ゼロの使い魔と万事屋銀ちゃん   作:銀桃

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魔法学院の学生寮の塔を人影が階段を昇る。

カツカツと階段を踏み、とある一室の前にフードを深く被った女性。

その女性は息を整え、その部屋の住人を呼ぼうとドアをノックする。


「誰か来たぞー。」

「あんた出てよ。」

「なんで俺なんだよ、お前出ろよ。」

「なんで私が出るのよ、あんた使い魔でしょ。」

「いや、おかしくねーか?なぁ、使い魔って言うけど普段俺の扱い執事じゃねーかよ。俺はセバスチャンじゃないよーご主人様ぁ。」

「・・・・・こっちは花の慶次読んでるのよ、忙しいの。」

「こっちもパチ物語読んでるんだよ。お前、アララ〇が今いい中年になってパチンコ三昧の生活で知り合う怪異と昔の女がよぉ・・・。」

「なに?その話、・・・・今度貸しなさい。」

「興味深々かよ、って・・・あー・・・開いてますよ~!」

フードを脱いだ女性の耳に仲睦まじい女官とその使い魔のやり取りか聞こえ、顔がほころぶ、・・・・・女性はふふ、と笑うとそのドアのノブに手をかける。

ごめんなさいね、と心で謝る。

「入りますよ、ルイズ。」

「はいはーい。今日は閉店ですよー。」

「忙しいんで帰ってもらえます?」

来客の彼女の眼には大量の漫画本を見ながらくつろぐルイズとサイトの姿が。

「・・・・?だれ?」

「・・・・・。」

ルイズはその来客の姿を見ようと寝ころんだ状態で夢中になる漫画から目を逸らし姿を捉えた時には黙って固まった。

「ひ・・・ひ・・・。」

「そうなんだよなぁ、・・・ひたぎさん、バツ一でさぁ。撫子ちゃんは・・・。」

漫画の中から抜け出せないサイトはルイズの声に適当に反応する。

「く、くつろいでいるところ申し訳ないのですが・・・ルイズ、お邪魔してもよろしいですか?」


「あん?」

「あ、・・・・アンリエッタ姫様かよォォォォォォォ!!」


ルイズの叫びを聞きながらアンリエッタは笑いをこらえて手を口に添える。


そして本人達は知る由もなかった。


互いに道を別つことになるとは。











アルビオン、皇太子救出編
第五十八話 仲違い


アルビオンは今、貴族派と王党派が対立して戦争してるの知ってるわよね?

 

今、あそこは貴族派があらゆる勢力と同盟を組みまくって王党派を潰す最終手段に入ったらしいわ、王党派・・・・アルビオン王家のウェールズ・テューダー様を助け、アルビオンを脱出する、今回姫様から与えられた任務は以上よ!

 

 

ダァン と机をたたき、万事屋の居間でルイズは立ち上がる。

 

「姫様の願い、叶えてあげましょう。協力しなさい!」

 

 

「帰れ。」

 

 

外は雨の降る万事屋、銀時は事務机の椅子に座り、鼻くそをほじりながらルイズに一言。

 

ルイズはゆらり・・と杖をふりかぶる。

 

「ちょ!ルイズさん落ち着いて!もうここ爆破しないで!お登瀬さんに怒られるから!」

 

 

「いい加減爆破オチもあきあきネ、なんか新しいオチはないアルかぁ?」

 

ルイズは神楽に向けてランチャーを構える。

 

「それもやめて!シャレになんないから!!つーかどっから出したの?」

 

新八の怒れるルイズを抑える光景を見ながら銀時は溜息を吐き、窓の外を見る。

 

「あのさぁ、俺も俺らで仕事抱えてんの、お前の国の事かまってやりたいけどさ、こっちも必死なの、だから今回はパス、・・・つーか使い魔どうした?」

 

 

ルイズは銀時の質問に動きを止める。

 

「・・・・・あいつはクビよ。」

 

「えーーーーー!?なんで?つーかクビって、んなことできんの?」

 

新八のツッコミにもルイズはいつもの感じで応えない、真剣に、そして銀時を見据え、冗談も通らないような顔で言葉を放つ。

 

「あいつは今回協力しないって言ったわ、だからクビ、あんな薄情もの知らないわ。」

 

「・・・はぁ、ヤレヤレ、んじゃわかったよ、協力してやらぁ・・・その前に。話せよ。昨日の晩なにがあったか。」

 

 

 

 

話は遡る。

 

 

 

「ルイズ、私は結婚することにしました。」

 

「えーーーーーー!?」

 

ルイズの大声にアンリエッタは驚き、杖を振るう、ルイズは口を押え、サイトをちらりと見る。

 

「今の時間だれもいねーよ。寝てる。」

 

「ふがふが・・。」

 

「ああ、なんも気配は感じねぇ。」

 

サイトの野性的カンともいえる周囲の察知能力は広い、戦場での生活も長い彼にとってこの部屋の周辺の人間有無を漫画片手に警戒するのはたやすいことだ。ルイズはうんと頷き、口から手を離す。

 

「あ、相手は誰なんですか?」

 

「ゲルマニアの王ですわ。」

 

「・・・それって。」

 

「ええ、政略結婚ですわね、・・・ですが、私は国のトップです、国の為ならどこへでも嫁ぐ覚悟はできていますわ。」

 

そう強くルイズに言うアンリエッタの眼は悲しそうだった、気丈な表情もするが、ルイズには隠せていない。

 

「結婚するまでに私も少し、心残りがあって・・・アルビオンの事は知ってますね?」

 

「・・・・今、戦争中だろ?」

 

サイトは眉間にしわを寄せる。

 

「ええ、心残りなのはそのウェールズ皇太子のことなんです、従兄にあたる彼をどうかこの国に亡命させてあげたいんです。・・・貴族派の勢力が勢いを増す一方で王党派は今、完全にあの国で孤立・・・聞けば貴族派は王党派を最終手段で完全に息の根を止めようと画策していると聞きます、戦争は終わります、このままいけば王党派は皆殺しになって終わるでしょう。・・・今回あなた達にはこの手紙を彼に届けて頂きたいのです。王党派全員がこの国に亡命してもいいように手筈は整えます!・・・つらい任務になるでしょうが、バックアップは任せてくださいな。・・・あ、何かあればこの指輪も。質に売って旅費の・・。」

 

ダン!!

 

サイトの拳が机をたたく音でアンリエッタの言葉は止まった。

 

「・・・・やらねぇ、・・・そんな任務やらねぇ。」

 

「・・・サイト?」

 

サイトの見たことのない怒りの表情をルイズは眼にする、アンリエッタを睨むサイトは拳を握りしめ、俯く。

ルイズは次に冷静な表情でサイトに振り返り、サイトの前自分の顔を寄せる。

 

「サイト、・・いえ、シュバリエ・サイト・ヒラガ。あなたは騎士でしょ?アンリエッタ姫の命令は国の命令、従いなさい。」

 

「・・・・だったら騎士もやめてやらぁ。」

 

「恩義には忠誠を誓いなさい。」

 

「誓わねぇ。」

 

「・・・・なら、私に・・・主人に従いなさい、私は姫様の任務を全うしにアルビオンに向かうわ。」

 

「・・・・従わねぇ。」

 

パチン、と乾いた音が響く、サイトの頬をルイズが平手で殴り、ルイズは無表情にサイトを見る。眼には薄く涙を浮かべながら。

 

「・・・・だったら出て行きなさい。あんたはもう使い魔でもないわ。」

 

「お、おいおい、嬢ちゃん。」

 

デルフの宿る紅桜を掴み、サイトの胸に押し付ける。

 

「・・・あんたはクビよ。どこへでも行きなさい。」

 

サイトは何も言わず、ルイズの俯く姿を一瞥し、部屋を出る。

 

「あばよ、・・・ご主人さま。」

 

「おい!相棒!本気かよ!!」

 

デルフの声を無視し、サイトは速足でルイズの部屋から離れる。

 

ルイズのアンリエッタの耳に彼の去る階段を下りる音が聞こえる。アンリエッタはおどおどとルイズを見るがルイズは振り返り、真剣な顔で自身が仕える姫、アンリエッタの手を取る。

 

「安心してください、・・・・姫様、このルイズ、どんな手をつかっても任務を全うしてみせます!」

 

固く誓いを立てたルイズにアンリエッタは頷くしかできなかった、その顔は喜びではなく、深い悲しみの表情で傅くルイズの頭を見る。

 

「お願いします、・・・・我が女官、ルイズ。」

 

機械のような声でアンリエッタはルイズに今回の任務を・・・・・命令した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして話は今に戻る。

 

「あいつはもう使い魔じゃないわ、どこへでも行けばいい、今回は私の任務の手伝いをあんたたちに頼むわ、腕が立つ知り合いなんてあんたしかいないし。」

 

ルイズはソファーに疲れたように座ると脚と腕を組み、銀時の反応を伺う。

 

銀時はヤレヤレと言った顔で椅子に座ると外の雨の光景を見る。

 

「雨に濡れてここに来た時は何かと思ったけどよ、まぁややこしい依頼をしてくれるお嬢ちゃんだぜ・・・・わーった。引き受けてやらぁ。」

 

「ホントに??」

 

ルイズは子供の様にはしゃぎ、銀時の机に齧りつくように小走りで銀時に顔を向ける。

 

「ああ、用意が出来たらそっちいくわ、つーか今日は帰れ、この町の雨は酸性雨だ、お前のない胸が余計に溶けるぞ。」

 

「わかったわ!んじゃ明日の朝、学院の前でね!」

 

「はいはい、んじゃーな。」

 

ルイズは新八から傘を借り、急いで玄関へと走って行く。

 

その背中を見ながら銀時はまた溜息をつく。

 

「はぁ、・・・なんでこう依頼と場所が重なるかねぇ。」

 

「・・・・将軍様の依頼も引き受けちゃいましたもんね、それにルイズさん、いつもの感じを装ってますけど、サイト君の事、本当にクビにしたんでしょうか?」

 

「・・・めんどくさいアルな・・。」

 

銀時は事務の机の引き出しをあけ、金の入った封筒を二つ出す、

 

「っつーことだ、んでどうする?金は受け取っていいんだな?元使い魔さんよぉ。」

 

銀時は寝室のふすまを開ける、そこにはずぶ濡れのサイトが壁にもたれかかれ、眼を閉じ佇む。

 

「金は渡す、成果は問わねぇ、危なくなったら逃げるのを勧めるぜ。」

 

サイトはそう言うと、隠れていた寝室を抜け、玄関へ脚を運ぶ。

 

「どこに行くんですか?サイトさん。」

 

「好きにするぜ、次はガリアにでも行って騎士にでもなるか・・・そうなったら近い将来昔のご主人様達に刃を向けることもあるかもな。国の行く末は国の主にもわからない・・・ってな。」

 

「・・・・明日の朝、学院前だとよ。」

 

銀時はそう言って居間のソファーに座る。サイトは何も言わず玄関から出て万事屋を去っていく。

 

「あいつらどうなっちゃうアルか?銀ちゃん。」

 

「さぁな、バカップルの行方はバカップルにしかわかんねーよ。」

 

雨の勢いは外の音からでもわかるように激しさを増す。

 

銀時は封筒を机に放り投げ・・・

 

「明日の話すんぞ、座れ、お前ら。」

 

 

 

 

 

 

 

外の雨は激しくサイトの体を打ち、濡らす。

 

サイトは傘もささず、とある場所に向かい脚を進める。

 

からくり堂

 

そう書かれた長屋の扉を開け、びしょぬれのまま長屋の中の主の顔を見る。

 

「誰だぁ?兄ちゃん。」

 

「・・・・・平賀、サイト。」

 

その名前を聞き、からくり堂の主人、源外は固まる。

 

「三郎さんの仏壇、ある?」

 

「・・・・・入りな、茶も出してやらぁ。」

 

 

 

 

渡されたタオルで体を拭き、サイトは源外の勧められるまま茶を飲む。

 

苦味に顔をしかめ、東洋顔のサイトが茶を飲むのを渋るのに源外はにやりと口角を上げる。こっちの生活より向こうの外国の生活の長いサイトにとって茶の味には慣れない様子だ。

 

「しかしまぁ、おでれーたな、お前さんが三郎から名前を貰ったとはなぁ。」

 

「顔は覚えてるよ、物心ついてすぐだったけどな、三郎さんとはほんの少し行動を共にしたんだ、まぁ、海の上だったけどなぁ・・。」

 

「で?今日は仏壇に線香上げにきただけかい?」

 

「まぁ、・・・こっちに来るのも最後になるだろうしな。」

 

「・・・・つれないねぇ、男ってのは。気のみ気のまま、三郎もそうだった、気が付けば攘夷戦争のからくり技師なんてやってよ、・・・挙句の果てがこのざまよ。」

 

仏壇を振り返り、源外は三郎の遺影を見る。

 

「んじゃな、ジイさん、もうここには来ねーよ。俺は旅に出るかんな。」

 

「ああ、せいぜい死なねぇようにな。こいつから貰った名前、ムダにすんじゃねーぞ。・・・ちょいとまちなぁ。」

 

源外は隣の部屋でがちゃがちゃゴソゴソ、部屋で待つサイトは首を傾げ、出てきた源外の手に持つお守り袋を目にする。

 

「持っていきな、兄ちゃん、三郎の形見だ。」

 

「・・・いいのか?」

 

「ああ、別にいい、あいつもお前さんに持って貰えれば本望だろうよ。」

 

「・・・・じゃぁな。」

 

サイトは玄関に向かいお守りを懐に入れ、出ようと、ブーツを履く。

 

「三郎は、あいつなりに自分の侍を貫いた男だった、・・・お前さんもそうなってほしいだろうよ、聞いたわけじゃねぇが、・・・まぁ、三郎ならそういうだろうな。」

 

源外の言葉を聞き、サイトは一瞬手を止めるがブーツを履き終え立ち上がると黙って玄関を開け、外に踏み出す。

 

 

「・・・・分かってるよ、んなこと。」

 

 

 

雨の中、雨音に掻き消えそうな声でサイトはそうつぶやき、かぶき町の街をターミナルに向けて脚を運ぶ。

 

思い出すのは記憶の片隅、小さく貧しい頃、腹を満たすために屋台に食い逃げに走った風の都、知り合った悪ガキ仲間、自分を救ってくれた年上のアニキと呼んでいた少年、その少年に忠誠を誓った自分。

 

 

 

なぁ、ウェールズのアニキー、俺もお前の部隊に入れてくれよ。

 

 

サイトは剣がうまいからな、すぐに活躍できる。隊長に推薦しとくよ。

 

 

なぁアニキ、たまには飲みにいかねーか?

 

 

おいおい、サイト、借りにも一国の皇太子を飲みに連れるってどうだい?それに僕たち未成年だろ?

 

 

堅い事言うなよ、・・・・ロサイスのねーちゃん可愛いぜ、ちょっとナンパしに。

 

 

行くぞ、友よ。あっちの意味でもイコう。

 

 

 

 

 

 

「今更戻れるかよ、古巣になんてよ。」

 

 

 

今から五年前の話、ウェールズ銃士隊の記憶がサイトの頭を逡巡する。

 

 

「戻れねぇよ、ウェールズ、俺は・・・・もう。」

 

 

 

 

雨はサイトを濡らす、その眼から流れるものを一緒に流すように。

 

 

 







翌朝、銀時の思いとは別にサイトは学院の前には来なかった。

「うん、晴れてる!これならアルビオンにも行きやすいわ。」

ルイズはうんうんと頷き、学院の外で腕を組み、アンリエッタの寄越す予定の護衛を待つ。

サイトの事を気にしていないかのような表情で彼女は銀時を見る。

「いい?護衛の人は衛士隊よ?失礼のないようにね?」

「へいへい、俺は空気でーす。」

銀時は頭を掻き、あくびをする。

ルイズはアンリエッタから貰った鮮やかな青色をした水のルビーを手にする、よし、と鼻息を荒げ、ポケットにそれを入れ、柔軟体操をする。

ふと、上空に影が差し込む、グリフォンが上空を旋回し、地上に降下。
グリフォンに跨る羽帽子と口ひげの男の姿が二人の眼に止まる。

ルイズは自分の眼をこする、その男はにっと笑い。

「やぁやぁ、遅れた遅れた!衛士隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ワルド!二日酔いでここに見参しましたぁー!いや、ほんますんまそん!」


続く。
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