ゼロの使い魔と万事屋銀ちゃん   作:銀桃

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アルビオンの港町、ロサイス。時間は銀時達がハヴィランドに到着するより遡る。

「はぁ、ホントなの?銀さんとルイズがここアルビオンに乗り込んだって。」

「ホントさ、僕は聞いたんだ、昨日の夜姫様がルイズの部屋で話をしていたのをさ!これは僕はチャンスだと思うんだ、ここで功績をあげれば今までお遊びだって貴族の大人に馬鹿にされていた修練の成果を認めてくれる。そうなれば国も僕達を正式に軍隊として扱ってくれるかもしれないんだ。!アンリエッタ姫なら認めてくれるよ!あの銃士隊だって平民出の兵士ばかりなんだ、負けてられないだろ?」

「はいはい、長い長い、功績を上げたいんならここからどうハヴィランドに向かうか考えなさいよ。」

キュルケとギーシュはロサイスの宿場の店、そのテーブルの一角を陣取り、話し合いをしていた。ここまでなんとか来たものの、ハヴィランドへの交通は完全に遮断、歩いて行くには遠すぎるし、かといって足を探そうにも普段の観光用の舟も馬車もアルビオンの貴族派に現在全て抑えられている。貴族派を名乗ろうにもトリステインの学生服に監視の眼は当然向けられ、好きに動けるものでもない。

ハヴィランドへの一斉攻撃は回りの住人の話を聞くと明日の朝らしい。

「あきらめて帰ったほうがいい。」

タバサはキュルケの横で無表情に本を読みながらギーシュを諭す。

「ぬううう、・・・いや、そうはいかない、ルイズも今回はサイトの力ナシでは任務達成は難しいだろう、そこに僕達が助けに入れば功績が・・。」

「・・・あんた、なんでサイト止めなかったのよ、喧嘩したって聞いたけど。」

「いや・・・その、・・・友人だけどあの時の顔はマジ怖かったっていうか。」

「ビビリすぎ。チキン。」

キュルケは飽きれた顔でギーシュを見る、この男はさっきから功績、功績とうるさい、そして何も考えていない、はっきり言ってバカ丸出し、溜息を吐きながらキュルケは空になった紅茶のカップを覗き、カウンターの店員を呼ぶ。

「ちょっとー、紅茶のおかわり貰える?店員さーん。」

カウンターの奥で棚のグラスを磨く店員はキュルケの声に応じずグラスを淡々と磨く。

イラっときたキュルケは少し、声を荒げ店員を呼ぶ。

「ちょっとー!聞いてんの?店員さん?」

店員のグラスを磨くスピードは増し、磨かれたグラスはカウンターのテーブルにズラァァァと並ぶ。

「何よあの店員!ちょっと!!」















「ズラァァァァじゃない!桂だ!!」



第六十一話 部下は上司を選べない

「は?・・・か、かつら?」

 

「桂じゃないズラ・・・間違った、・・・なんでしょうか?お客様。」

 

桂はウェイターの恰好でキュルケの前に立つ。

 

「紅茶のおかわり貰える?」

 

イライラした調子でキュルケは桂にカップを差し出す。

 

「承知しました、チャーハンですね?」

 

「いや、どんな耳してんの?紅茶!紅茶飲みたいの!!」

 

「チャーハンセットですね?今の時間ならドリンクにチャーハン、デザートにチャーハンが付いてきます。」

 

「どんだけ米食わせる気よ!紅茶って言ってんでしょーが!何あんた、客に喧嘩売ってるの?」

 

「貴族の娘が食うだの売るだのはしたない言葉を使うではない、はしたない!」

 

「なんで説教?ってか売るとか喰うのどこがはしたないの??」

 

「むう、貴族の娘と思って大目に見ていたがそのはだけた服装からしてお主達どうせそのテーブルで今夜の乱〇パーティの話をしていたのであろう!なんと破廉恥な!」

 

「ハァァァァァ?」

 

「男と女そろって変な仮面をつけてとろっとろに溶けたチーズをつつき合うつもりだろう!貴様ら!」

 

「それただのチーズフォンデュ食ってるだけじゃない!?どこが乱〇パーティ??」

 

「大衆の面前でチーズフォ・・・恥を知れェェエ!!」

 

「いや、チーズフォンデュでそこまで妄想できるあんたの方が破廉恥・・。」

 

そんな桂とキュルケのやり取りの最中に店の扉が乱暴に開けられ、ギーシュとキュルケ、タバサが振り返る。

 

店に入ってきた見るからにゴロツキの傭兵達が6人、店の周囲をぎらついた眼で見渡す。

その眼はキュルケ達を捉え、ニヤリと笑いながら脚を彼女達に進める。

 

彼女達の周囲を逃げ場のないように傭兵達は囲う。

 

「トリステイン魔法学院の制服、お前らだな。」

 

「何か用?今忙しいんだけど?」

 

「キュルケ・・・彼ら貴族派に雇われた傭兵だ。」

 

「そう、俺たちの雇い主がお前らを始末しろってうるせーんだ。わりぃな、お嬢ちゃん達。」

 

剣を抜き、傭兵達はキュルケに剣先を向ける。

 

「はぁ、タバサ。」

 

「もう終わった。」

 

傭兵達は一瞬のうちにタバサの魔法で氷漬けにされる。6人全員が剣を抜いた状態でニヤリと笑ったまま凍っているのはどこかマヌケな光景だった。

 

「ま、こいつらの乗ってきた舟とかあれば強奪するのもいいかもね。」

 

キュルケはうんうんと頷き、我ながらいいアイディアかも、と一人事を言いながら店を出ようとする。ギーシュは氷漬けになった傭兵をまじまじと見ながらキュルケについていこうと踵を返す、ふと、入り口を彼は見た。その入り口には自分達と同じくらいの少年が腕を組み、入り口を塞いでいた。

 

「どいてくださる?お兄さん?」

 

キュルケは杖をその少年に向け、少年に命令する。少年はフードで顔を見えないようにしていたがフードを取り、にっこりと笑う。端正な顔立ちにキュルケはあら、と少し興味深く、少年の顔を見た。

 

その一瞬が命取り。

 

少年は腰のレイピアに手をかけ、素早く抜き、キュルケの首にめがけ、一撃を放つ。

キュルケにはレイピアに手をかけたところまで見えていた、が、詠唱は間に合わない。

タバサも顔面蒼白で杖を振るうが間に合わない。

 

金属音がギィンと鳴った瞬間にキュルケは初めて自分がまだ生きていると実感し、地面に尻もちをつく。

 

「女の子の挨拶で首に一撃なんて無粋じゃないか。」

 

二本ラインの袴に黒髪にメガネ、レイピアの少年の一撃をキュルケの首に届く前に日本刀で横から割って入った少年の後ろ姿をキュルケは呆然と見る。

 

安心するのもつかの間、今度は店のカウンターの奥から爆破音が響き、いっきに傭兵達がなだれ込んできた。

 

タバサとギーシュに剣が遠慮なしに差し向けられ剣先はしゃがむギーシュの眼前に迫る

 

「ホアタァァァァァ!!」

 

窓ガラスをけ破り、その勢いのまま傭兵数名をカウンターに一蹴りで吹き飛ばす少女が割って入りギーシュも事なきを得た。

 

「な・・・なんなんだ!?」

 

「新八ィ!女の子の前で格好つけてる場合ジャナイネ!」

 

「格好つけてねーし!!」

 

新八はレイピア使いの少年の連撃の猛攻を受けるのに必死だ、そこに拍車をかけるように天井を突き破り三体のドラゴンが姿を現す。

 

「うげえええええ!火竜じゃないか!!」

 

ギーシュの叫びと同時に火竜は大きく肺に息を吸い込む、火のブレスでこの建屋ごと燃やすつもりだろう。

 

「そうはさせん!!」

 

桂は両手に持った爆弾を竜に投げつける、火竜が火を吐く寸前に火竜の眼前でその爆弾は炸裂し、驚いた火竜は上空に逃げる。

 

火竜を上空に見たレイピア使いの少年は舌打ちをし、跳躍で天井の壊れた部分を足場に火竜に飛び乗る。

 

「あいつ!竜騎士か!」

 

レイピアを腰に納め、火竜に跨った竜騎士の少年は上空から彼らを見据える。

 

そのまま残り二体の火竜を引き連れ、何回か上空を旋回した後、竜騎士の少年はその場から上空へ立ち去った。

 

「ふう、銀時の言う通りだったな。」

 

桂は腕を組み、荒れ果てた店を眺める。新八も自分の獲物の刀を鞘に納めるとキュルケを見る。

 

「ルイズさんを追ってここに君達が来るかもしれないから援護してくれってさ。」

 

「銀ちゃん今回は大当たりネ、これでしばらくパチンコも負けまくり確定アル。」

 

「さぁ、キュルケさん?だっけ?宮殿に向かいましょう。」

 

新八はキュルケに手を差し伸べる。

 

「え、ええ・・行くわ。・・行きますとも。」

 

キュルケは新八の手を取り、起こされる。

 

ふと、後ろを振り向くとキュルケは自身の後ろに佇む白い化物の被り物に驚き、新八に抱き着く。

 

「ひぃ!!」

 

「おっと・・・あ、エリザベスさん。」

 

(桂さん、船の手配ができました。)

 

「おお!でかしたぞエリザベス。」

 

(中の人間には眠ってもらいました)

 

よく見ればプラカードで会話するこのエリザベスの足元に血がこびりついている。ギーシュは青ざめた顔でこのバケモノが何をしたのか容易に想像できた。

 

「行くぞ!諸君!いざ!ハヴィランドへ!!」

 

「「お、おー・・・・」」

 

あっと言う間に状況は変わった、ギーシュは呆然としながら勇ましく脚を勧める新八と神楽、桂を眺める。

 

「あー・・・今回僕、解説役になりそう。」

 

「ヤムチャ。」

 

タバサがそうつぶやきながらギーシュの横を通り過ぎる。

 

新八の後ろを歩くキュルケは神楽と話す新八をじーっと見る。

 

「・・・・・メガネ、じゃない、・・・人間よね?あ、なんか今になって人間の輪郭が見えてきた。」

 

そしてその瞬間にキュルケの胸にモヤモヤが現れる、そのモヤモヤが何なのかはキュルケには分からない、分からないが、なぜかモヤモヤする。

 

 

そんな一行をはるか上空で監視する目があるとも知らず、桂、キュルケ一行はハヴィランドを目指す。

 

 

 

 

 

 

その一部始終を監視していた春雨第六師団の戦艦。

 

その内部にある指令室の巨大モニターで女は舌打ちをした。

 

「ち、邪魔が入った。あの国の侍とやらは本当に予想外の事をやってくれる。」

 

黒い衣装に豊満な胸、額のルーンが怪しく光り、女はモニターの桂と新八たちを恨めし気に睨む。

 

「行かせてやりな、どうせ今回の戦はお前らの勝利だ。」

 

煙管の煙を燻らせ、高杉は悠然とその女の後ろに佇む。

 

「タカスギ・・・私の主はあんたを完全に信用してないよ、私も一緒さ・・。」

 

「ほう、あの狂った王にそこまで考えがあるとは思えねぇが。」

 

ギリリと歯を食いしばり、女は高杉を睨む。

 

「せっかくの勝てる戦も焦っちまったら痛い眼を見るぜ、シェフィールドさんよ。」

 

「ち・・・。」

 

シェフィールドはイライラしながらモニターから踵を返し戦艦の通路を高杉の横を通り抜け速足で歩く。

 

 

 

なぜ、なぜ、私のジョゼフ様はこんな男と手を組むの?

 

 

「・・・・好きな男の友人に嫉妬、こりゃタカスギのダンナもスミに置けないねぇ。」

 

「ケツに注意したほうがいいんじゃない?」

 

通路の曲がり角から阿伏兎と神威がへらへらと現れ、高杉はふんと鼻を鳴らす。

 

「まぁ忠告は聞いとくぜ、・・・そろそろ時間だ、ヤツからの連絡も来た。」

 

「うーん、今回は国崩しかぁ、腕が鳴るなぁ。」

 

「ケッ!まーた始まったようちの団長の悪い癖がよぉ。」

 

「・・・・・・今回はあの使い魔君いるかなぁ?・・・今回はマジで殺しあえるといいんだけど・・・。」

 

 

「安心しな、あの小僧は来るさ、・・・必ずな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロサイス、大型戦艦レキシントン。甲板に竜騎士の少年は降下し、足早に指令室へと赴く。

 

「ルネ・フォンク、戻りました。賊は取り逃がしましたが行先はハヴィランドの事。」

 

「あ、・・ああ、ご苦労。」

 

指令室の中央に居座る、サー・ヘンリ・ボーウッドは頭を抱えながらルネをねぎらう。

このルネを先ほどの店の襲撃に向かわせたのは彼、正確には、一方的に命令を送ってきた自身の今の主に等しいあの女、シェフィールドの命令をそのままルネに伝えただけだった。

 

ボーウッドの心の内ははっきり言って 失敗した。だ。

 

心情的には王党派だった彼は艦隊司令が貴族派に付いた為、心ならずも貴族派に付くことになった、貴族派の蜂起を促したレコンキスタの首領クロムウェル、虚無を名乗る彼の奇跡を何度か眼にしたがいま思えばくだらないものだ、と思う。

 

その首領ももう一人の虚無を探す道中に打ち取られ遺体も見つからない状態。

 

混乱した貴族派にその代理としてあの得体のしれない女、シェフィールドが現れ、この戦争を指揮し出した。自らを虚無の使い魔と名乗るがはっきり言って信用もできないし、なにより兵士の使い方が雑だ、まるで兵士をチェスの駒のように使い捨て、面倒ごとは全てこちらに振ってくる。

 

それに拍車をかけ、あの宇宙人共、・・・シェフィールドの主が手を組んだ宇宙の海賊とかいう見るも恐ろしい姿の面々、ボーウッドは考えれば考えるほど頭を抱えながら胃の痛みを感じる。

 

アルビオンを貴族派の手により再構築する?・・・現状はどうだ、アルビオンの優秀な貴族派の兵士は前に出され、消費され、その後ろには近代兵器をその兵士に突きつけ戦いを強要する宇宙人達。これが再構築?それはアルビオンの人間の手ではなく宇宙人による略奪ではないのか?・・・とボーウッドは考える。

 

おそらく彼だけではなかろう、前線の兵士のほとんどは今の自分の考えを頭に浮かばせているだろう。

 

なんと情けない、・・・このレキシントンを任されたはいいがあの宇宙人共の戦艦に比べたらオモチャに過ぎない。

 

はぁ、・・・とボーウッドは溜息を吐く。

 

「・・・指示を。」

 

ルネは淡々とそうボーウッドに指示を乞う、腕は立つ、この歳で隊長各にまで登った彼もまた心情は王党派だった、それも上官が自分のせいで貴族派に就く事を余儀なくされた、・・・しかも彼の経歴からすればなおさらだろう。

 

「・・・・ハヴィランド前線に赴けとの事だ、・・・。」

 

「・・・・了解しました。」

 

ルネは踵を返し、指令室を後にする。

 

「・・・・元銃士隊の君にこんな命令は出したくなかった・・・・。」

 

ルネは一瞬その声に脚を留める、が、彼は何も言わず歩き出した。

 

 

「クソ・・・・あの女・・。」

 

伝令の紙をくしゃくしゃに握りしめ、ボーウッドは指令室の机をドンと叩く、周囲の兵士たちはその音に驚き、沈黙する。

 

 

 

 

 




夢を見た、昔の夢。・・・


「やぁ、君がサイト・・・だね?それに君は、ルネか。」

「・・・何お前?」

ロンディニウムの路地裏に見かけない自分と同じくらいの少年が訪れた、家もない、食うものも盗んで生きてきたサイトにとって目の前の身なりのいい少年は恰好のカモだ。

「いい服じゃん、金、出せよ。」

ルネは迷うことなくその身なりのいい少年の首筋にナイフを突きつける。

「金は持ってないよ、ごめん。」

「あっそ、こっちはハラ減ってるんだ、なんでもいいから置いてけ、じゃなきゃ殺す。」

サイトは少年の目の前に悠然と佇み、脅しをかける。

少年は自分の後ろを親指で指さし。

「僕も金がないし、お腹もペコペコさ、ちょうどいいからあの屋台、襲撃しない?」

「「はぁ!?」」

身なりのいい少年は目の前でいきなり服を脱ぎだし、そのまま屋台に突っ走って行った。

大魔王のような股間の一物を店主の女性にみせつけ、店主が驚いているスキに食べ物のチキンや果物、ワインを盗み、こっちに走ってくる。

「おいおいおい!こっちくんな!巻き添えになるだろうがァァァァ!!」

「なんだあいつ!露出狂の変態か?」

「お~~い待てよサイト君!チキンだよ!」

「なんでお前チキンをイチモツにぶら下げて走ってんだァァァ!あと名前呼ぶんじゃねェェェェ!!」




魅惑の妖精亭のカウンター、まだ準備中の店内でサイトは眼が醒める。


「・・・・あいつ、昔から変態だった・・・。」




続く・・・
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