「いいペースですね」
今回からララバイ編。最初の今回は幾つかサクラの新たな事実が明かされます。
では、どうぞ。
「…………すー…すー」
「サクラ……寝てるの?」
カウンターに突っ伏して穏やかな寝息を立てているサクラを見てルーシィは珍しそうに呟く。
「昨夜遅くまで作業してたみたいだからね。割とよくあるのよ」
「え? 昨日サクラさん仕事には行ってませんよね?」
「違うわよ。サクラは孤児院で働いてるの」
「え!?」
「リーダス。光筆貸して」
「うぃ」
絵を書いていたリーダスから光筆を借りたミラは空中に図を描き始める。
「サクラはナツと同じ七年前に育ての親の竜、『メカグラシル』が姿を消した後に孤児院に引き取られたの」
「サクラもやっぱり竜に育てられたんですね」
「そうよ。で、その孤児院の院長が五年前に亡くなってね。一番年上だったサクラがそのまま引き継いだの。そこを継続させるお金を稼ぐ為に此処に入ったのよ」
「………そう、だったんだ」
孤児院の継続の為、そしてそこに住む子供達の生活費。更にミケロの入院費。
この全てを賄わなければならないサクラの自身の生活は実は非常に質素で最低限。
加えてその金を稼ぐために経営、従業員、依頼など非常に多忙なのである。
「けどサクラは一人じゃない。ナツもグレイも、ギルドのメンバーは皆サクラに協力しているわ。代わりに経営を手伝ったり余った報酬金を寄付したり」
「そうなんですか……」
ちょっぴり暖かくなったルーシィであった。
と、突如サクラが飛び起きた。
「サクラ?」
「………帰ってきましたか」
と、先程ギルドを出たロキが慌てた様子で戻ってきた。
そしていつも通りのケンカをしていたナツとグレイに、
「二人共マズイぞっ!!!」
「「あ?」」
「エルザが帰ってきた!!!」
「「あ"!!!?」」
直後、地面を揺るがす地響きが起こり、ギルドに一人の人物が入ってきた。
巨大な角を軽々と担ぎ、鎧を着た緋色の髪の女性。
"エルザ・スカーレット"である。
「今戻った。総長はおられるか?」
「お帰り!! 総長は定例会よ」
「そうか……」
土産の巨大な角(討伐した魔物の角に地元の人達が装飾を施したらしい)を置いてからエルザは回りを見渡す。
「お前達。また問題ばかり起こしているようだな。総長が許しても私が許さんぞ。……カナ。なんという格好で飲んでいる」
「う……」
「ビジター、躍りなら外でやれ。ワカバ、吸殻が落ちているぞ。ナブ……相変わらず依頼板の前をウロウロしているのか? 仕事をしろ」
一通り言ったエルザはやれやれと頭を振る。
と、
「エルザさーん!!!」
「おっと! サクラか」
「えへへ。お帰りなさい!!」
エルザに抱きついたサクラが思いっきり甘え始めた。
そんな彼女をエルザは優しく撫でる。
「え? サクラどうしちゃったの?」
「さっきミラが説明してたでしょ? サクラに一番協力しているのがエルザなんだ!」
ハッピーがルーシィに説明する。
昔、サクラの事情を知ったエルザは感動して彼女へ惜しみ無い協力をしているのだ。
そんなエルザにサクラもいつしか妹のように甘えるようになったという。
「ナツとグレイはいるか?」
「そこにいますよ♪」
「や…やあエルザ。オ…オレ達今日も仲よし…よく…や……やってるぜぃ」
「あい」
ガクガク震えて冷や汗ダラダラ、ぎこちない笑顔で肩を組む二人にルーシィは先程以上に驚く。
「そうか。親友なら時にはケンカもするだろう。しかし私はそうやって仲良くしてるところを見るのが好きだぞ」
「あ……いや…いつも言ってっけど……親友って訳じゃ……」
「あい」
「こんなナツ見た事ないわっ!!」
ナツは昔、エルザにケンカを挑んでボコボコにされている。
グレイは裸で徘徊しているところを同様にボコボコに。
先程の様子も加え、エルザに躊躇なく接することができるのはサクラやミラ他、一部のみなのだ。
「実はナツ、グレイ、サクラ。お前達に頼みたいことがある」
「「「?」」」
「仕事先で少々厄介な話を耳にしてしまった。本来なら総長の判断をあおぐトコなんだが早期解決が望ましいと私は判断した」
「三人の力を貸してほしい。着いてきてくれるな」
「え!?」
「はい!?」
「勿論!! 何時もお世話になっていますから!!」
途端にザワつくするギルド内。
元気よく返事したのはサクラだけだったがそれでエルザは満足したのか。
「出発は明日だ。準備をしておけ。詳しくは移動中に話す」
「あ……いや……ちょっ…」
「行くなんて言ったかよ!!」
二人の抗議など届かない。
と、ミラが珍しく驚愕の顔を浮かべている。
「エルザと…サクラと…ナツと…グレイ……今まで想像したこともなかったけど………これって『妖精の尻尾』最強チームかも……」
〇
翌日、マグノリア駅。
「何でエルザみてーなバケモンがオレ達の力を借りてぇんだよ」
「知らねえよ。つーか助けならオレ一人で十分なんだよ」
「じゃあオマエ一人で行けよっ!!! オレは行きたくねえ!!!」
「じゃあ来んなよ!!! 後でエルザに殺されちまえ!!!」
駅だろうが関係なくケンカを始める二人だった。
と、
「やかましい!!」
「「ぐへっ!?」」
サクラが鉄拳拳骨で二人を黙らせた。
水筒と鞄を提げている。
「100歩譲ってケンカは構いませんが人に迷惑をかけるのはやめなさい!!」
「「い、痛ェ……」」
「アンタたちなんでそんなに仲悪いのよぉ」
何故ルーシィがいるのかと言うとミラに三人(サクラは問題なし)の仲を取り持ってほしいと頼まれたのだ。
と、エルザがやって来た。
「すまない、待たせたか?」
「荷物多っ!!!」
ちなみにほぼ全て食糧らしい。
「ん? 君は昨日ギルドにいたな……」
「新人のルーシィといいます。ミラさんに頼まれて同行することになりました。よろしくお願いします」
「私はエルザだ。よろしくな。そうか……傭兵ゴリラを倒したとかなんとか聞いたな」
「エルザさん。それ差異がありますよ……」
苦笑するサクラだった。
「フン。おいエルザ。なんの用事か知らねェが今回はついてってやる。条件付きでな」
「条件?」
「バ…バカ!! オ、オレはエルザの為なら無償で働くぜ!!」
グレイは諌めるがしかしナツは引くことはない。
「帰ってきたらオレと勝負しろ。あの時とは違うんだ」
その"条件"に驚愕するグレイとルーシィ。
サクラは予想できていたらしく支持する。
「………ナツは私より強いですよ。成長も著しいです。受けてみてはどうですか?」
「確かにお前は強い………。フフ、いいだろう。受けて立つ」
「おしっ!!! 燃えてきたァ!!! やってやろうじゃねーかっ!!!!」
数分後
「お、おぇぇぇ………」
「う、うぷっ……」
やはり酔っていた。
「情けねえなナツはよォ……つーか列車乗るな!! 走れ!!」
「グ、グレイさん……ひどいで、す」
「あ、いやサクラはいいんだよ!!」
「全くしょうがないな……サクラは精神安定できるだろう?」
「あれ……魔力とエネルギーの消費が大きいんですよ……」
「石炭を大量に貰ってきた。後で食べて回復しろ」
「さ、流石準備がいい……き、機竜の再起動……」
と、一度サクラの意識が落ちる。
と、リセットされて再び目覚めた。
「ふぅ……楽になりました」
「ずりィぞサクラぁ……」
「ナツは私の隣に来い」
「あい……」
ナツがルーシィと場所を変わる。
と、突如エルザがナツに腹パン、気絶させた。
「ぐふ………」
「少しは楽になるだろう」
「いや逝っちゃってますよ……」
「つ、つーかそろそろ本題に入ろうぜエルザ。一体何事なんだ。お前程の奴が人の力を借りたいなんてよほどだぜ」
「そうだな……話しておこう」
エルザ曰く、仕事帰りに立ち寄った酒場で気になる連中がいたという。
彼らが話していたのは『ララバイ』という言葉。しかも何やらそれは封印されているという。
その連中の一人が、
「エリゴールさんに伝えといて。必ず三日以内にララバイを持って帰るって」
と言ったそうだ。
「話が見えてきませんね……その人達が魔法の封印を解こうとしているのは分かりましたが……」
「私も初めはそう気にはかけてなかった。エリゴールという名を思い出すまではな」
エリゴール。
『
暗殺系の依頼は評議会が禁止しているが無視し続けたギルドは処分、追放されたが今なお"闇ギルド"として活動を続けているという。
「………帰ろっかな」
「出た」
「確かにギルド一つ相手はエルザさん一人でも厳しいですよね」
「だが看過は出来ない。鉄の森に乗り込むぞ」
「面白そうだな」
「やりましょう。私達で」
改めて気合いを入れ直すエルザ、グレイ、サクラ。
「………あれ? やだ……嘘でしょ? ナツがいないんだけどっ!!」
「「「…………あ!!!」」」
一人、サクラの行動は早かった。
「………列車を追いかけてきます!! 皆さんは魔動四輪車で!!」
エルザに貰った石炭のうち半分をムシャムシャと食し、水筒に入れてきたガソリンを一気に飲む。
「サ、サクラってそんなの食べるんだ」
「エネルギー充填完了!! 機竜の斬飛翼!!」
背中から飛行機のような翼を出したサクラはジェットを吹かして飛び立った。
毎度お馴染みサクラの技紹介!!+情報。
・機竜の再起動
自身の状態をリセットし、適応させる技。耐熱、耐寒、乗り物酔いにも。
再び目覚める際に大量のエネルギーを消費する。
・機竜の斬飛翼
背中から滑空翼を出現させて高速で飛行する。使用中は常にエネルギーを消費。
翼は鋭い刃になっていて切り裂き攻撃も可能。
・サクラの食べるもの
サクラの滅竜魔法は"エネルギー"を消費する。
これを回復させるには体を休ませるかエネルギーになるものを食べる必要がある。
エネルギーになるなら何でも可。しかしそれによって性能が異なる。
例えば石炭やガソリンなら安定して戦える。
炎を食べると技の威力は向上するがエネルギー消費がより早い。などがある。
・メカグラシル
機竜。生物でありながら全身に配線や基盤、武装を所有している『生きた機械』のドラゴン。
詳細は不明だがサクラの育ての親でナツのイグニールが消えたのと同じ日に突如姿を消した。
必要な場所以外はカットしていく方針でいきます。
この漫画長いですからね。
ではまた次回!!