ソードアート・オンライン 〜直死が視る仮想世界〜   作:プロテインチーズ

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ようやく?この話も終わりですね。


殺人記録Ⅳ

 俺とシキが出会ってから一ヶ月《アインクラッド》第二十五層最前線に俺とシキはいた。

 

 俺みたいな奴がいるのには場違いだと分かっているが、俺は今シキとパーティを組んで狩りをしている。戦闘の勘を取り戻すのにはあまり時間はかからなかった。

 最初は完全に寄生プレイだったが、シキは自分で勝手に戦えたなら俺の事は気にもしていなかった。そして、シキの無謀と言える戦い方をフォローしていると必然的に俺のレベルと技能も上がっていった。

 

 そもそも何故俺がこんな事をしているのか。

 

 それは俺がシキにあの何もない部屋にあいつら(・・・・)から匿って欲しいと言った事から始まる。

 

 無頓着なシキはそれを簡単に承諾するが何もせず、ずっと他人の部屋にいるのはどうしても耐えられなかった。だから、シキに頼んで《フレンド》登録をして一緒に戦いたいと頼んだんだ。

 シキは渋ったが昼間だけなら良いと折れた。ただし自分のやり方でやらせてもらうと言った。

 

 シキの戦い方は本当にめちゃくちゃだ。そもそもどんなスキルを持っているのか。いや、シキの場合はステータスやスキルといい元々の運動神経と反射神経が抜群に優れている。それに加えて敵《mob》を一撃で切断するスキル(またはレアアイテムか)に攻略組トップクラスのステータス。

 

 俺はシキのその辺の事をあまり知らない。MMOで無理に聞くのはご法度だからだ。

 

「そろそろ暗くなるから戻らないか?」

 

「うん……? もうこんな時間か。俺はもうちょっと残っときたいな。時間も中途半端だし」

 

 確かにキリが良い時間とは言えない。俺はシキに付いて行く事にした。こいつの戦い方は同じパーティとしてはハラハラさせる。もちろん、そんな事今さら過ぎる心配だ。自己満足にしか過ぎない。

 

 俺が寝ている間、もっと無茶な事をしているのは知っている。でも俺は自分より年下のこいつをなるべく一人にさせたくなかった。

 

 そろそろここの迷宮区も踏破しそうだ。俺達(というかシキ)はかなり早い方だろう。飯と睡眠時間以外は全て攻略だ。シキにいたってはその時間も費やしているのだから。

 

「そう言えばこの層ってクォーターポイントって言うんだっけか。《フロアボス》が他のより強いんだっけ?」

 

 シキは歩きながら憂鬱そうに尋ねた。

 

「そうらしいな。第十層がそんなに強くなかったから、ここの《フロアボス》もそこまで強くないなんて言われているらしいけどな」

 

 何せ、第十層の《フロアボス》はシキに単独で倒されたからな。

 

 

「キース、どうやら噂をしていたら何とやらのようだぜ」

 

「……」

 

 嬉しそうなシキは目の前の大きな扉をナイフで指していた。俺は《フロアボス》の討伐戦に参加した事がない。その時は死ぬのが怖かったからだ。

 でも、その部屋からは他とは違う異様なオーラを発していた。

 

「まぁ、良いや。今日は遅いし戻るか」

 

「ん? 良いのか?」

 

 意外だった。一ヶ月もいるとこいつの事も少しは分かってくる。戦闘狂の気があったのだ。でも本人は戦闘狂ではないと言っている。別に他人に何を言われても良いそうだが。

 

 ただそんなシキが、さっきまでクォーターポイントの《フロアボス》の話題をしていいたので、第十層の時のように単独でぶつかると思っていた。

 

「別に、今は気分じゃない」

 

 相変わらずマイペースの返事に気が抜けてしまった。それから俺達は引き返して拠点へと戻っていった。

 

 

 

「おい、シキ! 《フロアボス》討伐されたぞ!」

 

 俺は街で仕入れた情報をシキに伝えてやった。街はクォーターポイントをクリアした事で盛り上がっていたが、かなり被害が大きかったようだ。中でも《軍》の連中の損害がやばかったらしい。

 

 だが、シキは寝そべってあまり関心がないようだった。

 

「へぇー、数だけは多いからな、あそこは。人海戦術なんてそんなもんだろ」

 

 確かに《軍》は《アインクラッド》中のギルドの中で最も最大勢力を誇っていた(・・)

 過去形なのは今回の討伐戦で一気に縮小するかもしれないからだ。

 

「で、どうする? 拠点を移動させるか?」

 

「そうだな。ここもさっさと引き払おう」

 

 俺達の何もないその部屋はその日限りでお払い箱となった。

 

 

 

 新たな部屋を借りたその日、俺は例の悪夢を久しぶりに見てしまったのだ。その事で一気に寝付けなくなってしまった。軽く水を飲んで気分を一新させようとするが頭から離れない、俺を人殺しと罵る人々や姿が。

 別の事を考えよう。部屋を見回すと同居人の姿が見えない。シキはいつも通り夜中にどこかへ行っていた。

 

 気分転換だ。シキを迎えにでも行くか。あいつがどれだけ強くてもあの容姿に俺より年下と来た。今さらなのは百も承知だが、今は何か動きたかった。

 

 そう考えて、ドアノブに手をかけようとした時だった。いきなりドアが開いた。そこには青いライダースーツに赤い上着を着た少年がいた。

 

「今、帰ったのか」

 

 ーーー蒼い双眼がこちらを射抜いていた。

 

 俺は、その瞬間死んだかと、思った。

 何だ、お前は? シキか?

 そう口を開こうとしたが、うまく声が出せない。変な吐息へと変わるだけ。俺の脳裏にはある単語が浮かび上がった。

 

 ーーー《死神》ーーー

 

 薄暗い部屋の中でシキの蒼い瞳が美しく輝く。俺はただ固まっているだけだった。

 

「キース、俺はお前をーーー」

 

 それからは俺の耳には届かなかった。シキは俺を無視してただ部屋に座り込んだ。

 

「シキ、お前、何してたんだ?」

 

 今までの暗黙の了解を破った。レベルやスキル、リアルの事などプライベートの事は何も話さなかったというのに。

 

「お前と同じさ。殺していた。オレンジをな」

 

 俺はその答えに何も返せない。俺みたいな半端者の同情なんていらないだろうし、説教なんて以ての外だ。

 

「俺の正体。もう、分かってんだろ?」

 

 俺はただ首を縦に振るだけだった。でも、そんな事をする理由が分からなかった。

 

「俺は空っぽなんだ。俺の中には何もない。生きてる実感が全然ない。生死の境があやふやなんだ。ただあいつらみたいに殺すだけじゃダメだ。もっと死の淵でギリギリの所でやりあえるようなそんな奴じゃないとーーー」

 

 もはや、俺に話しかけるというよりは独り言になっていた。その語尾は今までのシキからは考えられない程、弱々しい。年相応の少年のようだった。

 

 くそっ、こいつが何でも出来るなんて俺の勝手な思い込みで!

 

「どうしたんだシキ! くそ!」

 

「お前ではダメだ。これじゃあ、あの時と変わらない。あいつがいないだけで俺はーーー」

 

 そう言うと腕を枕にしてゴロリと寝転がった。

 シキの悩みなんて俺にはまったく分からない。付き合ってまだ時間も全然経っていない。こいつは俺と同じなんかじゃない。でも、俺にだって出来る事はある。

 

「俺にはお前の気持ちが分からない。けどな。何か悩みがあるんなら聞くぞ。どうせお前フレンドなんて俺以外いないだろう。現実世界でもいなさそうだな」

 

 こんな偏屈な奴に付き合えるのは俺みたいな半端者かよっぽどの物好きだ。

 しかし、俺の言葉にシキは振り返って、バカにすんな!と叫んでいた。こいつが、ここまで感情的になるのは珍しい。まさか、いるのか?

 

「現実じゃあ俺にだっている。この世界にはいないけどな。一人じゃないぜ。二人だ。そいつらは兄弟だけど」

 

 俺はその事実にまた驚いた。まさか二人もこいつの友人をしているなんてやはりよっぽどの物好きなのか。性別は……男だろうな。

 見た目だけは良いが、こいつのマイペースについて来れる女が二人もいるとは思えない。賭けてもいい。

 

「いるならいい。でも、この世界にいないだろ?」

 

 シキは無言だった。つまり肯定って事だ。

 

「なら俺が代わりに吐き出し場所になってやる。愚痴でも何でも聞いてやるさ」

 

 そうだ。俺にはいた。裏切られて俺が殺した友人が。どれだけ後悔してもその事実は変わらない。

 

 あいつに夢で罵倒されても、不思議と友人との出会いは悪くなかったといえる。あいつがいたからこの世界に来れた。あいつがいたからシキに会えた。

 色んな事をした。馬鹿やったり、喧嘩したり、担任の悪口を言い合ったり。別れは最悪だったが、出会いは最高だったんだ。

 

 俺の言葉にシキは目を開いていた。今日はこいつの珍しいものが二度も見れた。シキはただ、バカな奴、と呟いてから安らかな顔で眠りに入った。




これで殺人記録は終わりです。
次からまた新たな話に入ります。


シキの友達の二人、分かった人いるかな? 分かりやすいヒントなので分かる人は普通にいると思いますが。
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