最初にその人物に気が付いたのは散歩(デート)をしていたアルトリア・ペンドラゴンとエミヤシロウだった。
二人も玉藻やイスカンダルと同じく守護者(サーヴァント)であり、この国の警護が仕事だが今は丁度よく二人とも休憩中だった。なので街をブラついていた。
「ん? シロウ、あれはナナヒサではありませんか?」
「む、確かに七久の様だな。恐らく依頼されていた討伐が終わって帰って来たのだろう」
「ですがアキノを連れていませんよ。それにあんなにスピードを出していては自力で止まることは不可能だと思うのですが」
アルトリアの言う通り七久は今、自身の能力を使い本来ならばあり得ない程のスピードを出していた。それでも七久の姿を捉えられたのは、流石元英霊だろう。
「報告。どうやら七久様は何者かに操られている様子。このままだとここに侵入し暴れる危険性があるためお二人には結界内に入ったら七久様の足止めをしてもらいたい」
突如二人の近くに髑髏の仮面をつけた一人の男が現れた。
彼の名はハサン・サッバーハ。嘗ては暗殺教団の指導者だった男。
「あなたはどうするのですか?」
「住民の避難と明久様に報告、その後指示を仰ぎます」
「了解しました。では私とシロウで出来るだけ時間を稼ぎます。行きますよシロウ」
「了解した」
私服姿から青いドレスに銀のプレートアーマーに着替えたアルトリアが先行し、その後に赤い外套に着替えたシロウが続いた。
それを見届けたハサンも自分のすべきことをする為に動き出した。
アルトリアとシロウが七久と対峙している時、明久達は明久のもう一つの能力について話をしていた。
「さっき、人によっては能力が二つ以上ある奴がいると言ったが俺もその一人だ」
切っ掛けは明久のこの発言だった。この発言を聞いた人間組は『どんだけチートなら気が済むんだよ』と呆れ、明久を除いた大和組は人間組のその思いに共感していた。
「それでお前のもう一つの能力は何なんだ」
もうお前のチートさは分かったからもったいぶらずに教えろ、といった投げやりな感じで雄二が明久に聞く。
「投げやりになるのは分かるがちゃんと聞け。これはお前らにも関係してくるかもしれない話だからな」
「……どういう意味だ」
明久の意味深な言葉に康太が反応した。
「俺のもう一つの能力は『絆を作る程度の能力』だ。この能力は」
「明久様、国内に侵入者が現れました。侵入者は七久様と秋野様を操っており、現在操られた七久様とアルトリア様とシロウ様が交戦中です」
明久が自分の能力を説明しようとした時、どこぞの不忍の仮面の男の様に天井裏からハサンが明久にそう報告した。
ハサンが報告し終わると同時に、障子が開けられた縁側から見える方向でドガンッ! という爆発音のような音と大量の砂煙が上がり全員が其方を見た。
「周囲の状況等はどうなっている」
「周辺の住民の避難は粗方終わりました。アルトリア様とシロウ様は七久様の能力が能力なので苦戦している模様です」
「そこで俺の出番と。了解した。ハサンはそのまま住民の避難を続けろ。ぶっちゃけあいつ等なら大丈夫だと思うが念の為だ。後シロウとアル(アルトリアの事)にはもうすぐ行くと言っておいてくれ」
「了解しました」
そう言ってハサンは行動に移すために天井裏から去った。
「紫たちはそのままここに残って雄二達の護衛をしていてくれ。雄二達はもしもの時は紫たちの指示で動け」
「お、おい大丈夫なのか」
「問題ない。こんな事は此処では日常茶飯事だ」
人間組の中で一足早く我を取り戻した雄二が明久に確認するが、彼はそれを何でもない事のように返した。
「此処は任せなさい」
紫はしっかりと明久の目を見てそう言い、明久も紫の目を見て力強く頷いた。
そんなやり取りをしている間にも向こうからは激しい戦闘の音が響いている。
明久がもう一度向こうに目を向けると、ちょうど誰かが上空へ飛び出していた。
その人物とは七久だった。シロウ達に飛ばされたのか自分で飛んだのかは知らないが確かに七久が上空に居た。
明久以外にも七久(人間組は誰だか分かっていない)を認識した瞬間、明久はもうその場には居なく七久と屋敷との中間あたりに居た。
屋敷を飛び出して空中を移動していた明久は眼下に繰り広げられている戦闘の状況を把握した。
まず、襲撃者と秋野が二人で固まっており、二人と対峙するようにアルトリアとシロウが居た。
アルトリアとシロウの二人はハサンへ伝えた伝言が届いたのか、未だ上空に居る七久には目もくれずに秋野と襲撃者の相手をしていた。
そんな状況整理をしている内に明久は七久との距離を後わずかな距離まで縮めていた。
そして彼は日本刀を峰の部分を下にして振りかぶる。七久は下の戦局を見ていたので完全な不意打ちかと思われたが七久はそれを躱し明久より背後の上空に位置取る。
「チッ」
元々当たるとは思ってもいなかったが、当たってくれた方が後々楽になったのは否めない。
すぐさま追撃をするべく刀を返し下段からの切り上げを身体を回転させながら放とうとした。
「グッ」
しかし、謎の頭痛が明久を襲い動きを止めてしまった。
『ハアァァァァァァ‼』
『■■ッ!』
『俺は大丈夫だ。それより■■■■さんを!』
「…な…ん…だ…これは」
頭痛と共に明久の頭の中に流れ込んできた映像。それはどこかの海上で、靄によって正確な姿はからないが恐らく人であろう人物を高校生くらいの少年が同じ位の少女と一緒に、今の明久の様に襲撃している映像だった。
何故、少年と少女のどちらも関係のない自分に、この映像がこのタイミングで流れたのか分からない明久は多少混乱していた。
そして目の前の事から意識を背けたために明確な”スキ”が出来てしまった。無論操られている状態の七久がそれを見逃す筈も無く、最初に明久が彼にしたのと同じように彼は自身の持っていた剣を上段から振り下ろす。
一拍遅れてそれに気づいた明久は急いで回避しようとするが若干遅く、既に彼は射程圏内に入っていた。能力での回避を行おうとしない所を見るとよほど混乱しているらしい。
「………」
「ッ⁉」
その時、七久と明久の間に一条の光線が横切った。これにより七久の剣は消滅し明久に当たる事は無かった。そしてその出来事に僅かながら固まった七久の隙を見逃す明久でもなく、先程まで剣を持っていた彼の腕を掴みジャイアントスイングをした後地面へ向けてブン投げた。
(ありがとう)
明久は光線が来た方を一瞥し心の中で、それを放った人物にお礼を言うと彼も地面に下りて行った。その途中で明久は地面にクレーターを作り、その中心に倒れている七久の周囲の時間を止めて拘束した。
「よーお前ら、久しぶり」
「お久しぶりですアキヒサ。早速ですが私はあなたとシロウの手料理が食べたい」
「ちょっと待てアル。先程私がお昼を作っただろう」
「あれはおやつです」
「……そうか」
アルトリアの返事に何かを言いたそうにして止め、代わりに返事を返したシロウ。
「二人は周囲に被害が出ないようにと念の為に七久の監視を頼む。あいつの周りの時間を止めたが用心の為だ。秋野と襲撃者とは俺がやる」
「了解しました」
「任せたぞ」
「おう」
そしてすぐさま彼らは行動に移した。
まず、シロウとアルトリアはその場から離れ、アルトリアは七久の近くに行きシロウはそこより離れた場所に陣取り干将・莫耶を構えた。
肝心の明久はというと、シロウ達と同時に襲撃者と秋野に向かって地面を蹴り弾丸の如くスピードで飛び出した。その際に『あらゆる能力を無効化する程度の能力』を使い、相手の能力対策もしておく。
しかし明久がそんな事をしているとはいざ知らず襲撃者の彼は余裕の表情をしていた。
彼の能力は、『あらゆるものを操る程度の能力』という自分に一定距離近づいたものを制限なく半永久的に操れるという、チート能力の為その余裕も理解できなくはない。
「何ッ⁉」
「……」
そして彼の思惑道理には事が運ばず、バキンというガラスが砕けた音と共に彼の野望も砕け散った。
そこから彼は傍に居た秋野に命令を送ることもできずに、振り下ろされた明久の刀を抵抗もなく喰らい塵となって消滅した。
「ッ! ここは……! あら明久さんお久しぶりです」
「おう、大丈夫だったか」
「ええ、お蔭様で」
襲撃者の呪縛から解放され正気に戻った秋野は、すぐに身構えるがここが大和王国ですぐそばに明久がいたことにより警戒を解いた。
その後彼らは破壊された街(主に明久達の所為)を修復した後、操られていた間の記憶がない七久と秋野に事情説明をし、雄二達人間組の事を頼んだ後明久は自分が帰ってきたことを知らせる為(といっても大半が知っていると思うが)一人別行動をとった。
他の作品も続きを考えてはいますがバカテス程慣れていませんので中々文章に出来ません。
言い訳ではありますがそう言った事情により遅くなります。私の作品を待っている人は少ないと思いますが、もう少しお待ちください。