巨大な宇宙船が魔法学院の上空に待機する。その船内は騒然とし、船員の天人が甲板で二人の男と少女を取り囲んでいた。
「よぉ、生きてっか?」
「問題ない。」
甲板に転がる天人の海賊、春雨の戦闘員達の死体の中央に銀時とタバサが背中合わせで海賊とにらみ合う。
銀時はダメージは少ないが息も荒く、サイトとの戦いで消耗が激しい。
タバサも精神力が底を着こうとしている。
宇宙船は高度を徐々に落とし、トリステインの塔の近くにまで迫る。おそらくは銀時の考えではあの学院にいる襲撃者を回収する為だろう、どこまでもこの学院のメイジをなめきっている。反撃はないものとおもっているのだろう。
「虚無を連れて帰れないのは残念だ、レコンキスタが春雨と手を組んだのも虚無を連れ去ることができると宣うからというもの。」
「しょうがないよ、相手側に秘密兵器があったんだ、ここは一回退却かな?」
気絶した阿伏兎を抱え、神威は目の前の男、オリバーににっこりと笑う。
「まぁ懸命ですな。それで?あの男と少女をどうする気かね?」
「それは下っ端にお任せするよ、そろそろお迎えが来るだろうし。」
地上ではサイトと夜兎の戦闘が始まった、夜兎が集団でサイトに攻撃を加えるも、サイトは攻撃をぎりぎりで避け、デルフで容赦なく切り捨てる。
サイトは高速で動きまわり、夜兎の銃弾をデルフではじき、一人、二人と斬る。
その動きが止まる頃には夜兎の戦闘員は全滅、広場には死屍累々と夜兎の死体が転がった。
ギーシュ、ルイズも含め、学生全員がサイトを凝視する。
「あ、あれが・・・。」
「ルイズの使い魔?」
アンリエッタはデルフを鞘に納め、上空を睨むサイトを見た、歳は変わらない、だが自分たちとの立っている場所がまるで違う、戦場で育った者と貴族として育った者達の違いが垣間見えた。
「あ、・・・ああ。」
「?」
「あんたやりすぎよ!!ナニコレ!!モザイクだらけじゃない!!」
「ああ、大丈夫、全員生きてるから。」
「んなわけないでしょ!!こんなとこでこれから授業できるわけないじゃない!!」
死屍累々、夜兎であった残骸、阿鼻叫喚の血の海の中央に目をつむりながらルイズはサイトに叫ぶ、サイトは首をかしげ
「掃除すりゃいいだろ?」
「誰が掃除するとおもっとるんじゃ、・・・。」
オスマンがコルベールを抱え、よろよろとサイトの前に歩み寄る。
「お主がやった・・・んじゃろうな。はぁ、こりゃ貴族の親御さんたちがうるさかろうの。」
「まぁ、ご苦労さんなこった、さて、あの上空のガラクタどうすっかな。」
サイトは一旦ルイズを見る、ルイズは相変わらず目を閉じて当たりの血の海を見まいと手を探りながら進もうとしている。
「じいさんの魔法であの宇宙船に俺とご主人様連れてってくんない?」
銀時とタバサを囲む包囲網は確実に厳しい物になっていた、何人かが二人に特攻をかけたが銀時に切り伏せられ、タバサの氷の魔法が貫く。
タバサの精神力も限界に近い、使い魔のシルフィードは地上に待機させているが、呼んでも迎撃を受けるだろう。
そして追い打ちをかけるように事態は急変した、突如上空が明るくなったとおもったら二隻の宇宙船が姿を現した。
「・・・ありゃあ、ターミナルの原理と同じか。」
「?」
タバサは息も荒げにその宇宙船二隻を見上げる
「レコンキスタ・・・・この海賊たちと手を組んだ?」
「だろうな、・・・どっちにしろ、ここから逃げるのはそうそう簡単じゃぁないぜ。」
銀時はふう、と息を吐き、木刀を構える。
一斉に戦闘員が襲い掛かる。銀時は脚を踏ん張り、迎撃にそなえようとする。
が、突如この船を襲った衝撃に船全体が揺らぎ、とびかかった戦闘員は甲板から地上に転がり落ちる、状況がまた一変する。
「な・・・?」
「トリステインの軍隊、遅すぎる。」
甲板から見えるのは地上に群がるトリステインの軍隊が大砲をこの船に打ち込む姿だった。
「大砲放て!!撃ちまくれ!!」
アニエスは馬に乗り、上空の宇宙船を見ながら、指示を飛ばす、自身は従士隊の部下を引き連れ急いで学院の広場へと向かう。
「姫様を探し出し救助しろ!賊を見かけたら直ちに報告しろ!」
上空を旋回していたシルフィードの背中にルイズとサイトが乗り込む、アンリエッタは心配そうにルイズに駆け寄るが、オスマンに止められる。
「大丈夫、姫様・・・けが人を見てあげて下さい。」
アンリエッタは上空に舞い上がるシルフィードの上に跨る二人を見るしかなかった。
「姫様、もう心配なされるな。あの娘はもう立派なメイジですぞ?」
「ええ、・・・・でも少し、寂しいものですわね。」
アンリエッタは苦笑いをし、オスマンと顔を合わせる、アンリエッタの心の奥底の感情は複雑なものだった。
上空への宇宙船に向かって飛ぶシルフィードの上でルイズは奇妙な音に気が付く、自分のない胸のポケットに手をやると源外にもらった小型の端末から聞こえる音だとわかった。通話スイッチを押す。
「よう、おじょうちゃん、使い魔は見つかったか?」
「・・・誰?」
サイトはルイズの手の端末に映る初老の男に首をかしげる。
「・・・・ただのからくり技師よ、どうやらピンチみてぇだな。」
「ピンチは脱したわよ、あとはこっちから乗り込んで全員の股間蹴り上げてやるわ!」
「・・・・・。」
サイトは自分の股間に寒気が走る。
「はっはっはっ!元気な嬢ちゃんだ!気に入った!その手伝いといっちゃぁなんだが、こっちでの転送装置が完成したんでな、いまそっちに増援を贈ってやるわい!」
その源外の言葉と同時にはるか上空にまぶしい光が差し込む、その光の合間からは巨大な戦艦が姿を見せた。
「お前さんたちの召喚魔法の原理を応用した転送装置よ!でかいものから小さいものまで端末のGPSで位置を把握し、転送できる代物ってわけだ、存分に暴れて来な!お嬢ちゃん!」
源外との通話は終わり、ルイズは胸元に端末をしまうと自分たちを襲った宇宙船を睨む。
転送されてきた戦艦に悠然と佇む一人の男がいた、白い制服に右目に光るモノクルで現状を把握し、携帯をカチカチと操作する。
「助けにきましたお・・・っと。」
そう打ち込むと佐々木は船内にいる見回り組に振り返る。
「賊を一掃しなさい、我々はエリートです、学のない海賊は負けないでしょう。」
短くそう述べると佐々木は後ろの今井信女に視線を送る、信女はドーナツを口にほおばるとこくり、と頷き、長刀を携え、我さきにと行動に移す。
アンリエッタはギーシュの怪我を見ていた、その時に自身の胸からくる振動に驚き、ギーシュの頭を地面にたたき落としてしまった。
「ぐえ!!」
「ああ!すいませんミスタ・グラモン!!」
アンリエッタは見覚えのないその携帯電話に恐る恐る手をかけ、メール受信のボタンを押す。
受信:佐々木
件名:こんにちわ
本文: 助けにきたお('◇')ゞ
アンリエッタは顔を青くし、携帯を握りしめ叫んだ
「気持わるいんじゃぁぁぁ!」
アンリエッタはそのいつのまにか自分の服の中に入れられていた携帯電話を学院の外まで勢いよく放り投げた。
アンリエッタと佐々木のやりとりは後日番外編で。