はじまりはじまり。
その前に学院側の話をば
学院の治療室、学校で保健室に当たる場所でオスマンは水魔法の専門の学生に治療を施されていた、全身包帯まみれで血が痛々しくにじむ。
「ポーションをもっと持ってきて!早く!!」
真剣な表情でモンモランシーも治療に当たる。
部屋の外では沖田と近藤が腕を組み、その様子を音だけ聞いて顔をしかめる。
「完全に負けでさァ、あの娘っ子を奪われて、旦那の依頼者もあのザマ。近藤さん、俺たちをここに寄越した上の連中、これを見越していたとおもいませんかィ。」
「・・・・さぁな、俺たちは所詮犬よ、上が命じれば動く、それだけのことだ、あとはトシ達があの子をうまくここへ運んでくれれば。」
「現場にはあの女の姿はなかった、旦那達、あのルイズって娘もついていったが、はっきり言って勝機はあるかどうか。」
「いや、違うな、俺たちも向かう。」
近藤は刀を握りしめ、沖田を見る。
「全員招集しろ、移動手段は馬だが主力の隊士を先に向かわせる。」
「・・・了解でさァ。」
沖田は鋭い眼で刀を握りしめ、近藤の指示に従う。
その一部始終をギーシュとキュルケは曲がり角で腕を組んでお互いの顔を見る。
「ど、・・・・どうする?」
「オスマン学院長で相手にならなかったのよ?私たちが・・・相手になるとでも・・。」
キュルケとギーシュはお互いの使い魔を見る、今回の騒動でも前回でも完全に怯えて互いの主人の影に隠れる。
「はぁ、・・・こりゃルイズの使い魔の彼を見習わせたほうがいいのかなぁ・・・。」
草原で二つの影がお互いの獲物、剣と刀を交錯させる。連撃はお互いの距離を近づけは離し、お互いの急所を攻めるもお互いが防がれる。
「太刀筋に迷いがあるでござるな。」
「ハァ、・・ハァ・・・」
「体力も底をついているでござる。」
万斉の突きが放たれ、サイトはそれをデルフではじく。フーケとの戦いでサイトは体力を消耗し、そして今は万斉の相手をしている、スタミナがもう少しあれば余裕で勝てる相手、そうタカをくくっていたが、甘くはない。
「おかしいな、おい、こんなもんじゃネェはずだが。」
「ハァ・・・ハァ・・。何がだよ。」
「ガンダールヴってこんなにスタミナ切れ激しかったっけ?」
デルフのつぶやきにサイトは耳を貸さず、構えを整え、デルフを握りしめるサイト。
万斉はふう、と溜息をつく。
「準備は整った。終わりでござる・・。」
「なに??」
「おい!相棒!気が付かねぇのか!?」
気が付けばサイトの足首、腕、首、そしてデルフの刀身に細い糸が絡んでいる。
「宇宙製の特殊弦。その細さは髪の毛より細い、そして、切れ味もそこそこでござるよ?」
万斉の三味線から伸びるその弦にサイトは振りほどこうとするが、どんどん自分の肉に食い込む痛みに顔をしかめる。
「さて、どう料理したものか、その後ろにいるお前の主人にも用事があるのでござるが・・・。」
サイトは振り返り、震えながら杖を構えるルイズに怒鳴る。
「なにやってんだテメェ!!ティファニアを連れて早く逃げやがれ!!」
「いやよ!!使い魔を捨てて学院に逃げ帰るなんてできないわ!」
ルイズは失敗魔法の爆破を万斉に浴びせようとするが万斉はすんなりと避ける。
万斉は爆破の連射にも冷静に避けきり、ルイズに近寄る。
「もう一人の虚無もこれで回収できるでござる。」
「オオオオオ!」
サイトは怒り狂いルイズの前に立つ万斉にとびかかる。が万斉の仕込刀の一撃でサイトの肩が切り裂かれ、サイトは地面に落ちる。
「サイト!!」
「少し、痛いでござるが・・。」
万斉はルイズの腹に当身をあて、ルイズはサイトの見たまま意識が暗転する。
「ルイズ!!」
万斉はふと、自分の弦がサイトを拘束していないことに気が付く。
「ほう、この娘の爆破、鋼鉄にも勝る強度の弦をあっさりと千切ったでござるか。」
あの適当に思えた爆破の連続はサイトを開放するため、今まではコントロールも何もなかった爆破だが、ルイズはここ数日で失敗でも爆破が対象に当たるように夜必死に練習していたのを草場の影からサイトは見ていたのを思い出す。
その成果でサイトは今、開放された。
「これも虚無の力でござろう。」
ルイズを担いだ万斉はサイトを見下げる、サイトはデルフを握り、何も考えず万斉に突っ込む、一撃を繰り出すサイトの表情にいつもの余裕はない。
金属音が激しく響き、一撃を受け止めた万斉はサイトの眼を見る。
「お前の負けでござる、わからぬか?お前は主人を今奪われた、守れなかった。」
「うるせぇぇぇぇぇぇ!!」
サイトの咆哮もむなしく、バキンとデルフは弾き飛ばされ、地面に刺さる。
サイトの顔面に万斉の拳が放たれる。
「主を奪われた侍にもう働き口はないでござるよ。」
サイトは地面にたたき伏せられ、万斉はそれを見下げる。
「終わりでござる。」
刀を逆手に持ち、万斉はサイトの胸に刃を突き立てる。
「ぐああ!な、なに・・・。」
突如万斉が苦しみ、自身の耳タブを触る。
ルイズが眼を覚まし、耳たぶに齧りつく、そのまま万斉の体から落ちたルイズはサイトの前に再び杖を構える。
大の字になったサイトは自分の今までの戦いに対する誇りが砕ける音を聞いていた、そこにかけよるルイズに顔を上げる。
「なにしてんのよ!さっさと戦いなさい!私はまだ奪われてないわよ!!」
血まみれの口を動かし、ルイズはサイトを見る、サイトは
「お前・・・。」
今まで見てきたルイズはどこまでふざけた時でも貴族の娘の気高さを持っていた、だが今は髪の毛はボサボサ、スカートは敗れ、マントは落ち、口は血まみれ。
戦い方はまるで貴族の者ではなくなっていた。
「あんたが後ろで構えていないとこっちも集中できないでしょ!!」
サイトは地面に刺さるデルフを握りしめ、抜く。いままで自分の頭にあったつまらない考え、華麗に、そして余裕で相手を倒して当たり前の考えは今、サイトは捨てた。
目の前の貴族は使い魔である自分を守る為に泥にまみれる、それもいとわない。
「ああ、そうだな。そうだよな・・。」
サイトはデルフを納刀し、抜刀の構えを取る。
「戦いって、そうだよな・・。」
もはや迷いはない。サイトがそう思った瞬間。
「あ、そうだ、相棒、お前、まだ使い魔じゃなかった。」
「「は?」」
ルイズとサイトは突如放たれたデルフの言葉に間抜けな声と眼を点にした。
万斉は耳たぶから流れる血をぬぐい、サングラスの音で両者を睨む。
「手を焼かせるでござるな・・・。」
「相棒、お前は今仮契約の状態だ。」
「は?なに?仮契約??」
「なにそれ?初めて聞いたけど!?」
万斉を他所にサイトとルイズがデルフに詰め寄る、戦闘そっちのけでルイズはデルフに掴みかかる。
「なに?仮契約??」
「そう、おまえさん儀式の時に先においらに契約の口付したろ?あれはガンダールヴの仮契約で納まってたみたいだな。」
「おい、お前たち、今は戦闘中・・。」
「「うっさい!!ちょっと待ってろ(て)」」
ルイズとサイトの怒鳴りに万斉の言葉はさえぎられた。
「わ、わかったでござる・・。」
「ちょいまて!今口付っていった?なに?俺こいつとキスするの??」
「なに?その言い方?気に入らないの?平民が貴族の娘にキスしてもらうなんてなかなかないのよ!?」
「いや、そういう問題じゃねぇ、っていうかルーンなら左目にあるだろ!これで主人危機状態を察知してるから俺使い魔じゃないのか??」
「それお試し期間、仮契約には危機察知と心の震えの戦闘力アップ、あとその気になれば主人の状態をたまに一分ほど観察できる。」
「観察??なにそれ!?まさかあんた私のお風呂覗いてたりしてたんじゃ・・・。」
「んなわけねーだろ!お前の絶壁まな板見ても何の特にもなんねーよ!」
「だれが絶壁火曜サスペンス犯人追い詰めたような現場の胸だぁぁ!!」
「んな事言ってねぇぇぇぇ!?」
「ま、とにかく、儀式をもっかいやりな。左目のルーンは言ってみればテトリスの次に落ちてくるブロックのようなもんだ、ガンダールヴが次ですよ、みたいな。」
「なにそれ!?こっちは完全にミステリアスな感じだったのに、俺のルーンテトリス扱い?なにそれ、そろったら俺消えるの??」
「っていうか・・・儀式やるのね・・。」
ルイズはサイトを見て、すこし、顔が赤くなる感覚におそわれる。
「な、なんだよ、はやくやれよ、あのグラサン待ってくれてるけどいい加減すぐにむかってくるぜ。」
「はやくするでござるよー。」
万斉はいつの間にか草原に寝ころび、本を読む。
「いや、余裕で読書してるけど?」
「はやくやりな娘っこ、はずかしがってないで、時間がねーぜ?」
デルフがはやし立てるのをよそに、ルイズは覚悟した表情で杖を構える。
「ふう・・・いくわよ。」
「お、おう。」
「ヒューヒューお暑いねぇー。」
デルフがおちょくるのを納刀したことで口を噤ませたサイトはルイズを見るルイズの足元に呪文の詠唱と同時に魔法陣が浮かび上がる。
ルイズはサイトの顔を乱暴につかみ、赤らんだ顔でサイトの額にキスをした。
サイトの左手の甲にルーンが浮かび、左目のルーンが消える。
手の甲に痛みと熱がおび、サイトは顔をしかめるが額から口を離したルイズはもう一度サイトを見る。
「・・・・ど、どう?」
サイトは両手を数回握り、そしてルイズを見る。
「・・・特になにも。」
「神の槍、神の左手、ガンダールヴの完成だ、喜びな娘っ子!今日からお前は虚無のルイズと名乗りな!!」
「まぁ、・・・試せば解るか。」
サイトはルイズを後ろにやり、万斉を睨む、万斉は起き上がり、三味線の仕込刀を抜く。
「続きをするでござる、ガンダールヴ殿。」
「ああ、やろうぜ、にいちゃん。」
サイト対万斉の戦いも再び火蓋を切って落とされた。
感想の中に左目のルーンってガンダールヴなんですか?っていう質問に今答えます。
ルーンがサイトの左目にあったのは上記のとおりです。
なんとなく考えた思い付き仕様にオチがつけれた。(思い付きだけど)