ROCK!〜李衣菜と俺とロック?〜   作:オッ亭

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おまたせしました。
その9です。
もうちょっと長くしたほうがいいのかな…?



始まりの瞬間。

李衣菜の手を取った俺は、その感触やらそこから伝わる李衣菜の鼓動を感じていた。

…柔らかく、細いが、強い力と意思を感じさせる。そんな手だった。

李衣菜はこちらを見て微笑んでいる。

一歩を踏み出す決意をした俺を祝福するような、これからに期待するような、そんな視線だった。

 

(…李衣菜もこんな顔できるんだな)

 

少し失礼なことを考えながら、不思議な安心感を享受していた…が。

 

「…ごほん。話を続けてもいいだろうか?」

 

…あ。ここ事務所だったわ。

 

「あっ、えっと、すいません!」アタフタ

 

「わっ、ご、ごめんなさい!」ワタワタ

 

慌てて手を離す俺と李衣菜。…少し名残惜しいのは内緒だ。

しかしこれは恥ずかしい。これから上司になるだろう人にあんなところを見られてしまった。

 

(―いや、落ち着け俺。ここで取り乱したら話が進まない。それは俺もプロデューサーさんも困るだろう。そうだ。ビークール。ビークール。クールに行くんだ。)

 

そう念じながらチラッと李衣菜を見る。

さっきから何も喋らないところを見ると俺と同じように落ち着こうとしているようだ。

こいつは曲がりなりにもアイドルだ。俺よりも心を落ち着かせるのには慣れているはず…!

 

「……/////!!!」プルプル

 

(あ、だめなやつだこれ。)

 

なんか真っ赤になってプルプルしてる。

これは落ち着けてないやつだわ。

…なんかここまで反応されるとこっちまでヤバイ。

 

(しかも可愛いんだもんなぁ…!)

 

アイドルをやってるだけあって李衣菜の顔はかなり整っている。

そんなのが顔真っ赤にしてプルプルしてる上に、その原因が自分なのだ。…ヤバイ(確信)。

 

(っ!いかん。落ち着こう。大丈夫だ。まだ慌てる時間じゃない。)

 

赤くなり始めている顔を誤魔化しながら、李衣菜に声をかける。

 

「あー、李衣菜。」

 

「ひっ、ひゃひっ!?な、何かな蒼汰くん?私はロックだよ?」アワアワ

 

「落ち着け。意味わかんねぇよ。」

 

努めて平静に。いつも通りに…!

大丈夫だ、問題ない…!

心頭滅却すれば火もまた涼し!煩悩だって追い払える!…はずだ。

 

「…!ふふっ…!」

 

「…?」

 

いきなり笑い出す李衣菜。

 

「…」ニヤニヤ

 

そして無言でニヤニヤするプロデューサーさん。…ああ、これは…

 

「蒼汰くん、顔、真っ赤だよ?」

 

「っ!」

 

案の定隠しきれてなかった。ちくしょう。

 

「…李衣菜、お前も顔真っ赤にしてるけどな。」ニヤニヤ

 

「プ、プロデューサーは黙ってて!」

 

「はいはい」ニヤニヤ

 

そして李衣菜もいじられる運命にあったようだ。南無三。

 

「プ、プロデューサーさん!話の続きをお願いします!」

 

このままでは永遠に話が再開されない。

多少無理矢理にでも話を話を戻そう。

 

「分かった。…さて、君を選んだ理由、だったかな?」

 

「ふぅ…はい。その通りです。」

 

一度呼吸を整えてから話を聞く体制に入る。

隣を見れば李衣菜も同じようにしていた。

…顔はまだほんのり赤かったが。

そんな俺らを見て軽く笑ったプロデューサーさん。しかしすぐに顔を改めて口を開く。

このあたりはさすがプロだ。

 

「さて、ストレートに行かせてもらうよ。…君を選んだ理由を一言で言わせてもらえば『若さ』だ。」

 

予想外だった。

その若さは、経験不足と直結する。足枷にはなりこそすれ、そこを評価されるとは思っていなかった。

 

「…!詳しく聞かせてください。」

 

「ああ、君の『若さ』はうちにとってとても都合がいいんだよ。何故かわかるかい?」

 

こちらを試すような笑みを浮かべながらプロデューサーさんが言う。

若さ…アイドル………!!そうか!

 

「アイドルの皆さんとの年齢差、ですか?」

 

それを聞いたプロデューサーさんは笑みを深くする。

 

「大正解だよ。君と、アイドルはとても年が近い。だから、馴染みやすいと思うんだ。」

 

プロデューサーさんの言うことは一理ある。ライブなどは何もアカペラでやるものではない。歌うアイドルと、演奏するメンバー。その全員の連携がライブの出来に大きく影響するものだ。その連携を深めるためには、信頼関係がなくてはいけない。その信頼関係を、年の近い者同士なら築きやすいという訳だ。

 

そんな俺の考えを見透かしたようにプロデューサーさんが続ける。

 

「ライブの出来栄えを高めることもそうだが、君を通してアイドルたちには音楽の世界を広げて欲しいんだ。それは必ず彼女達の糧になる。」

 

なるほど。そういう考え方もあるのか。

 

「もちろん、君もその経験を糧にして成長してもらいたい。…君は、人に何かを教えた経験はあまり無いだろう?」

 

その通りだった。俺は自分の技術を高める事ばかりやっていたので、人に教える経験は全くなかった。

人は、人に教えるという行為を通して自分を省みる。そうすることで教える方も教えられる方も成長できるものだ。

…まあ理論はわかるがやったことがないから本当なのかはわからないのだが。

 

「その実験台が私ですか…?」

 

今まで黙って話を聞いていた李衣菜がボソリと呟いた。まあそうなるわな。

 

「ああ、おそらく一番指導が必要なやつだからな。お前は」ケラケラ

 

「馬鹿にしないでくださいよぉ!」

 

「まあ、間違ってはいないわな。」

 

「蒼汰くん!?」

 

流れるような李衣菜弄り。…うん。ここなら楽しくやれそうな気がする。俺が選ばれた理由もわかった。なら、迷うことは無いだろう。…李衣菜に背中も押してもらったことだしな。

 

プロデューサーさんに向き直って表情を改める。そしてこう言った。

 

「納得しました。そう言う事なら、全力を尽くさせて頂きます。…よろしくお願いします。プロデューサーさん。」

 

「ああ。…赤坂蒼汰くん!ようこそ!シンデレラプロジェクトへ!」

 

「うぅ、まだ釈然としないけど…!

改めて、よろしくね!蒼汰くん!」

 

二人は満面の笑みを浮かべて歓迎してくれた。ここなら楽しくやれる。そんな確信を持った瞬間だった。

 

 

 

 

この日、俺は大きな、大きな一歩を踏み出したんだ。

それに気づくのは、まだ先のことなんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。これでプロローグはおしまいです。
次回は3月のなかばになりそうです。
待ってくださる方がいらっしゃるのなら気長におねがいします!

感想、評価、お待ちしています。
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