そろそろうちの子がほんとにリーナなのか不安になってきました。
ちゃんとリーナかけてますよね?(不安)
タッタッタ
軽快に地面を蹴りながら事務所へ急ぐ李衣菜。
その頭にはまだ朝の即興ライブの余韻が残っていた。
(〜♪ 気持ちよかったなぁ!)
教室の熱気、クラスメートの笑顔と興奮、
それがどんどん、自分を中心に広がっていく感覚。
あの快感はライブでしか味わえない。
さらに今日は急ごしらえとはいえ隣に「相棒」
がいた。それはいつもボーカルだけでステージに立っていた李衣菜にとっては新鮮なものだった。
(凄かったな、聡太くん)
素直に感動した。
(演奏技術もそうだけど、緩急っていうのかな?私のボーカルを引き立ててくれるんだけど、出るべきところは出てくれる感じがあって良かったな!)
スポットライトも、サイリウムもないライブ。
それでも李衣菜の目指すロック、その完成像のカケラがそこにあった気がしたのだ。
それを示してくれたのは他でもない聡太だ。
「また、一緒にライブ出来たらいいな…」
誰に言うでも無くつぶやいた言葉は、靴音に隠れて流れていった。
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カツッカツッカツッ
ゆったりとした靴音が響く。
李衣菜とは別に、事務所へ歩いて行く聡太も、ロックについて考えていた。
(ロック、ロックねぇ…こいつ、は少し違うのかねぇ?)
背中に背負った自分のエレキギターに目を移す。
五年ほど使っているものだが、まだまだ現役だ。
(李衣菜の言ってるロックは多分音楽のジャンルだけじゃないんだよな…?ん?でもプロギタリストはロックだとか言ってたな)
考えてみるが、全く辻褄が合う気がしない。
(まあ、結局「分かんない」っていうのが一番適切なんだろうな、人の心、ましてやあいつの心なんてわかりゃしねぇ)
当たり前のことだ。人の心がわかるなんてふざけたこと、出来るのはどこぞの妖怪くらいなもんだ。
まぁ、だけど。
(あのライブは、悪くなかったな)
もちろん、李衣菜の心はわからない。
けれども、ライブの時に、少しだけ触れることができたような気がするのだ。
李衣菜の心、李衣菜のロックのほんの一欠片。
それは興奮と、高揚と、楽しさに満ちていた。
(――尊いな)
音楽に対する高揚と興奮と敬意。
それは俺がどこかに落としてしまったものなのかもしれない。
プロになる前は、上手くなる感覚が楽しかった。
けれど今は、多分そんな感覚は感じていないのだろう。
でも、今日の即興ライブは、昔の感覚に少し似ていた。
「あいつに感化されたかねぇ…」
だが、悪くない。
また、機会があれば一緒に演奏するのも悪くはないだろう。
(…ってかなんでさっきからあいつのこと考えてんだろうな?)
靴の音はそんな疑問を乗せて。
ビル街に反響して、静かに溶けた。
こんな感じで進んでいきます。
更新は不定期なので、ゆっくり待ってください。