ベルさんがダンジョンに挑むのは間違っているだろうか 作:ハガル_ゴールド
少し早足展開
「アイズ、終わったか?」
「アイズさん、そっちはおわ―――」
時間が経過し、流石におろしてくれたところでアイズの仲間が合流する。
エルフの女性と少女と獣の耳が頭の上にある男性、褐色の少女2人、と後ろにかなりの人数が追従していた。
それぞれリヴェリア、レフィーヤ、ベート、ティオネ、ティアナ、その他大勢である。
……そして男性がやけに殺気立ってアイズに近いベルの方に歩いて行こうとして―――
「ティオネ、ティオナ」
「はいはーい、馬鹿狼は落ち着きなさーい」
「さっきのあんな態度で接されて機嫌悪いのが追加されてるのは分かるけど八つ当たりになるでしょう?」
「おい、やめろコラ離せ!」
リヴェリアに指示されたティオネ、ティオナの2人に掴まれて断念させられていた。
そしてミノタウロスの状態を見て眉を顰めつつ改めてアイズとベルの両名に視線を向けていた。
「斬っていないという事はアイズではないが……誰が?」
「……」
いくら聡明な者でも流石にベルがやったとは思わなかったのか誰か別の人物がやったのかという意味で女性がアイズに尋ねていた。
その質問に対してアイズが視線と手でベルを注目させるようにしていた。
「え?」
「は?」
「ふむ……?」
「……どう考えても信用できないですよねー」
アイズの動作に対して全員が怪訝な表情でベルを見る。
ベルは苦笑いしながら、ミノタウロスが自分では倒せない化け物だと理解した。
実際に出会った時から既に本能が危険を知らせていたので強い類だとわかってはいたのだが。
「アイズ、そりゃ冗談がきついぞ……どう見ても素人のクソガキが―――」
「……えっと……私はアイズ・ヴァレンシュタイン」
ベートの意見をぶった切り、アイズがベルに視線を向ける。
何かを言いかけてそういえば、と思い出したのか急に自己紹介を始めていた。
この状況ではふさわしくなさそうではあるが流石に己の名前を聞いているという事はわかったベルは名乗り返す。
「ベル・クラネルです」
「そう、クラネル、さん……さっきのは?」
ベートは無視されて若干傷ついたが、アイズの真剣な様子に全員静かに話を聞いていた。
アイズの性格から嘘ではないとわかったが、少年が素直に吐くかどうかによると判断してと考えたからだ。
「……次使ったら完全に倒れちゃうんですけど」
「……今は無理みたい」
困ったように言うベルとそれを聞いて無理強いは出来ないと判断したアイズ。
割と息ぴったりな会話に2名ほど機嫌が急降下しているがまだ無害である。
「つまりミノタウロスを倒せる何かを使えるという事か?」
「はい」
一切隠すことなく、己の手をさらすことに逆に訝しむ。
とはいえ、余り詰問するのも良くはない……新入りだからあまり詳しくはないのだろうから話しているだけで情報を一方的に聞くにも失礼であるし、そもそもがリヴェリア達側の不手際によるものなのだから。
聞きたい欲求はあるが、詮索するのはやめるとして今のベルの状況を見てようやくと言ったところだが質問する。
「……アイズの仮眠用の布を纏っているようだが上着や靴無しでダンジョンに潜ったのか?いや、そもそも防具は」
「いえ、吹き飛んだだけです。それと今日来たばかりで初めて会った冒険者の人に連れられてここに―――あ!?」
吹き飛んだという意見に疑問が浮かび上がる。
―――が、それよりもベルはようやく思い出したとばかりに大声を出す。
他の者も連れられてという言葉に違和感を覚え、嫌な予感が頭をよぎっていた。
「さ、サロモンさんと荷物は知りませんか!!?」
「待て、一つ聞かせろクソガキ。お前何処のファミリア所属だ」
「え?いやファミリアって何ですか!?」
「……お上りさんを狙った強盗だね、こりゃ」
リヴェリア達はベルの境遇を把握した……言葉にしないが騙されたほうが悪い事になる。
本人に対して言うにはまずはこのダンジョンから出て安全を完全に確保してからになるが―――そうなるとますますベルがミノタウロスを倒したという結果が信じられないのだ。
恩恵無しで最初から第一階層の通常モンスターならまだ可能性はあるかもしれないが……ミノタウロス相手では――――
「……いや、まずはここから出るのが先決だな」
「あー、信用しろとは言わないけど……とりあえずダンジョンの外に出るから付いてきて?」
ダンジョン内で延々と議論や問答をし続けるわけにはいかない。
とにもかくにもダンジョンを出てからの話である……ベルは出口がわからないので大人しくついて行くことにしていた。
* * * * *
「……大丈夫、ですか?」
「あはは……気にしないでください……騙された僕が悪いんです……はあ」
ダンジョンを出て、ギルドに向かい、冒険者の基本的な説明を受けたベルは放心状態のまま待っていたアイズ達に付いて歩いていた。
起こった事は不運ではあるが、ミノタウロス襲撃を受けたのは落ち度であるため、即刻ファミリア加入……はさすがに平等性を考えると無理であるため入団試験を受けさせる事にしたのだ。
宛が無いベルとしては渡りに船であるので、そのまま大人しくついて歩いていた。
「アイズさんの話が本当なら、実力で入れそうですけど……」
「……実際に見るしかねーだろ」
半信半疑ではあるが、言い出したのがベル本人ではなくアイズである以上ある程度の信用はある。
それでも疑いはあるのだが、それはそれとしてベートはアイズの隣のポジションにいるベルが気に入らないという感情が大きい。
「さて、ここが我々【ロキ・ファミリア】のホーム【黄昏の館】だ」
「……城?」
高い塔のようなものがいくつか見える巨大な建物が見えた。
事前に大人数が所属しているファミリアと聞いて大きいとは思っていたが、それでも予想以上の大きさであった。
高い塔を見ながらアイズ達について門をくぐり、庭のような場所に案内されてじっくり見て城と判断したようだ。
「高層塔を回廊でつないでいるだけやけど、確かに見ようによっちゃあ城に見えるかもしれんなあ」
「(ファミリアの人かな?)びっくりするのでいきなり後ろから声を掛けないでください」
いきなり後ろから掛かってきた声に多少驚いたが、アイズ達と同じファミリアの人間だと判断する。
その証拠か否かは知らないが、先ほどのダンジョンで顔を合わせた事のある人物が何人かその人物の後ろであきれ顔で居たからだ。
何故あきれ顔なのかはよくわからないのだが。
それはさておいて、何か言いようのない何かがその人物から感じ取れるのだが、初見であるベルにはその正体までは感じ取れなかった。
少なくとも人間やエルフなどのようなものではなく、もっと高尚な――――
「で、自分はうちの【ロキ・ファミリア】入団希望者であっとるんか?」
「え、あ……神ロキですかああああ!!?すいませんでしたああ!!」
ギルドの人間から神の事を聞いてるし、それ以前に神様=偉いという事が頭にあるベルは慌てて失礼な態度で少しでも接したことを謝罪し、頭を下げる。
その際に勢いが付きすぎてあたりに先に地面についた手に思いっきり頭突きをしてしまったが、根性でねじ伏せている。
「お、おう……落着きぃ、そんなかしこまらんでも大丈夫や。手は無事なんか?」
「だ……大丈夫です」
涙声になっているが、指摘しないのが優しさなのかもしれない。
あまりの慌てようと痛みを堪える震えっぷりにベルの姿がますます子ウサギに見えてきたのか多数の人間に可愛い物を見る目をされたが余談である。
「リヴェリア、アイズ……彼かい?」
「見たのはアイズだけだがそうだな」
そんな中、一人の小柄な男性(ベルから見れば少年に見えた)がアイズとリヴェリアのところに近寄る。
ダンジョンを出る前に合流できず、ベルを連れていくのに別れた形だ。
それでも数人を説明役として派遣し、ある程度の説明は行っていたようだが。
「恩恵無しでレベル2を一撃か……」
「よっぽど時間をかけた戦士ならともかく見た目は小動物やしなあ……」
失礼な物言いではあるが、実際に今見えてる時点での状態ではとても信じられない事である。
鍛錬を積んだ年季の入った戦士であれば納得がいくのだが、ロキの言う通り小動物であったから尚更だ。
「……」
「えっと、まあできますけど」
「アイズたんと視線で通じあってる……やと!?」
「ロキ、今は黙っていようか」
アイズがベルに対して視線を送る。
それで大体の事は察したベルが返事を行うが、それに対してロキが大げさに驚いていた。
フィンは手で制しながらベルの方を見ている。
「その前に、台無しになるので上着と靴を脱ぎます」
「そのズボン、頑丈なんだね……」
ベルは服や靴は借り物なのですぐに行う訳にはいかず、ゆっくりと脱いでいた。
ズボンだけが頑丈ではあるのだが、何故ズボンだけなのだろうか……まあ、全てさらけ出すわけでもないのでいいのだろうが。
「ロックも何も無さそうやな……確かに何処の所属でもあらへん」
「……」
背中をじっくりと観察していたロキの言葉に他の団員がやはり怪訝な表情を浮かべたが、証人なのがアイズであるため口には出さなかった。
そして脱いで丁寧にたたんだ後、服を貸した
「じゃあ、行きます」
とりあえずアイズメインヒロインでサブはどうしようか悩み中