薬を盛られたジェームズ一世、僕の父は狂ったように僕に刃を向けた。
その時近くにいた僕の友人サイトは迷う事なく父を斬った。
そして僕がその後、彼にしたことは。・・・
銀時は結局夜は眠れず、ウェールズの話した内容を頭の中で逡巡させる。
展望台からの光景も昨日の夜と変わらず、今の時刻は朝の5:00
「嫌な話を聞いちまったぜ、・・・ちくしょう。」
銀時は頭をボリボリと掻き、あくびをする。
ふと、自分の上空に吹く風とすっとのびる影に彼は頭を上げる。
そして次に銀時の眼にはその密輸船から下に向かって伸びる大砲の砲口が眼に入る。
「な・・・!」
宮殿に向けて轟音を鳴らし、砲撃を加える、地響きと同時に火柱が上がり、宮殿のあちらこちらで怒号、そして兵士の戸惑う叫びが聞こえる。
「・・・・・まさか!!」
考えたくはない、だがそれしかない。
銀時にはワルドの顔が頭に浮かぶ。
「クソッタレ!!」
銀時は展望台を走り去り、階下への階段を駆け下りる。
いやな予感、ワルドがもし、裏切ったとして手を差し向ける人物。
ウェールズとルイズ。
「クソッタレェェェェェェ!!」
「・・・・始まったか。さぁ、ルイズ、行こうか?」
「はい、ワルド様。」
視線をどこに向けるのでもなく、ルイズはワルドの手を繋ぐ。
そこへあわただしくアルビオンの騎士が来賓室のドアを乱暴にあけ、息切れした声で二人を見る。
「お二人とも!!無事ですか!?」
「ああ、大丈夫、心配しなくてもいい、・・だから。」
ワルドのレイピアの一閃がその騎士の喉を掻き斬る。
「が・・・。」
声が出せずに、血をまき散らせながらその騎士はワルドの足元に倒れる。
冷徹な黒い瞳でワルドはルイズを見る、ルイズは目の前で騎士が息絶えようとしているのにもなんの反応も示さない。
「いい子だ、ルイズ、・・・僕を聖地に導いておくれ。」
轟音が響き、宮殿の外でも爆炎と煙が立ち込める。
「はい、ワルド様。」
壊れた機械のように同じ言葉を放ち、ルイズはワルドと共に部屋を出る。
息絶えようとするその騎士の眼に映る二人は砲撃の煙とともに見えなくなる。
上空の密輸船、もとい巨大戦艦は宮殿の船の停泊所に停泊する、そこから無数の春雨の戦闘員が橋をかけ、宮殿に襲撃をかける。
騎士達は最初は混乱したものの、すぐさま迎撃の態勢を立て直し、春雨に対抗した。
宮殿内部では銃撃音に剣が交わる音が響く。
戦艦の内部ではその光景を後ろ手に組みながら観戦するように見下ろす人物。
このアルビオン貴族派が包囲する空路の抜け道をワルドから密書で教えてもらったことでこの襲撃は難なく成功した。
そして兼ねてから手を組んでいた高杉という男のワルドを使った作戦も成功するだろう。これで一人目の虚無は手に入る。
そうなればトリステインならず他の国が目指す聖地への一番乗りも夢ではない。
あのガリアとも裏で手を組んでいたのもこうなれば反故にしてもよかろう、とその男は笑う。
トリステイン王立魔法アカデミー評議会議長、ゴンドラン。
彼は戦闘の様子をニヤニヤと見る。
「よくやってくれた、ワルド、これでトリステインの私達の未来は安泰、高杉にも礼を言わねばな。」
チョット・・
「しかし、ここまで来るのにも苦労した、やっと聖地への鍵が手に入る。あのダングルテールの事件以来、どうなるものかと思ったが・・・・チュレンヌにモットには悪いが先に私が聖地に赴く事になりそうだ。」
ジャマダヨ
「あとは、あの方に連絡をして今回は終わりだな、・・・・。」
振り返った瞬間にゴンドランの顔面に拳がめり込んだ、ゴンドランの意識はそれにより絶たれ、戦艦のガラスを突き破り、彼は地上に落下する。
「何やってんだ、お前。」
高杉は神威の暴挙を腕を組み問いただす。
「だって邪魔だって言ってるのに、ブツブツ言ってるからさ、イラっときたから殴っちゃった。」
地上に落ちたゴンドランを心配する様子はもちろん二人にはない。
「まぁ、いいさ、あの男にはもう用はない・・・で?どこから攻める?」
神威は眼を凝らし、戦場になった宮殿をその細い眼で見渡す。
「君も今回は来るかい?タカスギ。」
「さぁな、気が向いたら出向くさ。」
ルネ・フォンクは迷うより先に体が動いた、風竜に跨り、前線の隊長の制止を振り切り、宮殿内部まで侵入する。
予想は当たった、明らかに王党派の人間は奇襲を駆けられた、その証拠に宮殿の門には数名の見張りと騎士しかいない。攻撃を避け、ルネはスピードを上げる
一旦広場に向け、竜を操作し、広い広場の上空を旋回する。
「やはり・・か。奇襲、内部で裏切りが出たか・・。」
ルネは周囲を見渡し、見覚えのある顔を目にする。
「・・・ウェールズ。」
ルネの心の中にある迷いは無くなっていた。そして思う、今は只、自分が昔本当に認めた主の元へ駆けつける事が最優先だ、と・・・。
彼をここに寄越したシェフィールドの予想はおそらく 偶然のアタリ だろう。
気に食わない高杉になんとか一矢報いたい。
彼女の思惑は彼女の眼の届かない所で成功していたと言える。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
目の前の黒い装束の男に急襲され、右腕に重傷を負ったウェールズは息を荒げ杖を構える。
「まぁーた魔法、銃のほうがいいのによぉ。」
阿伏兎は距離の空いた標的に傘の先端を突きつける。
「あっけないなぁ、皇太子さんよ。」
銃声と共に、ウェールズの後ろの壁に弾丸が逸れ、穴が空く。
「ふう・・・エア・カッター!!」
無数の風の刃は阿伏兎の咄嗟に開いた傘を切り裂く。
「おお、アブねぇ、風の魔法ってヤツかい?銃弾も逸れるってことは風を纏ってやがったなぁ?」
不敵に笑うと阿伏兎は跳躍でウェールズに迫る。
「でも俺の拳はどうにもできねぇだろ?」
無慈悲に振り下ろされる鉄拳にウェールズは死を覚悟する。
ドゴォ!
しかしその鉄拳がウェールズの頭を砕くことはなかった、突如壁を破壊し、突き出し、伸びた黒いブーツを履いた脚がその鉄拳を横から食い止める。
「オァアアアアアアアア!!」
咆哮を叫び、壁を突き破り銀時は木刀を阿伏兎の頭に振り下ろす。
「銀時殿!!」
木刀を阿伏兎は掴み、銀時に蹴りを放つ、銀時は防御より攻撃、両足で阿伏兎の顔面を蹴りぬけ、着地と同時に阿伏兎のわき腹に木刀の一撃を叩き込む。
「ぐうぉ・・・。」
阿伏兎は弓矢のように壁を突き破りながら吹き飛ぶ、壁が崩れ、部屋ともいえぬ場所に変わる宮殿の惨状にウェールズは顔をしかめる。
「待たせたな、大将!さっさと逃げるぜ!状況が変わった!。」
「待て!!それよりルイズ殿を・・・。」
「・・・。」
銀時はさっきから彼女を探していた、だがこの宮殿の来客用のエリアにはどこにもいない、銀時は舌打ちをし、目の前で悠然をと起き上がる夜兎を睨む。
「僕はいい!彼女を!」
「・・・・・クソ!」
このままウェールズをみすみす一人にはできない、銀時が歯噛みし、目の前の夜兎を睨む、・・・が、その背後から猛スピードで迫りくる何かを見た瞬間、迷いを振り切りウェールズに走る。
再び外から壁を突き破ったのは風竜、荒ぶる竜は阿伏兎を両足でロックし、阿伏兎を外の広場に落下させようと牙を剥く、その竜に跨る騎士を一瞬、ウェールズは眼にした。
「・・・ルネ・・!」
ルネはウェールズに一瞬振り返るとにっとわらい、阿伏兎を睨む。
「よう、遊び相手は俺で十分だろ?」
「あぁ!?」
広場に阿伏兎と同時に落下し、ルネは風竜越しにレイピアを阿伏兎に突きつける。
阿伏兎は地面を背に切り裂かれた傘でレイピアを弾く。
風竜は阿伏兎に鋭い牙で咬みつき、うなりを上げる。
「ゴロツキの相手は裏切り者で十分だ。」
ルネはこちらが優勢と竜の上から阿伏兎を見下げ、ニヤリと笑う。
「上等ぉ~クソガキィ・・・調子こいてるとオジサンキレちゃおうかなぁ?・・・。」
阿伏兎も不敵に笑いながら挑発をうけ、頭に血が上ったのかこめかみに青筋を浮かべる。
銀時はウェールズを肩に抱え回廊を走る。
「待て!降ろしてくれ!君がここまでしてくれる必要はない!」
銀時はウェールズの忠告を無視し、宮殿の回廊を走り抜ける。
「なぜ僕に構う!君はルイズを早く探して一刻もここを脱出するんだ!彼らは僕が狙いだ!僕を差し出せば君達だけは・・・。」
「ふざけんな。」
「ふざけてなど・・・。」
「ふざけんじゃねぇ!!ここまで・・・ここまで来てあっさり大将が負けを認めんじゃねぇよ!!」
「ぎ・・銀時殿?」
「何人兵士が死のうが、何人兵士が倒れようが、大将が生きていれば負けじゃねぇ!お前がここまであの騎士達を引っ張って来たんだろう!今更あっさりと降伏するんじゃねぇよ!!」
銀時の脳裏には自分が戦った攘夷戦争が頭をよぎる。
他国の戦争には干渉する義理はない、だがこの状況、天人の襲撃。・・
守りたかった者を守れなかった戦、ここでウェールズを捨て、自分達だけが生き延びるのはあの時と同じ。
同じにしてはいけない、このままこの国の戦を見捨てて天人の好きにさせるのはあの時と同じ事を繰り返すことになる。
繰り返すことだけは二度と御免だ。
銀時は心でそう思う。
「こいつは俺のワガママだ、ルイズも同じ事いうだろうよ、お前は死なねぇ!俺が殺させねぇ!お前の騎士達の為にも!ルイズの為にも!俺のダチ公と姫様の為にも!そして!」
ウェールズはその言葉にいままで付き従ってくれた騎士や来訪したルイズ、茂茂にアンリエッタが脳裏によぎる。
銀時はウェールズに眼を向ける。
「お前が信じたダチ公の為にもな。」
「・・・・。」
ウェールズは脳裏にサイトを思い出す。
銀時の肩に担がれながら彼は俯く、回廊を走り、銀時は片っ端から部屋をけ破り、ルイズを探す。
「モチロン、ルイズを探すのは手伝ってもらうぜ!」
「ああ、・・分かった、貴殿のワガママに応えよう、・・・だが、寄ってほしい処がある。」
ウェールズは止まった銀時の肩から降り、服装を整える。
「執務室はこの先だ、念のために君に渡すものがある。」
「わりぃがそいつはあんたが持っておきな、縁起でもねぇ。」
「はは・・僕は物持ちが悪くてね、君のさっきの戦いを見るに、君に預けておいたほうが物持ちはよさそうだ、あんなカッコイイ啖呵を聞いて僕もみすみす遺書を君に預ける気分にはもうなれないよ。」
ウェールズは執務室の部屋を開け、自分の机の上に置かれた古びた小さいチェストを開ける。
封筒に納められた手紙、何度も見たのであろうそのボロボロのその手紙を広げ、羽ペンでなにかを書き足す。
「僕はアンリエッタと・・まぁ、いわゆる恋仲だ・・・最後に彼女に貰ったこの手紙、これが敵の手に渡れば彼女に迷惑をかける、そうなる前に君達に預けて死ぬつもりだったが・・・生きて、彼女に返したい。」
「ほーう、・・・たしかにあんな大砲股間に持ってるお前さんだ、婚約がどうとかルイズが言ってたがお前さんの大砲なら右に出る男はいねぇ、生きて帰って奪っちまいな。王族のドロドロ恋愛ドラマなんざ昼ドラも真っ青だろうよ。」
「婚約か、・・・おそらくゲルマニアだろう、・・・・ふ、ふふ・・・そうか、そうだな、・・・生きてここから皆で逃げ出し、そうするのもいいかな。」
「戦火の飛び火なんざ気にすんな、金さえくれりゃこの万事屋銀ちゃん、悪魔だろうが神だろうが振り払ってやるさ。」
銀時にウェールズは手紙を渡す。
「・・・・・何者をも怖れない・・まるで夜叉のような男だな、銀時殿。」
「俺が一番怖ぇのは、自分の信念を忘れることさァ。」
手紙を受け取り、懐に銀時はそれを入れる、二人は次にガッシリと握手する。
痛めた右腕にウェールズは顔を顰めるが彼も男、それでも笑いながら銀時に視線を交わす。
「生き残った騎士は地下に向かう様に指示してある、緊急脱出用の船がこの宮殿の地下に隠してある、このアルビオン大陸の地下を削って外に通じる脱出路。そこはあのワルドにも伝えていない。」
「と、なると・・・あの戦艦に向かったな。」
「ああ、・・・行こう、まずはルイズ殿を取り返そう!」
二人は手を放し、戦艦が止まるハヴィランドの停留所に向けて走る。
ロサイス、戦艦レキシントンの指令室は混乱していた。
朝に一斉攻撃を仕掛ける作戦のはずが、時間より前に宮殿に急襲がかかったと前線の部隊から連絡があった。巨大戦艦の正体は不明。現在その手がかりはない。
ボーウッドはつい先刻、定時報告をしない不審船を捕まえその中にいた男達とトリステインの学生を指令机から睨む。
宮殿奇襲の戦艦について何か知っているかもしれない、と考え彼はここに彼らを連れて来るよう指示を出していた。・・・が。
「あんた何考えてンのよ!!定時報告なんて適当に異常なしとか言っとけばこうはならなかったのに!何が「定時報告じゃない!桂だ!」よ!誰でも怪しむわァァァァ!」
捕縛され、キュルケは桂を足で顔を踏みつけながら桂に罵声を浴びせていた。
「ええい!顔から脚を離せ!貴様それでも貴族か!気取ったモノを履きおって!パンツが丸見えではないか!」
(黒でした)
エリザベスは口からプラカードを出し、桂のセリフにいつもの様に合わせる。
「パンツくらい最後に見せてやるわよ!今から私はあんたを蹴り殺すから!ゲルマニアのツェルプストー舐めんじゃないわよ、ここで処刑される前にあんたは私が蹴り殺す!」
殺意の眼でキュルケは桂を睨む、神楽に新八、タバサにギーシュはどこかあきらめたような顔で体に縄を巻かれ、捕縛された状態で床に座り込んでいる。
ゲシゲシと顔を踏みつけられる桂を見ながらボーウッドは溜息を吐き、胃の痛みを感じる。
「この戦時下で不審者が見つかれば即斬首もの、・・・諸君らが正直にあの戦艦の正体を教えてくれれば少しは考えよう、何か知らんのか?」
その一言でキュルケの顔色が一気に変わる。
彼女は桂を蹴るのを一旦止め、顔面蒼白で正座する。
ボーウッドはなにも言わず、司令官座りのまま桂とキュルケ、神楽に新八を順番に見る。
「・・・では他国の人間がここに何の用だ。あの奇襲は我々の物ではない、戦艦について何か知っていることはないか?」
その場にいる新八も神楽も黙り込む。
しかし、桂はふう、と溜息をつき、頭を起こす。
「・・・・・戦場の状況を知らず、あまつさえ他国から侵入した捕虜に司令官が質問するとは、この貴族派という派閥がこの戦に勝利してもそう、長くはないな。」
桂はそう言い放ち、真剣な顔でボーウッドを見据える。
「大そうに司令官座りをしてはいるが貴殿はこの戦争に何を思う?」
「・・・貴様!司令官に向かって何を!!」
兵士の一人が桂の胸倉を掴む、しかしボーウッドはその兵士を無言で片手を掲げ制する。
「総司令官はもはや私ではない、元々貴族派はレコンキスタという革命派が現政権に不満を持つ貴族達を蜂起させこの戦争を始めた。それももはや終わりに近い、そこにきてあの急襲、このままあの宮殿に兵を差し向けても何もせずとも戦争は終わる。だが、私は知りたい、彼らがどこに所属している者なのか、そして彼らが次に何をしようとしているのかを。」
「ならばこの革命家リーダー・・・桂 小太郎が答えよう、彼らは天人の海賊、春雨第六師団だろう、我々の国もかつてその天人共に戦争に敗れ、今も実効支配されておる、このままいけば貴殿らの国も支配されることは間違いない。それは言わずともわかっておることではないのか?司令官殿、貴殿の眼を見ればわかる、戦いをあきらめ、ただただこの戦争を終わらせたい、・・・その眼は見覚えのある眼だ、我々の国のかつて上に立つものがそんな眼をしておったわ。」
「・・・・・。」
ボーウッドは何も言わない、初めて見た、初めて会ったこの異国の自称革命家の言う言葉はまさに自分の核心を突いている。
これ以上兵を犠牲にはしたくない、終るのならばどんな形でもいい。そう考えていた。
「焦り、迷い、・・戦場の兵士はそんな考えを捨てて命を懸けて刹那の瞬間を生きている、だが貴殿はどうだ?考える時間はあったはであろう。」
考える時間はあった、だがこの戦争を放棄するわけには行かない。まして王党派に今更寝返ることもできない。もはや自分には数千、数万の兵士に指示を与え、一人でも多く生き残らせ勝利しなければならない。
「数年間続けたこの戦、敵方の大将の首を今更貴殿達はこの星の外の者どもに獲らせるつもりか?」
首を獲らせる・・・・その言葉に彼は司令官座りを止め、拳を机に置く、桂に眼を合わせ、怒りともいえぬ感情を彼に向ける。
ボーウッドは机の上に握りしめた拳をさらに強く握る。
「では、迷っておる貴殿に・・・・この桂が一つ提案を出そう。」
桂はそう告げると縄で括られた体を起こし、ボーウッドに近寄る。
数年でも過去は遠く感じる。
ハヴィランドの展望台、そこにサイトは一人の老人と崖下に広がるアルビオンの景色を眺めていた。
父、というものが生まれた時からいないサイトにとって、この老人は友の父であり、自分が信じる数少ない人間だった。そして唯一、敬意の表する相手でもあった。
この短い間に、時には叱られ、拳骨も浴びた。
食事のマナーも教わり。
学もある程度は学んだ。
「お前は・・・これまで何人人を殺した。」
「・・・・数えたことはない、生きるために必要な数だけ・・・かな?」
「ワシも同じじゃ、国の為に必要な数だけ殺めた。」
老人はふう、と溜息を吐き、サイトの頭に手を置く。
「敵を殺し、裏切り者を殺し、そして、血のつながる者も殺した。そして、まだ幼い姪子も泣かせた。・・・・ワシもいずれは殺されよう・・・そしてワシは死を受け入れる。お前も同じじゃ、忘れるな。」
「ご忠告ありがとうございます。」
たんぱくに、そして嫌見たらしく、そうサイトは返す。老人はサイトの頭から手を放しひげを震わせながら笑う。そしていくらかせき込み、アルビオンの景色に老人は視線を戻す。
「銃士隊の規則を作ろうと思う、サイトよ、従者とは、騎士とはなにかわかるか?」
「・・・・いえ。」
「主を守る事、これに尽きる。」
「・・・。」
「主に仇名し、その命を狙う者はどんな者でも切り伏せよ、それがたとえ主の父だとしても。」
「え?・・・。」
「このジェームスの息子、ウェールズを任せたぞ、サイトよ。」
数日後、ジェームスは心身喪失薬を盛られ、ウェールズに自身の持つ短刀で襲い掛かり、サイトの手によって斬首された。
犯人は不明、ただ、見張りの兵士の証言では黒い服を着た、額にルーンが光る、黒い長髪の女がハヴィランドの外壁から外へ逃げるのが目撃された。
続く。