提督は悩んでいた
この鎮守府では度々不思議な現象が起こる
そのどれもが鎮守府の運営を阻害するような大したものではない
18歳の誕生日を迎えた日から異変が始まった
朝、執務室に入ると机の上にエロ本が1冊置かれていた
『桃尻女の卑猥な生活』
表紙の女性が豊満な尻をこちらに向け挑発している
欲望にあっさりと負け、周囲を確認しながら手に取る
はやくも誰が俺の机にこんなけしからん物を置いたのかという疑問が脳内から失われる
机に上に横たわる身に覚えのないその雑誌にはまだ封がしてあるが、期待感に背中を押されハサミはどこかと必死に視線を巡らす
私室には何冊かエロ本を常備しているのだがマンガ形式の物が多い
そもそも100人の大所帯を超す鎮守府に男性が俺一人しかいないのが悪いのだと、そして艦娘のいずれもが容姿良し器量良しであり、出撃の度に少なからず肌を露出して帰ってくる
その光景は下腹部の耐久値をがりがりと削り、そこから送られた欲望の信号は脳で処理されるも『黙って我慢するしかない』という結論をはじき出す
耐えられるわけがない
俺は変態ではない、健全だ!
言い訳を頭の中に巡らせながら封を切り、続いてマンガ形式のそれにはない付録のDVDを開封する
記録面を傷つけないように慎重に取り出すと、照明に反射して淫靡にキラリと光る
ゴクリと喉がなり、すぐさまパソコンの電源ボタンを強く押し込む
鎮守府の少女たちは確かに見め麗しいのだが、当然恥じらいを持っておりこんな大胆なポーズはしない
よし!落ち着いて慎重にいこう。試合はまだ始まったばかりだ
現在時刻は0715
朝食の前に一度執務室に立ち寄ったがためにこのような行幸に出くわすことになった
今頃艦娘たちは支度を終えて食堂へ向かっているはずだ
俺は朝食を抜いてでも、このけしからんDVDの内容を確認する必要がある
痕跡を残さないためにインターネット接続用のケーブルを引き抜き、ディスクトレイ排出ボタンを連打する
ガシャッという音と共にディスクをセット
しくじった!!!
このままではDVDが自動再生されてしまう
音が漏れれば廊下を歩く艦娘にいらぬ誤解を与えてしまう可能性がある
もし彼女たちがそれを耳にしても大多数の艦娘は「司令官も男性なんですからしょうがないですよ」と言うだろうが
そういう問題ではない、男にだってな、男にだって恥じらいがあるのだ!
それにもし青葉に見つかれば騒ぎとなり、非常にまずいことになる
ここで俺はイヤホンを探すか、音量を下げるかの究極の選択を強いられることになった
音量を下げたら存分に楽しめないではないか!!!
日頃の艦娘指揮で鍛えぬかれた頭脳が瞬時に判断を下し、引き出しを開けようとしたとき
執務室の扉がノックされる
体が一瞬硬直するも咄嗟に机の上のエロ本を制服の背中の部分に押し込む
問題が1つ解決するも予断は許されない
既にDVDの読み込みはクライマックスに入っておりディスクの読込み回転数が上がっていく
再びのノックの音
イヤホンはいまだ手元には無く、仕方なく音量を下げようとマウスを手に取るもカーソルに反応が無い
無線式マウスの電池が切れていた
ガチャリのノブが回転し、キィと扉が開け放たれるその瞬間
万策尽きた俺はパソコンを力の限り床に叩きつけた
◇
はじめまして、女憲兵です
はい、エロ本を机の上に置いたのは私です
18歳になった提督へのささやかなプレゼントです
私は大本営から命じられてこの鎮守府の、いいえ、提督の監視をしています
最年少で憲兵訓練所を卒業し、優秀な成績であったため勤務地を選択することができたのです
それはもちろん提督のために他なりません
提督は私の家の隣でした、言うなれば幼馴染です
小さいころから家族ぐるみでの付き合いをし、提督のお父様お母様は「ゆくゆくはウチに嫁に来てほしい」と事あるごとに言っていました
提督と私は学校に行く時も、帰る時も、ご飯を食べるときも、寝るときも常に一緒
お風呂だけは勘弁してくれと顔を赤らめて恥じらいを見せるので、お風呂場の扉を少し開けて覗きこむだけにとどめました
気が弱かった昔の私は男子からちょっかいを出されることがありましたが、その度に提督は身を挺して私を守ってくれました
提督は優しくて、可愛くて、でも時々男らしくて、私が抱き着いているときに見せる少し困ったような顔が大好きでした
しかし幸せな日々は長くは続きませんでした
高校入学の際に、はいもちろん一緒の高校に行くつもりでしたが、突如提督が海軍にスカウトされてしまったのです
提督と私は半ば強制的に引き離され、提督のベッドの中で泣く悲しみの日々が続きました
ある日、いなくなった提督の靴下を一心不乱に嗅いでいると、心に勇気が湧いてきました
そして提督の後を追いかけて憲兵となった次第です
私は執務室のドアをノックします
返事が無いのでもう一度
ドアノブに軽く手をかけ戸を軽く押すとキィと小気味よい音を立ててドアが開きます
中からガシャンという音が聞こえましたが、私は提督に見つからないようにその場から素早く立ち去ります
部屋に戻るために廊下を早歩きで進んでいると艦娘とすれ違いました
「あら、女憲兵さん。おはようございます」
「榛名さん。おはようございます。今日はお休みですか?」
「はい、久しぶりのお休みなのでお裁縫でもしようかと思います」
他愛のない挨拶を終えると、立ち止まり、一見すると壁とは見分けがつかないような隠し扉を開けるとそこには素敵な空間が広がっています
壁、天井に見渡す限りの提督の写真が飾られ、中は提督グッズで溢れかえっている、これが私の部屋です
あ、ほらこれ、いいでしょう?
昨日の夜に提督が使用した歯ブラシなんですよ
我慢できずに口に含むと提督成分が私の口内、鼻腔、そして恍惚が脳に広がっていきます
思わず腰を抜かしそうになりましたが、部屋に戻ってきたのはモニターを確認するためです
よいしょっと、椅子に座り録画した動画を再生するとそこには愛しい提督の姿
驚きと共にエロ本を手に取る姿、DVDを取り出す凛々しい横顔、やがてその顔は雄の表情となり私は気絶寸前になりました
恥ずかしいので提督に直接、お会いすることはまだ出来ませんが、私は鎮守府での生活に幸せを感じています
ふふ、なんて可愛い提督、これからもずっと一緒ですよ
変態紳士淑女の諸君、申し訳ない・・・
これが私の限界なのだ
ヤンデレが書きたかったのだが、力不足が故に純愛になってしまった
本当に済まない
お読みいただきありがとうございました!