GOD EATER~砕かれし記憶~   作:ダオラ

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普通に暇な時間が続いているのに中々執筆が進まない。やはりこの駄作者には文才が全く無いようです(泣)
これで暇がなくなったらどエライ亀更新になりそうな予感……タグに亀更新入れようかなぁ……


第五話 鉄の雨

「ふむ……」

 

 何やら難しい表情を浮かべ、エリックは何かの雑誌を読みふけっていた。

 時折あーでもないこーでもないとブツブツ呟くその様は、傍から見ればさぞおかしな光景だろう。

 

「何してるの? エリック」

 

「っ、なんだ君か」

 

 キオが話しかけてみると、よほど集中していたのか、かなり驚いた様子でキオの方に向き直った。

 一体何にそんなに入れ込んでいるのかと、キオがエリックの読んでいた雑誌に視線を落とすと――そこには、年端もいかない少女の写真がズラリと並んでいた。

 

「…………ああ、エリックってそういう……?」

 

「キオ、君絶対何か勘違いしているだろう」

 

 なおもキオが疑うような眼差しでエリックを見ていると、彼は深い溜息とともに、そんな雑誌を広げている理由を話し始めた。

 

「……次の仕事が終わったら、妹に服をプレゼントしてあげる約束をしているんだ。だから、この雑誌で妹に似合う服を探しているんだよ。分かったかい?」

 

「へー……」

 

「妹はエリナと言ってね。綺麗な緑がかった銀色の髪をした、可愛らしい子だ」

 

 キオが納得したと見るや、エリックは聞いてもいないのに妹について語りだす。

 

「僕らは欧州にあるフェンリル傘下企業、フォーゲルヴァイデ財閥の生まれなんだけど、エリナには欧州の空気が合わなかったらしくてね、よく咳の発作を起こしていたんだ。だから、2年前からエリナは一人ここ極東地区の叔母の元に身を寄せているんだ。けど……エリナが極東に移って、一週間くらいしたころかな? あの子から、手紙が来たんだよ」

 

 一旦間を開け、エリックはその手紙に書かれていたことを噛み締めるように、ゆっくりと言った。

 

「『この辺りのアラガミは、欧州より凶暴で怖い。私もいつ襲われるか』……ってね」

 

 確かに極東地区は、アラガミとの激戦区として知られるが、だからといって他の地域よりアラガミが凶暴ということはない。しかし、それはエリックも分かっているようで、こう続けた。

 

「もちろん、欧州でもアラガミは凶暴だ。つまり彼女が言いたいのは、こういうことさ。『一人ぼっちは寂しい』……ってね。可愛い妹にここまで言われちゃ、僕だけのうのうと財閥の御曹司なんてやってられないだろう? だから僕は周囲の反対を押し切って神機使いになり、やっとの思いでこの極東支部に……エリナのそばに来られたってわけさ」

 

 穏やかな表情でそう締めくくるエリックには、妹のために命を賭けることへの躊躇も、安全で快適な暮らしを捨てた後悔もない。

 つまりはそれだけ、彼にとって妹の存在は大きいのだろう。

 

「……優しいんだな、エリックは」

 

 だからこそ、素直にキオがそう評すると、エリックは当然だと言わんばかりに胸を張る。

 

「その方が華麗だろう? エリナも喜ぶし、一石二鳥というやつさ」

 

「あっ、キオさん、エリックさん」

 

 自慢げに語るエリックの様子に、キオが自嘲気味な笑みを浮かべていると、エントランスでオペレーターを務める少女――竹田ヒバリが、2人に突然声をかけてきた。

 

「お二人に任務が来ましたよ。場所は《鉄塔の森》、討伐目標は《オウガテイル》と《コクーンメイデン》です。それと、エリックさん」

 

「なんだい?」

 

「清掃員の方から言伝です。『あんたはトイレを何回詰まらせれば気が済むんだ、早く使い方を覚えておくれ』だそうです」

 

 ヒバリの言葉に、エリックの顔が笑顔のまま固まる。

 そして、ゆっくりとキオの方を向き直り、

 

「キオ、このことは、エリナには内緒にしてくれたまえ」

 

 と、念を押すのだった。

 その様子に、キオが小さく「全然華麗じゃないね……」と呟いたが、彼は口笛など吹きながら、必死で誤魔化すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 古びた鉄塔が木々のように乱立したそこは、まるで鉄で出来た森。

 かつて近隣の都市に電力を供給していたそこも、今では大部分が水没し、かつての喧噪は見る影もない。

 《鉄塔の森》にたどり着いたキオは神機を持ち上げると、同行者である2人の方を向き直る。

 

「エリック、準備出来た?」

 

 もう一人の同行者と話し込んでいるエリックに尋ねると、彼は

 

「僕はいつでも準備万端さ。それに、仮に準備不足でも問題ない、僕は華麗だからね!」

 

 と、よくわからないことをのたまうのだった。

 

「……おい」

 

 少し油断しすぎな気がしたキオは注意しようと口を開きかけるが、それより早くもう一人の男が言う。

 

「油断しすぎだ。アラガミに喰われても知らねえぞ」

 

 どこか暗い声で注意されたエリックだったが、彼は軽く受け流すと、言った。

 

「何、僕と君がいれば、どんなアラガミも敵ではない。だろう? 華麗なる僕の相棒君」

 

「誰が相棒だ」

 

 相棒発言をあっさり否定されたが、エリックはまるで手のかかる弟を見るような目でやれやれと肩をすくめると、今度はキオのそばに近寄り、囁くような声で言った。

 

「彼はソーマと言ってね。素直じゃないところがあるけど、根は優しくていいやつだ。君も仲良くしてやってくれたまえ」

 

 エリックの言葉に、キオは小さな笑みとともに頷くと、彼は「さーって!」とわざとらしく声を上げ、一人鉄塔の森の奥地へ向かって歩き出した。

 

「あっ、待ってよエリック!」

 

 キオもそれに習って歩き出したが、この時、本当に油断していたのはエリックではなくキオなのだと、彼は知ることになる。

 例えば、本来いつでも盾を展開出来るよう両手で持ち、腰だめに構えていなければならない神機を、この時は片手で持っていたこと。

 例えば、エリックに着いていくことに目が行って、もう一人の同行者であるソーマが、2人から遅れていることに気がつかなかったこと。

 そのどちらか一方でも無ければ、このあと、あんなことにはならなかっただろう。しかし、それは起きてしまった。

 

「エリック!! 上だ!!」

 

「えっ?」

 

 突然の声。反射的に足を止めて空を振り仰いだそこには、2人めがけて飛びかかるオウガテイルの姿があった。

 

「しまっ――」

 

 突然のことで反応が遅れ、咄嗟に盾を展開して防ぐという発想に至らない。しかも、ゴッドイーターの筋力からすれば僅かな差だが、神機を片手で持ち上げていたのでは一瞬間に合わない。

 喰われる――そう思った瞬間、キオは、横から突然襲いかかった衝撃に吹き飛ばされた。

 

「なっ……」

 

 突然の浮遊感に戸惑いながら振り向くと、こちらに手を突き出すエリックの姿が見えた。

 何が起きたのか、そんなことは簡単だ。

 襲い来るオウガテイルに気付いたエリックは、せめてキオだけでもと、彼を突き飛ばし、庇ったのだ。

 

「うわぁぁぁぁ!!!」

 

 キオがいなくなったことで、オウガテイルの狙いはエリックのみに絞られる。

 一片の迷いなく彼に飛びかかった捕食者は、目の前のエサを前に、舌なめずりをする間すら惜しむように、すぐさま口を開け

 エリックを、喰らった。

 

「ぁ……」

 

「ボーッとするなッ!!」

 

 突然の事で唖然とするキオの横を疾風のごとく走り抜け、ソーマはオウガテイルの体をその巨大なバスターブレード型神機――《イーブルワン》で両断する。

 ただの一撃で体を真っ二つにされたオウガテイルは、地面に崩れ落ちる間すら与えられることなく、そのまま塵と消える。

 まるで、何事もなかったかのように。

 

「……っエリック!!」

 

 ようやく我に返ったキオは、横たわるエリックの右腕にはめられた腕輪へと手を伸ばす。

 しかしその手は、途中で別の腕に掴まれ届くことはなかった。

 

「無駄だ……もう、死んでる」

 

「……!!」

 

 腕輪を介して自らの体力を相手に分け与え、蘇生を促すゴッドイーター特有の治療法、リンクエイド。

 しかし、当然それも既に死んだ人間には効果はない。

 頭を喰われ、即死したエリックのように。

 

「なんで……なんでだよ……お前、言ってたじゃないかっ! 妹に服を買ってやるって!! やっと……やっと妹のそばにいられるって!! それなのに……なんで俺なんかを!!」

 

 エリックの体から止めどなく流れ出る血で汚れようと構わず、キオは彼の体を揺さぶる。

 しかし、死者が何かを言おうはずもなく、だんだんと冷たくなっていくその体に、キオはただ言葉を投げかけることしかできない。

 自分の無力さに、キオは涙が溢れてくる。

 

「……言っておくが、ここじゃあこんなことは日常茶飯事だ」

 

 未だエリックの死体に向け叫び続けるキオに、ソーマは先ほどと変わらない口調で言う。

 声に反応してゆっくり振り向くと、彼はそんなキオに向けて神機を突きつけ、言った。

 

「お前はどんな覚悟をを持って戦場(ここ)へ来た……?」

 

「覚、悟……」

 

 理由はある。だが、それは果たして覚悟と呼べるほどのものだろうか?

 エリックのように、全てを捨ててまで成し得たかったことだろうか?

 どれだけ考えても、答えは出ない。

 

「……覚悟もなしにこんなところに来たんなら、もう帰れ。……邪魔なだけだ」

 

 そう言うと、ソーマは神機を担いで先へ向かって歩き出す。

 確かに、覚悟はなかったかもしれない。だが、だからと言ってこのままでいいのか? とキオは自問する。

 そんなことは――

 

「待てよ」

 

 声に反応し、ソーマはその場で立ち止まると、キオの方を向き直る。

 キオは腕で乱暴に目尻を拭って立ち上がると、ソーマと同じように神機を突きつけ、言った。

 

「エリックは……妹のために戦うって言ってた。それなのに、あいつは俺を守って死んだんだ。だったら、俺があいつの覚悟を継ぐ。あいつが守ろうとしたものも、あいつが守るはずだったものも全て、俺が守る!!」

 

 それがせめてもの、エリックへの償いだと信じて。

 

「それが……俺の覚悟だ」

 

「………………」

 

 その時、辺りから獣の咆哮が響き渡る。

 と同時に、キオとソーマを取り囲むように4体のオウガテイルが現れ、更には鉄材が組み合わさって出来た高台の上に、コクーンメイデンが2体、突然()()()

 

「……時間だ、いくぞルーキー」

 

「……ああ!」

 

 その言葉を合図に、2人は左右に散る。

 それを見たコクーンメイデンは、すぐさまその頭から光の弾丸を2人に向けて放つ。

 ソーマはチラリと横目でそれを確認しただけで避けるが、キオはそれすらせずに真正面からオウガテイルに向け加速する。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 光弾が背中をかすり、肉が焼ける匂いとともに激痛が走るが、それすら無視してオウガテイルの懐に入り込んだキオは、雄叫びとともに神機を振りまくる。

 型も何もあったものではないが、何度も何度も斬りつけられたオウガテイルは、あっけないほど簡単に崩れ落ちる。

 

「ぐっ……!?」

 

 突如として左肩に感じた痛みに、キオは苦悶の声を上げる。見れば、そこには大きな棘が突き刺さっていた。

 そばにいたもう一体のオウガテイルが、キオに向けて尻尾からニードルを飛ばして来たのだ。

 肩から次々と血が流れ落ちるが、構いはしない。

 既にキオの体は、エリックの血で赤く染まっているからだ。

 

「こ、のぉぉぉぉぉ!!!」

 

 込み上げる怒りの感情をぶつけるかのように、キオはオウガテイルに斬りかかる。

 すぐさまオウガテイルがその牙でもって彼を噛み砕こうと口を開くが、左腕を盾替わりにそれを防ぐ。もうその腕は治療なしでは役に立たないだろうが、代わりに深々と突き刺さった牙は容易には抜けない。

 キオは身動きの取れなくなったオウガテイルに向け、力の限り神機を振り下ろす!

 

「ガァァ……」

 

「はぁ、はぁ……次ッ!!」

 

 崩れ落ちたオウガテイルからコアを回収するのも忘れて次の敵を探すが、もう既に、辺りにアラガミの姿はなかった。

 

「おい」

 

 上から声が聞こえ、振り仰ぐと、そこには2体のオウガテイルと、コクーンメイデンを既に仕留め終えたソーマの姿があった。

 彼の表情からは感情が読み取りにくいが、どこか悲しげな雰囲気を纏いながらキオを見下ろし、ソーマは言った。

 

「お前、エリックの覚悟を継ぐって言ったな」

 

「……ああ」

 

 短くそう答えるキオに、ソーマは冷たく言い放った。

 

「だったら、もっと腕を磨くんだな。……今のお前じゃ、自分一人守ることすらできやしない」

 

 ソーマの言葉に、キオは歯噛みする。

 自分の力の無さを認めるのは悔しいが、少なくとも、今のキオではソーマに遠く及ばないことは明らかだ。

 

「最後に忠告だ。……死にたくなければ、俺には関わるな」

 

 それだけ言うと、ソーマは鉄塔の森を後にした。

 一人残されたキオは、肩に刺さったニードルを抜きながら、そばで横たわるエリックを見る。

 あの時、オウガテイルからキオを庇う余裕があったのなら、恐らくは自分だけ助かる道も彼にはあっただろう。

 しかし、彼はそれをしなかった。会ってたった数週間しかたっていない、キオを守るために。

 

「エリック……」

 

 気づけば、鉄塔の森に雨が降り始めていた。

 雨はキオの体についた血を洗い流し、赤く澱んで地面へと落ちる。

 キオにはその一滴一滴が、まるで鉄のように重く感じられて

 雨が止むまで、一歩もその場から動くことが出来なかった。

 




サラバ、華麗なる我らがエリックよ。安らかに眠れ。マスク・ド・オウガにはならなくてい……おっと誰か来たようだ

しかし、逆上してる(?)とは言えオウガテイル相手にここまでボロボロになる主人公ェ……
こんな調子で大丈夫か? 大丈夫じゃない問題だ←
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