無限書庫の黒柩 D.Gray-man   作:黒樹

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ちょっとした裏話でございます。


『僕はリナリーを行かせたくなかったんだ!』byコムイ

 

 

 

《黒の教団・本部》

エクソシストのホームと呼ばれる場所は常に人員不足が続く、家とは程遠い仕事場だ。各地で起きた不思議な現象を元にイノセンス――“神の結晶”――を集め、千年伯爵との戦いに向けて戦力を高める。

 

その上で、今日も科学班は情報に右往左往させられていた。その原因は、重要性レベルファイブの超重要案件、イノセンスの回収にあたるもの。

 

科学班が各地の不思議な話を元に精査し、探索班と呼ばれる、通称“ファインダー”を現地に向かわせてイノセンスかどうかを確かめるという任務。その任務の中でも、最優先事項として挙げられるのが、初めて発足された。その重要案件というのが……

 

『謎の救世主』

そう、現地の体験者たちは呼んだ。現地の被験者たちはアクマに苦しめられ、沢山の人がその日まで何人も殺されたそうだ。そして、今日も誰かが消える――ならば生け贄をと少女を差し出した時、奇跡が起こったらしい。嫌がる少女は泣く泣く生贄の祭壇と呼ばれる洞窟に赴き、ただ生贄となる、犠牲となるのを待った。そうしてアクマが現れた時に少女の前に現れたそうだ。二人の救世主が。

フードを被り顔は見えなかったらしい。しかし、外見は幼く背も低かったそうだ。声も変わる既のところで止まり気味、やはりそれは少年少女だという。

 

これらの話から推測するに仮定『少年少女はイノセンスを持ったエクソシストと同等の力を持つ者達』と判断され、追跡にあたっている。

 

これが最重要案件の理由は二つ。

1、アクマを少女の前で倒した武器が西洋剣の様なものだと証言されている。

2、足取りの掴めなさからクロス元帥じゃないかと教団内ではもっぱらの噂となっている。

2に関してはボクたち科学班でも手を焼かせられているとんでも案件だ。クロス元帥は旅に出たかと思うと、ファインダーを連れないために連絡を教団にもよこさず、姿をくらましてしまう。そこから追跡を逃れるように音沙汰も痕跡も消失する訳で――失踪、と教団内では毎度のように呆れられていた。

その元帥が尻尾をついに出し―――ではなく、痕跡を残したことで、そうなんじゃないかと思うのが多数。

が、その前提は大きな間違い。1人が使った武器は剣だったという事で有り得ないのだ。なにせ、元帥の武器は銃型のイノセンスなのだから。というか子供でもないし。

 

 

 

「―――という理由で、元帥ではないと結論が出たけどどうするーリーバー班長」

 

「どうするもこうするも、仕事してください室長」

 

泡と書かれた容器を手に、無精髭、逆髪の白衣を着た青年男性が呻くように言葉を返す。

リーバー科学班班長、彼はたくさんの資料に目を通しながらぼやくと容器の中身を呷った。

 

「それにですよコムイ室長」

 

僕の名前は、コムイ・リー。

科学班室長という奇妙な称号を持ち、科学班班長、それよりも上――つまるところのリーバー班長の上司にあたいする。

 

溜息の色濃く、話すのを躊躇うわけでもなく、まるで誰かを思い出したかのようにリーバー班長は言葉を続けた。

 

「現地の人は目視したと言ってますけど。こんなクロス元帥並に行方を眩ませるのが上手い人間、通説としてクロス元帥がついに弟子をとったんじゃないかー、とか噂されてますけど。目撃情報と範囲が広すぎるんですよ!」

 

そう言って彼は机の上から地図を引っ張りだし、叩くようにして主張する。

その地図には、赤い印が施されており、その印の意味はかの有名な放浪する二人組。たまに目撃情報に3人だったり4人だったりと変更点が多いが、間違いなく黒と白の剣を使う人間だった。

それが、世界に渡ってこの短期間にどこでも現れているのだから、いくらこちらが大勢いても探すのだけで一苦労。情報を得た頃には次の場所へと移動し、こちらも右往左往させられていた。

 

「で、各地にファインダーを探索、もとい待ち伏せ作戦に移行させたところ……」

 

「ファインダーじゃ相手の行動が早すぎてついた時にはもぬけの殻なんすよね」

 

これまで、こちらは姿すら認識していない。面会もできず、もしかしたら相手は黒の教団を避けているのではないかと案が挙がったが定かではない。

 

「勧誘しようにも元帥向かわせても会えないんじゃ意味無いですしどうしたもんすかねー」

 

書類の山を前にリーバー班長はついに突っ伏した。バサりと舞う紙を見ながら、これまで貯まった仕事を見て、嘆くように天を仰ぐ。

この資料の山はそのイノセンス使いを探すために集められた資料であり、その間に溜まった各地のイノセンス関連の不思議な現象の情報だった。それを見てふと思い出したように、リーバー班長はガバッと起き上がる。

 

「そう言えば室長。最近、イノセンスの目撃情報、ついでに目撃された現象が“唐突に消える”なんてことが起こっているの知ってます?」

 

「あ〜……そう言えば、こっちにかかりきりでイノセンスの回収任務って最近疎かになっているよね。アクマに持ち去られたか伯爵か、そう考えるのが妥当なんだけど。まぁイノセンスが起こす現象にはアクマは拒絶反応が起きて回収は不可能なんて説があるけど。となると、伯爵かな。この状況も非常にまずいことだよ。おかげで現地に向かうエクソシストも忙しくて休暇なんてないし、ファインダーも大忙しだからね」

 

『唐突に消える』理由としては、そのイノセンスが回収されたから。現に跡地に行ってもイノセンスの痕跡は見つからず、揚げ足を取られた状態が続いている。

僕らとしては非常に痛い事態だ。

伯爵との唯一無二の対抗手段、イノセンスが何者かの手によって回収されているのだから。

 

ファインダーからの報告を思い返すようにリーバー班長は真に迫る顔で、一枚の紙を取り出す。

 

「実は数日前、とある目撃情報が入ったんすよ」

 

「んー。まさか……」

 

「はい。例の2人組と思わしき人物が村に訪れてから、村に起こる不思議な現象が止まったとか。その2人、例に違わずフードを被っていたらしいですよ」

 

「偶然……だよね」

 

有り得ない話だと蹴る。

もし、仮に例の2人組がイノセンスの存在を知っていて、回収に当たっているのだとしたら、それは奇跡かなにかであることだろう。

黒の教団でさえ、これだけ人員を配置してやっと100数個のうちの20個を集められた。長い年月をかけてる上に数の暴力で捜索に当たっているこちらとしては、少数かつ1チームだけでイノセンスを何個も回収できるとは思えない。

 

「リーバー君、資料は?」

 

「なんのスカ」

 

「例の2人組のはここにあるから……その2人が出没しはじめてからの、回収任務と突然“怪奇現象が止まった”場所の特定急いで」

 

「! 了解っす。お前らー仕事だぞ、急げ!」

 

リーバー班長が職員たちに呼び掛けることで、他の作業をしていた研究員たちも愚痴を言いながらせっせと情報の整理を始めた。

溜まった仕事の上から、新たな仕事。こんなのが重なってしまえば誰でも愚痴を吐いてしまいたくなる。

少なくとも僕の意図をリーバー班長は理解したのだろう。自分もさっきまでの仕事を放り出して、例の2人組捕獲のための情報整理に参加していく。

 

そうして、山のような書類から沢山の紙束が出現し科学班総出で行われた作業は僅か一時間で片付いた。

ぐでっと疲れたような研究員たちは各々の仕事の山を前に呻く。これで、例の2人組が見つかればいいなと。

 

 

「―――今の情報は以下の通りです」

 

 

発掘した情報を読み上げたリーバー班長が一息つき、ペンを持っていた僕は地図を見下げる。

元は例の2人組の目撃情報だけだった地図。

そのふたりの目撃情報は赤い丸、イノセンスの回収任務の情報、及び奇怪現象消失情報は青い丸で示されており、それは偶然にも……殆ど近いところにあった。

 

「ふむ……リーバー君、これどう見る?」

 

「どう見るって……。イノセンスの情報の約8割の近隣の村に目撃情報って……」

 

「そうだね。タダの旅人にしてはあまりにも関わりが多過ぎる。この時代にフードを被る人間はまずいない上、姿を見られることを拒み、これだけ近いというのにまるで黒の教団と接触するのを避けているみたいだ」

 

これまで接触出来ていない謎の二人組。敵か味方か怪しくなってきた。

にしても、それにしては……。

 

「なんか物足りないなぁー」

 

「リナリーが任務中だからって、軽く妹成分不足にならないで下さい。嫌われますよ」

 

「そりゃあ数日あってないんだもん! 心配で心配で夜も眠れないよ! ―――って、そうじゃなくて、何かあった気がするんだよねぇ」

 

喉まで出かかっている。まるで魚の骨が喉に刺さったみたいに気持ち悪い感じ。何かを忘れているような、そんな気がして堪らない。

 

 

「ただいま。兄さん」

 

 

そんな僕の前に1人の天使が現れた。

僕の可愛い可愛い妹、リナリー・リー。

今日もツインテールがきまってる。団服もリナリーは着こなしちゃうし可愛いな、と僕は机から飛び跳ねて妹を出迎える。

 

「おかえりリナリぃぃぃー! 大丈夫だったかい、怪我はないかい、お腹空いてないかい寝不足とか頭痛とかなにか困ったことは無かったかい!」

 

あぁ、この娘を見ると疲れが吹き飛ぶ。

問題なんて頭からすっぽ抜ける。

仕事なんて、どうでもいい。リナリーさえいれば。

もう僕は生きていけるッ!

 

リーバー班長が呆れたような目をしていたけど全力無視、僕はおかえりと言うリーバー班長を無視して、なんだか引き気味のリナリーに抱きつこうとして……かわされてしまう。

 

「あれ、兄さんこれは?」

 

机の上の地図を指差してリナリーが言う。

先程まで、議題になっていたであろう資料、書き足したせいか何回も見ているリナリーでも気になったようだ。

 

「あ、うん、これね。実は例の2人組がイノセンスに関わっている疑いが出たんだけどね。赤がいつも通り出現地で青がイノセンス回収任務と怪奇現象が止まったっていう場所なんだけど、あともう一歩のところでなにか足りないんだ」

 

「そう言えば……最近、不自然かも」

 

リナリーの言葉に耳を澄ます。

不自然、データとしてしか知らない僕ら。しかし不自然とはイノセンスの近くに現れていること以外、僕らには憶測もできなかった。

 

「不自然って何かあったのかリナリー」

 

「リーバーさん。実は……えっと」

 

言い淀むリナリー、どう説明すればいいか迷っているようだ。現地には現地でしかわからない事がある。急かしたい気持ちも山々だが、ここは大人しく思い出すのを待つ。そんなリナリーが出した言葉は彼女らしい言葉だった。

 

「こう言ったら悪いんだけどね。最近、ファインダーの人の生存率が上がってるの。皆いつ死んでも可笑しくない状況なのに、どこか生気が沸いているっていうか……。それと先についたファインダーさん達の話もあるんだけど、アクマと遭遇する確率も物凄く低くなってるって。今回の任務もアクマと遭遇しなかったし」

 

言い終えたリナリーは笑顔を咲かせ、手を合わせるとまさしく天使のように微笑んだ。

 

「私はすごく嬉しいよ。多分、その2人組さんたちは敵じゃないんじゃないかな。もし会えるなら、私はお礼が言いたい。きっと、アクマを倒してるのはその人たちだと思うから」

 

もう一度、地図に視線を落とし考察する。

敵の敵は味方、見えない2人組の目的、おそらくその者達は教団の存在を知っていて、避けているみたいだ。その理由は不明であり実際に聴いてみないとわからない。

 

「んじゃ、リナリー。一番機動力のあるお前にしかできない仕事だ。俺らが頑張って出現ポイント割り出すから、もし怪しい光とか見たらそこに向かってくれ。回収は後回しでいい」

 

「うん!」

 

「待ってリーバー君、もしかしてリナリーに仕事をさせようってんじゃないだろうね?」

 

ガトリングガンをどこからともなく出し、構えながら言う。銃口を向けられたリーバー班長は青い顔で、両手を上げながらリナリーに目配せをする。

 

「もう兄さん、私は自分からこの仕事を受けるんだよ」

 

「いや、でもリナリー。仕事続きで疲れただろう? ブラックな鬼畜上司に従う必要は無いよ」

 

「に・い・さ・ん!」

 

慌ててガトリングガンをしまい、もちろんだよ!と言って笑顔を無理やり作った。

おのれリィィバァァァ!!

せっかく帰ってきたのに、癒しが…癒しが……っ!

この後、彼の飲み物に薬が盛られたとか盛られていないとか。




主人公の方にネタが無かった?
―――そうなんです。
ロリなリナリー……ロナリー。可愛いよね。
室長、コムイさんが過保護になるのもわかる気がするよ!
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