おっそろしいほどみじけえなオイ!
雨が降っている。
濡れてべっとりとへばり付く前髪に少しだけ顔をしかめながら赤い服を着た金髪の青年が歩いてきた。その視線の先にはボロボロの真吾と倒れ伏す京、そして正気を失い、狂気に染まった目をらんらんと輝かせる庵の姿。
「おおこわ…しかし酷くやられちゃったね、真吾クン。」
「アッシュさん…駄目です…危ないですよ…」
真吾の静止も聞かずに青年―アッシュ・クリムゾンは庵の背後に回ると、その体内に手を突っ込み、ヒビの入った勾玉を取り出すと握りつぶした。
「これで残る神器は草薙クン…ま、いっか。じゃあね、真吾クン。」
自分の背後で真吾が意識を失い、倒れた音を聞くと小さく手を振り、歩き出そうとする。
「待ちなさい!」
「全く、お説教はキライだってのにサ。」
五月蝿そうに振り向くアッシュの目に映ったのは京と真吾に駆け寄る紅丸と、堕龍を連れた青い髪の女性、エリザベート・ブラントルシュだ。
「あなたは自分の使命を分かっているのですか!」
叩き付けられる怒声もさらりと聞き流すと
「使命なんてわ・す・れ・た。」
と人を食ったような口調で返す。
「それに僕、邪魔されるのもめんどくさいのもキライなんだよネ。バイバイ!」
「待ちなさい!ぐっ…」
アッシュが姿を消すのを見た紅丸が苦々しげに舌打ちし、見たとおりのことを呟く。
「ちづるさんの鏡の力に、八神の、いや、オロチの炎…」
(邪魔をすると言うのなら、私はあなたを倒します)
決然とした目で雲の切れ目を睨み付けるエリザベート。彼等の視界から離れたところでそれを見つめてアッシュは言う。
「君のこと、好きだったよ。…オ・ルヴォワール」
そう呟くアッシュの頬をほんのわずかに雫が伝っていた。
・・・・・
「そうか…禍忌の死体は奪われたのか…」
<ええ。もっとも、教官はそれを見越して発信器を仕込んでいたみたいよ。>
典明は電話の向こうにいるウィップの言葉に口笛を吹いて
「さすがは百戦錬磨の傭兵、やることにそつがないね。」
と言う。ウィップはそんな典明に
<また、KOFに関わることになったら…協力してくれる?>
と問いかける。苦笑して
「もちろん。他ならぬ君の頼みとあらば。」
と返した。
<ありがと。そうだ、来月休みが取れそうだから日本に遊びに行くわ。エスコート、お願いね。>
「よろこんで。」
ガチャッ。ツーッ、ツーッ、ツーッ…
PART1 格闘潮流 FIGHTING TENDENCY 完
それでは次回も楽しんで下さい。
いまさらですが格闘潮流 FIGHTING TENDENCYの由来はジョジョの奇妙な冒険第二部 戦闘潮流 BATTLE TENDENCYです。それでは。