遅くなった理由(言い訳)としましては、スランプなのと過去最高の八〇〇〇字を超えたからです。
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記念写真(おもいで)
「おっ、あれがお化け屋敷か。しかし何で木下も入り口から遠めの所をお勧めするんだよ……」
「……でも面白そう」
「ま、確かにそれは言えてるな」
明久達が文月グラウンドパークの入り口に着いた頃、雄二と翔子はお化け屋敷の前に居た。
廃病院を改造して作った本格的なお化け屋敷と言うだけあって、外から見ても確かに雰囲気はあった。
「うんじゃ行くか」
「……うん」
「結構雰囲気あるな」
「……うん」
お化け屋敷内に入った雄二と翔子は壁や床にある指示に従ってお化け屋敷内を歩いていた。
現在の場所まで来る途中の仕掛けは定番なものから、このお化け屋敷だけのものまで様々なものがあった。その為、普段は怖がらない雄二と翔子も場の雰囲気にのまれてしまったのである。
『…………な。………し』
「ん? 何の声だ?」
「……これ雄二の声」
「俺の? 何でそんなものが」
まだ小さくてよく聞こえないが、何処からか雄二の声が聞こえてきたことに動揺する二人。
『ひ……みだな。む…………きいし』
「ん? どうやら俺達が進む方向から聞こえてくるようだぞ」
「……早く行く」
「お、おい翔子急に引っ張るなって!」
雄二(の声)が何を言っているのか気になってしょうがない翔子は、雄二の腕を引っ張りながら早足でその場を移動する。
『姫路の方が翔子より好みだな。胸もデカいし』
「なっ⁉」
「………」
放送から聞こえてきたセリフ(雄二の声)に、雄二は体から冷や汗を大量に流して固まり、翔子は無言でその場に立っていた。
「……雄二」
「は、はい!」
明久のお蔭で過度に折檻をしなくなったとはいえ、過度にというだけでよほどの事があればしてくる。そして雄二は今がそのよほどのことだと感じていた為返事をした時の声が若干上ずっていた。
「……えいっ」
「え、な、なにをしてらっしゃるんでしょうか翔子さん」
絶対に折檻されると思っていた雄二は、いきなり抱き付いて来た翔子の行動にテンパり口調が崩れている。
「……雄二があれを言ってないのは分かってる」
「そ、そうか」
「……でも、私も嫉妬はする。……だからこれはその表れ」
頬を膨らませてそう言う翔子の事を可愛いと思いながらも思った事を提案する雄二。
「じゃあ、腕を組みたいときは組んでいいぞ」
「……いいの?」
何時もの雄二からは決して出ないであろうセリフに翔子は面食らうも問いかける。
「ああ。さすがに人通りが多い所とか時と場所を選んでは欲しいけどな」
「……分かった。……ありがとう、雄二」
「それじゃあ、この後は弁当でも食うか」
「……うん」
嬉しさによりさらに体を寄せてくる翔子を見て、愛おしさを感じながら雄二は歩みを進めた。そして空気を読んでか、その後二人の邪魔をする無粋なお化けは出てこなかった。
「……雄二と霧島が今お化け屋敷を出た。その後は弁当を食べるもよう」
『了解。じゃあ雄二と霧島は昼飯食い終わるまで放っておいていい。明久達が来たらしっかりやれよ』
「……心得ている。それと問題もあった」
『問題?』
「……あの二人から貰った音声の内容が雄二の声で『姫路の方が翔子より好みだな。胸もでかいし』、という下らない内容だった」
『はぁ、あの二人はバカだろ。で、雄二は大丈夫だったか』
「……むしろ仲が深まった」
『それは良かった。じゃそこは任せた』
「……了解」
先程までの雄二と霧島の事を凪に報告するとあいつは呆れていた。その気持ちも分かる、俺も呆れたから。
本当にあの二人は迷惑だ。今朝いきなり俺達がバイトに行くための場所に集合していたら、押しかけて来て自分たちも混ぜろとか言って来るし、明久がフィリアーノ達と来た時は襲い掛かろうとしていたし。
「康太君、吉井君達が来たよ」
俺と一緒にこのお化け屋敷のBGMなどを管理する放送室に居る愛子が、俺とは違う画面を見ながら報告してきた。
「……分かった」
「それでどうする? あの二人から貰った音声は当てにならないでしょ」
「……無しでいい。あれは元々あいつらをもっとくっつけさせる為のおまけの様なものだから」
「ん~、確かに。吉井君達はそんなのなくてもラブラブだしね」
俺の言ってる事に納得した愛子はそのまま作業に戻った(と言ってもやることは殆ど無いが)。
「へーここが廃病院を改造して作ったていうお化け屋敷か。結構雰囲気あるな」
「そうか? 私にはそんなに怖くは感じないんだが」
「まあ、私達は人外ですからね」
「それに大和の方が国中お化け屋敷っぽいしね~」
「うむ、それを言われると納得でござるな」
「そうですわね」
こ、こいつら俺があえて言わなかったことを平然と言いやがって。まあ、その意見には全面的に賛成だがな。
さて、秀吉が入り口に居たってことは優子と康太と工藤と凪と有沙は最低でもいるな。恭二と小山は分からんが……。というよりここから康太と工藤の気配がするし。
「入り口に突っ立ってるのもなんだから入るか」
フィリ達にそう言って俺はお化け屋敷の中に入った。
ヒュ~ドロドロというお化け屋敷や肝試しではお馴染みのBGMが流れている中、俺とフィリ達は特に怖がることもなく順調にお化け屋敷の中を進んでいた。
進んでくる際に脅かし役の人の何人かが俺らが驚かないから落ち込んでたけどな。
「ふむ、偽物にしては中々いい出来じゃないのか」
「そうですわね。普通の人なら結構怖いですわね此処は」
と言いつつもフィリとリエはお化けの仕掛けがある所等を見て歩いている。
「きゃっ、怖いわアッ君」
「あっ、ずるい~。僕も抱き付く~」
「それじゃあ拙者は後程」
行き成り俺の腕に可愛い悲鳴? をあげながら抱き付いて来た舞依。そしてそれを見て対抗心を燃やしたルナが舞依とは反対の腕に抱き付く。
「む、ズルいぞ二人だけ!」
「そうですわ! 二人だけそんなうらやまゴホン…羨ましい事を」
俺達のじゃれ合いに気づいたフィリとリエもこっちに来て舞依とルナの二人に文句を言っている。あとリエ、お前それは言い直してる意味無いから。
「あんまり喧嘩するなよ。お前らが暴れるとシャレにならん」
これは冗談抜きでの注意だ。大和の中ならいざ知らず、ここは日本だ色々誤魔化したりするのもメンドイ。
「大丈夫ですわ。ちゃんと手加減は出来ます」
「そうだ。ちょっとここの地形が変わるくらいだ」
「フィリの言う通りでござる。ここいら一帯がちょっと更地になる位でござるよ」
「いや、お前らのそれはちょっとじゃないからっ!」
目がマジだったフィリと美弥にツッコミを入れた。
……なんで今日はこんなに疲れるんだろう。厄日か……。
「それにしても意外と明るいですね」
いや、結構ここは暗いだろ! と舞依の発言に声には出さずにツッコんでみた。
実際、光源は非常階段の緑色の光り位しかない為ここはかなり暗い。
それでも明るいという彼女達は、やはり人とは違うのだろう。それでも愛し続ける自信はあるが。
それにもしかすると……俺も人じゃないかもしれないし……。
「あ、そろそろ出口みたいだよ~」
ルナの指差す方を見ると床まで届く長い暖簾(のれん)の隙間から僅かに陽光が漏れ出ていた。
「そろそろいい時間帯だし、この後は昼にするか」
『賛成~』
昼飯後の予定を考えながら俺達はお化け屋敷を後にした。
「今吉井君とフィリちゃん達がお化け屋敷から出たよ。次は坂本君と代表と同じくお昼だって」
『分かったわ。坂本君と翔子ちゃんは私と凪で見張ってて、明久達は友香と根本君が見張ってるから愛子と土屋君と優子と木下君は先にお昼にしていいわよ』
吉井君達がお化け屋敷を出て言った事をトランシーバーで報告すると、今回のこの作戦の司令塔である有沙からお昼にしていいと言われた。確かに時間的にはお昼時だけど僕達だけお昼を食べるのはなんか申し訳ないような気がした。
『そんな悪いわよ。私と秀吉が代表達を愛子と土屋君がフィリ達を見張ってるから有沙と桐ヶ谷君と友香と根本君はお昼を食べてていいわよ』
「そうだねそうしよう」
優子の案に賛成だったのでノッかてみるがそれを友香が断った。
『いや実は私と恭二はお昼を食べながら見張ってるから大丈夫なのよ』
『私と凪も同じなのよ。それに次の写真撮影じゃ土屋君の撮影の腕前と木下君のメイクの腕前が、必要になるから早めにお昼は取っておいた方がいいでしょ。私達に気を遣わなくていいからお昼とっていいよ」
「分かったよ。優子もそれで良いよね」
『そこまで言われちゃしかたないわよね。分かったわ、それじゃ私達はお昼を取らせてもらうから私達が必要になったらいつでも呼んでね』
トランシーバーでの会話が終わった僕は、後ろで今も黙々と何かの作業をしている康太君の方を向いてさっきの事を話す。
「康太君、僕達先にお昼食べててもいいって」
「……分かった、もうすぐ終わる。そしたら何処かに食べに行くか」
康太君はお昼を作って来てないらしくそんな提案をしてきた。
「え、えっとあのね康太君」
「?」
「お、お昼作って来たから一緒に食べない?」
「ッ⁉」
恥ずかしくて俯いてモジモジしながら言ったら、何か康太君が目を見開いて固まっていた。
「……康太君?」
「……て……か」
「え?」
「……手作りか?」
「え、そりゃあもちろん」
? 何で作って来たって言ったのにわざわざ聞いたんだろう? って思った次の瞬間康太君が鼻血を勢いよく出して倒れたってええぇ!?
「ちょ、ちょっと康太君大丈夫!」
「……あ、愛子の手作りが食えるなんて、我が生涯に一遍の悔いなし」
何を妄想したか知らないけど、そう言って康太君は気を失った。
その後康太君の鼻血で汚れた周囲を掃除したり、康太君を看病したりした為お昼を食べたのはそれから約三十分後だった。
「よっ、雄二」
俺と翔子が昼を食べ終えてこれからの予定を話している時にそいつは来た。
「やっぱりお前もいたのか、凪」
「まーな、てゆうかお前なら他の奴らもバイトに来てるってわかってんだろ」
ニヒルな笑みを浮かべながら凪はそう言ってきた。そしてその後ろからは結城がニコニコ笑顔で歩いて来た。恐らく凪とデート気分で昼を食べられてうれしいんだろう。
「それで、お前らが接触してきたってことはまたなんかあるのか?」
正直何かあることは分かっていたが念の為というやつだ。
「ああ、勿論ある」
……やっぱり。
「これからお前らには写真撮影をしてもらう」
「デートの記念にか?」
「その意味もある」
そこで一旦言葉を区切った後凪は理由を話してくれた。
「この写真撮影は本来やる筈だったウエディング体験の代わりなんだ」
「? 何でウエディング体験が中止になったんだ」
「それは、体験とは名ばかりで本当に結婚させようと」
「よし、それは仕方がない! ああ、仕方がない」
あ、危なかった……。下手したら学生のうちに結婚させられるところだった。
結婚するのは吝(やぶさ)かではないが学生のうちに結婚はごめんだ。どうせ結婚するならちゃんと養いたいからな。
「………」
う、翔子の無言の圧力がすごい……。
「じゃあ俺達に付いて来てくれ」
凪と結城の後に続いて俺と翔子は写真撮影の会場へと向かった。
「じゃあ、霧島は有沙に雄二は俺に付いて来てくれ」
凪と結城に連れられて俺と翔子が来たのは、ちょっと豪華そうな造りをしている以外はごく普通の建物だった。
取り敢えず俺と翔子は凪の指示に従い二手に分かれた。
「なあ凪、翔子が衣装やらなんやらで色々準備するのは分かるが何で俺まで準備しなきゃならないんだ?」
「アホかお前。その格好で写真を取るつもりかよ」
「いや、服は着替えるがそれは数分で終わるだろう」
「男にも結婚式の際は色々とするんだよ」
意外と長い廊下を歩きながら凪とそんな話をしていると目の前に扉が見えてきた。
「ここだ」
凪に連れられて部屋に入るとそこには俺の親友の一人がいた。
「秀吉、頼むぞ」
「うむ心得た」
その後俺は秀吉にワックスを使って髪を整えたりされた。
「じゃあ雄二よ、すぐに霧島を連れて来るゆえこの部屋で暫しまっとれ」
そう言って、メイクされた部屋の隣の部屋に入れられて俺は暫く待っていた。因みに服装は白いタキシードだ。
「なんでお前が此処に居る」
「……今の俺はカメラマン」
———————ムッツリーニと一緒に。
「お前が写真を取るんだったら技術面に関しては心配いらねえな」
「……任せろ。プロも凌駕する程の出来栄えにしてやる」
本当にこういう所は頼もしいと感じる。……盗撮や盗聴をするが……。
「……来た」
そう言ってムッツリーニはカメラの所へ行ってしまった。
「……雄二、どう?」
後ろの扉が開かれたので翔子かと思いそちらを見てみると、天使いや女神がそこにはいた。
「……雄二?」
「あ、ああ悪い。あまりにもお前が綺麗だったからな、見惚れてたんだ」
翔子が俺の想像以上に綺麗になっている所為か俺はテンパり、普段は決してだ内容な褒め言葉を翔子に向けて言っていた。
「……私お嫁さんに見える?」
「大丈夫だ、婿には見えない」
翔子のいつも通りの天然(ボケ)に思わずツッコミを入れる。しかしそのお蔭で頭が冷え冷静になった。
「……それじゃあ撮影を始める」
「おう」
「……」
ムッツリーニのセリフにより、写真撮影がスタートした。
「……雄二もっと霧島による」
「お、おう」
まだ先程の衝撃から余り経ってないせいか翔子を相手にするとどうもぎこちなくなくなってしまう。
「……えいっ」
「うわっ⁉」
それを見かねた翔子が行き成り俺の腕に抱き付いて来た。
突然の事に思わず変な声が出てしまう。
そしてその瞬間を見逃さずにシャッターを切るムッツリーニ。クソッ! これは黒歴史の一枚だ!
「……好きなポーズを取ってくれ」
ポーズを指定されるかと思いきや丸投げ。まあムッツリーニはいつもその方法で取ってるからその方が遣り易いのだろう。
その後俺と翔子は腕を組んだり、お、お姫様抱っこをしたりして様々な写真を撮った。
撮った写真は後日俺と翔子の家にそれぞれ輸送されるらしい。
「よう明久」
「よう、随分遅かったじゃないか」
俺がフィリ達との昼食を済ませて腹を休ませていると、お化け屋敷を出た頃からずっと俺達を見張っていた恭二と小山が声を掛けて来た。
「何だバレてたのか」
「当然だ」
コイツは堂々と小山とイチャイチャしながら昼食を食べていてバレテないと思ったのだろうか?
「それで、お前が来たってことはこの次は何か用意してるんだろう? 何なんだ?」
「流石だな、説明が省けて助かる。実はこの後お前らにはウエディング体験の代わりの写真撮影をしてもらう。だから俺と友香に付いて来てくれ」
「了解。お前らもいいよな?」
「うむ、私は大丈夫だぞ」
「私も問題ないわ」
「僕も大丈夫だよ~」
「問題ないでござる」
「私(わたくし)も問題ありませんわ」
「全員問題無いようだな。だったら付いて来てくれ」
「じゃあ女性陣は友香に、明久は俺に付いて来てくれ」
恭二について建物の中に入ると道が二つに分かれた所で俺と恭二は女性陣と別れた。
「しっかしお前ら昨日の今日なのに良くバイトなんてできたな」
「お前の妹のお蔭だよ」
ああ、そういう事か。百合子が根回ししたならバイトをするくらいは朝飯前だな。
「秀吉、明久が来たからよろしく頼む」
突き当りの部屋に入ると恭二が部屋の中に居た秀吉に声を掛けて、秀吉もそれを頷いて了承していた。
「じゃあこの部屋で待っててくれ」
白のタキシードに着替えた後恭二に撮影部屋に連れられ暫く待っているように言われた。
部屋の中には既に康太がいてカメラ等の設備の点検をしていた。
「すまない明久少々準備にてこずった」
何もすることが無いのでボーっとしていると、俺が入って来た方とは逆の扉が開き純白のウエディングドレスを着たフィリが部屋に入って来た。
「………」
「ん? どうした黙り込んで」
「え、あ、いやあまりにも似合ってたから見惚れていたんだ」
「なっ⁉」
自分を見て無言で固まっている俺に訝しんだフィリが問いかける。そして彼女は俺の返答に顔を真っ赤にして照れた。
その姿が可愛いな、と思っているといつの間にか近くに来ていたフィリが俺の腕を組んでカメラの前に連れて行った。
「ん? 皆を待たなくてもいいのか?」
「ああ、準備のできたものから順に撮ることになったんだ。そういう事で土屋、頼む」
「……了解した」
そしてフィリが俺の腕抱き付いた格好のまま数枚写真を撮る。
「あ~っ! ちょっとフィリ何してんのっ!」
フィリが入って来た方の扉からルナがそう叫びながら部屋に入って来た。
「? 写真を撮っているのだが?」
何当たり前の事を聞いている、と言いたげに冷静に返すフィリ。
「そうじゃなくて! みんなで一緒に撮るって言ったのに何で抜け駆けしてるのって聞いてるの!」
頬を可愛く膨らませて怒るルナ。
彼女達二人が口論している間に残りの舞依と美弥とリエも部屋に入って来た。
「まあまあ落ち着きなさいルナ。だったらちょっと時間かかるけど私達も明久とのツーショットを撮ればいいだけでしょ」
「うむ舞依の言う通りでござる」
「そうですわね」
三人に正論(二人は同意しただけ)を言われ渋々納得するルナ。一方もフィリはルナからの小言を回避するために体を縮ませて小動物の様にして俺の後ろに隠れていた。
「ルナすまなかったな俺がフィリにちゃんと確認してればよかったのに……」
「へ? ……う、ううん。アキが悪い訳じゃ無いんだし謝んないで」
基本明久に弱いルナは彼が謝ったことにより意気消沈した。
「……撮るなら早くしろ」
「っておい! お前から鉄人も殺せるほどの殺気が漏れ出てるんだがっ!」
先程まで空気だった康太がいきなり声を掛けて来たかと思えば、表情にはあまり出ていないが尋常じゃない程の殺気を放っていた。
鉄人に康太愛用のカメラを没収された時でさえ此処までの殺気じゃなかったのに……。
「……いくら彼女が居ても目の前でイチャイチャされたら殺気もでる」
——————どうやら俺達に非があるようだ………イチャイチャしている自覚がない為納得できないが。
そしてフィリ達も康太(人間)が此処まで殺気を出せる事に驚いていた。
まあ、俺も驚いていたしちょっとビビった。嫉妬でここまでの殺気を出せる奴は大和(あっち)にいる自称良妻共とFFF団位だと思っていたし……。
「わ、分かった。すぐに撮影に戻るからその殺気を抑えてくれ」
その後俺達は何とかして康太を宥めた後、嬉しくもちょっと照れ臭い写真撮影をしたのだった。
〰〰〰〰〰〰〰オマケ〰〰〰〰〰〰〰
現在の時刻は逢魔が時近く。フィリ達との写真撮影を終えた後俺は彼女達を先に家に返しある人物の元へと向かっていた。
「よっ、こんなところで偶然だな」
目の前に居た目的の人物の背中に気軽に声を掛ける。
そいつは俺が来るとは思っていなかったのか、声を掛けられた時に驚きビクッと体を跳ねさせた。
「……義姉(ねえ)さん達はどうしたンだよォ」
「先に家に帰って貰った。あの様子だとお前に会いにここに居る事もお見通しだろうな」
「ケッ、そンで俺に何の用だァよ」
そう言いながらソイツ、百合子はゆっくりと此方を向いた。
「いやなに、お前にお礼がしたくてな」
「お礼?」
「ああ。お前が島田と姫路を抑えていてくれたから今日はゆっくり楽しめたんだ。そのお礼だよ」
「ハッ、別に愚兄の為じゃねェよ。義姉さん達の為だァ」
「知ってる。それでも俺は言いたかったんだ」
俺がそう言った事により百合子は不機嫌そうな顔になる。だが俺は知ったいる。その顔は顔の筋肉が緩むのを我慢している顔だという事を。
「っという訳でお礼だ」
「はぁ? お、おい! ちょっと待てェ何処に連れて行くンだよ!」
百合子の抗議の声を無視して俺は彼女の手を引っ張りながら目的の場所まで歩き出した。
今俺はフィリ達を写真撮影をした場所と同じ場所に同じ服装でいた。これが俺の『お礼』だ。
正直に言うと百合子が俺に向けてくる『想い』には大体は気付いているし、俺も百合子は愛おしいと思っている。が俺からは何もできない。しないんじゃなくて出来ないんだ。
元々俺と百合子が血が繋がっていないのは知っていた。でも俺はあくまで『妹』として接していた。今更フィリ達の様な接し方をするのは倫理的に出来ない。
ヘタレな感じだが百合子から行動を起こすまで俺は何もしない事に決めていた。
まあ、今回のお礼は情けない俺からの謝罪も含まれていると思ってくれても構わないよ、読者の諸君。
「……お……終わったぞォ」
その声に振り返ってみると、扉の所にウエディングドレスを着た百合子が立っていた。
能力による副作用により、百合子自身が総じて白い為白のウエディングドレスはとてもよく似合っていた。
「ほら、早速撮るからこっちに来い」
康太はもう居ない為カメラの設定のタイマーをセットしながら言う。
「……ン」
肌が白い為かなり分かりやすく真っ赤になった顔を俯かせながらゆっくりと此方に歩いて来た。
「ほら」
「……」
腕を差し出すと無言で組んできた。いつも以上に照れている姿はフィリ達並に可愛かった。
「……兄貴ィ」
「ん?」
呼ばれたので顔を向けるが百合子はカメラの方を向いたままだった。
「……ありがとォな」
「……ああ」
百合子の顔が此方を向き目が合う。
それは何に対するものなのか俺は深くは聞かなかった。それは野暮な気がしたから……。それに百合子の顔が最高の笑顔だったから。
その後もう何枚か写真を撮った後俺と百合子は帰路に着いた。昔はよく繋いでいて最近は繋がなくなった手を繋いで……。
如何でしたでしょうか?
次回は『バカテス~明久の婚約者達~』が記念すべき五十回目という事で、記念回として『王様ゲーム』の内容にしようと思います。オリジナルの大和王国編をお待ちの方には申し訳ありませんがもう一話だけお付き合い下さい。