その頃サクラは何をしていたのか
「仕事ですよ仕事」
ではどうぞ!
サクラはギルド内では従業員としても働いている。
とある事情でお金が大量に必要な彼女にとっては不安定なギルドの収入だけでは追い付かないのだ。
「~~~♪」
「あ、サクラちゃん!!」
「んっ? レビィさん。どうかしましたか?」
そんな彼女に水色の髪の少女、レビィ・マクガーデンが声をかけた。
「あのね。ちょっと仕事手伝ってほしいの」
「え? でも今依頼受けようとしてましたよね?」
「ナツに持っていかれちゃったの。もうひとつあったんだけど私達だけじゃちょっと大変っぽいから」
ギルドのメンバーはチームを組んでいることが多い。
レビィはジェットとドロイというメンバーと共にシャドウ・ギアというチームを組んでいる。
高い実力を持ち、尚且つ多忙なサクラはチームを組んでいないが、他のメンバーに頼まれれば協力するといった感じだ。
「えーと。遺跡の発掘の協力……報酬は10万J……よし行きましょう」
「決断早いね」
「他の人(特にナツ)に任せてたらこの遺跡崩壊しますよ」
「だよね~…。でも行ってくれるんだね!! 一時間後に出発でいい?」
「ええいいですよ。やることは終わらせておきますね」
○
ということで一時間後。
「お待たせしました」
「準備できたか? じゃあ行こうぜ」
「確か場所はアイローン高原の遺跡だよな」
「アイローン高原かあ……列車で行こうか」
「…………私は飛んでいきますね」
「ダメ」
当たり前である。
列車と並走など危険以外の何物でもない。
「うう……憂鬱じゃ」
そんなサクラはともかくして、アイローン高原に向かう一行。
サクラが何度も吐きそうになりつつも堪えてなんとか到着。
「おーおー。でっけえ採掘所だな」
「つかサクラは大丈夫か?」
「この程度なんとも……うっ」
大丈夫そうには見えないが真面目な彼女は休まない。
「失礼しまーす」
「ん? おお、依頼を受けてくれたギルドの連中か」
監督っぽい人に声をかけるとすぐに受け入れてくれた。
「手伝いって聴いてきたけど具体的に何をすればいいんだ?」
「ああ。実はこの遺跡の付近に"ガイガル"が住み着いちまったんだよ」
ガイガルというのは砂中に住む鮫である。
中々に狂暴で移住を続けると同時に近辺に被害をもたらす害獣である。
「移住してきて此処に来たということですか」
「ああ。しかもガイガルに恐れをなした作業員と研究者の何人かが逃げ出しちまったんだよ」
「つまり、ガイガルの討伐と逃げた連中の代わりの作業をやってくれってことだな」
「そういうことだ。報酬はちゃんと払うぞ」
とはいえ、シャドウ・ギアのメンバーはそこまで戦闘に強いわけではない。
つまり、
「サクラちゃん。お願いね?」
「ええ。任せてください。サクラ・レイスター、任務を開始します!」
グッと拳を握るサクラ。
それを見て頷いたレビィはジェットとドロイに向き直り、
「さ、私達は遺跡発掘の手伝いだよ!!」
「おう!!」
「やってやろうぜ!!」
○
監督からガイガルの住みかとなっている場所を聞いたサクラは早速そちらに向かっていた。
「此処ですね……砂中など分かりづらいのによく見つけましたね。採掘員の皆様……」
ガイガルは昼は寝ており、夜に活動する夜行性の生物である。
今は昼間なので方法は二つ。
まずは夜になるまで待つ方法。しかしこれはもしかしたら被害が出る可能性がある。
なので二つ目の手段。
「叩き起こしますか!!」
地面に手をつくサクラ。
そして凄まじい勢いで地面を揺るがす。
「機竜の爆砲陣!!」
サクラを中心に円形に爆発が起きる。
無論、サクラは無事である。
そして住みかの上で爆発を起こされた鮫は当然ながらキレるわけで。
「ギャアアアス!!」
「現れましたね。なら……」
『ギャオオオオオッ!!』
「え?」
「そういえば伝え忘れてたな………」
「何がですか?」
ジェットが運搬。ドロイが発掘を手伝っているなか、書類調査で協力していたレビィは研究長の言葉に首をかしげる。
「ガイガルについて一つあの嬢ちゃんに伝え忘れていたことがあってな」
「なんでしょう?」
「ガイガルは一匹じゃないんだよなぁ」
「…………え?」
「20匹だ」
「ちょっと待ってちょっと待てこれは流石に聞いとらん!!」
荒野を20匹の鮫に追いかけられて逃げる少女がいた。
某有名鮫映画以上の恐怖光景である。
「って逃げていても仕方ないですね! やりますか!!」
『ギャオオオッ!!』
「機竜の剛拳!!」
とりあえず一体を仕留めるつもりで拳を打ち込む。が、
「か、固い……」
高熱の砂中に住むガイガルはその環境に適応する為に体内の水分を逃がさない固い体表を持っている。
「私の拳を防ぐとは……進化は侮れませんね」
しかしサクラはそこでは引かない。
外からダメージが入らないなら中から崩せばいいだけのこと。
「逃がしません!! 機竜の超振波!!」
ガイガルを掴み、手を超高速振動。
固い表皮は衝撃には強いが振動を防ぐことはできない。
「グギャアアアアッ!?」
体内に直接甚大なダメージを受けたガイガルはバタリと倒れて動かなくなった。
「………今夜は鮫鍋じゃ!!」
ニヤリと笑ったサクラ。
すぐさま次のガイガルを掴むと振動を起こしてノックダウンさせる。
「次ィ!!」
三匹目を捕獲、瞬殺で退治。
四匹目と五匹目は片方ずつ両手に掴んで倒した。
「あはは!! 調子乗って来たのう!! まだまだじゃ!!」
六匹目、七匹目、八匹目と次々と倒していくサクラ。
もはや滅竜魔導士ではなく滅鮫魔導士だ。
と、二匹のガイガルが地中から隙を突いて飛び出してきた。
「ッッ!!」
反射的な回避で体を食いちぎられることはなかったが和服が切り裂かれてしまった。
「ううっ!!」
思わず顔を赤く染めるサクラだがすぐに二匹を地面に叩きつけて動きを止めた。
と、此処で気付く。
「! 他のガイガルがいない!?」
先程の二匹はサクラの気を引く為の囮だったのだ。
残りの十匹は既に遠くまで逃げている。
しかもその移動の砂煙が向かう先は、
「遺跡のある方向じゃ!?」
不味い。非常に不味い。
このままでは興奮したガイガル達が作業員やレビィ達に襲いかかり、遺跡にも大きな被害が出る。
「真空刃は……この距離じゃ届かん。圧縮弾は威力不足じゃ……。仕方ない。燃料消費は大きいがコレを使うしかない!!」
そういうとサクラは大きく息を吸い込む。
と、首や肩、うなじが淡い赤に発光し始める。
「拡散型・機竜の咆哮ォ!!!」
赤熱したビームがサクラの口から放たれた。
広範囲に、光速で放たれた機竜の雄叫びは逃げるガイガルを飲み込み、瞬時に全て焼き尽くした。
「………よし。任務完了じゃ!」
〇
退治したガイガルはサクラが調理して皆に振る舞った。
「今まで散々やられてきた相手を食べるなんて変な話だな」
「気にしなくていいんじゃねえか? めちゃくちゃ美味いし」
「スゴいねサクラちゃん。ガイガルって料理に向かない筈なのに」
「奪った命には報いなければなりません。ならば私は食べられるように美味しく調理しますよ」
その後はサクラも採掘作業を手伝い、翌日に完全に依頼を完了。
報酬の10万Jに加えて残りのガイガルを受け取って一行は遺跡を後にした。
帰還後、レビィ達と別れたサクラはとある場所に向かっていた。
その場所は病院である。
受付を済ませ、別棟の動物用の病室に着いたサクラ。
「モミジ。失礼しますよ」
「あ~。サクラだ~♪」
そこにいたのは黄色い猫だった。
ハッピーと同じ種族らしく、言葉を放ち翼を持っている。
しかしその目は眼帯で塞がれており、体も包帯だらけ。翼にはギプスが着けられていた。
名はモミジ。一年前まではサクラの相棒として共に仕事をしていた仲間である。
「はい。お見舞いの林檎ですよ」
「わ~い。切って切って~」
「ええ」
果物ナイフを取り出して林檎の皮を剥くサクラ。
「どうですか調子は」
「体力はまあまあだね~。でも傷が治らないんだよね~。やっぱり阻害されてる」
「そうですか……」
「ごめんねサクラ。あたしがあんなことしなければ」
「そんなこと思ってませんよ。モミジのお陰で私は生きているんですから」
一年前、サクラとモミジは仕事中に謎の魔導士に襲われた。
奇襲にも近いその攻撃からモミジは咄嗟に身を呈してサクラを庇ったのだ。
その魔法の効果なのか。一年経っても未だにモミジの傷は治らない。
「………やはり、あの魔導士を探して倒すしかないみたいですね」
今でこそ意識も回復しているが当時は昏睡状態だったのだ。
しかも傷は体だけでなく骨や健などにも及んでいる。
「………モミジ。待っててくださいね。必ず私が治してあげますから」
「信じてるよ~。でも無茶はしないでね。やくそく~」
「ええ。分かってますよ」
決意に満ちた顔で頷くサクラ。
モミジの為、恩人(猫)に報いる為。それがサクラの戦う理由の一つなのである。
今回登場した滅竜魔法は此方!!
・機竜の爆砲陣
手を付けた場所から円形の爆発を起こす技。
サクラ自身はダメージを受けない(ナツが自分の炎で燃えないのと同じ)。
・機竜の超振波
掴んだ対象に高速の振動を送り込み、体内に大きなダメージを与える技。
鎧を着ている相手に有効。
・拡散型・機竜の咆哮
口から大火力のビームを放つブレス技。
幾つかタイプがあり、拡散型は広範囲に広がり、多数の敵に有効。
エクシードは入院中です。
決着を着けたら復帰する、かも。
ということでまた次回。ララバイ編に入ります!!