Libera 作:一松
「優歌、遊ぼう!」
「璃亜、今は・・・・・」
「シスター優歌」
「あ、神父様・・・・・」
「天使様はよほど優歌を気に入ってるようだね、行って来なさい。仕事なら、お休みにしておくよ」
神父・護はそう言って、優歌に行くように勧める。優歌は戸惑っていたが、璃亜が手を引っ張って外に連れ出して行ってしまう。
「まったく、困った天使様だ」
「貴方は甘すぎます、神父様」
「おや?これはこれは・・・・・・」
後ろから声が聞こえ、護は振り返る。そこには女神の遊奈が居た。遊奈はため息をつき、護にこう言った。
「優歌にもお仕事があるのに、無理矢理休みを取らせるとは・・・・・本当に何を考えてるんですか?」
「優歌もあの方がいいだろう。たまには息抜きが必要だ、あの子にも」
「ですが」
「女神様、貴方もそうそう根を詰めない方がいいですよ。天使様は優歌と一緒に居て、楽しそうですし」
「まったく・・・・・」
遊奈は再びため息をつき、その後護にくどくどと説教をしていた。護はその間もニコニコと笑うだけだった。
「・・・」
「あら?貴方は・・・・・」
「・・・・・・何?」
「まさかこんなところに居るなんて、思いもしませんでしたわ。魔女が居れば、きっと喜んでいたと思いますわ」
教会の近くでうろついていた死神は悪魔の志乃に見つかり、面倒くさいと言った表情で舌打ちをした。
「舌打ちは良くありませんわよ、死神さん?」
「別に、舌打ちなんてしてない」
「思いっきり聞こえてましたわよ?」
「・・・・・・で、何?」
「たまたまここに来ただけですわよ?そして、たまたま貴方と会っただけの事ですわ」
「そう」
死神はそれだけ言うと、その場を立ち去ろうとする。志乃はそんな死神を引き留め、こう言った。
「お待ちなさい。ここは教会の敷地内・・・・・・私ですら入るのが困難でしたのに、貴方は平気そうな顔をしてますわね?」
「・・・」
「神聖なる教会・・・・・普通ならば、死神すらも入ることが困難のはずですわよ。そして、どうしてここをうろついていたんですの?」
「君に言う必要はない。どこかに行って」
「貴方って人は・・・・・!」
「黙れ」
「!?」
一瞬の殺気に怯み、志乃は後ずさる。その隙をつき、死神はどこかへと消えてしまう。
「何ですの・・・・・・あの方は」
冷や汗をぬぐいながら、志乃はそう言った。ただ者ではない、そう感じた。死神と言うこと以外、何も分からない。そう、何も分からないのだ。
「璃亜・・・・・そろそろ帰らなくて、大丈夫?」
「え?・・・・・・・あーーーーーーーー!め、女神様に怒られるの・・・・・・」
一方で璃亜に強制的に連れ出されて、遊んでいた優歌。璃亜に言うと、頭を抱えて震えだしていた。
「私も一緒に行くから、ね?」
「うう・・・・・ありがとうなの」
「で、璃亜。どうしてこんな時間まで・・・・・」
「遊んでいただけですので、あまり怒らないでやって下さい。私も、悪いですから」
「まったくもう・・・・・次は許しませんよ?」
「!はいっ!」
遊奈はため息をついて、璃亜を許す。それを遠くから見ていた護は淡く微笑み、それに気付いた優歌は首をかしげた。
「・・・・?」
護の淡いその笑みは、どことなく見たことがあるような気がする。そう感じてしまうのはどうしてだろうか。
「(何だろう・・・・・お姉ちゃん?)」
八年前に居なくなった双子の姉がよく淡い微笑みを向けることがあった、幼い優歌にはそれが印象深かった。
「(そんなわけない。神父様とお姉ちゃんは、何も関係がないのに・・・・・)」
「どうしたの?優歌」
「!ううん、何でもないよ」
姉の芽歌のことは、なるべくなら考えないようにしていた。だが、時々考えてしまう。
「(考えないようにしてたのに・・・・・)」
「・・・」
護はしばらく見て居た後、静かにその場を去る。もう辺りは暗く、星が出ていた。
「・・・・・そこに居るのは分かっている、出て来い魔女」
「こんばんは、神父様。初めましてと言うべきかな?」
「・・・」
「そんなに怖い顔しないで、私は何もしないし。ただ、話がしたかっただけ。ちょっと気になってからさ」
「俺はお前に用などない、ここから出て行け」
「私に出来ないことなんてない。神父様、君はただ者じゃないね。あの死神と同じ気配がする・・・・・・どうして?」
十歌の言葉に対し、護は何も言わずに顔を背けた。ため息をつき、十歌を一瞥した。
「・・・・・あのシスターには手を出すな、俺からの忠告だ。いや、警告だな」
「何かあるの?」
「優歌に手を出したら、ただでは済まないと思え。相手が誰であろうと、容赦はしない」
「ふぅん・・・・・・じゃあ、今度ちょっかい出してみるよ。君がどんな反応を示すか、見て見たい」
「・・・」
護は十歌を睨み、十歌はクスリと笑う。舌打ちをし、護はその場を去っていく。それをただ見送る十歌は、息をつく。
「何なの・・・・・あの殺気。尋常じゃない・・・・・・とてもじゃないけど、人間が出せるような殺気じゃない。本当に何者なの、あの神父・・・・・」
頬を伝う汗をぬぐい、十歌もその場から姿を消す。謎は深まるばかり、この謎は解けるのだろうか?