ゼロの使い魔と万事屋銀ちゃん   作:銀桃

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この話は過去になる。

日誌。

サハラを抜け、私はこのトリステインの地に帰還した

逃げおおせたというよりあのビダーシャルは自分の技術が人間に成功したことだけが満足だったような様子だった。

見張りもいないサハラの小さな集落から抜け出すのは簡単だった。


ここからこの日誌はもはや聖地とは関係ない日誌である。

上に報告する必要はない。

だが私の心にはとどめておきたい。

私はリッシュモンに自身の機械の体、そして聖地で研究中の技術、そしてオーバーテクノロジーであろう品々について報告した。

リッシュモンは満足げに私の功績を称え、褒美を渡した。

魔法衛士隊の隊長職の授与。

はっきり言って迷惑な話だ。

私の体はどうやらこれから人殺しの道具として使われるようだ。

これならあのサハラで生活していた方がマシだったかもしれない。

今回の一件で没落寸前だった私の生活は楽になった。






だが・・・・・

ルイズが虚無だと言う事はどうやらまぎれもない事実だったらしい。

アンリエッタ姫の女官として席に着いた彼女がそこにいた。

着任の式、隊の列の中から久しぶりに見た彼女は美しかった。


城の謁見の間でマントを羽織る彼女を見て、そして後日、彼女がアンリエッタと虚無の使い魔の話をしているのを盗み聞いた。

彼女が虚無。

誇らしいじゃないか。

彼女なら始祖ブリミルのご遺志を継ぐような立派な担い手になるだろう。

だが、・・・おおよそ、悪い予想は当たっていた。

この城内、この国の中にも腐っている者がいる。

虚無の担い手を私欲に利用しようと動く者達、その中にあのリッシュモンと息のかかった部下がいた。

法務官リッシュモン、罪人の処刑の有無を命じることができる彼が姫様の影で動いている。その私欲を満たす為に。

彼を前述で恩人とは言ったが彼は私が兵の採用試験の時に私に眼をつけていたらしい、おかげで兵に特別枠に採用された時は恩を感じたが・・・。

聖地の任務に向かわせたのはそれから数年後の話だった。

彼は法務の最高権力者の一人、私も下手に動けば罪人の濡れ衣を着せられ殺されよう。

ヤツはそうやって私の母を殺したのだから・・・

母は昔から勉学と魔法に長け、僕を生んだ後も聖地調査を王立魔法アカデミーで研究していた。

聖地の任務も今思えば私の素性を知っておいての事だろう、抜け目のない男だ。

これら全てを知ったのはこのトリステインに帰還し、数日が経った頃だ。

いよいよ、この国に仕えるのが嫌気が差してきた。

この体になってから魔法の扱いの調子もいい、偏在も姿、形を変えることで他人に化けることも容易い。

彼の部下に変装し、ヤツの過去を洗うのは容易い事だった。

無論、若き自分に化けるのも可能だろう。

これなら何でもできる。

私にも不可能はない。


これからはやりたいようにやらせてもらう。

もちろんこの国への、あの男への復讐もな。

私はもう名を捨てる、ただのワルドでしかない。

ルイズ、この国を見限るんだ。

この国に君の幸せはない。

                   ワルド


第六十七 あっけない終わり

ルイズ、・・・・・君は始祖になるべきだ。

 

 

 

 日誌。

 

始祖になり、世界を旅し、世界の真実を掴め。

 

その為なら私はどんな手伝いもしよう。

 

あんな美しい子が始祖になるんだ、女神の為なら命なんて惜しくはない。

 

君を国や組織に置くのは耐えられない。

 

君の虚無は民の為に、そして自分の為に使うんだ。

 

君の為なら私は迷わず悪になろう。

 

それが僕のリッシュモンへの。

 

この国への復讐に繋がるだろう。

 

そして、世界の真実を知った君は必ず幸福になれる。

 

 

用意はできた。

 

アルビオンの内戦を利用する。

 

ガリアの狂王の遊び場所になっているあの地で彼の使い魔とコンタクトが取れた。

 

そのツテで異国のテロリストや天人共とのやりとりも可能になった。

 

あのアルビオンの秘密をエサにすれば天人の海賊共も参戦するだろう。

 

彼女を薬で操り、アルビオンの内戦が終わるまでに抜ければいい。

 

 

アンリエッタ姫とウェールズの関係は偏在の魔法で密使に化けて知っていた。

 

これも利用できる。

 

姫の政略結婚も何れ国の元老院が彼女に勧めるだろう、それがこの作戦の始まりだ。

これでルイズに姫を通して自然に近寄る事ができるだろう。

 

彼女を裏切るまでが私の仕事。

 

いや、使命だ。

 

 

一人になれ、ルイズ。

 

君は高貴で気高い担い手だ。

 

 

多少・・・君を傷つけるのは許してくれ。

 

母は言っていた。

 

世界の真実を知る者こそ始祖になれる。

 

君は世界の真実を掴むんだ。ルイズ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイトは神威との空中戦に見切りをつけ、紅桜のコードを使い、崩壊した舟の停留所まで足場の風石を跳躍しながら登る。

 

追ってくる気配はない。

 

神威の相手をする時間もない、彼を撒く事が優先、そして目の前のウェールズとの会話も優先したかった。

 

だが・・・

 

停留所に着いた瞬間に左目に流れ込んできた情報。

 

一振りの刀、そしてあの高杉という男、そしてまた、見知らぬ男。

 

「サイト!無事だったか!。」

 

迷うより先に・・・サイトに気が付き、駆けつけるウェールズの背後から襲い掛かる夜兎の姿に刀を構える。

 

夜兎達の心情は単純な物だった、神威ではなくこのガキが戻ってきた。

 

となれば。

 

こいつを殺した一番が次の長になれる。

 

 

サイトは鉄をも砕く勢いの拳打をウェールズの頭上に跳躍したと同時に自らの足の裏で受け止め、衝撃を後ろに逃がす。身体を捻り戦闘員の胴体を斬る、次に傘で攻撃してきた戦闘員二人目の傘を刃で弾き飛ばし、脳天に一撃を見舞う。

 

「護衛対象が好き勝手動くんじゃねぇよ!アニキ!」

 

ウェールズの後ろに着地すると上空で息絶える夜兎を無視し、目の前の標的に眼をやった。

 

傘の一撃をサイトが躱し、ウェールズがその一撃を背面越しに構えた刃で受け止める。

 

「自分の背中くらい自分で守れるさ。」

 

ウェールズは地面に転がるが、サイトは難なく敵の背中を切り裂くことができた。

 

「サイト!後ろからだ!!」

 

その真後ろで控えていた戦闘員も起き上がったウェールズが放つ剣の突きで後ろに吹き飛ばす。

 

「おいおい、護衛対象に守られちまってるぞ相棒。」

 

デルフの嫌味を無視し、サイトとウェールズのコンビネーションで死角を補うように縦横無尽に襲い掛かる夜兎の戦闘員を次々に打ちのめす。

 

「貰った!!」

 

三人の戦闘員達叫び、傘の先端の一撃は警戒網を潜り抜け、ウェールズの眼前にまで届こうとする。

 

冷や汗が背中に流れ、サイトはウェールズの目の前の戦闘員に急いで刀の切っ先を走らせる。

 

しかし、その一撃はウェールズには届かず、夜兎の両隣から複数の槍の突きが戦闘員丸ごと三名を串刺しにする。

 

ウェールズは貴族派の騎士達が自分を見てウィンクするのに冷や汗を流し口角を上げた。

 

槍使いの部隊数名は王党派と貴族派が混ざり合い、夜兎達をその獲物の長さで圧倒する。

 

槍の長さは十分夜兎たちの脚を怯ませるのに十分だった。

 

傘と槍・・・リーチの長さの違いは大きい。

 

「数で押さえつけろォォォォ!壁まで押し込め!!」

 

好機とみたルネが怯んだ夜兎達数名を自らが跨った風竜のタックルで宮殿の壁際に弾き飛ばす。

 

気が付けばあっという間に夜兎の戦力は半分以上に減り、遅れて到着した槍の部隊の槍の壁により、夜兎とアルビオン混成軍はこの宮殿の戦場において、敵と味方、二つの集団にくっきり分断され、にらみ合いに変わる。

 

「・・・外も中も指揮する者が居なくなってこのままにらみ合いが続けば上等だろう。宮殿内の天人との決着も着きそうだ・・・外も異国の侍が後続の部隊の侵入を防いでいる。まさか内戦が貴族派と結託し、天人共との戦になるとはな・・・。」

 

ルネは不敵に笑うとウェールズの隣に竜を降ろし、周囲を警戒しながらウェールズに話す。

 

「ああ、この卑怯者の皇太子に協力するなんてな・・・ありがたいやら、かなしいやら。」

 

ウェールズは息を荒げながらサイトの肩を叩く。

 

「ここは任せろ、サイト、再会の宴は今はお預けだ・・・君はもう一人の主の所へ行け。」

 

サイトは紅桜の構えを解くと、ウェールズに眼を合わせる。

 

サイト、そしてルネは何も言わずウェールズの左右掲げた手をがっしりと握りしめる。

 

「「「生きてまた会おう!!」」」

 

ルネは上空へ宮殿内の天人部隊と戦う他の兵の下へ、ウェールズは槍部隊の中心に、サイトはそこから戦艦へ紅桜を逆手に持ち、柄から伸びるコードを操り、戦艦に飛び乗る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は代わり・・・暗闇の中・・・アルビオンの戦場の光景を映し出した水晶を見る男の姿がガリア国の城の一角、一室にあった。

 

玉座に座り、片足に乗せたその水晶を見て。ガリアの狂王ジョゼフは嗤った。

 

「国内部で争う両勢力が横槍を入れた勢力に結託して戦いを挑む・・・か。存外あの機械の体を持った男も食えぬ者だ。戦争を己の私欲に操作するとは驚いた。」

 

口髭をさわり、ふむ、と考えるジョゼフは片手の紙に書く筆を止め、水晶を床に落とす。

 

水晶はゴロゴロと転がり、玉座の先にある階段に落ち、転がっていく。

 

「しかし、いい話ができた。・・・ああ、そうそう、横槍を入れた勢力への 益、を与えてやらなければな・・。」

 

ジョゼフは携帯電話を眺めまたふむ、と手のひらの電話を片手で弄る。

 

そしてボタンを押しながらコール音を聞き、どこかオモチャを与えられた子供のようにその音を楽しむ表情で電話口を耳にやる。

 

「私だ・・・ミューズ、撤退だ、天人共全員をその国から撤退させろ。・・・・・タカスギ?好きにさせておけ・・・。」

 

電話口の向こうではミューズ、シェフィールドが何かを必死に懇願している。

 

「おいおい、ミューズ、お前は私の優秀で美しい使い魔だろう、そんな金切り声で私を責めるな、もうよいのだ、もうそこには飽きた。・・・。」

 

また電話口の向こうで納まらない金切り声にジョゼフは少し苛立つ。

 

 

「ミューズよ、お前は主の言う事を聞けぬのか・・・・?」

 

その一言と声色で電話口の向こうが沈黙する。

 

「沈黙は了解と取ったぞ・・・・・。」

 

ジョゼフは暗闇の自室の窓に映る光景を見た。薔薇のツタが窓にまで伸び、陽の光が少し差し込む先に留まる鳥類の脚部分が覗く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルビオンハヴィランド宮殿、戦艦内部。

 

ルイズの肩に降ろされた高杉の刀の刃はルイズの頸動脈に押し付けられていた。

 

銀時は高杉のその気になればルイズの命を奪うことができる態度に脚を前にやれず、苦心していた。

 

それと同時にあのワルドのルイズの精神を揺さぶろうとする悪あがき。

 

もはや銀時の彼に対する怒りは頂点を迎え、その鋭い眼で彼を睨む。

 

「ルイズ・・・・すまない。」

 

「・・・・お兄ちゃん。」

 

ワルドはルイズの肩に手を置く。

 

「テメェ!!」

 

「最後の忠告だ・・・手に入らないなら壊すまでだぜ、銀時・・・。」

 

銀時は声を荒げるが高杉は刀をちらつかせ銀時を不敵に嗤う。

 

「ルイズ、すまない・・・君には知って欲しかった。君が今立っている場所を・・・。」

 

「・・・・。」

 

 

「君が今立っているのは国の上、組織の上だ・・・。君の虚無はそこで使う物なんかじゃないんだ・・。薬を使って君をここから連れ出し、自由に、一人にさせたいという気持ちがあった・・・解ってくれとは言わない、だが、君の虚無は民の為に使うのがふさわしいんだ!虚無は過去にも担い手がいた、だがその担い手は国の利益の為に使われ、決して民の為、おのれの為に使われては来なかったのが事実だ!いいかい?ルイズ、君には仲間がいる、だがその仲間も何れは君の気持を裏切る!」

 

「・・・・違う。」

 

「違わない!気が付いていないのか?現に君の使い魔は君から離れた!もうここにはいない!それと同じだ!力を持つ者は裏切られる!僕の母がそうだったんだ!勉学に長け、魔法に長け、そして誰にでも優しかった領主の娘の母はこの世界の真の理を知りかけた!そしてその考えは邪教とされ国に濡れ衣を被せられ殺された!君にはそうなって欲しくはない!ルイズ!僕と旅に出よう!必要なら僕は君に何でも捧げる!母は言っていた、世界の真実を知る者が始祖になれる、と!僕は君に掴んでもらいたいんだ!世界の真実を!そのためならなんでもするさ・・・ルイズ、僕達と来い。」

 

 

 

高杉はこのルイズへ向けてのワルドの演説に多少関心していた。

 

そしてこの男の言う世界の真実とやらにも興味が沸く。

 

 

「この国、大陸に降りたとされる始祖ブリミル、君はもう一人の始祖になるんだ!!、この腐った世界を救う虚無の担い手になるんだ、ルイズ。」

 

ワルドの言葉にルイズは俯き、何も言わない。

 

「さぁ・・・ルイズ。」

 

ワルドはルイズに手をやる。

 

ルイズは右手をゆっくりとワルドの手を握るように掲げる。

 

「おい・・・・。」

 

銀時はルイズの行動に信じられないと声を漏らす。

 

 

 

しかし、ルイズはその右手で高杉の刀の刀身を強く握った。

 

 

そこにいた高杉、ワルド、そして銀時は次に彼女の信じられない行動に驚く。

 

ブシュ・・・・

 

肉の裂ける音、ルイズは血の流れる手のひらを構わず、高杉の刀を素手で握り締め、動きを止める。

 

 

 

「どいつもこいつも虚無、虚無、虚無・・・・。」

 

ルイズは低い声で唸るように言葉を放つ。

 

 

「一回も使ったことないのに虚無、虚無・・・・・虚無!!」

 

ルイズはそう言葉を荒げワルドを鋭い眼で睨む。

 

「私の人生虚無で振り回されるってワケ??使ったことないのに??・・・・ふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇ!そんな人生送ってたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ルイズは大声をあげ、虚空に叫ぶ、そしてその瞬間、ワルドの頭上の部屋の天蓋にヒビが走る。

 

「私は一人になんかならない!!始祖になる??バカ言わないで!!」

 

 

 

 

 

 

その天蓋のヒビからルイズの聞きなれた声が聞こえた。

 

 

 

 

「ああ、お前は一人じゃねぇ・・・。」

 

 

 

 

その声にルイズは返すかのようにワルドを鋭く見据える。

 

 

 

 

「私は一人になんてならないわ。」

 

 

 

 

天井のヒビは大きくなり、隙間から光が差し込む。

 

声の主はその天井を赤い刃で打ち破り、目の前のワルドの偏在の右肩に刃を打ち付ける。

 

「私には・・・虚無の魔法よりも・・・最強の使い魔が居るわ。だからどこへでも立てる、一人なんかじゃない、・・・・真実なんてどうでもいい!」

 

ルイズの声が届くか届かないか、・・・・ワルドの偏在はあっさりと姿を消す。

 

本体のない風の偏在は風と共に掻き消えた。

 

「・・・・さようなら、・・・ワルド。」

 

消える風の幻影にルイズは少し悲しそうな顔でそうつぶやく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・悪ぃ・・・遅れた。」

 

サイトはルイズの後ろを鋭く睨む、偏在が消え、次の標的の高杉の眼前に刀の切っ先を突きつける。

 

高杉の刀はルイズの振り絞った握力に止められ、彼の動きは封じられ、サイトの攻撃をただ待つのみ。

 

「形勢逆転だな、高杉よぉ・・・。」

 

銀時も高杉の背後から木刀の切っ先を頭に突きつける。

 

前髪に隠れて高杉の表情は分からないがルイズは刀身から手を放し、血の流れる手でサイトの横っ面を思い切りひっぱたく。

 

サイトに頬にルイズの血がべったりと手形で張り付く。

 

「うおげ!」

 

「遅い!!バツとしてご飯抜き!!一生!」

 

「・・・・ちょ・・お前それ・・・。」

 

「安心しなさい、私が作ってあげるわ、使い魔のエサだものぉ、主人が作らないとぉ・・・。」

 

ニヤリと笑うルイズの顔を見てサイトは口をパクパクする。

 

「・・・・・。」

 

サイトの顔面が真っ青になる・・・。一食であの世に行くだろう。

 

 

 

 

 

 

「お前の悪だくみもここまでだろうな、高杉。」

 

「・・・・。」

 

「介錯ならしてやるぜ?腹でも斬るんだな。」

 

銀時の言葉にも何も言わずに高杉は前髪で表情を隠し、何も言葉を発しない。

 

横目でサイトとルイズの喧嘩を見ながら銀時は不気味に静まる高杉の後ろ姿を木刀を突きつけたまま警戒する。

 

「・・・・・!!まさか。」

 

銀時は木刀で高杉の頭を横薙ぎに殴る。

 

感触が無い。

 

予想通り、それは高杉のワルドによって作られた風の幻術。

 

いつの間にかすり替わっていたのか、風と共に高杉の姿が霞んでいく。

 

「あの野郎、・・・いつから幻術に・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイトはルイズの血の止まらない手の平を見てそれを掴む。

 

「・・・・おいおいおい、どんだけの力で握ったんだよ、刀身引かれてたら指飛んでるぞ。」

 

「ふん・・・遅れて来たのに説教?」

 

サイトはルイズの手の平に自分の服の袖を破った布を巻きつけてとりあえずの止血の応急処置をする。

 

「・・・・悪かったよ、昔の事に拘りすぎた。」

 

「帰ったらたっぷりその昔の話、聞かせてもらうわよ。」

 

「・・・・お、おう。」

 

サイトは頭を掻きながら何かを思い出した。

 

「あぁ・・・・っていうかな、んなことよりなんだよこれぇ!!」

 

鍔の裏、そこに張られた小さなプリクラをルイズに見せ、サイトは開き直るようにルイズに凄む。

 

「・・・・・あ。」

 

ルイズは顔を真っ赤にし、そのプリクラを凝視する。

 

「わ、忘れてた・・・ってぇ!今気が付いたの!?」

 

「うるせぇ!お前、この刀気に入ってんだぞ!・・・あーあこれ取ったら完全に跡のこるじゃねーか。」

 

「へー・・・そのプリクラは気に入らないんだ・・・。」

 

ルイズは俯く、サイトはしまった、という表情でルイズのつむじを見る。

 

「あー・・・まぁその、こういうのは別にとっておいてだな、眺めたいというか、別に気に入ってないってわけじゃないしさ、・・・・・ほら、顔あげろ、俺もお前との写真一個くらい持っておいて悪い気はしないからよ。」

 

「本当?」

 

「ああ、本当だ、だからしょうもない事で元気失くすな、な?一人じゃねーんだろ?」

 

俯く事を止め、うっすらと頬に赤みをさしたままのルイズが満面の笑顔でサイトの眼に映る。

 

「・・・・う!」

 

サイトは全身に電気が走る感覚に襲われた、彼女の表情に心を奪われそうになる、サイトは自身の心を鷲掴みにされそうなのを我慢し、ルイズから目を背ける。

 

「任務終わったらまた行くわよ。一個じゃ足りないでしょ?こんないいご主人様のご尊顔の写真なんて。」

 

「お、おう・・・。一個じゃぁ・・・足りない、から・・・な。」

 

いつもぶっきらぼうな返事しかしないサイトの言葉にルイズの全身に電気が走る。

 

自分が使い魔の主人!というプライドから彼女もまた彼から視線を逸らす。

 

「おーい、バカップル、全身火傷のおっさんほったらかしにして原作みたいな事してんじゃねーよ。ソシャゲとコラボでテンション上がったか?」

 

銀時の声に我に返った二人は銀時に向かってぎゃぁぎゃぁ怒鳴る。

 

「やれやれ・・・こっちは一見落着ってか?」

 

デルフの呆れた声に木刀を肩に担ぐ銀時は苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 

戦艦内部にもはや春雨の戦闘員の姿は無かった。

 

戦艦外の神威の部下の夜兎達も貴族派、王党派の騎士に捕縛され、宮殿内部の戦禍はとりあえず収まったかのように思える。

 

アルビオンの数年続いた内戦はワルドの企みとは別の結末。天人との共闘として締めくくられる事になる。

 

 

 

宮殿の外では竜に跨り駆けつけたルネと共に宮殿に押し入ろうと攻め込んだ天人達が桂、新八、ギーシュ達の目の前から撤退していく光景が広がる。

 

撤退の命令を素直に受け止める天人の戦闘員が逃げるように宮殿から離れていく。

 

これにはまるで暴れたりないホーキンスも外の光景を呆れたように見るしかなかった。

 

あっけなく幕を閉じたアルビオンの戦。その影にガリアの王が関わっているとはここにいる全員が知ることはない。

 

結果として、この乱戦は貴族派と王党派の和解、として終わりを迎えることになる。

 

 

 

 

 

宮殿に奇襲をかけた戦艦の底にワルドの姿はなかった。

 

そこに残されたのは赤く光るアンドバリの指輪だけが残されていた。

 

そのアンドバリの指輪を拾う影が一つ。

 

その影はまた暗い舟底から消え、足音だけを闇に響かせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風のアルビオン編、完。

 

 




ジョゼフは暗い部屋で携帯電話を弄り、紙に文字を書く。

そこには これにて 完 という字で締めくくられる長い文章。

「ああ、それとミューズよ、・・・ヤツらに伝えろ、好きにしていい、もうその国とトリステインは飽きた。」


暗い部屋の外、そこに広がる薔薇の園、降り立った一匹のカラスが不気味に空に鳴いた。

転がった水晶の中に見えるのは黒装束に錫杖を片手に、編み笠を被った不吉な目をした男が暗闇の中を歩く光景だった。


「八咫の鴉共にも死肉を漁らせてやらねばなぁ・・・・ミューズよ・・・。」
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