召喚師の人間讃歌   作:鎌鼬

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第4話

 

 

「うっし、到着っと」

「へ〜ここが王都か……思ったよりも賑わってるんだな」

 

 

蒼星石が宣言した通りに二日後の昼頃に彼らは王都にやって来ていた。蒼星石は久し振りに訪れた王都を懐かしそうに見ていて、レイアは初めて来たのか王都の賑わいを見て感心している様だった。そんな二人の横ではグロッキーになって四つん這いになっているスズランの姿があった。

 

 

「ん?どうした?疲れたのか?」

戦乙女(ヴァルキリー)ブートキャンプの効果が出ていない……だと……!?」

「いやいやいや……肉体的じゃなくて精神的疲労が……龍に乗せられるまではわかりますけど何で時速200キロオーバーの速度を風除けも無しに飛行させられるんですか……」

 

 

そう、彼らがここまで来るのに選んだ手段は蒼星石の召喚獣である龍のルージュに乗っての飛行。蒼星石は仁王立ちで腕を組んで平然として、レイアは戦乙女(ヴァルキリー)らしく翼を使っていたのだがスズランは吹き飛ばされない様に必死にしがみ付いていたのだ。レイアは兎も角風除け無しで仁王立ちして平然としている蒼星石は可笑しい。

 

 

「ダラシない奴め!!」

「あ〜……そこら辺気が回らなかったな。悪かった」

「いえ……もう大丈夫ですから」

 

 

何とか回復したスズランは立ち上がって久し振りとなる王都の光景を見る。王都は入ってすぐの所が商店街となっており商人たちが大声で客引きを行っている。客の大半は布の服を着た町民たちだがそれらに混じって鎧姿や武器を下げた人の姿も見ることができた。

 

 

町民たちはゲーム時代でいうならNPC、鎧姿や武器を下げた人はプレイヤー、やって来た当初では混乱していたプレイヤーたちだったが一月もすれば適応したのか慣れた様子で商人と価格の交渉をしている。蒼星石はそんなプレイヤーたちの姿を見て嬉しそうにしていた。

 

 

「蒼星石さん嬉しそうですね、何かありました?」

「ん?いやね、プレイヤーたちが頑張って生きてるのを見てると嬉しくなって……やっぱり人間は良いよな、どんな困難がやって来てもそれを乗り越えようと頑張ってるから」

「うむ、私も嬉しいぞ。努力し、逞しく生きる人間の姿はどんな宝石よりも美しいからな」

 

 

蒼星石とレイアはそんなことを一切恥ずかしがらずに口にした。それを聞いてスズランはこの二人は心底人間という種族を愛しているんだと悟る。

 

 

「凄いですね……えっと、このまま装備整えてダンジョンに向かいますか?」

「その前に一度スズランが世話になってたとかいうギルドに向かうとしようか。転移されて音沙汰無しじゃ死んだと思われてるかもしれないからな、顔を見せておいた方が良い」

「それなら私は宿でも探してこよう。スズランはそのギルドで寝泊まりできるかもしれないが主と私は泊まる場所が無いからな」

「それじゃよろしくな」

「任された」

 

 

そう言ってレイアは人混みに紛れて姿を消した。

 

 

「そういえばスズランが世話になってたギルドの名前は?」

「【栄光の架橋】っていう名前のギルドです。あの日以来積極的にプレイ時間の短いプレイヤーの保護をしているギルドなんです」

「【栄光の架橋】……あそこか……」

 

 

ギルドの名前を聞いた瞬間に蒼星石の顔が僅かに渋いものになる。さっきまで人間に対する高い評価を送っていた彼とは思えない表情だ。

 

 

「何かあったんですか?」

「ゲーム時代の話なんだがあそこのギルマスと取り巻きに少し睨まれててな……いや、正確には取り巻きにだけなんだが……絡まれない事を祈るしか無いか……」

 

 

数分後に訪れるであろう未来を想像して蒼星石は溜息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここです、ここが【栄光の架橋】です」

「へぇ……」

 

 

スズランに案内された先にギルド【栄光の架橋】はあった。蒼星石はゲーム時代に何度かここに訪れた事があるのだがその時と今のギルドの建物の記憶が食い違っていた。ゲーム時代には幾らか煌びやかな外装だったのだが今ではギルドの名前の書かれた看板があるだけ。こうなった事で変わったのかと考えたのだがよく見てみれば壁に何か貼り付けてあった跡があった。恐らく外装を剥がして売り払うことで保護するための資金を作ったのだろう。こういう所がゲーム時代と変わっていないところを見て蒼星石は思わず笑ってしまった。

 

 

「……ん?どうした、入らないのか?」

「いや……よく考えたら私って行方不明か死亡扱いされてるはずなんで……そう考えると入り辛くなって」

「覚悟を決めろ」

「え?蒼星石さん?どうして私のことを脇に抱えてるんですか?」

「ヒャッハー!!出荷だオラァ!!!!」

「いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

スズランを脇に抱えた蒼星石は迷うこと無く入り口の扉を蹴り飛ばしてギルド内へとスズランを投げ飛ばす。スズランはそれにどうもすることが出来ずに顔からスライディングで着地することになる。

 

 

「ちょ!!いきなり何するんですか!?」

「ーーー鈴ちゃん?」

 

 

赤くなった鼻を押さえながら蒼星石に文句を言おうとしたスズランだったが聞き覚えのある声をかけられたことでそれを中止する。その方向を見れば……魔法使いのような格好をした黒髪の少女が自分のことを見下ろしていた。

 

 

「……雪、ちゃん?」

「ーーー鈴ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」

 

 

黒髪の少女は手に持っていた杖を投げてスズランに抱きついた。その目には涙が浮かんでいる。

 

 

「鈴ちゃん!!鈴ちゃん!!生きてたんだ!!良かった!!良かったよぉ!!!!」

「雪ちゃん……ごめんね……心配かけて……」

「鈴ちゃん!!鈴ちゃん……!!」

 

 

死んだと思っていた友人との再会、使い古されたそれではあるが実際に目の前にしてみると心に来るものがある。蒼星石はそんな光景を壁に寄りかかりながら微笑ましそうに見ていた。

 

 

「やっぱり良いな……こういう在り来たりな物だとしてもだからこそ来るものがある。素晴らしいねぇ」

 

 

感動の再会を見てギルド内の視線はすべてスズランと彼女と親しそうな少女に向けられていた。

 

 

「ーーーあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

そんな時に、ギルド内に男の絶叫が響き渡る。当然その絶叫の方へと目は向けられる。そこには金髪を三つ編みで纏めた碧眼の男性が二階の手摺から身を乗り出して蒼星石に向かって指を指していた。蒼星石はそれに気がつくと溜息を吐きながらも片手を上げて挨拶をした。

 

 

「ようアーサー、久し振り」

「蒼星石ぃ!!お前生きてたのかぁ!!」

 

 

アーサーは嬉しそうに手摺に足をかけて飛び降りた。それで悲鳴が上がるものの当の本人は無事に着地、そして何事も無かったかのように蒼星石に近づいていく。

 

 

「逆に聞くけどお前俺が死ぬところ想像できる?」

「……出来ない!!なんか瀕死の状態でも平然と戦ってるところは想像出来るけどな!!」

「……凄え、俺もその光景が簡単に想像出来た」

 

 

二人は親しそうな様子で握手をする。そんな二人に気づいたスズランは涙を拭いながら顔を上げた。

 

 

「えっと……蒼星石さんはギルドマスターさんとお知り合いなんですか?」

「【eternal fantasy online】のサービス開始からのフレンドだよ」

「蒼星石!!秘蔵の酒開けるから飲もうぜ!!」

「全く……しょうがねぇなぁ!!」

 

 

アーサーが古びたワインボトルをストレージから取り出して二階へと飛び上がると、蒼星石もそれに続くようにして二階にへと飛び上がる。そして二人がアーサーの部屋に入った瞬間、ギルド内がざわつきに包まれた。

 

 

「オイオイ……あの人マジで蒼星石かよ?」

「服装が違うけどあのスキンはマジの蒼星石だ……」

「蒼星石って……あの【神代】の称号持ちの?」

伝説(レジェンド)級の……後でサイン貰おう。くれるかな……」

「ね、ねぇねぇ雪ちゃん、蒼星石さんってそんなに有名なの?」

「わ、私にも分からないよ……」

 

 

スズランと黒髪の少女はゲーム時代のプレイ時間が短かった為に蒼星石の知名度がよく分かっていなかった。その事に気づいた一人の女騎士がストレージから結晶体を一つ取り出して二人に差し出した。

 

 

「そういえばスズランとスノーは日が浅かったから知らないんだっけ?蒼星石は最古参のプレイヤーの一人で運営からプレイ時間が一万時間を超えたプレイヤーに送られる【神代】の称号持ちのプレイヤーなんだ。だけど【神代】ってだけならウチのギルドマスターも持ってるし、廃人プレイヤーなら持ってるんだけど……サービス終了前に行われた【EFO世界大会】で有名になったんだ」

「【EFO世界大会】ですか?」

「まぁ、口で説明するよりも映像があるからそれ見た方が早いよ」

 

 

そうして結晶体から映像が流れ出す。

 

 

広く区切られた空間で、正しく伝説としか思えないような戦いが行われていた。

 

 

黄金の聖槍を構えた聖人が蒼星石の呼び出した様々な神話を斬り裂きながら迫り、

 

 

黒衣の魔術師が落とす惑星を聖剣を振りかざしたアーサーが一刀で両断し、

 

 

真紅のドレスを着た吸血鬼の使い魔を痩躯の糸使いが切断しながら拘束し、

 

 

億を超える兵を指揮する指揮官の軍隊を音も無く現れる短剣使いの斬撃が切り裂き、

 

 

銃剣を構えた神父と赤黒い剣を構えた黒衣の医者が空間を軋ませながら切り結んでいる。

 

 

自分が師事している戦乙女(ヴァルキリー)の召喚師が遥か高みにいる存在なんだと認識したスズランだった。

 

 





〜EFO世界大会の様子〜

聖人「加減無用だーーーさぁ、楽しませろぉぉぉぉ!!」

蒼星石「俺にお前たちをーーー愛させてくれぇぇぇぇぇ!!」

魔術師「ではーーー最後の恐怖劇(グランギニョル)を始めよう!!」

アーサー「束ねるは星の息吹……!!受けるがいい!!」

吸血鬼「さぁーーー豚のような悲鳴を上げろ!!」

糸使い「 厳然な実力差とはこういうものです」

指揮官「さぁ諸君ーーー地獄を作るぞ」

短剣使い「斬刑に処す、その六文銭不要と思え」

神父「我は神の代理人、神罰の地上代行者」

医者「そうそう、その調子。その調子でこの私を楽しませてください」

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