そしてサクラの魔法が正式に明らかになります。
「色々ぶっとんでますけどね」
ではでは どうぞ
騒ぎが落ち着いてサクラがまず行ったのは掃除である。
砕け散った机の破片や割れた瓶。抉れた床。
筆舌にし難い大変な作業である。が、いつものことなので慣れている。
地道に掃除を続けていると食事(炎)を終えたナツが声をかけてきた。
「サクラ! 一緒に依頼行かねーか!?」
「あー……。すみませんが今日は食材を買い置きしておきたいので……」
「お。そうか。じゃあ無理だな」
「あい。残念なのです」
「すみません。また機会があれば誘ってくださいね」
「おう。分かったぜ」
そういうとナツは依頼の掲示板に向かっていった。
「父ちゃんまだ帰ってこないの?」
「くどいぞロメオ。貴様も魔道士の息子なら親父を信じておとなしく家で待っておれ」
そんな会話が聞こえたのはその直後である。
魔道士のマカオが一週間も依頼から帰ってきてないのを心配した息子のロメオが訴えにきたのだ。
「探しに行ってくれよ!! 心配なんだ!!」
「冗談じゃない!! 自分のケツもふけねぇ魔道士なんぞこのギルドにはおらんのじゃあ!! 帰ってミルクでも飲んでおれい!!」
「………バカー!!」
マカロフに鉄拳をかましたロメオは泣きながら走り去って行った。
そんな様子を見ていたナツは、受けようとしていた依頼を掲示板に叩きつけた。
そのまま荷物を持つとつかつかとギルドから出ていく。
「…………グレイさん」
「あ? なんだよサクラ」
「ちょっと頼みがあるのですが……私の代わりに買い物をして頂けないでしょうか」
「………仕方ねえな。メモ寄越せよ。買ったら彼処に置いとけばいいよな?」
「ありがとうございます」
近くにいたグレイに買い物メモを渡すとサクラもナツの後を追う。
「……全く、あの二人はしょうがねぇな」
買い物メモを確認しながら呟くグレイであった。
「なんだよサクラ。忙しいんじゃなかったのか?」
追いかけてきたサクラにナツはそう問いかける。
「子供が悲しんでいる姿というのは、どうも苦手でしてね」
そんな彼女にナツは笑い、拳を出す。
「なら、いっちょ行くか」
「ええ」
その拳を打ち返し、サクラも軽く笑った。
〇
マカオが向かったのはハコベ山。
そこに向かうために馬車に乗ったナツとサクラとハッピー。
と、何故かルーシィ。
「なんで貴方がいるんですか………?」
「だってせっかくだから何かギルドの役に立つ事したいなぁ~なんて」
「(株を上げたいんだ!! 絶対そうだ!!)」
思っても言わない優しい(?)ハッピーであった。
「にしても、ナツはともかくサクラさんも乗り物はダメなんですね」
白目を向いて倒れているナツのすぐ横で青い顔をしているサクラであった。
「サクラで……構いませんよ……ウッ…私の方が、年下です、し……えうっ…」
「だ、大丈夫です……大丈夫?」
「心頭滅却すれば乗り物など………」
しかし明らかに大丈夫ではない。
心配そうに二人を見ているルーシィだったが、揺れが止まるとナツがすぐに起き上がった。
「止まった!!!」
「着いたの?」
しかし。
「す、すみません……これ以上は馬車じゃ進めませんわ」
外は防風吹き荒れる大吹雪であった。
「な、何コレ!? いくら山の方とはいえ今は夏期でしょ!? ていうか寒い!!」
「そんな薄着してっからだよ」
「大丈夫ですか?」
「あんた達も似たようなモンじゃないっ!!!」
寧ろへそ出しのサクラやノースリーブ一枚のナツの方が凄まじく寒い格好である。
「ひひ…ひ…開け……ととと……時計座の扉……ホロロギウム!!」
ルーシィが扱う魔法は星霊魔法と呼ばれる。
名の通り、星の神霊を呼び出して使役する魔法で今回呼び出した時計座の他に南十字座や琴座。強力な黄道十二門などが存在する。
召喚したホロロギウムの戸口内に入ったルーシィは。
「「あたしここにいる」と申しております」
「何しに来たんだよ」
「外で引きこもる人なんて初めて見ました」
「かっこいー」
どうやら内部に入った人の言葉はホロロギウムが代弁するらしい。
「「何しに来たと言えばマカオさんはこんな場所に何の仕事をしにきたのよ!?」と申しております」
「知らねえでついてきたのか? 凶悪モンスター"バルカン"の討伐だ」
「かなり危険な任務ですからね……何故いきなりこんな任務を……」
サクラは考え込むがルーシィはそれどころではない。
「「あたし帰りたい」と申しております」
「はい、どうぞと申しております」
「あい」
「遭難しますよ。この吹雪では」
「マカオー!! いるかー!!! バルカンにやられちまったのかーーー!!」
「マカオさーん!! 聞こえているなら返事をしてくださーい!!」
大声で呼ぶが防風で声もかき消される。
そのとき。
崖の上から人形の影――猿が飛び降りてきたかと思うとナツに強襲してきた。
「!!」
「バルカンだーーー!!」
「ナツ!! 大丈夫ですか!?」
「当たってねえよ!!」
バルカンは素早く動くとナツに追撃――はせずに無視してルーシィとサクラに向かってきた。
「人間の女だ 」
「ッッッ!!?」
色欲丸出しのエテ公にサクラは思わず身の毛がよだつ。
そんな彼女とルーシィ入りのホロロギウムを抱えてバルカンは走り去った。
「おお。しゃべれんのか」
「「てか助けなさいよ!! というかサクラさん大丈夫!?」と申しております」
「…………ハッ!!」
数秒、放心していたサクラだったが不意に我に返る。
そしてバルカンに抱えられている現状を理解。
「………ケダモノじゃあっ!!」
「ウホ!?」
鉄拳制裁。
バルカンを雪の中に沈めこみ、ルーシィを回収して地面に立つ。
「私がいながら不甲斐ないです……!!」
キリッと向き直り、構えるサクラ。
バルカンが運んできたのかいつの間にか場所は洞窟の中である。
ちょうどホロロギウムが時間切れになったルーシィが凍死する心配はない。
「サ、サクラ。大丈夫なの?」
「問題ありません。先程は少々不覚を取りましたが……」
「ウホホ……気の強い女。好き」
「………気持ち悪い!! 『妖精の尻尾』サクラ・レイスター。任務を開始します!!」
そういうとサクラは左足を軸に右足を振るう。
「
「えっ!?」
蹴り飛ばされた真空の刃がバルカンを狙うが回避された。
「ウホホッ!!」
「なら!! 機竜の圧縮弾!!」
向かってきた相手に対し続けて両掌からエネルギー弾を放つ。
先程より速いこの攻撃はバルカンの顔面と腹部に直撃した。
「今の技……もしかして」
ナツの技は"火竜の鉄拳"などのように"火竜"が頭に付く。
それと同じということは。
「サクラも『
滅竜魔法。竜によって授けられた自らの体を竜の体質へと変換させる太古の魔法にして竜迎撃用の魔法。
ナツが火の滅竜魔法を使うのに対し、サクラは機械の滅竜魔法を使用する。
「魔法と科学は相容れない。だけど機械の竜はその矛盾を打ち破る。理を壊す魔法。それが私」
膝から足先にかけて鎖状の刃が顕現する。
「猿ごときに遅れはとらん!!」
「ウホォ!?」
チェーンソーがごとき切断力を持った蹴りがバルカンを吹き飛ばす。
「オラァ!!」
更にそのバルカンを炎の拳が殴って弾き飛ばす。
「遅いですよナツ!!」
「道に迷ってた。ハッピーに運んで貰ったからこれでも急いだんだけどな」
「あい」
能力系の魔法、翼を発動させているハッピーがパタパタと飛び回る。
「あんた乗り物ダメなのにハッピー平気なのね」
「ハッピーは乗り物じゃねえよ。仲間だろ? ひくわー」
何故かひかれたルーシィであった。
「そうですね。ギルドのメンバーは全員仲間です」
ナツとサクラの背後からバルカンが迫る。
しかし気づいていないのか二人はそのまま語る。
「じっちゃんもミラも、うぜぇ奴だがグレイもエルフマンも」
「分かったわよ!! 分かったから!! 後ろ!!!」
「ハッピーも勿論ルーシィ、貴方もですよ」
「!」
「だから、オレ達はマカオをつれて帰るんだ!!!」
火炎の蹴りがバルカンを不意打ちで蹴り飛ばす。
「早くマカオの居場所言わねえと黒コゲになるぞ」
しかし今の攻撃で怒りが頂点に達したバルカンは聞く耳を持たない。
「ウホホォ!!」
氷柱を折り、それを投げつけてくる。
が、火のナツは氷柱を尽く溶かし、サクラは全てを撃ち落とした。
「もう決めますよナツ!!」
「おう!! いくぜサクラ!!」
一瞬で距離を詰める二人は拳を固める。
「火竜の鉄拳!!」
「機竜の剛拳!!」
「ウホォォォッッ!!!」
ダブルパンチが直撃。吹き飛んだバルカンはそのまま気を失った。
「……あ。この猿にマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」
「「あ」」
その直後。バルカンに異変が起こった。
体が分解を始め、光を放ったのだ。
そして、最終的にバルカンは男性に姿を変えた。
「マカオ!?」
「バルカンに接収されていたんですね!!」
見るとマカオは傷だらけである。相当激しく戦ったのだろう。
「脇腹の傷が深すぎる……持ってきた応急セットじゃどうにもならない……」
「私がやります!!」
と、サクラが指先からチューブを伸ばす。
「機竜の修復」
そのチューブが傷口に入り込み、治療を開始した。
増血や血管の修復、皮膚を塞ぐなど細かな作業を進める。
「死ぬんじゃねぇぞ!! ロメオが待ってんだ!!」
「はあ、はあ……くそ、情けねぇな……19匹は倒したんだ……20匹目に接収されて……」
「え……あの猿一匹じゃなかったの……?」
そんな大仕事を一人でやってのけたのだ。相当に過酷だったのだろう。
「ちくしょオ……これじゃロメオに会わす顔がねぇ……」
「そんなことありませんよ。マカオさんは立派ですよ」
治療を続けながらサクラは優しく告げた。
○
山から降りる途中、マカオが何故この依頼を受けたのかを聞いた。
ロメオが同年代の子供達に魔道士を馬鹿にされたことが悔しくてマカオにスゴい仕事を頼んだのが始まりだったという。
戻ってきた一行を迎えたロメオをマカオは優しく抱きしめた。
「心配かけたな。スマネェ」
「いいんだ………オレは魔道士の息子だから………」
「今度クソガキ共に絡まれたら言ってやれ。テメェの親父は怪物19匹倒せんのか!? ってよ」
そんなマカオにロメオは涙ながらの笑顔を見せる。
そして帰っていくナツ達に、
「ナツ兄ーーー!! サクラ姉ーーー!! ハッピーーー!! ありがとぉーー!! それと………ルーシィ姉もありがとぉっ!!」
ロメオに手を振り返しながら帰路につく一行。
「………やっぱり、家族は一緒にいるのが一番ですね」
タウロスの出番は省略されました。
では今回と前回登場した技を解説
・機竜の破砕針
腕を螺旋状に高速回転させてドリルにして突き刺す技。
殺傷性が高く、人間や生き物相手には滅多に使わない。
・機竜の真空刃
蹴りと同時に鋭いソニックブームを起こし、切り裂く技。
・機竜の圧縮弾
掌から弾丸を撃つ技。威力は真空刃に劣るが扱いやすさは上。
小粒の弾を指から連続して放つ「機竜の連発銃」もある。
・機竜の剛拳
振動を起こした硬質の拳で殴る技。 最もスタンダード。
・機竜の修復
手や腕からチューブを伸ばし、人体の治療や物の修復を行う。
多量のエネルギーと精神力を使う高度な技。
今後の技は登場した時に解説します
それではまた次回
(サクラのキャラがほぼ夜桜そのままなのはご愛敬です)