「惜しい切り方ですね……」
仕方ないのです ではどうぞ
列車は既にオニバス駅から遠くまで離れてしまっている。
ジェットを吹かして飛行するサクラでなんとか追い付けるといった感じである。
「ナツ……辛いでしょう。ごめんなさい!!」
自分も乗り物で酔う辛さは痛いほど分かる。
だからこそ早くナツを助けてあげたい。その一心で高速で飛び続ける。
「!! 見えたっ!!」
ようやく列車が視界に入った。
距離はまだ遠いがこの分なら追い付けそうだ。
と思っていると何故か列車が急停車した。
「え?」
エルザが(無理矢理)駅の列車緊急停止信号を入れたのが原因だが無論それを知らないサクラは、
「まさか何か事故でも!? ……急がないと!!」
更にスピードを上げるサクラ。
エネルギーは不安だが気にしている余裕はない。
「えっと、何号車でしたっけ……!?」
『先程の急停車は誤報によるものと確認されました。間もなく発車します。大変御迷惑をおかけしました』
そんなアナウンスが鳴った後、ベルが鳴り響いた。
「ッ!! 急がないと……!!」
「とう!!!」
ガシャン!!
「ってナツ!? なんで窓から!?」
いきなり飛び出してきた桜髪に驚きつつしっかりと受け止めた。
「大丈夫ですかナツ!?」
「き、気持ち悪……」
「私は乗り物じゃないですよ!!」
「ナツ!! 無事だったか!?」
と、魔動四輪車で追いかけてきたエルザ達が合流した。
「ナツー。ごめんねー」
「ハッピー!! エルザ!! ルーシィ!! ひでぇぞ!! オレをおいてくなよっ!!」
地面に下ろされたナツは猛抗議である。
当然ながらグレイのことは無視だが。
「無事でなによりだ。よかった」
「無事なモンかっ!! 列車で変な奴にからまれたんだ!!! なんつったかな? アイ…ゼン…バルト?」
アイゼンバルト、アイゼンヴァルト、鉄の森。
例の闇ギルドである。
「バカモノぉっ!!」
即座にエルザのビンタが直撃した。
「鉄の森は私達の追っている者だ!!!」
「そんな話初めて聞いたぞ……」
「なぜ私の話をちゃんと聞いていないっ!!!」
「エルザさんが気絶させたからでしょう!!!」
誰もが思っていることを代弁するサクラであった。
「………そうだったな。すまない」
「オレ殴られ損じゃねぇか!!」
これもよくある光景である。
早とちりや根本的なミスが多いのはエルザの欠点だった。
「さっきの列車に乗っているのだな。今すぐ追うぞ!! どんな特徴をしていた?」
「あんまり特徴なかったなあ。なんかドクロっぽい笛持ってた。三つ目があるドクロだ」
それを聞いたルーシィがハッとなる。
そしてカタカタと小さく震え始めた。
「三つ目のドクロの笛……ううん。まさかね……でももしもその笛が呪歌だとしたら……ララバイ…子守唄…眠り…死………」
その事実に気づいたルーシィは焦って顔をあげた。
「その笛がララバイだ!!
「何!?」
「呪歌?」
「あたしも本で読んだことしかないんだけど……禁止されてる魔法の一つに呪殺ってあるでしょ?」
「はい。その名の通り対象者を呪い"死"を与える黒魔法です。………まさか!?」
「サクラさんの考えてるの多分当たってる。笛の音を聞いた者全てを呪殺する"集団呪殺魔法"。それがララバイ!!!」
「「なっ!!?」」
その事実を聞いた一行は魔動四輪車に乗り込み、急いで列車を追う。
「そんなものがエリゴールの手に渡ったら……おのれ!! 奴らの目的は何なんだ!?」
途中のクヌギ駅を通過する際、騒ぎを耳にした。どうやら列車を乗っ取ったらしい。
列車には馬車や船に比べてスピードがある。何か急がざるを得ない事情があるのだろうか。
「っお!? おいエルザとばしすぎだぞっ!! SEプラグが膨張してんじゃねーかっ!!」
更にスピードをあげたエルザにグレイが警告をするが聞く耳を持たない。
「あの笛が吹かれれば大勢の人が死ぬ……音色を聞いただけで人の命が消えてしまうんだぞ」
「で、ですが………うぐ…一戦交える可能性も……ぐふ……あるでしょう……貴方の魔力が枯渇しかねません……うっ…!!」
「構わん。いよいよとなれば棒切れでも持って戦うさ。それにお前達がいるしな」
固い決意のエルザが揺らぐことはない。
そんな彼女を諌めることは不可能である。
と、視界の先で煙が上がっているのが見えた。
クヌギ駅の次、オシバナ駅である。
『みなさん!! お下がりください。此処は危険です。只今列車の脱線事故により駅へは入れません!! 内部の安全が確保されるまで駅は封鎖します』
どうやら襲撃だとは知らされていないらしい。
人混みを掻き分けて突入する五人(ちなみにナツはまだ酔ったままである)。
エルザは状況を聞くために駅員を捕まえた。
「中の様子は?」
「な、何だね君!!」
ゴッ!!
「うごっ!?」
「中の様子は?」
「は?」
ゴッ!!
「ぐふっ!?」
即答出来ないなら頭突きで黙らせる。
エルザの恐ろしさが段々分かってきたルーシィであった。
「軍の小隊が突入したんだがまだ戻ってない。おそらく中で戦闘が!!」
それを聞いて突入する一行。
道中、軍隊を発見したがすでに全滅していた。
「相手は全員魔導士のギルド一つ。やはり普通の人達では敵いませんか……」
「急げ!! ホームは此方だ!!」
急いでそちらに駆ける。
と、
「やはり来たな。妖精の尻尾。待ってたぜぇ」
鎌を持った男が一人。それに従うように大勢の魔導士が立ちはだかる。
「貴様がエリゴールだな」
「ナツ!! 起きて!! 仕事よ!!!」
「無理だよっ!! 列車→サクラ→魔動四輪車→ルーシィの四コンボだ」
「あたし達は乗り物なのっ!?」
サクラも少しばかり悲しくなっていた。
「貴様等の目的はなんだ? 返答次第ではただでは済まんぞ」
「まだわかんねぇのか? 駅には何がある」
風の魔法で飛翔したエリゴール。
そのまま中空を飛び回り、そして放送機を示した。
「ララバイを放送するつもりか!!?」
「ふははははっ!! この駅の周辺には何百何千もの野次馬どもが集まってる。いや……音量を上げれば町中に響くかな。死のメロディが」
「大量無差別殺人だと!?」
睨み付けるエルザだがそんなことは意に介さずエリゴールは続ける。
「これは粛清なのだ。権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ生活を保全している愚か者共へなな」
フワフワとゆっくりと滞空しながら嘲うエリゴール。
そのさまはまさしく死神。
「この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって死神が罰を与えに来た。"死"という名の罰をな!!」
「………その為に自分達の命を犠牲にすると?」
「あ?」
サクラが一歩前に出て言った。
その表情は怒りではなく、疑念だった。
「ララバイは聞いた人を見境なく殺す魔法。封印された理由はその無差別さが所以。……放送なんてしたら貴方達も例外なく死にますよ」
「ッ!!」
一瞬不味いと言った顔をするエリゴール。
それを見て察したサクラは更に踏み込む。
「やはり、なにか別の理由があるみたいですね。無差別殺人以外のなにかが………」
「うるせぇよこのハエがっ!!」
髪をオールバックにした男が影を伸ばしてサクラを強襲する。
しかし、
「この声!! やっぱりオマエかぁぁぁぁあっ!!」
しかしその影は復活したナツによって焼き切られた。
どうやら列車でナツに絡んできたと言う男が彼らしい。
「てめ……」
「今度は地上戦だな!!」
意気込むナツに合わせてエルザやグレイも前に出た。
そんな様子をエリゴールは苦々しく見つめる。
「(クソが……厄介な奴が居やがるな……俺達には笛の音を聴かさなきゃならねえ奴がいる……必ず殺さねばならねえ奴がいるってのに!!)」
今回は新技は無しです
あとサクラのネコですが名前を「モミジ」に変更しました
では次回、サクラとエルザの無双です
お楽しみに