揺れる馬車の上でサイトとルイズはお互い携帯電話を片手に時間を過ごしていた。
もう半日は馬車に揺られ、退屈なサイトは携帯でゲーム、一方のルイズは青い顔で携帯のメールをまじまじと見ている。
きっかけは朝のテレビ、アルヴィーの食堂でBGM代わりに流されているテレビに突如見覚えのある、というかおそらくあの人とあの人がトンネル工事の話題をしている最中にルイズの携帯が震えた。
今日、今すぐ帰って来なさい、使い魔を連れて。じゃなきゃ殺す。 カリーヌ
この一文でルイズは朝から心ここにあらず、青い顔で急いでサイトをひっつかみ馬車に乗り込んだ。
「つーか今日、服買いにいくんじゃなかったっけ?」
サイトは呑気に携帯を見ながらルイズに顔を向ける。
「・・・そうね。」
「しかし、なげー街道だなぁ、何時間走ってんだよ、馬車。」
「・・・そうね。」
「・・・・さっきから携帯のなに見てんだよ、朝から変だぜ、お前。」
「・・・そうね。」
「はぁ・・・何も聞いてねぇよこの子。」
「・・・あんた、今から行くとこ知らないでしょ、・・・・私の実家よ。」
ようやく言葉らしい言葉を発するルイズにサイトは首をかしげる。
「なんで実家に・・・。ってか、俺もそこ行くの?なんで?」
ルイズは携帯のメールを閉じ、眼を閉じた。
「お母さまの命令だから・・・。」
「かーちゃん?なんでかーちゃんのとこ行くのに元気ねーの?」
「あんたは知らないからよ、・・・お母さまの恐怖を。」
「・・・は?」
そんな会話をしながら朝から半日が過ぎた現在は夕刻、馬車はとある場所で止まり、ルイズとサイトは馬車から降りる。
「・・・・・でけぇ、なにこの城。」
「ラ・ヴァリエール公爵の屋敷、私の実家よ、ちなみに半日走ったほとんどはここの領地よ。」
「お前の実家どんだけ金持だよ。・・・ま、使い魔としてご主人様が立派でなによりだわ。」
呑気にサイトがそう言ってデルフの宿る紅桜を腰に下げる。
「・・・気をつけな、相棒。」
「何が?」
「この城からビシビシ殺気をかんじらぁ、お前さんに向けてな。」
「ひ・・・。」
デルフの言葉に前方を見たルイズが後ずさる。
「?おいおい、どんな奴か知らねーけどそんじょそこらの相手に。」
「な、・・・なんで?」
ルイズの視線の先にいた人物にサイトは眼を凝らす。
「あれ、・・・なんで銀さん。」
「つ、・・吊り下げられて・・。」
両者は大木に逆さに釣り上げられた銀時が白目を剥き、その頭の下には血に飢えたマンティコアがうなりを上げている光景を目の当たりにする。
「あ、あ、朝のはやっぱり、エレオノール姉さまと銀時だったのね。」
がっくりと地面に膝をつくルイズにまたもサイトは首をかしげる。
「おーい銀さん何やってんの?新しい修練か?」
声に気が付いた銀時はサイトに眼を凝らす。
「あ、お前ら!ちょうどよかった!助け・・・。」
銀時の声と同時に彼の後頭部に小刀が突き刺さる。ギャグ回じゃなければ即死レベルの速さと威力の・・・。
「「えええええええ!?」」
突然の展開にサイトとルイズが大声をあげて白目をむく銀時に驚く。
唸り声を上げていたマンティコアは突如、静まり、小刀を投げた人物の気配で即座におすわりの姿勢を取る。
「なりませんよ、ルイズ。・・・。」
「あ・・・ああ・・。」
ルイズは屋敷の玄関から伸びる階段を下りる人物を見て恐怖に震える。
「ヴァリエール家訓、第一条、ヴァリエールのトンネル工事作業者は公爵家主の判断により、婿入り、もしくは斬首。」
カツカツとヒールの音が響き、鋭い眼をした女性がピンクブロンドの髪を後ろに束ね、マンティコアの頭を撫でる。
「ヴァリエール家訓、第二条、公爵家主が不在の場合は公爵家の妻、及び、娘の家族会議にてトンネル工事作業者を吟味せよ。」
「・・・サイト、あんたがどんだけ強くても世の中には逆らっちゃいけない人が居るっておぼえときなさい。」
「はぁ?」
「一人は私の父上、ラ・ヴァリエール公爵、剣の腕はハルケギニア大陸一と呼ばれる生きる伝説の男。」
「へぇ、・・・・。」
サイトは自分の上唇を舌で舐める。
「もう一人は、目の前の私のお母さま、・・カリーヌ・デジレ・ド・マイヤール、・・・
烈風のカリン。」
「おもしれぇ・・。」
サイトは鋭い眼で自分を射抜くように見る、カリーヌに自身も眼で睨み返す。
「・・・・まずは久しぶりの家族の食卓です、食事にしましょう、詮議のほどはまた後で。」
「は、・・・はい、お母さま。」
「あなたにも聞きたいことが山ほどあります。さぁ、いらっしゃいな、使い魔さん。」
敵意満面の笑顔にサイトも不敵に笑う。
「さぁ、中へ。」
踵を返すカリーヌは二人を招き、玄関の扉とは言えないほどの観音開きの門を魔法で開ける。
赤い絨毯に玄関から伸びる広い回廊には様々な彫刻品に鎧、武具が飾られている。
サイトはそれにまじまじと眼を泳がせ、この屋敷の主の金持ちさを改めて実感する。
「食事の用意を、・・・執事。」
黒髪を長くまとめた背の高い執事はカリーヌの言葉に応じない。後ろ姿のまま動く様子がない。
カリーヌは眉を潜ませる。
「聞こえないのですか?食事の用意を、そこの執事。」
声をかけられた執事はゆっくりと振り返り。
「執事じゃない!桂だ!!」
「「なんでお前がここにいるんじゃぁぁぁぁぁ!!」」
サイトとルイズ二人の飛び蹴りが桂の顔面に直撃する。
また内容追加します、今日はここらで投稿。
ルイズの両親の設定もちょろっと、改変します。
父と母は強し、で。