ベルさんがダンジョンに挑むのは間違っているだろうか   作:ハガル_ゴールド

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相変わらずの鈍足進行


その6

 

「夜は打ち上げとベルっちの歓迎会やるから遅れんようになーー!!」

 

朝食を終えた後、地下迷宮遠征から帰還した後恒例の後処理に出かけていた。

ダンジョンから持ち帰った戦利品の換金や武具や道具の仕入れなど、団員の数が多いためか数も膨大になり団員全員が駆り出される。

入ったばかりのベルは普段懇意にしている場所を案内する傍ら手伝いとして同行していた。

 

「おい、ロキ・ファミリアだぜ」

 

「遠征から帰ってきたのか……」

 

「先頭を歩いてるのは勇者(ブレイバー)のフィン・ディムナか」

 

「他にも第一級のやつらがいるぞ、おい」

 

聞こえてきた声にベルが視線を移す……までもなく、前を歩いていた他の人間が道を開けて口々に言うのを見て首をかしげる。

ところどころ名前の前に称号のようなものが聞こえていたが、それは後で聞いてみようと心に刻んでおいた。

ベルよりも先に村を出たズボンとパンツを作ってくれた友人が言っていた()()()()とやらとは関係があるかもしれないし、落ち着いた場所で聞いた方がいいかもしれない。

 

「……アイズさん達が見られてますね」

 

「この人数で動いているのもあるけど、オラリオでも影響力が大きいから」

 

アイズの隣で歩きながら感じている視線にベルが若干圧されていた。

自分に向いていないとは分かっているのだが、それでも所属したファミリアが如何に注目されているのかがわかったためである。

 

「仕方ないけどなんかいやなんだよねー、ベートは喜びそうなんだけど」

 

「ベートもそこまで下品ではないぞ、あやつはあやつなりに第一級の誇りと自覚がある。それにアイズの言う通り我らはオラリオでも指折りの影響力を持つ」

 

「その事実は受け止めないと、ね」

 

「はい、団長」

 

勢いで入ったとはいえベルも気を引き締めないとダメだろうと幹部の会話を聞きながら歩いた。

その時、やけに気になる光景が見えたのでそちらに視線を向けた。

 

「?ガレスさん、あそこって何かあるんですか?あのやけに視線が鋭い人が見てる先なんですけど」

 

「ん?いや、あそこには()()()()()()()()()()()()()?」

 

「あ、そういえば遠征前にもあの子見かけたような……?」

 

やけに不機嫌かつ自分と同い年なので妙に気になったのだが、遠征する前にも廃教会を見ていたらしい。

とはいえ本当に若干気になっただけなのでベルは視線を前方に戻した。

他の者も確かにあの態度で見てたら気になるんだろうなあ、といった程度ですぐに視線は元に戻った。

何人かが見覚えがあるなあという意見を言っておりやはり何かあって目立つのだろうか。

 

「くそ……紐神はいつ居るんだよ……!」

 

(ヒモ神って……ヒモって名前の神様を探してるのかなあ?)

 

最後に聞こえた声に疑問に思いながらもいつまでも意識を向けては失礼だよなあと意識を戻した。

そのまま通りを進むと少し開けた場所にたどり着いた。

全員が足を止めたのでベルも慌てて足を止める……フィンとガレス、リヴェリアが先を歩いていたので若干つられてしまった。

 

「さて、僕とリヴェリア、ガレスにベルは魔石の換金に行く。皆は予定通りここから自分の目的地に向かってくれ」

 

「ベルはその後で儂が街を案内する故の同行だ、ギルドへの登録作業も兼ねている」

 

そういえばベルはまだ登録していなかったなあ、と冒険者になって英雄になるという事以外捨て去り無知のままオラリオに来た事を恥じた。

とはいえそれで怪我の功名でアイズや今のファミリアの面々と会えたのだから行幸ではあるが。

 

「そうそう、換金したお金はどうかちょろまかさないでおくれよ?ねぇ、ラウル?」

 

「ちょちょ、あ、あれは魔が差しただけっす!?本当にあれっきりです、団長っ!?」

 

慌て様からして未遂なのだろうが……一回でも行えば許されていようともこうやってネタにされ続けるのだろう。

黒歴史を増やすだけなのでやる気はないが、ベルは肝に銘じておこうと思った。

 

「はは、じゃあいったん解散だ」

 

「ベル、しっかりと付いて来い」

 

「は、はい」

 

それぞれ依頼を受けていたりドロップ品を売りに向かうために、と行き先がある他の面々と別れてベルはフィンらに連れられてギルドへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちは、ギルドへようこそ。登録です……か?」

 

「あ、は……リヒト?」

 

「ん?知り合いか?ベル」

 

登録受付窓口へ向かうと挨拶をされ、ある程度の冒険者を見ていて新入りだと見抜いて登録作業だと聞こうとしたが、職員にとって知り合いだったのか若干言葉が詰まっていた、

ベルもベルで思いがけもしない再会に目を瞬かせている。

リヒトはベルが住んでいた村の出身者であり、ベルと交流を持っていた人間の一人でもあった。

そんな二人の様子から、というよりもその様子を見ない状態でも知り合いなのだろうと気が付いたガレスが声をかけた事で二人とも再起動する。

 

「今は業務中だからっと……冒険者登録でよろしいですね?」

 

「はい、お願いします」

 

流石に忙しい時間で業務中に私語厳禁であるのかすぐに通常業務に勤しむ青年リヒト。

ベルも流石に人が賑わっている時に雑談に興じようとは思わなかったのか後で会う約束でも取り付けて機会を設ければいいかと切り替えた。

 

「念の為の確認ですが、ガレスさんが居るという事は【ロキ・ファミリア】に所属しているという事でよろしいですか?」

 

「もちろん、ベルは我ら【ロキ・ファミリア】の新人だ」

 

(……流れが違う……いや、アレの時点で流れとは別物だよな……いい加減現実を見ないと)

 

ベルが羊皮紙に必要事項を記入しているのを見て、名簿のようなものを取り出して挿入するファミリアの場所を探しつつ視線を向ける。

ガレスの返事にリヒトは若干の視線をずらして思案顔になったが、すぐに別の事を思い浮かべて自己完結して作業に戻る。

 

「後は簡単な初回講習を受けてもらう予定ですが……時間などは大丈夫でしょうか?」

 

「ああ、すまないが。この後少し懇意の場所を案内する事になっておる。だから後日だな」

 

「承りました、その時には別の者が担当するかもしれませんので軽くお伝えしておきますね」

 

ベルから受け取った書類をとじこんで、この後の予定を聞いたがやる事があるなら仕方がないとそのままにする。

魔石の換金を終えたらしいリヴェリアの方を見て自分が担当する事は無いだろうと思いながらリヒトはまとめ終える。

 

「あ、明日の昼は大丈夫?」

 

「昼の誘いか?だったら大丈夫だぞ、休みだからな」

 

同郷の者と話をしたいベルはすぐさま都合が付きそうな日程を聞くが、ちょうど翌日は空きがあるようだった。

リヒトとしても村を出る前にそれなりに接していた事もあり、

 

「荷物取られてズボンとかが無くなったからあの()()()()がまた欲しいんだけど」

 

「…………色々と聞きたい事はあるが了解した。昼までに適当に材料は揃えておく。ほら団長達が待ってるようだから行って来い」

 

ベルの荷物取られた発言を聞いてお上りさんを狙った強盗に遭ったのか、と大体の検討はつけようとし……そういえば昨日買い出しに出ていない間にそんな目にあった人間が居たと聞いたと思い出しながら世間は狭いんだなあと若干遠い目をしていた。

 

「そういえば冒険者になるって――――」

 

「タイミングが悪くて入れなかったんだ……今は食い扶持稼ぎの職員仕事だよ」

 

募集時期とかけ離れた時期に訪れても光るものが見いだされなかったのか門前払いされたようである。

―――ただ、それは非常に幸運な事ではあったのだが関係が無いので割愛する。

 





転生者2名、物語気分が抜けていない人間と現実を見始めている人間といます。
なおリヒトは念の基本以外には一つしか扱えない能力持ち……ベルの会話で察しはつくでしょうけど
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