召喚師の人間讃歌   作:鎌鼬

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第6話

 

 

「ーーーよし、装備は整ったし、道具も揃えた。これでダンジョン潜る一先ずの準備は出来たな」

 

 

満足そうに頷いている蒼星石の目の前には最低ランクではあるものの軽装の胸当てと籠手を装備して腰に短剣をぶら下げたスズランの姿があった。元々彼女の持っていた装備は消耗が激しかった為に防具屋に修繕を頼んでいる。スノーの方は【栄光の架橋】から支給された最低ランクのローブと杖を装備していたので問題無い。

 

 

「本当にありがとうございます。絶対に返します」

「わ、私も払います!!」

「無利子で気長に待つ事にするから急ぐなよ?」

「そうそう、引き際を間違えて大怪我なんてしたら大変だものね。その可愛い顔に傷がついたら……あれ?以外と悪く無い?むしろイケる……!!」

 

 

いつの間にか隣に立っていた赤髪の女性の顔を太ももで挟み込んで仰け反り、頭を地面に叩きつける。一切の迷い無く放たれたフランケンシュタイナーに周りから歓声が上がる。

 

 

「よし、ダンジョンに向かいながら軽く説明するからな、聞き逃すなよ?」

「いやいやいや!!あんな技かけて大丈夫なんですか!?今完全に頭から落ちましたよ!?」

「うわぁ……痛そう……」

「良いぞ主!!もっとやってくれ!!この世から完全に消し去ってやってくれ……!!」

「嫌がって無いならまだしも嫌がってる奴に迫る奴にかける情けは無いね!!ほら見てみろよ!!レイア完全に涙目だぞ!!こりゃもうギルティでジャッジメントるしかないだろう!!」

「いったたた……」

「チッ!!」

「チッ!!」

 

 

完璧に決まったかと思われたフランケンシュタイナーだが赤髪の女性は痛いと言いながら平然と立ち上がる。それを見て舌打ちする蒼星石とレイアの姿からこの短時間でどれだけヘイトを稼いでいるかが分かる。

 

 

「つうかお前誰だよ?なんでウチのレイアに近づいてんだよアァン?」

「一目惚れしたから!!惚れたら合体したいと思うのは当たり前じゃない!!」

 

 

赤髪の女性を立たせてコブラツイストを決める。女性の身体からミシミシと嫌な音が聞こえるが意識を保っている辺り相当【耐久】が高いと思われる。

 

 

「ぐわぁ……!!レイアちゃぁん……!!私と良い事しましょぉ……!!そこの二人も混じって四人でも良いから……!!」

 

 

コブラツイストを極められながらも女性はレイアだけでは無くスズランとスノーにも手を伸ばしていた。その姿を見た二人はドン引きし、一歩どころか十歩は距離をとる。

 

 

そんな中、レイアは女性に近づいた。

 

 

「レイアちゃん……!!」

「ーーー良いかよく聞け!!私は主の物だ!!地肉や髪の毛の一本、それこそ魂の一欠片に至るまで全て余さず主である蒼星石に捧げたのだ!!故に、私が身体を許すのは主だけだ!!分かったかこのガチレズが!!」

「ーーーゴフッ」

 

 

ようやく応じてくれるのかと期待していたが返ってきたのはまさかの拒絶、それも蒼星石へと愛の告白と共に。それを聞いた女性は吐血して身体を弛緩させる。蒼星石が技を解くとそのまま地面に崩れ落ちて動かなくなった。試しに小石をぶつけても反応を見せない。

 

 

「えっと……レイア?時と場所を考えて発言しようか?」

「ーーーはっ!?」

 

 

レイアの告白を聞いていたのは女性だけではない。蒼星石やスズランとスノー、それに周りにいた町民やプレイヤーたちも聞こえていたのだ。蒼星石は恥ずかしいのは僅かに頬を赤らめ、スズランとスノーに女性プレイヤーたちはキャーキャー騒ぎ、町民たちは口笛や拍手をレイアに送り、男性プレイヤーはそれだけで人を殺せるのでは無いかと思うほどの視線を蒼星石へと向けていた。

 

 

その事に気付いたレイアは色白だった顔を一気に紅潮させ、

 

 

「か、帰りゅ!!」

 

 

噛みながら魔法陣を展開させてヴァルハラにへと帰っていった。町民たちは良いものを見たと話しながら解散し、男性プレイヤーたちはリア充タヒねと呟きながら壁を殴り、スズランとスノーは未だに女性プレイヤーたちとキャーキャー騒いでいる。

 

 

「……」

 

 

蒼星石は迷う事無くスズランとスノーの首根っこを掴みあげてその場から離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、それじゃダンジョンについての話だ」

「「ふぁ〜い……」」

 

 

あの場所から離れて未だに女子トークに勤しんでいたスズランとスノーをチョップで現実に戻した蒼星石は二人を連れてダンジョンへと向かっていた。

 

 

「とは言っても【初心のダンジョン】なんてその名前の通りに初心者向けのダンジョンで階層も浅いし敵もそんなに強くは無いはずだ。全五階で三階から状態異常を使う敵やトラップが仕掛けられている程度だ。ただゲーム時代とは仕様が変わってるのか本当だったらダンジョン内に転移するはずの転移トラップが外にまで飛んだりするから気を付けなくちゃならんけどな」

「それは身に染みて分かってます……」

「無事でいてくれてありがとうね、スズラン」

 

 

ゲーム時代と今現在では仕様が違っているのかトラップや敵の出現に乱れが生じていることを蒼星石はアーサーから予め伝えられていた。とは言っても敵の出現に関して言えば落ち着いていれば対処出来る程度の物しか出現しないらしい。嘘を言う奴では無いと分かっているのでそこは信用できるだろう。

 

 

問題はスズランが転移されたようなトラップだ。ゲーム時代ならば仕掛けられているポイントはアップデートでもしない限りは固定でそこまで凶悪な物は無かったはずだが、スズランがかかったようなダンジョン外へと飛ばされる転移トラップや即死の呪いをかけられる呪詛トラップに出入り口を封鎖してモンスターを大量に召喚する召喚トラップが確認されている。どれもゲーム時代では【初心のダンジョン】に存在しなかった物だ。あったとしても中級や上級プレイヤーが出入りするようなダンジョンでしか確認されていなかった。

 

 

「敵に関して言えばモーションを丸々覚えておけばゲーム時代なら対処出来た。トラップに関しては【レンジャー】か【鑑定】のスキル持ってたら見つける事ができる。まぁ【鑑定】は一々使わなきゃ見つけられないから【レンジャー】を取るか【レンジャー】持ちの奴とパーティー組むのが良いな」

「師匠はどうしてるんですか?」

「【鑑定】は別用で必要だったから元々持ってたし、トラップがウザかったから【レンジャー】のスキルも取ったな」

 

 

スノーの呼び方だが彼女は蒼星石のことを師匠と呼んでいる。堅苦しい言い方ではあるが蒼星石も満更では無い様子でその呼び方を許していた。

 

 

「まぁ二人がパーティー組続けるならどっちかがとっとけば良いがオススメは二人とも取っておく事だな。そうしておいた方がもしものと時に困らねぇしーーーっと、着いたな」

 

 

そうして蒼星石たちは【初心のダンジョン】にへと辿り着く。地下へと続く大きめの入り口の前には王国の兵士が鉄の鎧を着て見張りに着いている。

 

 

「基本的には俺は二人がピンチにならない限りは手を出さん。そう判断するまでは例え何があっても見るだけでいるからそのつもりでな」

「ハイ」

「すぅ……はぁ……分かりました」

 

 

スズランはレイアの戦乙女(ヴァルキリー)ブートキャンプに参加していたからなのか多少緊張している様子は見られるが自然体のまま、スノーは大きく深呼吸をして真っ直ぐにダンジョンを見ている。

 

 

二人の顔にはダンジョンに対する恐怖の色があるが、それでも覚悟を決めてダンジョンに挑もうとしていた。

 

 

「ーーーよし、行こうか」

 

 

 

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