ベルさんがダンジョンに挑むのは間違っているだろうか 作:ハガル_ゴールド
制約のせいでベルさん成分が少ない、仕方がないので更に亀更新の番外編
別その1
「ブモァ!?」
「ダンジョン五階層……残りの一匹は?」
牛頭の怪物であるミノタウロスを切り伏せながらアイズ・ヴァレンシュタインはあたりを見渡して何処にいるのか探り出す。
ここよりも下層で接敵し、恐慌状態で逃してしまった事と他の冒険者では手に負えない存在である為他に被害が出る前に早急に掃討せねばならないのだ。
「こっちだアイズ!!」
その時、同じ階層にたどり着いていた狼人のベート・ローガが匂いで察したのか先行し、アイズが後を続く。
角を曲がった姿が見えた為、急いで向かいながらいつでも魔法を使えるように精神を集中させていた。
「……見つけた!」
「よし、何事もなく終わって―――」
その時、追い詰めたミノタウロスが
その笑みを見た瞬間、2人の背筋に悪寒が走る……どう見てもただのミノタウロスだ、間違いない。
そうである筈なのにまるで未知の――――
「【
すぐさまアイズが自身が扱える唯一の魔法を使用する。
風を自分や武器にまとわせ攻防一体の風の鎧を構築する魔法だ。
―――ただのミノタウロス相手に使うにしては大盤振る舞いではあるが……その予感は外れておらずむしろ向かう事が間違いであった。
「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
「―――え?」
「アイズ!?」
風を纏わせた神速と言っても過言でない剣の一撃をかわし、風に守られたアイズに
ベートにとってその光景が信じられず吹き飛ばされたアイズを目で追ってしまいその場に足を止めてしまっていた。
「オオオオオオオオオオオオオ」
「な、はやす―――」
その隙を見逃さず、その拳はベートの鳩尾を打ち抜き吹き飛ばしていた。
本来であればレベル2の上位のミノタウロス程度でレベル5の2人を圧倒できない筈なのに現実では真逆であり、アイズもベートもダンジョンの道に横たわってしまった。
「……なんで、逃げて……やがった」
「ブモ」
わざと逃げて追いつけるようにしていた……理由はわからないがここにいるミノタウロスはわざわざそのような面倒を行ってアイズ達を蹂躙したのだ。
油断したつもりなど毛頭なかったはずだ……だが、いきなり本来の実力を上回る実力を発揮したミノタウロスでは意味をなさなかったのである。
「ブモァ!!」
「グホァ!」
ベートの近くに歩み寄り、ミノタウロスは拳を叩き込んだ。
悲鳴を上げれる程度に力を抑えているようであり、目的が明らかに嬲って楽しむ類のものであると理解しながらも息も絶え絶えの体は避ける事を許さず受け入れるしかなかった。
ただ、その一撃を打ち込んで満足したのか、ミノタウロスの動きが明らかに変化していた。
「……!……!!」
「べ……ト……」
アイズの視線の先ではミノタウロスが連続で拳を場所を選ばず乱打しており肉を叩く音が連続で響いていた。
もはや悲鳴を上げれるほどの余力もないのかなすがままにされている様は憐れにしか見えなかった。
アイズとてそれを呆然と趣味もなく、止めようと思った……だが、的確に狙われて折れてしまった両足がそれを許さず魔法で剣先から風を飛ばそうと試みてもうまく狙いが定まらない。
「……え」
「ブモブモ」
やがて、ベートの動きがほぼ無くなってしまうと満足したのかミノタウロスがアイズへと近づいていた。
……ベートの様に嬲られると思ったのだが、アイズがミノタウロスと視線が合うと―――それは違うと気が付いてしまった。
明らかにベートに行った事とは違う行為を行おうとしているのだと。
「あ……」
「―――ブホ」
だが、気が付いても足を折られ機動力を殺されてしまってはどうにもならない。
希望があるとすればフィンやリヴェリアらが急行してくる可能性だが……それでもその間に何かをされてしまうだろう。
確実に間に合うはずがない……久しく感じなかった恐怖がアイズを襲い、精神が幼い自分そのものになってしまう。
恐怖による走馬灯のように幼い頃の思い出がドンドンと流れていき、こんな時でなければ良かったのにとさえ思ってしまう。
それでも悲鳴を上げずにらみつける事だけはかろうじて行えたが、ミノタウロスがアイズを掴もうと腕を伸ばし……横から伸びた手に掴まれていた。
「ブモ……?」
「……え?」
そのまま伸ばした手の持ち主はミノタウロスを軽く弾きアイズをかばうかのように背を向けた状態で立っていた。
―――風を纏ったアイズを捉えたミノタウロスですら見えなかった一連の動きにミノタウロスは混乱している。
アイズはその背を見て―――今の精神状態の生なのか幼い頃の記憶の父を思い起こしていた。
「―――大丈夫ですか?」
「……ぇ、あ、はい……」
ミノタウロスから視線を逸らさないまま目の前の男が語り掛ける。
背中越しに話している状態だが、声色はアイズを気遣うかのようなものだった。
暖かい声に緊張状態が解けたのだろう、アイズは張っていた気を緩めてしまいダンジョンの壁に寄り掛かった。
それでも意識を失わないのは未だに脅威が残っているからだろうか。
「―――すぐに終わらせる」
「ブモオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
混乱から立ち直ったのか、邪魔されて怒り心頭のミノタウロスが男にとびかかった。
勢いをつけての跳躍であり、アイズはなんとか動きが見えたが実際に相対すれば避ける事が出来ないであろう速さだった。
だが、その速さも目の前の男にとっては意味をなさないものであったらしい。
わずか半身分体を動かす無駄のない動きで回避した――――その映像がミノタウロスにとってはスロー映像の様に見えた。
視界の隅には己を見下す男の姿があり、そして―――
「―――――!!!?」
――――――――― ボ ―――――――――
蹴りがさく裂した……あらゆる音を置き去りしたのか、ドンでもドゴでもボカでもない短い音……聞き取れた音を表せばそれは”ボ”でしかなく、それ以外に表現のしようが無かった。
そしてあまりにも鋭い一撃にミノタウロスは悲鳴を上げる事も出来ず、ダンジョンの天井にたたきつけられていた。
いや、たたきつけるどころかダンジョンの天井にミノタウロス自身の形をした穴を作られめり込んでいた。
「さい、しょは……グー」
「え、あの……?」
内部にかなりのダメージを負い物凄い量の血を吐き出し、明らかに絶命状態なのだがそれでも男は気を緩めることなく何やら力を込めて片手に何か目に見えないが凄まじい量の力を込めていた。
お礼を言わなければとか、もうやらなくても大丈夫とかいう暇もなく筋肉の収縮が始まりミノタウロスにとどめを刺そうとしていた。
―――実際にはミノタウロスはギリギリで生き残っており、穴から飛び降りて男と道連れになろうと拳を振り上げていたところだったが。
「あ」
「ジャンケン……グー!!」
そして男の近くにミノタウロスが来た瞬間、男の拳がミノタウロスそのものに突き刺さり――――跡形もなくはじけ飛んだ。
魔物を形づける魔石もろとも吹き飛ばされて灰になる瞬間も訪れることなくアイズ達を圧倒したミノタウロスが消え去ったのだった。
一瞬の静寂の後、男はアイズとベートを交互に見ていた。
「あの人の方が危ないから先に処置を施します、では」
「あの……!そのままでいいですけど」
一目見て生存を確認すると同時に危ない状態であると理解したのか男は迷いのない足取りで処置……おそらく治療をしようと思ったのか足を進める。
その動きを止めることなくアイズはどうしても聞きたいことがあったのか声を張り上げる。
その甲斐があったのか視線だけをアイズに向けて男は歩いたままであった。
「名前……あなたの名前は……!」
幼い頃の暖かい思い出……その中にあった母親と父親の言葉が脳内を占め、ようやく来てくれたという想いで満たされていく。
自分だけの英雄、その存在が目の前に現れてくれた、という想いで。
「ベルさん・クラネル」
「ベルサン……」
(なんで”さん”がついてんだ)
名前で色々と台無しであったが、感動しているアイズにはそうとは捉えられていなかった。
……ただ、意識のあったベートは喋れないので心の内で突っ込みを入れていたが。
ベル・クラネルではなくベルさん・クラネル。
さんは平仮名で他がカタカナです、こういう名前になってますが原作のベル・クラネルが名前変わってベルさん状態になってるだけです。
ミノタウロス裏話
転生者であり、実力を隠してクッコロ、ウ=スイ本展開を何度も行っていた存在。
実はオッタル以上の化け物スペックなのだが相手が悪かった。