到着大和王国
到着大和王国
「あ、来た」
文月グラウンドパークでのデートの翌日の朝。明久を含めた大和組は文月市から一番近くにある空港の飛行機の待機場にある一機の中型飛行機の前で雄二達が来るのを待っていた。
そして凪の声を聞き彼が見ていた方を見ると雄二、康太秀吉を始めとした何時ものメンバーが彼らの方に向かってきていた。
「悪いな、待たせたか?」
「いやそれ程待って無い。それじゃあ早速向かうが準備は良いか?」
「ああ、全員準備できている」
明久が雄二達に尋ねると彼らを代表して雄二が答えた。
「それより飛行機で行くのか?」
「ああ。いくら各国からの定期便が出てないからといっても、大和には空港も飛行機もある。俺達だけだったらこんなのを使わなくてもいいんだが、お前らがいる。何よりお前らは初入国だろ」
「当然だ。大和王国なんて一生に一度行ければいいほどの幻の国だからな」
明久の言う通り彼らには飛行機はいらない。何故なら移動系の能力を持っているモノや人外の種族の者が多いからだし、例え移動系でなくてもやり方次第では移動することにも使える能力を持っているモノが沢山いる。
それらを公に出さない意味も含まれている為大和王国は出入国制限が厳しいのだ。
「まあ他にも色々な問題があるがそれは移動中に話す。取りあえず乗れ」
そう言って親指でクイッと後ろにある自家用機を指さす。凪達大和組はもうすでに乗っていた。
「おう、分かった」
「なあ、明久」
「ん?」
「飛行機が要らないならなんでお前は自家用機を持っているんだ」
「ああそれか。……それは俺らの秘密にも関わるから順を追って話すがいいか?」
『……』
明久の言葉に頷き返す雄二達。
大和組は明久にすべて任せるつもりなのか、各々機内で自由に過ごしていた。
「まず初めに言っておくが俺達、というより大和王国の住民の殆ど全員は人間じゃない」
『………は?』
何言ってんだこいつ的な目で明久を見る雄二達。しかしそれは正常な反応と言えよう。それどころか行き成りこんな事を言われたら頭がおかしいか、厨二病と思う筈だ。
「突然の事で驚くと思うが事実だ」
「え、は? いやお前事実って……」
「証拠を見せよう。舞依」
「はい」
最初からずっと明久の横に居たフィリ達の中でも、一番常識人ポイ舞依が明久に言われてその『証拠』を見せる為に少し離れた場所に立った。
『???』
行き成りの事で頭に?マークばかり浮かんでいた雄二達だったが、次の瞬間その顔は驚愕に染められた。
「これがその証拠だ」
今の舞依には本来の人にはない筈のものがあった。頭にある狐耳と九本の触り心地の良さそうな尻尾だ。
「……九尾」
「そうだ霧島。舞依は九尾だ。ついでに言うと美弥は猫又の中でも最も力のあると言われている猫魈(ねこしょう)で、ルナは半人半霊、リエは堕天使、フィリは半人半神、凪は影妖精(スプリガン)で有沙が水妖精(ウンディーネ)だ」
明久の紹介に合わせて大和組の面々はその姿を変えていった。そしてそれに驚く雄二達。
「なあ、明久の種族は何なんだ」
「あー……、俺のはちょっと特殊でな俺の種族は≪人外≫っていうやつでな。簡単に言うと人間以外の全種族だとでも思っててくれ」
「はぁ? お前そんな事ってあり得るのかよ」
「実際にそうなってんだからしょうがないだろ」
明久の滅茶苦茶な種族に驚く雄二達であったが、明久にそう言われて渋々納得した。
『?』
その時機内に居た全員をふとした違和感が襲う。大和組は慣れた感覚だったが雄二達はそうではなかったため彼らは疑問に思っていた。
「……今のは何なのじゃ」
「ああ、今のはッ!」
秀吉の言葉に答えようとした凪は、その言葉を途中で遮って床いやそれよりもっと下を見て緊張した面持ちになっていた。その直後——————
ドゴォン
という音と共に飛行機の両翼が爆発した。それと同時に機体を何かが貫通した。
「全員飛べッ!」
明久は素早く足で出入り口の扉を蹴り破ると全員にそう指示した。
最初は慌てていた雄二達だったが明久の指示により幾分か冷静を取り戻し、雄二が翔子を、秀吉が優子を、康太が愛子を、恭二が友香を抱え大空へと飛び出した。それに続き大和組も各自で飛び降りる。そして一番最後に残った明久が機内に誰も居ない事を確認して飛び降りた。
明久が飛び降りると、リエに抱えられている恭二と友香、凪に抱えられた康太と秀吉、有沙に抱えられた愛子と優子がいた。だが一番初めに出た所為か雄二と翔子の安全がまだ確保されていなかった。正直に言うと明久、フィリ、舞依、ルナ、美弥にも雄二と翔子を救う手だてはあるが、確実とは言えない。だから彼は呼ぶ。確実な方法の為に。
「イスカンダァァァァァァァル!」
『ッ!?』
事情を知らない雄二達は明久が突如大声を上げて英雄の名を叫んだことに驚くが彼は気にしない。
「……………i」
何処からか男の叫び声が聞こえてきた。そしてそれはどんどん近づいてきている。
「AAAALaLaLaLaLaii!」
突如赤髪でモジャモジャ髭の鉄人にも負けない巨体の男が戦車(牛で引くタイプ)に乗って現れ、雄二と翔子を空中でキャッチしそのまま戦車に放り込んだ。
「久しぶりよのぅ、明久」
「久しぶり、イスカンダル。急に呼び出して悪かったな」
「良い良い、余とお主の仲ではないか」
ゆっくり落下しながら明久とイスカンダルは会話する。その光景を見ていた人間組(雄二、康太、秀吉、恭二、翔子、優子、愛子、友香)は目の前で起こっていることが理解できずに混乱していた。
やがて広場の様な開けている場所に降り立つと、雄二達は自分の足で立ちイスカンダルは戦車と着ていたマントや鎧を消して胸に世界地図が書かれたTシャツとジーパンという現代の格好になった。
「やっと戻ったか明久(ばか)よ。この我(オレ)を待たすとは何たるブフェッ!」
「明久〰〰〰〰‼」
「ん?」
声を掛けられた明久が其方を向くと、ライダージャケットにズボンという姿の金髪赤眼の青年を吹っ飛ばしながら、青い導師服に舞依と同じ狐耳と九本の尻尾を持った女性が明久に向かって突撃してきた。
「ハァ……」
「グエッ」
ため息を吐きながら明久の前に出た舞依によりその突撃は止められた。その際に舞依は手を女性の顔の前に出して止めた為件の女性からは女性らしからぬ声が聞こえた。
「あなたいい加減に」
「おのれ駄狐、この我(オレ)を突き飛ばすとは万死に値する!」
いつの間にか復活していた青年が激昂しながら叫ぶと、彼の後ろの空間に波紋が広がり剣や槍等の武器が十個前後現れて、女性と舞依を狙い射出される。
「ギル、やり過ぎだ」
しかし彼女達の前に出た明久の不可視の力によってそれらは止められる。
「止めてくれるな明久(バカ)。我はその駄狐を処刑せねばならん」
「それよりお前は俺に用事があって飛行機を墜落させたんだろ。これ以上この二人に手を出すならお前の用事は聞かないぞ。それと俺の名前を書いてルビにバカってふるのやめろ」
「…………」
人間組はギルと呼ばれた人物が飛行機を落とした張本人だと知り驚き、その張本人は明久の言葉により思考の海を漂っている。
「ふん、命拾いしたな駄狐。して明久(鈍感)我はそなたの料理を所望するぞ」
「そんな事で飛行機落としたのかよ」
思いのほか下らない願いに嘆息する明久。しかしギルことギルがメッシュはそんな事は気にせずにどこかに歩いて行った。
「ったく、お前らちょっと待っててくれ。あいつの料理作り終えたらすぐ戻って来るから」
そう言って明久もギルの後を追って言ってしまった。
「な、なあ九条。そいつは誰なんだ」
先程から気になっていた事を雄二は聞いた。
「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったわね。コイツは玉藻の前通称玉藻よ。ほらあなたも挨拶しなさい」
舞依は自己紹介をさせる為に玉藻の顔を掴んでいた手を放す。
「そんな事はどうでもいいです! それより明久は何処ですか!」
解放されると同時に勢いよく舞依に詰め寄る玉藻。舞依はそれを鬱陶しそうにしている。
「アッ君ならさっきギルの飯を作りに行ったわ。戻って来るまで少し時間があるから今のうちに自己紹介しなさい。イスカンダルもよ」
「む、そうであったな。余は征服王イスカンダルである。明久の友人たちよ大和へようこそ」
「初めまして玉藻の前と申します。いつも夫がお世話になっています」
先程とは打って変わり真面目な態度で人間組と接する玉藻。恐らく明久の友人にしっかりしたイメージを持たせたいのだろうが、時すでに遅し。しかし雄二達人間組にはそんな事はどうでもいいほどに聞き逃せない単語があった。
「え、ええっと玉藻殿。夫とは誰の事じゃ」
普段のポーカーフェイスが崩れるほどに動揺している秀吉が、大体予想できるものの確認の為に恐る恐る玉藻に聞いた。
「それは勿論明久の事ですよ」
可愛らしい笑顔で秀吉の質問に答える玉藻。その顔はとても幸せそうだった。
そして雄二達は最終確認とでもいうようにフィリ達の方を向く。
「まああながち間違ってはいないな。正式な手続きこそしてないものの、この中の誰よりも明久との付き合いは長いし、明久も私達と同じ位に玉藻を甘やかしている時もある」
「じゃあなんで明久は玉藻と結婚しないんだよ。大和(ここ)は一夫多妻制なんだろ?」
恭二の疑問は尤もな物だった。
「ああそれは」
「俺らにも色々あるってことだ。だからあんまり詮索すんじゃねぇぞ恭二」
その疑問答えようとしたフィリの言葉を遮っていつの間にか戻って来ていた明久がそう言った。
「取り敢えず内に案内するからついて来い」
「あっ、待って下さ~い。明久~」
さっさと歩いていく明久の後を玉藻が追いその腕に抱き付く。明久は特に何もせずにされるがままだった。
「では拙者達も行くでござるよ~」
美弥の掛け声により雄二達も少し遅れて明久の後を付いて言った。
大和王国での旅行(里帰り)はまだ、始まったばかり。