戻り、優子が雄二達に教えた場所と同じ場所をお勧めした。

明久はそれに振り向かずに手を振ることで返した。

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