この考えを思いついたのはいつの頃だろう。
王都に立ち寄った際の貴族のお偉方がティファニアの話をこそこそしている時だろうか。
自分の側近の部下、ロングビルがフーケだと知った時か。
ロングビルがティファニアを探していた頃だろうか。
その両方が守ろうとしているのがアルビオンの孤児だったと知った頃か、
銀時達をなんとか利用し、この二人を王都の不穏な貴族達の私利私欲から守って貰えればそれでいい。
国内にいる敵、奴らから自分の部下、その大事にしている娘、そして不運な子供たち、それを守れるならこの耄碌なジジィはいくらでも泥をかぶろう。
オスマンはそう心に誓った。
「もはや、学院長としての役目はここまでじゃの。」
このまま檻を出るのは簡単、だが、あの銀時にすべてを、今回の事件の解決を任せる。
それでこのジジィの人生は終わろう。
この事件が良くも悪くも終わっても自分は処罰を受ける、死んで周りにどれだけクソジジィと罵られても代償は軽いものだ、運も良く、あの銀時の国の守護役、真選組もいる。どうせ処罰される身、ならこの檻の中でその時間を待つのも悪くはない。
生徒は大丈夫だろう、あの騒乱の事件から自分の身を守る術は覚えた。
そしてあのフーケ、ロングビルの性格も知っている、いくら何でも生徒を殺すなぞしない。それだけの実力と経験の持ち主だ。
餅は餅屋、・・・そうつぶやいてオスマンは檻の中で胡坐を組む。
時は経ち・・・・
オスマンの俯く前に人影ができる。
「・・・・ここは危険じゃぞ、外を知らんのか。」
オスマンが顔を上げ、見上げた人物は・・・
「決めたセリフで出たのはいいんだけどさ、・・・・地下への出口、崩落してるんだけど・・・。」
体中に脂汗をかく銀時が顔を引くつかせながら棒立ちしていた。
オスマンの無言の変顔・・・そこで時間は止まったかのように沈黙が流れる。
ゴーレムにより隆起した地面の影響で地下倉庫の出入り口は完全に封鎖された。
銀時は早くも道を断たれていた。
ゴーレムに浴びせられる一方的な生徒達の魔法の雨あられ、ゴーレムはその大きい図体にダメージを残しながらも前進するが、ギーシュ引き入る生徒達の魔法の攻撃は止まない。
「いけ!!的はでかい!押し倒すんだ!!」
新八は神楽とその光景を見ながら背後の子供達に瓦礫が飛んでこないか心配する。
「すごいね、これじゃ僕たち出番ないかも・・・。」
「真選組も出番ないネ、今回のは楽勝ネ。」
「あれ、でもなんか僕たち忘れてることがあったような・・。」
「?」
ふと、新八はルイズとティファニアのいる場所に眼を移す。
「さ、みんな、君たちのお姉さんのところに行こうか、もう安心かも。」
子供達は新八の声に頷き、新八が子供達をティファニアのところまで誘導する。
「ルイズさーん!ティファニアさんのお子さんたち・・・・。」
ルイズは腕を組んでティファニアの胸を見る。
「それさぁ、本物なわけ?」
キュルケもその胸を見て杖を肩にトントンと自身に打ちながらまじまじとティファニアの胸を見る。
「あ、は、はい、一応。」
モンモランシーも杖を自身の太ももにトントンと打ちながら胸を見る。
「へー・・・本物ねぇ、昔からそうなのぉ?最近じゃよく形成手術とかで大きくできるってきいたけど?芸能人ならお金、もってるでしょ?」
タバサは無表情で見上げ、ティファニアの服の裾を引っ張りながら・・
「体と合ってない・・・。」
「ねぇ、あなた、それ、どうやったら大きくなるのよ、教えなさい。」
「え?・・・え、これは気が付いたら大きくなっていて。」
「ふーん、じゃぁそういう体系なんだ、特に何もしてないのにそういうのになっちゃうんだぁ・・・・おっぱい。」
「教えなさいよ、助けてあげたでしょ。」
「早く言いなさいよー、なにか秘密あるんでしょ?いいからいいから。おしえてよー。」
「え、???え??」
「なにあんたら女子特有の陰湿な質問攻めしてんだァァァ!んな場合じゃないでしょぉが!」
新八はある意味一色即発の女たちのいじめに近い質問攻めにつっこむ。
「その胸はマジモンネ!!私触ったもん!。」
神楽はなぜか興奮気味にルイズ達に叫ぶ。
「へーマジモンなんだ、ふしぎー。」
「ていうかあせもできないの?」
「無駄にでかい。」
「水の秘薬とかでしょ?そうなんでしょ?」
「男性経験は何人ですか?その胸。」
ルイズにキュルケ、タバサにモンモン、そして極めつけはシエスタがティファニアの胸をもみながら質問する。
それに身もだえるティファニア、その光景を見て新八は鼻血の海に沈んだ。
「え??ああああ?ちょ、あの!助けていただいてありがとうございますぅ!!楽屋に戻っておくんですいませえええん!!」
子どもたちを連れてティファニアは脱兎のごとく楽屋の簡易テントに走る。それを見たルイズはさっきまでの自分たちの言動にはっ、とする。
「え、あ、ちょ!。」
「おいこらマテやデカメロン!!」
モンモンの罵声の後、突如轟音をあげ、気が付けば目の前に佇む巨大なゴーレムはガラガラと崩れ落ちる。
男子生徒達の勝利の歓声がその
「よし、敵は殺った。意地でもあのデカメロンに秘訣を聞くぞ。」
「おう。」
モンモンとキュルケは他の三人を連れ、列をなして彼女のいるテントに向かう。
「僕、もうおなかいっぱい。」
新八は割れた眼鏡をくいっと持ち上げなおすと鼻血の海に沈んだまま気絶した。
思春期の男子に女の胸のもみ合い合戦のダメージは大きすぎた。
ティファニアは騒動の緊張からか、子供達の前で大きく息を吐く。
「お姉ちゃんだいじょうぶ?」
子どもの一人が心配そうにティファニアに声をかけ、腕を伸ばす。
「大丈夫!今日はいろいろあったから早めに帰ろうね。」
やさしくティファニアはそう子供に告げるとイヤーマフに手を伸ばす。
「ティファニア殿、お怪我はありませんか?」
ふと、後ろを振り向くと銃士隊のアニエスが楽屋のテントの入り口から顔を出し、中にミシェルを連れ入り込む。
「はい、今日はすいませんでした。」
「馬を用意してます、一応この場所はまだ危険なので・・・王都までご足労願えますか?」
「ええ、あの、子供たちは・・。」
「それは私と部隊が別の馬車を誘導するのでついてきて欲しいっス!」
「え、ええ。じゃぁ、お願いします。」
ミシェルの笑顔を見てティファニアは安心したのかミシェルに子供達を任せることにした。
子供達が馬車に乗り込み、学院の広場を抜け、裏口から王都にむけて走る馬を見届けた後、ティファニアはアニエスに微笑み、アニエスも自分が用意した馬車にティファニアと共に乗り込む。
「あ、真選組?でしたっけ・・あの人たちにもお礼を・・。」
「彼らに礼は不要です、今回は生徒の部隊がゴーレムを倒してくれました。」
「あ、そうだ、生徒のみなさんにお礼も・・・。」
ティファニアが馬車の入り口のドアに手をかけた瞬間、アニエスはティファニアの肩を強引につかむ。
「え・・・。」
ティファニアはドアが半開きになった状態で自身の腹にめり込むアニエスの拳に眼をやる。
「か・・・はっ・・。」
ティファニアは苦悶の表情のあと、すっと意識を断つ。・・アニエスはその真っ黒い瞳で力のないティファニアを自身にひきよせ、馬車のドアを閉める。
イヤーマフが外れ、アニエスの眼には人間ではありえないとがった長い耳をじっとその黒い瞳で眺める。
「エルフがこの地を歩くな。」
馬車はその言葉と同時に王都に向けて動き出す。
アニエスとティファニアのやりとりを見ていた物陰に潜むルイズ。
そしてキュルケやタバサ、モンモンにシエスタも眼を丸くして先刻の二人のやり取りをお互い顔を見合わせて五人そろってつぶやく。
「エルフ、・・・見ちゃった。」