Libera   作:一松

3 / 3
第3話

「・・・」

 

 

「こんなところに居たのね」

 

 

「・・・・・・魔女か」

 

 

「そんな顔をしないでよ、いつも逃げられちゃうから困ってたの。それに、君の正体を知りたいし」

 

 

「・・・」

 

 

その言葉に死神はしかめ面になり、目を逸らす。十歌はそれにも関わらず、隣に座って話を続ける。

 

 

「ねぇ、あの教会のシスターの事は知ってるでしょ?」

 

 

「・・・」

 

 

「返事くらいしたら?」

 

 

「答える必要は、ない。ただそれだけ」

 

 

「まったく・・・・・本当に掴みどころが分からない」

 

 

「分からなくて結構」

 

 

死神はそれだけ言うと、立ち上がって立ち去ろうとする。けども後ろから十歌の殺気を感じ、立ちつくす。

 

 

「・・・・・・何?」

 

 

「その仮面をはずせ」

 

 

「嫌だと言ったら?」

 

 

「・・・」

 

 

「その両目・・・・・・なるほど、本気ってことだね。ハア・・・・・面倒だけど、付き合ってあげる。けど、後悔しないでね。俺、手加減出来ないかも?」

 

 

口元を三日月の形に歪ませる死神、愉悦に浸っているかのような笑みだった。そして影から大きな鎌が出て来て、死神はそれを握る。それが合図だったかのように、両者が地を蹴った。

 

 

「・・・・?」

 

 

「どうした?シスター」

 

 

「いえ・・・・・強い気配を一瞬感じたもので」

 

 

「強い気配?」

 

 

「はい」

 

 

「悪魔かもしれないな、少し様子を見に行って来る」

 

 

「私も一緒に」

 

 

「いや、シスターはここに居てくれ」

 

 

一方で教会では優歌が何かを感じ取ったようで、神父にそう言った。神父は優歌に教会に残るように言い、そのまま外へと出て行く。

 

 

「神父様・・・・・」

 

 

「――――あらあら、神父様は出掛けてしまったようですわね」

 

 

「!だ、誰!?」

 

 

「どうもこんにちは、初めまして。私は悪魔の志乃ですわ」

 

 

ずっと隠れていた志乃は姿を見せ、優歌の目の前で丁寧に挨拶をする。優歌は警戒し、距離を取って胸元の十字架を握りしめる。

 

 

「教会に強い力を持つシスターが居ると聞きましたが・・・・・随分と可愛らしい方ですわね」

 

 

「悪魔・・・・・何でこんなところに?」

 

 

「入るのに随分と苦労しましたわよ?何せここは神聖なる教会、それ相当な力を持っていなければ入れませんわ。入るのと引き換えに、ここでは力が使えませんの。貴方に危害を加えることはありませんわ、安心して下さいまし」

 

 

志乃はそう言い、優歌に近づく。優歌は後ずさりをしながら、教会の扉の方まで行こうとする。

 

 

「だから何もしませんわよ?」

 

 

「悪魔の言うことなんて、信じられない。私は、信じない。だって、だってお姉ちゃんは・・・・・―」

 

 

「っ!」

 

 

瞬間、優歌と志乃の間に何かがよぎる。志乃は後ろに避け、優歌は驚いて目を見張る。視界に入ったのは、黒。黒いマントだった。

 

 

「え・・・・・?」

 

 

「・・・」

 

 

「これはこれは・・・・・死神でありませんの。会いたいと思っていたんですのよ、私」

 

 

「このシスターに危害を加える奴は、許さない。俺が狙いをつけている奴だ、手出しはさせない」

 

 

「誰・・・・・?」

 

 

優歌は戸惑いながら死神を見て、異常な殺気に冷や汗を流す志乃。やがて諦めたのか、志乃が死神と優歌の横を通り抜けて教会を出て行く。

 

 

「・・・」

 

 

「あ、あの・・・・・・ありがとう、ございます」

 

 

「別に」

 

 

死神はそれだけ言うと、教会を出て行こうとする。けども、何かに気付いた優歌は死神を引き留めた。

 

 

「待って!」

 

 

「・・・・・何?」

 

 

「怪我、してる」

 

 

「ああ、これ?かすり傷だから、大丈夫。放っておけば、すぐ治るから」

 

 

「ダメ!ほら、こっち来て」

 

 

「ちょっと・・・・・っ」

 

 

優歌は死神を引っ張って、自分の部屋へと連れて行く。椅子に座らせ、棚から救急箱を取り出す。

 

 

「じっとしてて、包帯巻くから」

 

 

「だから・・・・・痛っ」

 

 

「じっとしててって、言わなかったっけ?」

 

 

「・・・・・・ごめんなさい」

 

 

「素直でよろしい」

 

 

若干涙目の死神は大人しく優歌にされるがままになり、優歌は慣れた手つきで包帯を巻き終える。

 

 

「はい、もういいよ」

 

 

「・・・・・ありがとう」

 

 

「どういたしまして。・・・・・一つ、言っていい?」

 

 

「何?」

 

 

「その仮面、取らないの?」

 

 

「取らない、取る必要がないから」

 

 

「お礼を言う時は、素顔を見せるものだと思うけど?」

 

 

「・・・」

 

 

優歌のその言葉には答えず、そそくさと部屋を出て行こうとする死神。優歌はそんな死神に、一言だけ言った。

 

 

「あっ・・・・・助けてくれて、ありがとう!その、名前を教えて・・・・・?」

 

 

「・・・・・死神、僕はそう名乗ってる。一つ、警告しておく。悪魔と魔女には気をつけて、アイツらはアンタを狙ってるから」

 

 

「え?・・・・あ」

 

 

いつの間にか死神は居なくなっており、優歌はきょろきょろと辺りを見回す。だが、どこにも死神の姿はなかった。

 

 

「何だったんだろう・・・・・?」

 

 

先程の言葉の意味を考えるが、優歌には全く分からなかった。しばらくして、神父が帰って来た。何故かボロボロな姿で帰って来た為、優歌は何があったのかを聞いた。

 

 

「ああ、気にしないでくれ。少し、度が過ぎたみたいでな・・・・」

 

 

「とにかく、ここに座って待ってて下さい。お医者様を呼んできます」

 

 

優歌はそう言い、早足で医者を呼びに行く。それを見送った神父は安堵の息をつき、そのままずるずると椅子にもたれかかって眠りについた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。