GOD EATER~砕かれし記憶~   作:ダオラ

7 / 8
どうやら、僕は戦闘描写を書くほうが得意(?)なようです。
今回の話、戦闘描写が半分以上あるんですが、それはほんの数時間で書き終わりました。
そのくせなんでこんなに投稿が遅れたかって? それ以外にものすご~く時間が取られたんだよ!(泣)

リンドウさんの会話はすごく書きやすいんだけどなぁ……


第六話 破壊の猿人

 カタカタと無機質な音を立てながら、リッカは専用のマニピュレーターを操作し神機の整備を行っていた。

 しかし、いつもはどこか楽しそうにしているそれらの所作も、今日ばかりは重く沈んだ表情で行っている。

 

「リッカ」

 

 突然背後から呼ばれ、リッカが振り向くと、そこにはキオが立っていた。

 彼はどこか虚ろな目で、彼は今リッカが整備していた神機――エリックの神機を見ると、僅かに視線を逸らす。そして、まるで気を紛らわそうとするかのように無理矢理笑顔を作ると、言った。

 

「俺の神機の強化、もう終わってる? このあとコウタと任務に行くことになったからさ……まぁ、もしまだなら明日にしてもらうけど」

 

 キオの目の前でエリックが喰われてから、まだ数日しかたっていない。新人である彼では、まだ心の整理もついてないだろうに、それでもリッカに心配をかけまいとするその様子に、彼女も負けてられないと小さく微笑む。

 

「ん、終わってるよ。注文通り、刀身も銃身も装甲も全部改良を加えてあるけど……でも、良かったの? まだ数えるほどしか任務に行ってないのに、パーツを全部強化なんてしてさ。もうすっからかんなんじゃない?」

 

 神機のメンテナンスは、サボると故障の原因になったり、最悪その神機自体が使い物にならなくなったりするため無料で整備班が行ってくれるが、強化は別だ。そして、当然それにかかる代金は強化する神機の所有者持ちなので、実は神機の強化を行う人はあまりいない。

 リッカはそのことを指摘したのだが、キオはなんでもないことのように首を振る。

 

「別に、これ以外に使い道がないから大丈夫だよ。俺はコウタみたいに、仕送りする家族がいるわけでもないしね。それに」

 

 キオの表情が、一気に暗くなる。顔を俯かせ、拳を握り締めると、絞り出すような声で彼は言った。

 

「早く……せめて、エリックと同じぐらいには強くならなきゃいけないんだ」

 

 目標を持つのはいい。それに向かって頑張れば、キオは強くなるだろう。しかし、リッカは同時に、彼に一種の危うさを感じた気がした。エリックのことを悔やむあまり、強くなることに目が行き過ぎて、周りが見えていないのではないかと。

 

 このままではまずいと、リッカは話題を変えるため口を開く。

 

「そう言えばさ、キオ……君、ちゃんと盾使ってる?」

 

「へ?」

 

「いや、前の任務の時も大分無茶したみたいだし、キオは他の近距離型神機使いに比べて盾につく傷が少ないからさ……気になって」

 

 エリックのことから少しでも離れた話題にしようと思ったのに、結局は神機の話になってしまった自分にリッカは自嘲する。だが、こうなってしまった以上はもう誤魔化すのはやめよう、と考え直す。そして、「そうかな……」と頭を掻きながらそっぽを向いているキオに向け、彼女は出来るだけ優しい声色で、言った。

 

「別に、神機を傷つけて欲しいわけじゃないけどさ……無理だけはしないでよ? 神機使いに代わりはいても、あなたの代わりは、世界中のどこにもいないんだから、さ……」

 

 もうこれ以上、誰にも死んで欲しくない。そんな思いを今まで何度願っても、一人、また一人と死んでいった。だが、それでも、やはりまた願ってしまう。アラガミと戦う術のない自分には、祈ることしか。言葉をかけることしか出来ないから。

 そんなリッカの思いの込められた言葉を聞いたキオは、再び笑顔になると、言った。

 

「ありがとうリッカ。……それじゃあ、行ってくるよ」

 

 キオは携帯端末を取り出し、コウタに「先に行く」と連絡すると、そばに固定されていた己の神機を手に、戦場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 後から追いかけて来たコウタと共に乗り込んだヘリでキオが向かった場所は、《嘆きの平原》。

 以前、サクヤと共にコクーンメイデンを討伐したこの場所に、今度は《コンゴウ》というアラガミが出現したと言う。

 

「キオ、どうする? コンゴウって割とでかいアラガミらしいけど、どっちにいるのかな?」

 

 高台の上で、コウタがキオに尋ねる。

 ここ《嘆きの平原》は、全体的に平らな地面が続いているが、中央部だけは竜巻が唸り、その周りは壁のように地面が盛り上がっているため、実際に戦闘出来る場所はドーナツ状の地形となっている。

 なので、左右どちらに行こうと奥まで行けば道は繋がっているのだが、始めてここを訪れるコウタにはそれが分からないのだろう。

 本来ならば、ここでキオがコウタに説明するべきだ。しかし、キオはただ右の方を眺めるのみで、コウタの質問には答えようとしない。

 

「キオ? どうした?」

 

 キオの様子を訝しんだコウタが再び呼びかけると、キオは「なんでもない」と首を横に振った。

 

「どっちにいるか分からないから、ここは二手に別れよう。できるだけ慎重に進めば、不意打ちをくらうことはそんなにないと思う。それで、コンゴウとかいうアラガミを見つけ次第、合図を送って合流。それから2人で戦おう」

 

 神機使いの腕輪には、いくつか機能が備わっている。

 腕輪をした人間の生死を確認し、現在地を発信し続けるビーコンや、一定範囲内の仲間に簡単な信号を送る機能などだが、この2つがあれば、ここで二手に別れても簡単に合流出来るというわけである。

 

「分かった。それじゃあどっちに進む?」

 

「俺が右に行くから、コウタは左に行って」

 

 驚くほど早く即答したキオに、コウタは僅かに訝しげな視線を送るが、まぁいっか、と呟き、高台から飛び降りた。

 

「それじゃ、気をつけろよ! また後でな!」

 

「……うん」

 

 元気よく手を振ると、コウタは慎重に進み始めた。

 

 恐らく、コウタがキオの考えを知ったら、激怒することだろう。だが、キオには、こうするよりほかに方法がなかった。

 キオが高台から飛び降り、右側へと回ると、すぐそこにそいつはいた。

 丸い体はオウガテイルの2倍はあろうかというほど大きく、その体を支える手足は巨木のように太い。

 尻尾と、2足歩行が可能なその姿は猿にも似ているが、背中には明らかに通常の生物ではありえないパイプのようなものがついている。

 こいつこそが、今回の標的。《コンゴウ》だ。

 

「ゴアァ!!」

 

 コンゴウはキオを見つけるなり、地響きが聞こえるほどの力で地面を殴りつけ、威嚇する。

 打ち合わせ通りなら、ここでキオはコウタを呼ばなければならない。しかし、キオは神機を構えるだけで、腕輪には見向きもしなかった。

 

「ごめん、コウタ……生きて帰れたら、謝る。あ、リッカにも無茶しないって約束したんだっけ。リッカにも謝らなきゃなぁ……」

 

 そう、キオは初めから気づいていた。コンゴウがこの場所にいたことに。

 気づいていたからこそ、コウタに二手に別れようと提案したのだ。コンゴウと――この危険なアラガミとの戦いで、コウタを傷つけないために。

 これが、ただの自己満足だということはキオにも分かっている。

 例えこの場でコウタが戦わずしてコンゴウを倒せたとしても、コウタだってゴッドイーターである以上は、もっと危険な戦いに身を投じなければならないことだってあるはずだ。

 それでも、キオはこうすることを選んだ。彼を、守るために。

 

「コウタが戦う必要なんてない……アラガミは、俺が殺す。命に換えても!!」

 

「ゴアァァァァァ!!!」

 

 その叫びが開戦の合図だったかのように、コンゴウは一気にキオへと肉薄する。二足で立つことも可能なコンゴウだが、移動する時は両手も使うため、巨体が仇となり動きが遅くなることはない。キオの予想より早いスピードで接近したコンゴウは、腕をもたげたかと思えばすぐさまその拳をキオに向かって振り下ろす。

 

「これくらい……!」

 

 直撃すれば骨の一本や二本は確実に砕けるであろうその攻撃を、キオは一歩後ろに跳ぶことで回避する。

 目の前を豪腕が通り過ぎたのを確認すると、キオは挨拶がわりだと言わんばかりに、強化された刀身パーツ《ナイフ改》を、コンゴウの鼻先に突き入れる。

 

「ガゥ!?」

 

 ただのエサだと思っていたキオの思わぬ反撃に、コンゴウは一瞬怯む。

 この程度でコンゴウに痛手を与えられたとはキオも思わないが、それでも隙は隙だ。キオは1度開けようと思っていた間合いを一気に詰め、無防備な腹めがけて神機を振り下ろすと、そのまま斬り上げから斬り払いへの連続攻撃へと繋ぐ。

 

 まずはこのくらいかと考えたキオがそこで一旦距離を置くと、その直後、コンゴウは未だ腹下にいると思っているキオをその巨体で踏み潰さんと、両手を挙げてその場に倒れ込んだ。

 無防備と言えば無防備な攻撃方法だが、そのあまりにも大きな巨体が地面に倒れ込んだ衝撃は凄まじく、近くにいたキオは地面の揺れに足を取られそうになる。

 もし欲張ってあの下で攻撃を続けていたら、今頃ペチャンコになっていたことだろう。

 

「けど、取り敢えず先制は出来た」

 

 コンゴウはオウガテイルよりずっと強いアラガミだと聞いていたが、スピードはあまり変わらない。

 もちろん、その巨体ゆえのパワーとリーチは驚異だが、注意して見れば躱すことはそう難しくない。

 やれる、俺でも倒せるかもしれないという希望が、キオに勇気を与えてくれる。

 だが、コンゴウの力は、何もその巨体とパワーだけではなかった。

 

「なんだ?」

 

 突然コンゴウが距離を取ったかと思えば、体を屈めて背中のパイプをキオに向けるような体勢を取った。

 何をする気かとキオは一瞬次の行動に迷ったが、すぐにツバキに教わったコンゴウの攻撃方法の一つを思い出し、慌てて横に向かって大きく回避した。

 直後、キオの横を見えない何かが通過した。その何かはキオの遥か後方で崖に激突し、地響きとともに拡散する。

 それは、この世界で最もありふれた物である空気を、パイプの中で圧縮、砲弾へと変えて放つコンゴウの攻撃方法の一つだ。その攻撃は、威力もさることながら、空気で出来ているため目視しづらいという非常にやっかいな特性を持っている。

 だが

 

「やっぱり躱せないほどじゃない!!」

 

 地面を蹴り、キオはコンゴウへと肉薄する。

 正面から突っ込んでくるキオに向け、コンゴウは再び空気の砲弾を放つが、予備動作が大きいこともあってキオは軽々と回避し、再びコンゴウの懐まで入り込むと、神機を捕食形態へと変形させる。

 

「喰らいつけ!!」

 

 捕食形態にした神機が、コンゴウの横腹を喰い千切る。

 取り込まれたオラクル細胞によってバースト状態となったことを知覚すると、キオはたった今喰いちぎった傷跡に向け、次々と神速の斬撃を繰り出す。

 

「ゴ、ゴアァァァァ!!!」

 

 周囲に纏わりつく獲物を捉えんと、コンゴウは次々に周囲を殴り、腕を振り回して薙ぎ払おうとするが、どれも当たらない。

 バースト状態になったキオには、この程度の速度の攻撃は苦もなく回避出来る。

 

「ガァァ!!」

 

 ついに痺れを切らしたかのように、コンゴウは体ごと倒れ込んでキオを踏みつぶそうとする。

 しかしキオは、この瞬間こそ待っていたかのようにすぐさまコンゴウから距離を取ると、倒れ込んだ衝撃が収まると同時に、無防備なコンゴウの頭めがけ渾身の連撃を浴びせかける。

 兜のように顔面を覆う赤い外皮を神機で突く度に、ピシピシと音を立てながら徐々にヒビが広がっていく。

 

「これでどうだ!!」

 

 トドメだと言わんばかりに、軽いジャンプからの回転切りをお見舞いすると、コンゴウの顔面に入っていたヒビが一気に広がり、外皮が砕け散った。

 

「ゴアァ……」

 

 頭を腕で抑えながら、コンゴウは今度こそダメージの蓄積で倒れ込む。

 だが、まだ終わってはいなかった。

 

「しぶといな……」

 

 バースト状態が終わったキオは、起き上がるコンゴウを見てそう評した。

 恐らくこれがオウガテイルだったなら、もう3度は仕留めたのではないかというほどの斬撃を浴びせたというのに、コンゴウはまだまだこれからだと言わんばかりに咆哮する。

 胸をドンドンと拳で叩きながら、息を荒げて叫ぶその様は、まさしくゴリラそのものだろう。

 

「けど、流石に大分ダメージは蓄積したはずだ」

 

 今、間違いなくコンゴウは攻撃ではなく、痛みに耐え兼ねて倒れ込んだ。

 アラガミに痛みを感じる神経があるのかは分からないが、ダメージが蓄積している証拠としては十分だろう。

 このまま行けば、勝てる。そう確信し、キオは再び突っ込む。

 

 瞬間、コンゴウと目が合った。キオはその目の奥にただならぬ気配を感じ、突進の勢いが僅かに緩んだ。

 その僅かな減速が、キオの命を救った。

 コンゴウは、今までとは桁違いに速い速度で、キオを殴り飛ばさんと拳を繰り出してきたのだ。

 

「なっ!?」

 

 咄嗟に盾を展開して防ぐが、あまりの威力にキオはボールのように弾き飛ばされる。

 受け身すら取れずまともに背中から地面に落ちたキオは、衝撃で息を詰まらせる。もしあのままの速度で突進していたら、間違いなく盾を展開することすら叶わずこの一撃で動けなくなっていただろう。しかし、なんとか立ち上がったキオは、トドメを刺そうとパイプを構えているコンゴウの姿を目にした。

 再び倒れ込むようにしてそれを躱すキオだったが、痛みのせいで中々もう一度起き上がれない。

 

「くっ……そっ……」

 

 このままではまずい。そう考えたキオは、懐からスタングレネードを取り出し、コンゴウの鼻先めがけて放り投げた。

 しかし、体勢が悪かったためか、スタングレネードはまるで見当はずれの方向へと飛んでいく。

 一瞬本気で焦るキオだったが、幸か不幸か、コンゴウの攻撃でキオが痛めつけられていたためにスタングレネードは思いのほか距離が伸びず、辛うじてコンゴウの視界内で炸裂する。

 

「オオォ……」

 

 強烈な閃光に目を灼かれ、コンゴウが身悶える。

 スタングレネードの正確な効果時間は分からないが、そう大して長くはない。

 キオはすぐさま回復錠を取り出すと、口に放り込んだ。

 すると、スーッと痛みが引いていく感覚とともに体が一気に軽くなり、キオはなんとか再び立ち上がることが出来た。

 しかし、その頃には既にコンゴウの視力も回復し、怒り心頭と言った様子でキオに向かって咆哮した。

 

「怒り……そうか、怒りか」

 

 ここでキオは、もう1つアラガミについて教わっていたことを思い出した。

 コンゴウのような中型~大型のアラガミは、オウガテイルのような小型アラガミにはない特性として、『怒り』状態がある。アラガミは、ダメージを蓄積され怒りが頂点に達すると、動きが早くなったり外皮の硬さが変化したり、更には攻撃力や攻撃パターンまで変化することがあるという。

 つまり今のコンゴウは、怒りによってスピードもパワーも上がっているということだろう。

 

(なんとかバースト状態になれれば対抗出来るかもしれないけど……今のこいつに、捕食する隙があるのか……?)

 

 バースト状態は、もって一分。しかし、あの怒り状態は果たしていつ解ける物なのか見当もつかない。

 しかも、バースト状態になるには生きたアラガミを捕食する必要がある。この怒り状態のコンゴウ相手では、捕食どころかナイフ改の一撃を入れられるかどうかすら怪しい。

 スタングレネードを使えば捕食出来るだろうが、リッカから貰ったスタングレネードは残り7つ。これで仕留めきれなければ、それこそ手段が尽きてしまう。

 

「ゴアァァァ!!」

 

「っ……悩んでる時間もないか。だったら!」

 

 コンゴウが突進してくるのを見、キオは悩むのをやめてスタングレネードを取り出すと、足元に投げつけて炸裂させる。

 対象との距離が開くと効果時間も短くなるかもしれないが、外すよりはよっぽどマシだ。

 思ったとおり、距離はまだあったがコンゴウは再び目を灼かれ、その場にうずくまる。

 

「そこっ!!」

 

 動かなくなったコンゴウの肩を、捕食形態で喰い千切る。

 喰らったオラクル細胞を取り込むうちにコンゴウは視力が回復したらしいが、なんとかバースト状態にはなることが出来た。

 

「だぁぁぁぁ!!!」

 

 雄叫びをあげながら、次々と傷口を狙って斬撃をねじ込む。

 見れば、先ほど神機で喰らったコンゴウの横腹は、どうやったのかもう傷口が塞がっていた。

 恐らく体内に蓄えられたオラクル細胞で補完したのだろうが、もしそうならこの傷口もいつ塞がるかわからない。

 キオはもう二度と塞がらないようにと、押し広げるように斬撃をねじ込み続ける。

 

「ゴアァ!!」

 

「ぐっ……」

 

 斬撃の途中で、コンゴウが殴りかかってきた。

 咄嗟に盾で防ぐが、やはりバースト状態でも完全には防ぎきれず、押し負ける。

 少し開いてしまった距離を埋めようと走り始めると、コンゴウは再び前かがみになり、パイプの先をこちらに向けてきた。

 しかし、あの空気の砲弾は懐に入ってしまえば当たらない上、このタイミングならばキオの方が僅かに早い。

 躊躇いなくキオは懐に飛び込み――そして、突然体を襲った衝撃に吹き飛ばされた。

 

「かはっ……!!」

 

 何が起きたのか、キオには全く分からなかった。

 気付いた時には体を痛みが突き抜け、しばらくの浮遊感の後地面に叩きつけられる。

 

「ぐ……一体何が……」

 

 辛うじて体を起こすと、キオはコンゴウの方を見る。すると、コンゴウを中心に、地面に円形の跡が残っていた。

 それでようやく、キオは自分の身に何が起きたのかが分かった。

 あの時、コンゴウはパイプから空気を砲弾にして放ったのではなく、爆散させたのだ。

 その結果、放たれた空気は死角のない全方位攻撃となり、キオを襲ったのだ。

 

「回復錠は……」

 

 ともかく、早く回復錠を飲まなければと取り出そうとするが、コンゴウはそんな暇を与えてはくれなかった。

 突然体を丸めたかと思えば、そのまま転がるようにして体当たりを仕掛けて来たのだ。

 キオは痛む体に鞭打ってなんとか回避しようとするが、今までのどんな攻撃よりも速いその動きに体がついていけず、引っ掛けられるようにして再び吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……!」

 

 地面を数回転がり、バースト状態も終わったキオには、もう立ち上がる力は残されていなかった。

 コンゴウも、獲物の最期を悟ったのか、今まであれほど猛り狂っていたというのに、やけにゆっくりとキオに向かって近づいて来た。

 

(ここ……までか……?)

 

 何をやっているんだろうなぁ、と、キオは自嘲する。

 結局、一人ではコンゴウ一体倒すことも出来なかった。 

 ソーマの言ったとおり、自分一人守ることも出来なかった。

 エリックが守りたかったものも、何一つ守れなかった。

 けれど、今回は誰も死んでいない。だったらもういいじゃないか。

 そう思い、目を閉じようとして――

 

「キオぉぉぉぉ!!!」

 

 自分を呼ぶ声に、顔を上げた。

 見間違うはずはない。そこにいたのは、先ほど別れたコウタだった。

 

「コウ、タ……」

 

「待ってろ、今行く!!」

 

 銃を乱射しながら、コウタはキオに向かって一直線に走る。

 コウタに気付いたコンゴウが空気砲で迎撃しようと身構えるが、それでも彼は止まらない。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 放たれた空気の砲弾を、コウタは当たる寸前で横に転がって躱し、再び駆け出す。

 転がった時以外ずっと銃を撃ち続けているというのに、コウタの放った弾は一発も外れることなくコンゴウに当たり続けている。恐るべき命中精度だ。

 

「キオ!!」

 

 コンゴウの脇を抜け、コウタは奥で倒れているキオの右腕に飛びつく。

 次の瞬間。何かがキオの中に流れ込んでくる感覚とともに、体中を襲っていた痛みが嘘のように引いていく。

 エリックが死んだ時、キオがやろうとしたゴッドイーター特有の治療法、リンクエイドだ。

 キオの体に再び立ち上がる力が戻るのと引き換えに、今度はコウタの顔色が悪くなる。治療の代償として、極度の脱力感に襲われている証拠だ。

 

「っ!! コウタ!!」

 

 体に力が戻ると同時に飛び起きたキオは、今まさにコウタを後ろから殴り飛ばそうとしているコンゴウの前に立ちふさがり、盾を展開することでこれを防ぐ。

 先ほどは押し負けたが、今回はコンゴウが落ち着いているためか、ギリギリ耐えることができた。

 しかし、安心は出来ない。

 コウタはリンクエイドを行ったせいでまともに動けず、キオ自身もリンクエイドで完全に傷が治ったわけではない。このままでは、2人ともコンゴウに喰われる。

 

「そんなこと……させてたまるかっ!!!」

 

 キオは盾を斜めにズラし、わざと力の均衡を崩す。

 思ったとおり、コンゴウの拳は横にズレ、突然押し返される力が弱まったためにコンゴウ自身は前につんのめる。

 その隙にキオはスタングレネードを取り出すと、コンゴウの眼前に突き出し、ほぼゼロ距離で炸裂させた。

 

「ガアァァァァ!!!」

 

 三度目を灼かれ、コンゴウは身悶える。

 そしてその隙に、キオはコウタを連れてその場から一時離脱するのだった。




何このコンゴウ強い
ハイ、キオ一時撤退です。もうボッコボコですね、ハイ。
一応、使用神機は ナイフ→ナイフ改 20型ガット→20型ガット改 対貫通バックラー→対貫通バックラー改 へと強化されたんですけどね……
しかしその代わり、キオに『神なるノーコン』の称号が与えられ(ry ……げふんげふん

まさかこの話がこんなに長くなるとは思ってなかったので、2話に分けました。続きは次回です。

それにしても、コンゴウ戦でこんな調子じゃあディアウス・ピターとかとの戦闘になったら何話かかることやら……いや、そもそもウチのキオはアイツに勝てるのか? 勝てる未来が見えないぞ←オイ
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