進級が決まり、ヒャッハーな勢いにのってリュウを絡ませてしまった…
まあ、どうぞこうぞ3年生にあがれるのでよしとしよう…
しかし、また駄文だったな…
ねえ知ってる?
なんだよ藪から棒に。
最近この近くに赤い鉢巻の鬼が出るんだって。
・・・・・
やれやれだぜ。そう呟き、承太郎はキャットフードを抱えて家路につく。
空条承太郎、現在23歳。
カオスの世話の仕方を聴くために尋ねた女性と結婚してからおよそ一ヶ月。
今日も今日とてカオスの餌を買いに来た承太郎である。一抱えもある袋を肩に担いで自宅まで持って帰り、物置にしまうと、途中で聞いたうわさ話を思い出した。
「鉢巻しめた鬼が出る…ね。やれやれ。ないとは言えんところが恐ろしいぜ。」
「いつもごめんね?」
「気にするな。カオスの世話自体は投げっぱなしだからな。むしろこれくらいやって当然だ。」
顔を出したアルクェイド・空条に承太郎は小さく笑いながら答え、続いてある質問をした。
「アルク、お前、赤い鉢巻の鬼の噂って知ってるか?」
「ええ、調べるの?」
ゆっくり寝られんからな。そう言って肩をすくめる承太郎であった。
・・・・・
で、その鬼ってのはどんな奴なんだ?やっぱり悪い奴?
ううん。むしろいい人みたいだけど、鬼のように強いのよ。
へえ、そいつは会ってみたいな。案外、超有名な人だったりして。
・・・・・
「と、いうことらしいの。」
「なるほど…強いと観るや勝負を挑み、恐ろしい強さで勝ちを持っていく…鬼と言うよりストリートファイターだな。」
承太郎が顎に指を当てて考え込むとアルクは
「ジョジョは強いんだし、襲われるかもしれないよ?」
と茶化すように言う。しかし実際の所力を衰えさせないようにときどきやっているスパーリングではいつも承太郎が負けている。
<楽勝~!ぶいなのにゃ~!>などと上機嫌でピースサインを出している姿がまぶたの裏側に浮かび上がり、承太郎は身震いした。
「ま、とにかくそれらしいヤツがいたら注意しておくとするさ。」
・・・・・
でも肝心の名前が分かんないのよね。
じゃ、当ててみようか。例えば…リュウ!なんつってな。ないない、こーんな普通の街にあんな有名人が来るわけないよなあ。
・・・・・
「赤い鉢巻とナックルガード、白い道着に黒い髪…テメエが噂の鬼ってヤツか?」
町中でストリートファイトを挑まれた承太郎は相手のナリを見てくだんの人物だと断定し、きいた。
「どうやらそうみたいだな。もっとも、俺は鬼を名乗ったつもりはないがな。」
「だろうな。自分でそんなモン名乗ってたらそれこそ病気だぜ。で、名前は?」
「リュウ。KOF優勝チームのリーダーである空条承太郎に手合わせ願いたいと思ってきたんだが…駄目か?」
よどみも迷いもなく言い切ったリュウに苦笑すると承太郎は更に質問する。
「なんの為に?」
「強くなるためだ。負けないために、俺は俺より強い奴に会いに行くための旅をしている。」
「なるほど。KOFと並び称されるストリートファイターの王者らしい考えだ。」
そう言うと承太郎はグローブをはめる。
「良いだろう、テメエはこの空条承太郎が直々にブチのめす!」
ファイティングポーズをとる承太郎。リュウも満足そうに頷くと構え、両者にらみ合う。
先に動いたのはリュウ。体を錐揉み回転させながら回し蹴りを叩き込む彼の十八番、竜巻旋風脚で距離を詰め、続けてジャブ、ジャブ、ストレートとつなぎ
「真!昇龍拳!」
承太郎の長身をしたたかに突き上げ、吹っ飛ばす。しかしただでやられる承太郎ではない。スタープラチナの精密な目でいくつもの技をトレースしている彼である。
「悪いな☆」
七夜の悪いね☆をまねると続いてそこからキムの追撃を繰り出し、それをなんでもない踵落としで叩き付ける。
「げふッ!?」
「まだだぜ!スター…フィンガー!」
右手の人差し指と中指をそろえ、刺し貫くように突く!つづけてそれを横に薙ぐように払って姿勢を崩し、短いオラオラを叩き込んだ。
「こんなモンじゃあねえだろう、ウォーミングアップは終わりにしてかかってきな。」
「ああ、ではそうさせてもらおう。」
次に先手を打ったのは承太郎のほうだ。腰からぶら下げたペットボトルから水を一口口に含み
「波紋バレット!」
急所狙いのそれをガードしたリュウだが足下からの波紋疾走に思わず怯んでしまう。そこに華麗に決まる空中からのオラオラ。
「閃光…流れ星!」
閃光流れ星(命名七夜)を受けて膝を突くリュウ。しかしそこからの飛び起きざまに放つ回転脚が承太郎の頭をとらえ、承太郎は大きくつんのめった。
「ヌウッ…!」
「そこだ!零距離波動拳!」
リュウの十八番の一つである波動拳。威力十分なそれをゼロ距離で喰らい、弾かれる承太郎。
印象としては威力のリュウと手数の承太郎といったかんじだ。
「やれやれだな。もうちょっと遊んでいたいがこちとら暇じゃあないんでな。手早くカタをつけるとするぜ。」
「ああ、ダラダラするのは好きじゃないからな。」
そして今度は同時に動く。
突き込まれるリュウの肘打ちを巧みにすり抜けた承太郎げはのまま鼻っ面に裏拳を叩き込み、続けざま反対の腕で猛ラッシュを仕掛ける。
「オラオラオラオラオラオラァァ!」
「ぐぶっ!まだ終わらんぞ!電刃零波動!」
ラッシュを喰らいながらも力をためていたリュウ。自身の中に眠る毛色の違う二つの力。生命エネルギーたる波動と世界の修正力とでも言うべき殺意の波動。
二つの波動を同時に利用することで摩擦による帯電を促し、雷撃を纏った波動拳を練り上げる。そしてそれをゼロ距離で叩き付けるのが雷刃零波動だ。
しかし承太郎はそれを…
「オラァ!」
流れに逆らうことなく受け流し、腕をクロスさせるようにして反対の腕で掌底突きを繰り出した!
続けて膝蹴り、そのまま足を伸ばしての蹴り上げ、体を反転させて飛び上がりながら放つ後ろ蹴り、錐揉みしながらの波紋キック、着地してのダウン追い打ち、そして引き摺り上げてのパンチラッシュ。まずは目の前に向けてバズーカを乱射するように。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
続けて吹っ飛びかけるリュウをその場に押しとどめるかのように、最後は重力で落ちかけるリュウをカチ上げながら。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァッ!」
最後に乾坤一擲の超絶アッパーで高く高く吹き飛ばすと承太郎はビシッとポーズを決めて一言だけ叫んだ。
「決着ゥーッ!」
・・・・・
結局、噂の鬼ってリュウだったんだな。
まあ、こんな身近であんな有名人のファイトが無料で見られたんだからめっけもんじゃない?
それもそうだね。
・・・・・
「で?仕事帰りにこんなボロボロになって帰ってきたワケ?」
「…すまん。」
猫のように目をつり上げて怒るアルクに承太郎は一言しか言えなかった。と言うかそれ以上言うことができなかった。
ある意味どんな強者よりも強いもの。ひょっとしたらそれは怒った女性かもしれない。
と、それの真偽は置いておいて。現在承太郎の脳内におけるヒエラルキーにおいて頂点に位置するのはどうやらアルクェイド・空条のようだったとさ。
チャンチャン♪
うん、もはやKOFじゃなくてMUGENだな。
我ながら恐ろしいご乱心っぷり。う~む…