召喚師の人間讃歌   作:鎌鼬

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第5話

 

 

30分もしないうちにアーサーの部屋の中には大量の空になったんだワインボトルが散らばる事になる。戦犯者はソファーに踏ん反り返りながら片手に指で挟んだワインボトル四本を持ち、片手に細巻きタバコを持っている蒼星石。アーサーはそんな蒼星石を見て笑いながらワインの注がれたグラスを傾けていた。

 

 

「毎度思うけど良くそんなに入るね……何なの?アルコールだけ貯蔵する器官とかあるの?肝臓が常人の何千倍も働いてるの?」

「知らねぇ、だけどこの程度じゃ酔わねなぁ……まぁ流石にドワーフ殺しをスタックで飲み干したらホロ酔いにはなるけど」

「なんでゲーム内で一番アルコール度数の高い酒をスタック単位で飲んでその程度なのさ……」

 

 

そう言いながらアーサーはグラスに残っていたワインを飲み干して新しく注ぐ。蒼星石のウワバミっぷりに戦慄しているがアーサーも中々のペースで飲んでいることを忘れてはいけない。

 

 

「俺がヒッキーしてる間もアーサーはゲーム時代と同じようにやってたんだよな?」

「うん、初心者たちや混乱してる人たちの保護をしてた」

 

 

アーサーは【eternal fantasy online】がまだゲームだった頃から初心者プレイヤーたちにゲームの心得を教えたり、装備の良し悪しを教えてやったりと指導者のようなことをしていた。それはアーサーのお人好しとお節介焼きが取らせた行動で、結果はゲーム時代の上位プレイヤーのほとんどがアーサーの世話になったものらがいることが証明している。その為かこのギルドに所属しているプレイヤーのほとんどがアーサーに世話になった者で構成されていて、ぶっ飛んだ内容でもない限りは二つ返事で承諾するほどの忠誠心を持っている。

 

 

それだけなら統率の取れたギルドなのだが、問題はアーサーのことを神格化して見ているプレイヤーたちだ。彼らはアーサーをまるで神の様に崇め、アーサーの益になると判断したらどんな過激な行動でも平然と行う。ゲーム時代での行動を上げると、

 

アーサーにちょっかいをかけたプレイヤーを延々とリスキルし続ける。

 

敵対行為をとったギルドに爆発物や自爆技を使って特攻する。

 

アーサーが欲しがっていた素材を集めるためにPKをしまくって集める。

 

 

などなど。それをするプレイヤーの数はギリギリ3桁に届かない程度だがもうその行動は狂信者としか思えない。蒼星石はそういったプレイヤーに目を付けられていたのでここに来る前に渋った反応をしたのだ。

 

 

その全てを蒼星石は蹂躙して叩き潰したのだがそれを面倒だと思いアーサーにことの顛末を話した結果アーサーはキレ、そのプレイヤーらに対して所持していた聖剣を持ち出してPKをしまくるという【バーサークアーサー事件】が発生したこともある。

 

 

「この世界で生きようとしてる人には安全マージンとった上で効率的なステータスやスキルの練度の上げ方を教えてるし、戦えないって人には生産職に回ってもらう様にしてる。おかげでというかギルドのメンバーが一気に増加したよ」

「ところで狂信者たちは?あいつらは黙ってお前に従ったのか?」

「……彼らは殺した」

 

 

アーサーが苦虫を噛み潰した様な顔でそう言った。

 

 

「僕が初心者プレイヤーを保護することを指示すると彼らは猛反発したよ……そんなことをしている暇があるのなら私たちを助けてくださいってね……それを無視して保護を進めてたら彼らが初心者プレイヤーたちを殺してた。アーサー様の害になる貴様らを生かしておけないってね……だから殺した。実行犯はその場で切り捨てて、他の奴らは良くやったって褒めたふりをしたら簡単に炙り出せたから捕まえて見せしめの意味を込めて処刑した。僕はただ目の前で困ってる人がいたから助けただけだ。それなのに勝手な幻想を抱いて……正直なところ、ゲーム時代から彼らの行動はやり過ぎだと思ってたからね。丁度いい機会だったかもしれない」

 

 

ワインを一気に飲むアーサーを見ながら蒼星石はいやらしい笑みを浮かべる。蒼星石はアーサーが人を殺したということに対しては嫌悪感を欠片も抱いていない。蒼星石自身も今の状況になってから両手では足りないほどにプレイヤーを殺したからだ。

 

 

ゲーム時代なら蘇生(リスボーン)が出来たが今の状況になってからはそれが出来たと言う話を聞いたことは無い。蘇生系のアイテムや魔法による蘇生は何件か挙げられているがそれも死後数分以内での話、つまりこの世界で死ねば基本的にはそれまでということになる。

 

 

現実なら間違いなく蔑まれる行動を迷うこと無く行うアーサーを蒼星石は嫌わない。それどころか好ましいと、アーサーらしいと肯定している。

 

 

「くっくっく……やっぱりアーサーはアーサーか。弱者を救い、導く先導者。それを妨げる奴は許さない。安心したよ、この世界に来てもお前はお前のままなんだと分かったからな」

「……やっぱり蒼星石はおかしいな……いや、他の十皇のみんなに相談したら僕らしいって笑われたけど」

 

 

十皇とは、【EFO世界大会】で圧倒的な試合を見せた十人を讃えて付けられた名称で、その中には蒼星石とアーサーも入っている。そしてその十帝は【eternal fantasy online】をサービス開始からプレイしているプレイヤーたちでもある。

 

 

「そう言えば他の奴らはどうしてるんだ?俺【最果ての地】でヒッキーしてたからメールとか来てなくて」

「えっと確か……ゲオゲオとループとアンデンテが教国にいて上層部のほとんどが腐ってたからクーデター起こすとか言ってて、ナチ公とモスキーは帝国でレジスタンス側と帝国軍側で対立してるとか言ってて、パペットマペットとDr.死科医とリッパーは世界見て回るって歩き回ってるはずだよ」

「オゥ……半分が戦ってるとか……しかし教国と帝国ね……王族連中が出張ってくるんじゃねぇの?」

 

 

ゲーム時代ではイベントの最中に行動時代では王国、帝国、教国を治めているNPCの国王、帝王、教王の一族と戦うことが出来た。蒼星石の言う王族とはそれらのことを指していて、それぞれの王族が一国家で桁外れの戦闘能力を持っている。どれ位強いのかというと十皇でも一人で戦えば負ける、二人で戦って運が良ければ辛勝、五人で戦えば必勝だが間違いなく二人は殺られるとの見解だ。

 

 

蒼星石も何度かイベントで国王の一族と戦ったことがあるが集団戦になれば負け、一対一ならば勝てるかもしれない程度の戦闘能力を持っている。

 

 

「それなら大丈夫みたいだよ?教国はゲリラ戦で戦力削ってるみたいだし、帝国に至っては帝国民プラスレジスタンス対帝国軍プラス帝王みたいな感じらしいから戦力は拮抗してるってさ」

「マジか……近いうちに行かなきゃ……!!」

「やりすぎないようにね?精々帝都と教都が消し飛ぶ程度で抑えるんだよ?」

 

 

アーサーの注意がおかしい気がするが強ち間違っていないのが恐ろしい。十皇はそれぞれその気になれば地図を書き換えれるほどのことはやれるのだから。

 

 

「そう言えばさ、この間聖剣が黒く染まったんだけど」

「何やらかした?」

「心当たりが無いんだよな……魔剣と一緒に六爪流の真似事をした辺りからなんか様子がおかしかったんだけど」

「間違いなくそれだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーサーが酔いつぶれて寝てしまったので残っていたワインボトルをすべて回収して蒼星石は部屋から出る。蒼星石が十皇だと分かったからかギルドメンバーたちは尊敬の眼差しで見ていた。蒼星石はそれに悪い気はせず、さらりと受け流してテーブルに向かいって座って話をしていたスズランの元に向かう。

 

 

「おう、待たせて悪かったな」

「あ、お帰りなさい。蒼星石さんって凄い人だったんですね」

「ん?……あぁ、世界大会の映像でも見たのか?あれは楽しかったな、またやりたい」

「あれを楽しかったって言えるって……」

「あ、あの!!」

 

 

そんな時、スズランと話していた黒髪の少女が割って入ってきた。蒼星石に緊張した様子ではあるが。

 

 

「私、鈴ちゃん……スズランの友達のスノーって言います!!スズランを助けてくれてありがとうございました!!」

 

 

そう言ってスノーは勢い良く頭を下げて九十度の礼を見せた。スノーはスズランのことを友人と言っていた。おそらくは現実でも友人だったのだろう。こんなことになった世界で友人を助けてくれた蒼星石はスノーに取っても恩人なのだろう。

 

 

「良いよ良いよ、俺が助けたかったから助けただけだから……他にも何か言いたいことがあるみたいだけど?」

「そ、その……私のことを鍛えてください!!お願いします!!」

「雪っ、スノー!?」

 

 

スノーの申し出にスズランだけではなくスノーの声を聞いていたギルドメンバー全員が驚くことになる。そしてそのほとんどが断られるだろうと考えていたが蒼星石だけは興味深そうにスノーを見ていた。

 

 

「へぇ、そりゃまたどうして?」

「……今回、スズランが転移したのは私のせいなんです」

 

 

スノーの話によればスズランが転移した原因はスノーの不注意によるもの、スノーが引っかかるはずだった転移トラップをスズランが強引に割り込んだ為にスズランは転移したそうだ。

 

 

「だから!!強くなりたいんです!!友達を守れる位に!!もう失わないように!!この世界で生きる為に!!だから……だから、お願いします!!」

「……強くなりたい、とはどこまで?」

「十皇を超えるまで、です!!」

 

 

スノーは自身の胸の内を解き明かして更に深く頭を下げた。それを見ていたギルドメンバーの九割九分が鼻を鳴らすか顔を上げて目から出てくる液体を流さないようにしている。残りの一分の男性らが「真剣な表情のスノーたんhshs」とかほざいていたそうだが近くにいたギルドメンバーに股を蹴り上げられて涙することになる。

 

 

スノーが本気で強くなりたいと思っていると分かった蒼星石はまるで魔王ではないかと見間違うほどに獰猛な笑みを浮かべた。蒼星石は人間が好きで、性悪であろうが性善であろうが肯定している。その中でも特に好きなのが……自分では届かないと分かっていながらもそれに至ろうとする人間の意志である。諦めなければいつかきっと夢は叶うとは誰のセリフか。少なくとも今現在、スノーは不相応な夢を諦めずに叶えようとしているのだ。

 

 

それを喜ばない蒼星石では無いし、それを断る道理もまた無い。

 

 

「あぁ……あぁ……!!良いねぇ良いねぇ!!決して届かぬと知りながらも、それを叶えようとするその姿!!実に好ましい……!!俺はそう言う人間を見るのが大っ好きなんだ!!良いだろう!!魔法使いのスキルは取ってないが魔法を使える奴を呼び出すことは出来る!!スノーが俺を超えるその日まで俺がお前の面倒見てやるよ!!」

「ほ、本当ですか!?」

「あぁ……だが、その心を忘れるなよ?忘れたその日には俺はお前が四面楚歌の窮地にいたとしても迷う事なく見捨てる」

「……分かりました!!よろしくお願いします!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁるじぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「グェッ!?」

 

 

そんな時、入り口の扉を突き破るようにして涙目のレイアがやって来て蒼星石へと飛び付いた。予期せぬ出来事に蒼星石の反応は遅れ、首からグギリと嫌な音が聞こえる。

 

 

「ちょっと!!待ってってば!!」

 

 

レイアを追うようにしてギルドにやって来たのはカッターシャツにパンツルックというラフな格好をした赤髪の女性。彼女は顔を赤らめながら鼻息荒くしてレイアに詰め寄る。

 

 

「お願い!!ホンットお願い!!一晩!!一晩で良いから私と付き合って!!イチャイチャラブラブしましょ!!ネットリ絡み合いましょ!!忘れられない夜にして私がいないと生きられないように調教してあげるからーーー」

 

 

迷う事なく右ストレートを女性の顔面に叩き込んだ蒼星石の判断は間違っていないだろう。

 

 

 





教国組
槍使いの聖人=ゲオゲオ
惑星落としの魔術師=ループ
銃剣の神父=アンデンテ

帝国組
指揮官=ナチ公
吸血鬼=モスキート

王国組
蒼星石
アーサー

世界ぶらり旅
糸使い=パペットマペット
探検使い=リッパー
医者=Dr.死科医

プレイヤーたちの強さがおかしいと思ったら国家代表も天元突破している模様。基本的に国のトップは強くなくちゃいけないから是非も無いね!!



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