これからはずっとこんなペースかと思いますが……まぁ、ちょっと思い出したら見てみようくらいな感覚で読んでもらえると嬉しいです。
さて、肝心な今回の話……うまく書けてるか心配(汗
嘆きの平原から少し離れた場所で腰を下ろしたコウタは、自身の体力を回復錠で回復させると、キオの応急処置をしていた。
幸い、キオは特に大きな怪我もなく、回復錠とちょっとした処置で普通に動けるまでになっていた。
「それで……どうして一人で戦ってたんだ?」
一通り治療が終わると、コウタはいつになく真剣な表情で尋ねた。
いつもは大抵のことを軽く水に流して笑い飛ばしているコウタも、今回ばかりはさすがに看過出来なかったのか、その目には怒りの色すら浮かんでいる。
「アラガミ見つけたら呼ぶって、そう言ってたじゃんか。なんで一人で戦ったりしたんだよ」
尋ねても、キオは顔を俯かせているだけで何も答えない。
その様子に、コウタはあまり考えたくなかった可能性を口にする。
「……俺が、信用出来なかったからか?」
コウタの言葉に、キオは慌てて顔を上げる。
「ち、違う! そんなんじゃない! 俺は、ただ……」
「ただ?」
「……ただ、コウタを……アラガミと戦わせたくなかったんだ。エリックみたいに……死なせたく、なかったから……」
再び顔を俯かせ、ゆっくりと紡がれたその言葉に、コウタは深い溜息をつく。
キオなりにコウタを思っての行動だったということは、コウタにもわかる。だが、それは――
「それってさ、結局俺のこと信用出来ないってことじゃん」
「だからそれは違っ――」
「違わねえよ!! つまりお前は、俺がコンゴウと戦ったら死ぬって思ってたってことだろ? 俺が信用出来ないって言ってるのと、何が違うんだよ!?」
コウタの剣幕に、キオは押し黙る。
彼の言っていることが正しいということは、キオにも分かっている。
しかし、だからと言ってその言葉を肯定するわけにもいかない。
長い沈黙の末、キオは絞り出すようにして言った。
「……怖、かったんだ」
「え?」
「また、俺のせいで誰かが死ぬのが……怖かったんだ」
また、というのは、エリックのことだろうか。
そんなコウタの考えを肯定するように、キオは続けた。
「エリックを殺したアラガミはオウガテイル……普段のエリックなら、何の問題もなく倒せてたはずだったんだ。けど、エリックはオウガテイルに不意打ちされた俺を庇って……俺のせいで、死んだんだ。……笑っちゃうよね、新型神機使い、だなんて大層な肩書きを並べても、結局俺はオウガテイルの相手も満足に出来ない新人でしかないんだ。……だから俺、コンゴウ討伐任務のこと聞いたとき、怖くなったんだ。また、俺のせいでコウタを死なせることになるんじゃないかって。だから…………けど、結局は一緒だった。また俺のせいで、今度はコウタを死なせるところだった。あの時と、何も変わってない。……やっぱりあの時、俺が死ねばよかったんだ。そうすれば、コンゴウだって楽に倒せただろうし、誰も……誰も悲しまずに済んだのに……!」
キオの体が、小刻みに震えている。
自責の念と後悔と悲しみと、様々な負の感情が渦を巻き、それらが涙となってキオの目から零れ落ちる。
まるで、見えない暗闇に怯える子供のようなキオの様子に、コウタはただ黙って立ち上がると、キオを無理やり立たせ、
「バッカヤローーー!!!」
と、握った拳を全力で顔面に叩き付けた。
「ぐっ……!」
加減など全くない、ゴッドイーターの全力で殴られ、キオは倒れこむ。
口を切って流れる血もそのままに顔を上げたキオの目に映ったのは、烈火の如き怒りの表情を浮かべた、コウタの顔だった。
「エリックが死んで、お前がどれだけ辛い思いをしたかは俺にはわからない。けどな、だからって、死ねばよかったなんて悲しいこと、死んでも口にするんじゃねえよ!!」
「だったら……俺はどうすればいいんだよ!?」
「っ……!」
叫びながら、感情のままにキオもコウタに殴りかかる。
もはや、キオ自身にもこの激情を抑えることは出来なかった。
「お前は任務に行ってたから知らないだろうけど、あの日の夜、エントランスにエリックの妹が来たんだ。病気がちで、まだ年端もいかない女の子が、親に連れられるでもなくたった一人でアナグラに来て、それで……一晩中、泣いてたんだ。エリックはどこなのって、なんで会ってくれないのって、ずっと……ずっと泣いてたんだ。それなのに、俺はあの子に何もしてやれなかった。エリックを死なせたのは俺なのに、俺にはあの子の悲しみを癒すどころか、アラガミから守ってやることすら出来ない。こんな俺が生き残って……一体何になるって言うんだよ!?」
吐き捨てるようにして叫ぶキオだが、コウタにはそれが、辛いことに耐えかねて全てを投げ出そうとただ自棄になっているようにしか見えなかった。
だからこそ、コウタはもう一度、力の限りキオを殴り飛ばす。
「生き残って何になるって? じゃあ逆に聞くけどな。お前が死んだら、それこそ何になるって言うんだよ!? それでエリックが生き返るのか? 違うだろ!? その子の悲しみが癒されるのか? そんなわけないだろ!? 今のお前は、ただ事実から逃げてるだけだ。エリックを死なせて、本当に悪いって思ってるなら、エリックが命懸けで守ったその命を無駄にするんじゃねえよ!!」
「っ……けど……俺は……」
倒れ込んだキオは、起きる気力すら無くしたようにその場でうずくまる。
そしてようやく絞り出された言葉は、キオの偽りなき本音だった。
「俺にはもう、無理だよ……エリックの命を背負って、これ以上生きてくことなんて……もう、俺には……」
コンゴウを一人で倒せれば、この苦しみから逃れられる気がした。
コウタを守ることが出来れば、この重荷から解放されるような気がした。
もちろん、コウタを危険から遠ざけたかった気持ちもある。しかしそれ以上に、エリックを死なせてしまった罪から、目を逸らしたかった。
「……だったら!!」
そんなキオの言葉に、しかしコウタは幻滅するでもなく、ただ優しくこう言った。
「最初っから俺のこと、頼ってくれよ。……仲間だろ?」
「仲、間……?」
驚いたような表情を浮かべながら顔を上げたキオに、ああ、と頷き、コウタは続けた。
「どういう状況で、何があってお前がエリックを死なせちまったのか俺は分からないし、その罪を一緒に背負ってやることも出来ない。けど、その苦しみを一緒に背負ってやることなら出来るよ。カッコつけて、一人で抱え込むんじゃねえよ。嬉しいことも辛いことも、みんな分けあって支えあって、そうやって一緒に前に進むのが仲間だろ? 少なくとも、俺はお前のこと仲間だと思ってる。他の何にも変えられない、大切な仲間だ。きっと、リッカやツバキさんやリンドウさんだって、そう思ってるはずだ」
訓練の時、いつも厳しく、それでいて2人を気遣ってくれていたツバキを思い出す。
初任務の時、軽口を叩きつつもただ1つだけ、『生き延びろ』と命令していたリンドウを思い出す。
そして、ここに来る前の、リッカの言葉を思い出す。
『無理だけはしないでよ? 神機使いに代わりはいても、あなたの代わりは、世界中のどこにもいないんだから、さ……』
「………………」
「だから、もう一人で死にに行くような真似はやめてくれ。これ以上仲間に死なれたら、流石に俺も耐えらんないよ」
コウタの言葉が、キオの胸に突き刺さる。
エリックが死んで、辛いのは自分だけではないのだ。エリックの家族はもちろん、コウタや、もっと長くエリックと付き合いがあったであろうアナグラの人々。みんな、一様に辛い思いをしている。
それに気付いた時、キオは自然と、その言葉を口に出していた。
「ごめん、コウタ……俺……」
勝手に戦って。危険な目にあわせて。迷惑かけて。
謝らなければならないことが多すぎて、何に関して謝っているのかはキオにも分からなかった。
しかしコウタは、そんな彼の気持ちを察してか、笑顔で手を差し伸べた。
「もういいよ。けど、次こんなことやったらただじゃおかないからな?」
差し伸べられた手を取り、キオは立ち上がる。
エリックを死なせてしまったという自責の念はまだ消えていない。しかしその目からは既に暗闇は消え、確かな光が宿っていた。
「うん……ありがとう、コウタ」
そう言って、キオは笑顔を見せる。
それは、涙でぐしゃぐしゃになった、とてもひどい顔だったが、
今までで、一番心から笑えた気がした。
2人が嘆きの平原に戻ってきた時、コンゴウの姿は見当たらなかった。
「もっと奥地まで移動したのかなー? キオ、お前どう?」
先ほど、キオだけはコンゴウの存在に気づいていたことはもうコウタも知っている。だからこそ尋ねたのだが、キオは首を横に振った。
「今度は俺も分からない。多分奥で何か捕喰して、体力を回復させてるんだと思う」
ここから離れて、大分時間がたっている。おそらくは、キオが与えたダメージもほとんど回復されていると見て間違いないだろう。
しかも、キオが使用して減ったアイテムは補充出来ない。コウタの回復錠を少し分けてもらっているが、コウタ自身がスタングレネードを持っていなかったので、逆に彼に3つ手渡し、残りは2つだ。
しかし、キオにもう恐怖はない。ただコウタと一緒に戦い、生きて帰る。それだけだった。
「いた!!」
キオの言葉に、コウタが身構えると同時に目を凝らす。
するとその前方、100mほど離れた場所で、こちらに背を向け何かを貪るコンゴウの姿を捉えた。
「それじゃあ、打ち合わせ通りにお願い」
「任せとけ!」
ドンッと胸を張るコウタに、今回ばかりは頼もしいものを感じながら、キオは足音を忍ばせコンゴウに近づいていく。
しかし、気づかれないようにと注意すればするほど、キオは今まで気にもしなかった小さな物音にまで過敏になっていくのを感じた。
どれだけ慎重に動いても消しきれない小さな足音や、自らの呼吸、心臓の鼓動の音。そのどれもが、やけに大きな音のように思えてならない。
だが、その全てはこの嘆きの平原の中央で唸り続ける竜巻の音にかき消され、コンゴウの耳までは届かない。
永遠にすら感じる長い時間をかけてようやくコンゴウの真後ろに到着したキオは、コウタが打ち合わせ通りの場所にたどり着いていることを確認すると、捕喰形態にした神機で一気にコンゴウの尻尾を喰い千切る!
「ゴアァァァァァ!!?」
突然のことに、コンゴウは痛みより先に驚きが混じったような声を上げる。もっとも、アラガミにそんな感情があれば、の話だが。
そして、自らの尾を喰らった不埒物を探して振り向いたコンゴウは、バースト状態となったキオ目掛け拳を振り下ろす。
しかし、その時には既にキオは横に回り込んでおり、叩きつけられた拳はただ地面を揺らすだけに終わる。
「行っけぇーーー!!!」
直後、コウタのモウスィブロウから青白い弾丸が雨のごとく放たれ、コンゴウを襲う。
コンゴウの弱点である、雷属性を持った弾丸だ。着弾と同時にバチバチと放電するそれを次々と喰らい、流石のコンゴウも腕で顔を庇いながらよろける。
「そこだ!!」
その瞬間、キオがコンゴウの懐に飛び込んだ。
袈裟懸けに斬り下ろし、逆袈裟に斬り上げ、水平に薙ぎ払うと再び斬り上げる。
今はもっとも驚異だった腕がコウタの銃撃に釘付けになっているため、キオは伸び伸びと斬撃に集中することができ、一撃一撃が狙い通りコンゴウの左足に吸い込まれていく。
「ゴアァ……」
切り刻まれた左足ではその巨体を支えきれなくなったのだろう、コンゴウが地面に倒れこむ。
だが、まだ終わっていない。
「キオ! 今だ!」
「分かってるよ!」
ここまではキオの作戦通り。後は、この
キオは神機を銃形態に変形すると、セットしていたバレットを排出。代わりに神機の中から別のバレットが装填されたのを確認すると、コンゴウに照準を合わせる。
「喰らえ!!」
引き金を引くと同時に、キオの腕に今までに感じたことがないほど強い反動がかかり、銃口からとてつもない何かが放たれる。
コンゴウの放つ空気の砲弾によく似たそれは、竜巻すら凌駕する唸りとともにコンゴウへと疾駆し、パイプ部分を直撃した。
「ゴアァァァァァァ!!!!」
天を衝くような咆哮とともに、パイプが粉々に砕け散る。
それは、新型神機のみが持つ機能の1つ。
生きたアラガミを喰らった際、取り込んだオラクル細胞の一部を用いて生み出される、新たなバレット。
その名も、《アラガミバレット》だ。
「すごい……」
アラガミバレットは捕喰したアラガミが強力であればあるほど、その威力を増す。
コンゴウのパイプを一撃で破損させたそれは、紛れもなくキオが今まで見たどのバレットが放つ弾丸より強力だ。
しかし、一方で欠点もある。それはもちろん、生きたアラガミを喰らわなければアラガミバレットを生み出すことは出来ないということもあるが、それだけではない。
アラガミバレットには
だからこそ、これをアナグラへ持ち帰って複製することも出来無ければ、1度作成したからといって何発も撃てるわけではない。
キオに残されたアラガミバレットは、あと2発。
しかも、初撃を当てるまではコウタと打ち合わせをしていたが、流石に2撃目をキオの腕で当てるための作戦までは立てられなかったため、ここから先は状況に合わせて隙を作るしかない。
コンゴウも再び怒り状態になっており、まさしくここからが本当の勝負と言ったところだろう。
「コウタ、援護お願い!!」
ひとまず、バースト状態が終わるまでに少しでもダメージをと考えたキオは、顔はコンゴウに向けたままコウタに告げ、一気に走り込む。
当然コンゴウは迎撃しようと拳を振り上げるが、コウタの狙撃が邪魔で思うように力が入らないのか、キオでも容易に掻い潜り、懐まで入り込むことができた。
「やぁ!!」
踏み込みざまに水平に斬り払うと、キオはコンゴウの反撃がまだ来ないことを確認し、斬り上げながら神機を変形させる。
「もう1度……喰らえ!!」
先ほどは微妙に距離があったために――と言ってもコウタなら間違いなく当てられる距離だが――若干狙いがズレたが、今回はほぼゼロ距離。
外す心配もない状態で放たれたアラガミバレットは、その凶暴なまでの威力を存分に発揮し、コンゴウの腹部を深く抉りとる。
「ガアアァァァァアアァァ!!!!」
通常の生物ならばとっくに命を落としているであろうほどの傷を負っても、コンゴウはまだ止まらない。
アラガミバレットを撃つために至近距離で銃形態にし、盾を展開することも出来ないキオに向け、傷だらけの体で押しつぶそうとする。
「うわっ!?」
苦し紛れの一撃など今更喰らうキオではなかったが、倒れ込んだ拍子に飛び散ったコンゴウの体液が不運にも目にかかってしまった。
「ぐっ……くそっ」
構成している物質すら知れぬ液体が目に入り、頭では危険と分かっていても反射的に目を瞑ってしまう。
慌てて距離を取りつつ、腕で目をこすって無理矢理こじ開けるが、その時には既に、コンゴウは視界から消えていた。
「いない!? どこに――」
「キオ!! 左!!」
コウタの声に反応し振り向くが、その時には既に、コンゴウはキオに向けて拳を振り下ろしていた。
咄嗟に、キオは銃形態の神機の側面を盾替わりにしてこれを防ぐ。しかし、
バキッ――と、嫌な音が響くと同時に、キオは大きく吹き飛ばされる。
「キオ!!」
「大丈夫ッ……!!」
コウタの叫び声に反応しつつ、キオは空中でバランスを立て直すと、空いている左手を軸に地面に着地する。
取り敢えずはまだ動けるが、やはりコンゴウとの戦いは油断ならない。これ以上続くと、いずれは2人のどちらかがやられるのは明白だ。
「コウタ! 次で決めるよ!!」
回復錠で騙し騙し戦っている体のほうもそろそろ限界が近い。残り一発しかないアラガミバレットで仕留められなければ、もう次の捕喰をする体力も残っていないかもしれない。つまりは正真正銘、これがラストチャンスだ。
「オッケー! 俺がいくらでも援護してやるから、決めてこい!!」
キオは1つ頷くと、再びコンゴウに向けて駆け出す。
もう何度目とも分からぬその行動に、コンゴウもほぼ全壊状態のパイプを構える。
(どっちだ? 砲弾? 爆散? それとも別の何かか?)
このまま突っ込んで返り討ちにあえば、間違いなくもう動けなくなる。かと言って距離を置けば、空気の砲弾と転がり攻撃で嬲り殺しになるだろう。
しかし、迷う必要などなかった。
「グオァァ……」
コンゴウはどちらを行うでもなく、その場に崩れ落ちた。
特にコウタからの援護があったわけではない。しかし、まるで痛みに耐え兼ねたかのように、攻撃を中断させたのだ。
「もう、コイツも限界ってことか……!」
なら、この一撃で終わらせる。
キオは走り込みながら銃形態に変形させた神機を、コンゴウの胴体に突き付けた。
「これで……最後だっ!!」
ドンッ――と鈍い音がすると同時に、コンゴウの体から噴水のごとく体液が吹き出し、右胸から右肩にかけて大きな穴が穿たれる。
体との接続を絶たれて吹き飛んだコンゴウの右腕は、ドチャッ、と不快な音を立てて地面へと落下し、そのまま塵となって消えた。
「ガ、ガァァァ……」
フラフラと、コンゴウは2、3歩後ずさり、そのまま地面へと――倒れなかった。
「ガ……アァァァアアァァァ!!!!」
「なっ……!」
まだ、コンゴウは力尽きていなかった。腹を抉られ、右胸を吹き飛ばされ、体中傷だらけになってもなお、この生物は目の前のキオを喰らわんと、残された左の拳を振り上げている。
恐るべき捕喰本能――いや、これはもはや執着だ。他の生物と何も変わらない、生きるという、生物がその根底に持つ最大の本能。飽くなき生への執着心だ。
「ちくしょうっ……!!」
今のタイミングからではもう回避は間に合わない。
アラガミバレットもなく、このコンゴウを今すぐ仕留める手段はキオには残されていない。
いくら死にかけとは言え、コンゴウの拳をまともに受ければ、今度こそキオは死ぬ。
ここまでか――そんな考えが過ぎり、目を閉じた――その時。
「ガアァァァァ!!!」
「へんっ、俺を忘れてもらっちゃ困るっての!」
コンゴウの絶叫と、コウタの声がキオの耳に飛び込んで来た。
何事かと目を開けてみると、コンゴウは目を押さえ、苦しそうに身悶えていた。
恐らくコンゴウがキオを殴り飛ばそうとしたその瞬間、コウタが素早くスタングレネードを投げ込んでくれたのだろう。
「コウタ……助かったよ、ありがとう」
そう言ってコウタに笑顔を向けると、コウタは若干慌てた様子で口を開く。
「そんなことはいいから、早くとどめ刺さないと」
「分かってるよ」とだけ言うと、キオは目を灼かれてフラフラと倒れ込むコンゴウの口の中へ、銃形態の神機を押し込んだ。
目が見えず、反撃もままならない状態で銃口を突きつけられているコンゴウに、僅かな憐憫を抱きながら、キオはただ一言
「……バイバイ」
とだけ言うと、躊躇なく引き金を引き絞った。
1発では足りず、2発、3発と続けて引き金を引いていくと、4発目の弾丸がコンゴウの口内で爆発したところで、頭が吹き飛んだ。
大量の体液を撒き散らしながら横たわるコンゴウの様子が、やけに死んだエリックを想起させてキオは不快に眉を潜めるが、それも一瞬のこと。
キオは捕喰形態にした神機を突きつけ、コンゴウを喰らっていく。
「やったな! キオ!!」
「うわっ」
やがて、コアを摘出されたコンゴウが塵となって消えたのを確認すると、コウタはしがみつくようにキオの肩に手を回し、笑顔で言う。
そんな彼の様子に、「元気だなぁ」と若干呆れの混じった笑いを浮かべつつ、キオは口を開いた。
「……うん、全部、コウタのおかげだよ。……ありがとう、本当に」
今回のコンゴウ討伐の功労者は、間違いなくコウタだろう。
エリックの死を引きずって暴走するキオを止めただけでなく、最後のとどめもコウタがいなければ刺すことは出来なかった。
だからこそ口をついて出たキオの真っ直ぐな感謝の言葉に、コウタはくすぐったそうに「いいってことよ」などとカッコつけながらそっぽを向く。
滅多に見せない表情にキオが笑い出すと、コウタはふてくされた表情を浮かべるが、すぐに一緒になって笑い出す。
そして、笑いながらキオは思っていた。
コウタと一緒なら、どんなアラガミでも倒せるんじゃないかと。確かに、そう思っていた。
――そいつが、現れるまでは
「ガアァァァァァァァ!!!!」
「っ!?」
「な、なんだ!?」
突然の咆哮に、2人は神機を構えて辺りを見回す。
しかし、周りにはアラガミどころか、生物の一匹たりともいない。
まさかと思い、キオは嘆きの平原の中央を見上げる。
竜巻が唸り、人が立てば簡単に天高く吹き飛ばされてしまうであろうそこに、確かにそいつはいた。
「嘘……だろ……?」
虎のような体躯と、血のように赤い6枚のマント。コンゴウの2倍はあろうかというその巨体を支える、発達した四肢。2人を見下ろすその双眸は、獲物を狩る狩人の眼差し。
それは、ゴッドイーターが一人前になるための試練と呼ばれた存在。
その一方で、数多くのゴッドイーターの命を志半ばで終わらせ、喰らってきた最強の王者。
雷纏いし、破壊の権化。その名も――《ヴァジュラ》
そんな絶対強者が、2人を完全に補足し、今まさにその身を喰らわんと天高く跳躍したのだった――!
ふむ、腹が抉られ右胸が吹き飛び体中傷だらけで血を垂れ流しながら襲い来るコンゴウ……怖っ(泣)
まさかコンゴウがこんなに強いとは……そして、そのままの流れでヴァジュラ出☆現!
……あれぇ? キオ達が生き残るルートが見えないなー←おい