王都、トリスタニア。チクトンネ街の一角のとある酒場にてカウンターにうなだれる金髪の女性。
女性は夕刻から夜中の今までただひたすら一人で酒の入ったグラスを傾けていた。
酒も回り、回りの客の視線も気にせず、一人で俯いてはグラスを掴み、酒を煽るの繰り返し。
「エレオノールさん、もうやめておいたほうがいいのでは?」
酒場の店主もそのエレオノールと呼ばれる女性客の異常な酒の飲みっぷりに心配する。
「うっさいわねぇ・・・・金ならはらうわよぉ、・・・もう一杯注ぎなさいよぉ。」
しゃっくりとろれつの回らないエレオノールが勧めるがまま仕方なく店主も酒をグラスに注ぐ、エレオノールの財布事情は分からないが身なりからしてお金がないというわけではない、店主も商売の為とはいえ、酒を注ぐのは仕方がない。
「・・・またですか、あの人。」
「ああ、どうも、男関係みたいなんだよなぁ、一人でたまーに男の名前呟いてるし。」
「・・・あ、そうそう、ここのお客でたまに来る兄ちゃんなんだが、あの魔法学院のオスマンっているだろ?」
「ああ、あの銀髪の・・・。」
「そろそろ来る頃だと思うんだけど、その兄ちゃん何でも屋やってるらしくてよ、仕事の腕はそのオスマンお墨付きらしいんだが・・・・この客の介抱頼めないかねぇ。」
そんな会話の中、バーのドアが突如開き、噂の兄ちゃん、銀時が入店してきた。
「よぉ、今日もやってんな。」
「よぉー兄ちゃん、よく来た、まま、座ってくんな。」
「お、・・・何?」
「頼みたい事があってなぁ・・・。」
店主は銀時のカウンター席一個となりの席に座る女性について耳打ちする。
「まぁ、報酬は今日の飲み代ってことで、・・・どうだ?」
「はぁ、・・・まぁやってもいいけどさぁ、・・・今時男にフラれたくらいで酒におぼれるとか昔のトレンディードラマかよ、そういうめんどくさい女に限って実は男グセの悪いのが相場なんだよ、フラれる女が居ればフラれる男もいるのに、女ってのはいざ、自分がフラれたらこれ見よがしに不幸オーラ纏いながら酒場で酔いつぶれる自分に酔ってる時点で自分がろくでもないってことに気が付かないのかねぇ。」
「ちょ、声でか・・・。」
「聞こえてんだよ!チリチリがぁ!!」
エレオノールはグラスを銀時の頭に直撃させる。
「ちょ!!お客さん!なにやってんのぉ!!」
銀時はカウンターからすっころげ、破片の刺さる流血が止まらぬまま、カウンターにつかまり、起き上がる。
「誰が男グセ悪いだぁ?・・・こっちはこれでもまだ未婚なんだよ、文句あるんか?お?」
銀時の胸倉をつかみ、ドスの聞いた声でエレオノールは彼に凄む。
「な、なんでもありません、一人ごとです・・。」
銀時は青ざめた顔でエレオノールにさっきの発言を撤回した。
「ふん!・・・。」
エレオノールはグラスをもう一個カウンターからつかみ取り、今度は自分で酒を注ぐ。
銀時は涙目の彼女の酒の飲み方に溜息をつき、仕事抜きの心情で彼女の持つボトルを奪う。
「そんな飲み方してりゃあ、いい男に出会う前に体壊すぜ、話ならつきあってやらぁ。」
「結構よ、なに?ナンパでも考えてるの?」
「バカ言うな、俺ァまな板には見飽きてんだ。」
「ああ!?」
「じゃなかった、・・・まぁ、話してみな、大人の会話を肴に酒を飲むってこともたまにはいいもんだぜ?」
エレオノールはふん、とグラスを空にすると、銀時にグラスを差し出す、銀時はグラスに半分酒を注ぎ、自分のグラスにも半分酒を注ぐ。
彼女はグラスに口をつけるのを今度は少し、ためらい、グラスをテーブルに置く。
「婚約破棄されたのよ、相手は伯爵、せっかく幸せになろうと思ってたのに、急に今日のデートの最中で別れてくれって言われたわ。」
暗い顔で何かを思い出し、涙目でエレオノールはまたグラスを空ける。
「そりゃあ、災難だったな、で?その男はどんなヤツだったんだ?」
「普通にイイ男よ、ちょっと頼りないところもあったけど、それに、はっきり言って地位も伯爵だし・・・。」
「女ってのは目ざといねぇ、まずは年収ってか?」
「あんたどこ出身か知らないけど、この国では結婚するにあたって女は男の年収を鷹の眼のごとくまず見るのよ、それに、自慢じゃないけど私の実家も結婚の条件にはうるさく言うし・・。」
「へぇ~・・・んで、お前さんはフラれた理由に心当たりはあんのか?」
「・・・・・そうね。あるにはあるわ。でも・・・。」
エレオノールはグラスをテーブルに置き、ついには号泣する。
「五回目のデートで闇カジノで負けて伯爵の腎臓かけたくらいで嫌気が刺すってなによおおおおおお!」
「んなもん誰でも嫌気が刺すわぁ!!」
エレオノールはぐずりながら銀時を見る。
「だ、・・・だって男と女は危機的状況になると心臓のドキドキが恋と勘違いして熱く燃え上がるっていうじゃない・・。」
「それ吊り橋効果だろ!?お前のはただ彼氏の腎臓吊り下げただけだろぉ!?」
「仕方ないじゃない、ここらへんに吊り橋なんてないわよ・・。」
「いや、他にもあるだろうが、極端すぎんだよあんた。」
エレオノールは涙をふきながらグラスに銀時が注いだ酒に口をつける、落ち着いた彼女は溜息をつき、また、うなだれる。
「いいわよ、どーせ、男なんて胸でしょ、胸さえあったらなんでもできると思ってんでしょ?女の胸は猪木じゃないわよ。」
「急にふてくされたよ、なにこの子、めんどくさいよ。」
「でも、本当にいい人だったわ、・・バーガンディ伯爵、イケメンだし、伯爵だし・・・でも、あの言葉にはやり直してなんて言えないわ。」
「・・・ほかに何かあんのか?」
「ええ、・・・・思い出しても、ホント、バカみたいな話よ。」
別れよう・・・
そんな!どうして?腎臓賭けたのがそんなに・・。
それもそうだけど、すまない、ボク、気が付いてしまったんだ。
な、なにを・・・
ボク、彼氏ができたんだ。
・・・・・・は?
彼が僕の彼、スカロンさんだ。
エレオノールの目の前には筋骨隆々の男が姿を現す。
「どぉも~~~初めましてぇ!」
エレオノールは自分の持つグラスを握りつぶす。
「魔法アカデミーで研究開発部門の仕事をしてるけどまさか自分の婚約者があっちのほうを開発されてるなんてどう思う?」
銀時と店主は彼女の話を聞いて顔を青く染める。
沈黙が流れ、銀時は顔の青ざめも収まり、ふう、と溜息をつくエレオノールにグラスとボトルを差し出す。
「飲まなきゃやってられない時もあるわな。」
「・・・・。」
「まぁ、男でも女でも絶対に結婚しなきゃいけないなんてルールはこの世にねーよ、そんなルールは人間が自分自身で作った勝手な檻みたいなもんだ。」
「・・・・。」
「幸せじゃなきゃ幸せと感じないなんて不器用な動物だぜ・・・、自分で自分の首に気が付かないうちに鎖をつけちまってる。幸せじゃなくてもよ、人生楽しかったらそれでいいだろ?」
「・・・そうね。」
「飲み直しだ、飲みな、俺もつきあってやらぁ。」
「ふん!私はかなり強いわよ、ついてこれる?」
「は!上等だぜ!」
そして彼らはこのあと店主の忠告を無視し、飲んだ、その後次に別の店をはしごし、飲んだ、そして二人して吐いた。
また飲んだ
吐く
飲んで
吐く
飲んで
カジノ
飲んで・・・・
朝を迎える。
かぶき町、万事屋銀ちゃんの玄関を開けた新八は異様な酒のにおいにむせこむ。
「う、・・・銀さんまた派手に飲んだな・・・。おはよーございまーす。」
新八は脚を銀時の寝室に向けて歩く、どうせ酔いつぶれて昼まで仕事はできないだろう、そう思って新八は寝室を勢いよく開ける。
「うーん・・・もう。」
「あー・・・のめねぇ・・・。」
そこには上半身裸の銀時と着衣の乱れた金髪の女性の姿が新八の眼に飛び込んできた。
新八はそのままふすまをそっと閉めた。
無駄に次回に続く。
アラサー間近同士今回はカップリング成立なるか!?