召喚師の人間讃歌   作:鎌鼬

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なろうにて、VRMMOの小説をみて感化された駄作者がいるそうです……私だよ!!





第1話

 

 

限りなく広い空の中に、それはいた。全身が燃える様に紅い鱗に包まれた真紅の龍。龍は青空と太陽を背に、分厚い雲を下にして飛行していた。その真紅の龍の背中に、蒼はいた。全身を蒼を主体とした色合いのゆったりとした服に身を包んだ人物がフードで顔を隠しながら真紅の龍の背中に腕を組んで立っている。

 

 

「やっぱり空は良いな……制限が無かったら何時間でもこうしていたいくらいだぜ……そう思わないか?」

 

 

声色からすると男か、その問いかけに真紅の龍は甘える様な鳴き声で返事を返した。普通の人ならば龍と対峙するだけで引け腰になり、怯えてしまうだろうが、龍との付き合いが長かった彼はその鳴き声が肯定を表現する物だと理解していた。

 

 

「こうして広いところにいると本当にちっぽけに思えてくる……だけどそれで良いんだよ。この広い世界で俺たちはちっぽけな存在だ。だからこそ、胸を張って一個人として堂々と生きていかないといけねぇ……下を向くくらいなら前を見ろ、膝を折っても立ち上がれ、困難から逃げずに胸を張り、前を見据えて生きていこう……それが人間ってもんだろう」

 

 

確かに、彼が言ってる事は正しいのだろう、だからと言ってそれが誰にでも出来ることではないということは彼自身が一番よく知っていた。

 

 

人間に限らずに生物というのは苦よりも楽を選んで生きる存在だ。例えば肉食として知られる虎であっても、強い人間と一つの小さな島で暮らしたらその人間では無く他の生き物を食らって生きている。極限に飢えた時になって漸く人間に襲いかかるのだ。

 

 

それを彼は理解していた。そしてだからこそ、困難から逃げずに立ち向かって欲しいとも願っていた。億を超える絶望を前にしても折れずに希望を持って歩いていく姿こそが、彼の愛する人間の姿だからだ。

 

 

そして、龍が何かを報せる様に鳴いた。その声に反応して彼は()()()()()()()()()()()に目を向ける。そこには後数分でこの時間が終わってしまうことが記されていた。

 

 

「もうか……今日は下の方に降ろしてくれ。たまにはそうしても良いだろう。頼んだぞ、ルージュ」

 

 

それに対して任せろと言わんばかりにルージュと呼ばれた龍は一鳴きし、眼下に広がる雲海に目掛けて進路を変えた。

 

 

その時、彼のフードが外れて顔が露わになる。フードの下から現れたのは透き通る様な蒼髪と鋭い目付きが特徴的な若い男性。

 

 

彼は静かに目を閉じるとルージュと共に雲海に沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルージュの制限時間が訪れ、姿を消した後に彼は一人で森の中を歩いていた。鬱蒼としているものの日の木漏れ日が程よく射し込んで何処か幻想的な空間になっているそこ。だが遠くから聞こえてくるのはその空間に似つかわしくない猛獣の様な雄叫び。死を迎える間際の断末魔の様なものがあれば生存競争に勝利をして勝鬨を上げる叫びも聞こえる。

 

 

気の弱いものなら震え上がってしまうであろうそれを聞きながら、彼は何処か上機嫌な様子で森の中を進んでいく。

 

 

ここは世界に複数存在する【最果ての地】と呼ばれる場所で、ここには一流として知られている冒険者だとしても備え無しに踏み込めば瞬く間に殺されてしまう程に凶暴な生物が生存している土地だった。

 

 

そんな場所を一人で、それも武器も何も持たずに歩いている彼であるが周囲から聞こえてくる猛獣の雄叫びはどれもが彼から一定の距離を取った場所から聞こえてくるものばかりだった。

 

 

それはどうしてなのか?その答えはここに生存している猛獣たちが、()()()()()()()()()と学習しているからである。死にたくないから彼には近づかない。単純であるが最も確実な生存方法。

 

 

「……ん?」

 

 

その彼が、とある変化に気がつく。彼が歩いているのは猛獣たちが歩いて出来た獣道。彼もこの森を移動する時には使うのだが枝が不自然な位置で折れていたのだ。高さにしてみれば彼の胸元辺り、この森にいる猛獣にしてはあまりにも小さ過ぎる。

 

 

そうーーーまるで人間が何かからがむしゃらに逃げて出来た道のように見えるのだった。

 

 

「まさか……」

 

 

その考えに至って直ぐ様にその跡を追う。幸いか枝の跡は途切れること無く続いていて、地面には赤黒い染みと共に人間の足跡が残っていた。それを辿り、彼は獣道から外れて進んでいく。

 

 

そうしてしばらくして開けた空間に出た。そこにあるのは純白の花畑。【最果ての地】などと呼ばれているこの土地からすればただの植物がここまで大量に咲き誇っているのはあり得ないだろうがこの植物は普通の植物では無い。

 

 

【ブラッディーフラワー】と、その花は呼ばれていた。端から見ればただの花にしか見えないだろうがブラッディーフラワーの花粉は麻痺と遅速性の毒の効果を持っており、偶々ここに迷い込んで来た猛獣を花粉で身動きを取れなくして餓死させ、養分にするという習性を持っているのだ。そして養分を吸っている時には白い花弁はまるで血の様に赤くなることからブラッディーフラワーという名前が付けられている。

 

 

彼はそのことを知っていた為に成るべく花粉を吸わない様に口と鼻を覆う様にスカーフを巻き付けて森から続いている足跡を辿る。そしてーーーブラッディーフラワーの花畑の中で、漸くその足跡の主を見つけることが出来た。

 

 

花畑で倒れていたのはまだ成人していない様に見える少女だった。動きやすさを重視しているのか胸当てと籠手の軽装。着ている服はボロボロで血に滲んでいる。力なく脱力しているところを見ると手遅れかと思うのだが少女の胸元は僅かにだが動いているのが見えた。つまり、まだ生きている。

 

 

「【鑑定】」

 

 

彼がそう呟くと視界に電子ボードの様な物が浮かび上がる。

 

 

name スズラン

status 【筋力12】【耐久11】【体力9】【敏捷14】【魔力7】

skill 【nothing】

hospital 【poison】【paralyze】【bloodshed】【tiredness】

 

 

そこに記されていたのは少女の名前とステータス、そしてスキルと現在の健康状態。毒と麻痺、それに流血は見た時から予想が付いていたが疲労までついていた。それはこの少女がステータスにある体力を超えてまで体力を使ったことを意味する。

 

 

少女の状態を確認し、迷うこと無く彼は少女を抱き抱えてブラッディーフラワーの花畑から立ち去った。少女を治療する手段はあるのだが残念なことに今は持ち合わせていない。彼女を治療する為に彼は【最果ての地】の森の奥に向かって歩いて行った。

 

 

 





龍に乗りながら人間讃歌について独り言をボヤいていた男が倒れていた少女をお持ち帰りしました……事案です。

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